2016年7月19日火曜日

参議院選挙(3):憲法9条改正とは、現状を追認する項目を加えるだけになるだろう

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 参議院選挙の結果、憲法改正がやかましくなる。
 一時代前のように、憲法を金科玉条のように崇め奉る風潮は消えている。
 条文に固執するより、現状認識を優先する方が好まれる社会が生まれつつある。
 それだけ日本は豊かなになったということだろう。
 食うや食わずのかつかつのときは、なかなか進まない。
 条文を唯一のよりどころにするしか国民を守れないといった潜在意識が強いからである。
 しかし、世界で最大の債権保有国になった今、肩の下ろして余裕をもって何事をも見ることができるようになっているのが、今の日本人だろう。
 憲法がどうであれ、実際に日本は国防力の装置をもっているし、そのパワーは世界の10指に入るものでもある。
 条文とは無関係に、まるで文学的解釈に近いような
 法文の行間を読む
といったような憲法解釈とやらで現在の状況が作られてきている。
 となれば、なにをいままさら改正でもあるまい、いまのままでも充分いいのではないかということにもなる。
 しかし中には何か歯の間にものが挟まった感じがあってしっくりいかなし、もう少し法文にゆとりがあってもいいのではないかという議論も出てくる。
 また自衛隊は完全に軍隊としての市民権を持っているし、それを否定すると選挙前の共産党役員のように国民にお詫びを入れるハメになるほどに自由度を得ている。

 南シナ海では国際機関による裁定の法を無視する、いわゆる無法国家が出現し、自分の理屈だけを暴力装置で押し付けるヤクザ国家の様相を帯びてきている。
 その法を無視する国家が東シナ海に食指を伸ばしてきていることも事実であろう。
 世界の警察としてのアメリカは、いまはほとんど法の番人にはなりえておらず、ヤクザの増長に見て見ぬふりをするだけになっている。
 あちこちで、いろいろ様々な事件が頻発する昨今は、
 歴史的にみれば世界は安定期から激動期に移りつつある
ということになる。
 気象自然環境もこの半世紀の安定期が終わって、変動期に入っていると言われている。
 社会政治環境もそのウエーブにのっているのだろうとも思える。
 その激動をどう乗り越えていくのかが、そいれぞれの国民・民族の知恵にかかっている。
 周囲の環境が変化するとき、安定期の憲法から、激動期の憲法へと変わっていくとはおそらく自明であろう。
 昆虫などが変態して環境に適合していくように、あるいは野生生物がその環境で生きていくために遺伝子を変化させるようにすることで、枯死を回避していくことは種の保存という自然原則なのであろうと思う。
 歴史的社会的日本の環境にあってもそれは適用されるだろう。

 いまは昔ほど、憲法改正アレルギーはなくなっている。
 改正してあたりまえ、それが常態だろうという雰囲気も出てきている。
 中国という巨大は暴力装置の前でためらっていることは種の保存を侵されることにもなりかねない。
 というより、この巨大な暴力装置が憲法改正の扉をグーンと大きく押し広ろげてくれている。
 このことだけは確かなことで、誰もが認めざるを得ないだろう。
 憲法改正の可否は、一重に中国の動きにかかっているとみていいと思う。
 中国なくして憲法改正論議はない。
 中国が激しく動き、恫喝の度合を高めてくれば、すんなり憲法は改正される
だろう。
 もし途中でポシャれば危機は去ったということで、改正は見送られることになる。
 そんな状況にあるのが今であろう。
 
 憲法9条改正とはその条文の後ろに第三項として下記の文言を加えるだけになる。
③日本国民はその生命自由及び安全を守る基本的権利として自衛権を有する。
 つまり、現状を追認する項目を加えるだけになるだろう。
 内容的には法文を現状に合わせるか、現状を法文に合わせるかということになる。
 後者の実行は物理的に不可能な状態にある。
 とすれば前者になる。
 現状をいかに法文に反映させ、矛盾なき状態にするかである。
 

Record china配信日時:2016年7月11日(月) 9時40分
http://www.recordchina.co.jp/a144455.html

果たして日本人は好戦的か?
改憲勢力の参院選大勝に中国ネットからさまざまな反応

 2016年7月10日、参議院選挙で憲法改正に前向きな勢力が3分の2の議席を獲得。
 日本の憲法改正は中国人も関心を寄せており、改憲勢力が改正の発議に必要な3分の2の議席を獲得したことにさまざまな声が集まっている。

 中国では日本の憲法改正に否定的な人も多く、ネットでも
 「戦争が迫っている気がする。
 戦争が勃発する場合、東アジアが中心地になると思う」
 「日本は戦争を欲している。
 遠くない将来、日本は米国の支持の下核兵器を作り出すだろう。
 そして復讐の相手として真っ先に選ぶのが米国」
 「日本が軍事化の道を突き進んでいる」
と懸念や批判の声が多く聞かれた。

 一方で、
 憲法改正は日本の内政。
 私は日本人の選択を尊重したい」
 「日本は軍隊を有する正常な国になりたいだけ
 そんなに騒ぐほどのことか?。
 愛国者はむしろ喜ぶべきだ。
 なぜなら、日本を理由に中国は軍事強化を進められるから」
 「日本の存在は必要。
 日本がおとなしいと中国は国内の矛盾から国民の目線をそらせる手段を失ってしまう」
 「果たして日本人は好戦的か?
 私はそうは思わない」
と冷静な声や肯定的なコメントも多く見られた。

 日本の選挙より、南シナ海の実弾演習を見ると
 「果たして中国人は好戦的か?」
のほうがおもしろいように思うのだ。
 しかし、上記のネットの反応はメデイアが操作しているような気が多分にする。
 つまり「これ、本当かしら?」という疑問が湧く。


ダイヤモンドオンライン 2016年7月19日 加藤嘉一
http://diamond.jp/articles/-/95844

日本の“改憲勢力”台頭で中国社会が無秩序化する?

■参院選で改憲勢力が3分の2以上に
中国共産党の宣伝工作に透ける焦り

 改憲勢力が台頭した参院選後の日本に対して、中国共産党が発したメッセージからは、中国社会が無秩序化しかねないリスクが透けて見える
 「7月10日午前、日本で参議院選挙の投票が始まった。
 参議院における半分、すなわち121議席の帰属が確定される。
 自民党、公明党をはじめとする改憲勢力が参議院で3分の2以上の議席を獲得できるか否かが今回選挙の焦点となる」

 7月10日、中国の国営新華社通信は自由民主党本部の写真付きでこのような記事を配信した。
 中国共産党のマウスピースと呼ばれる宣伝機関である新華社
がどんな内容を、どんな視角から、どのタイミングで配信するかを追っていけば、
 共産党指導部がいま何を考えているのか、これから何をしようとしているのかがある程度は解読できる。

 今回に限って言えば、冒頭の記事が示しているように、中国共産党指導部は、日本の参院選を“改憲勢力”が3分の2以上の議席を獲得するかの一点に絞ってウォッチしていたように見える。
 2日後には、オランダ・ハーグにある常設仲裁裁判所が南シナ海問題における判決を下すタイミングだっただけに、中国国内世論はそちらのほうにより多くの宣伝・報道資源を費やしていた。
 しかしそれでも、
★.日本が憲法を改正するか否かという問題は、
 中国共産党にとっては南シナ海問題と同様に、政権の権威性や安定性に関わる重大テーマ
である。

 新華社が明確なスタンスとイデオロギーの下、宣伝工作を行っているように私には映った。

 参院選の結果は読者諸氏もご承知の通り、いわゆる“改憲勢力”が3分の2以上の議席を占めることになったという報道が、日本国内ではなされている。
 新華社も得票数や投票率などを含め、選挙結果の詳細を余すことなく報じていた。
 ここでは、中国共産党がどのような意図と立場を持っているかをうかがう上で有益と思われる新華社の記事
 (7月11日付『改憲勢力の勝利は日本の幸いでは決してない』)
をレビューしてみたい(記事引用は省略あり)。

  「改憲勢力が勝った危害は明らかである。
 今回の選挙を通じて、改憲勢力は間違いなく改憲プロセスを加速させるだろう。
 そして、安倍総理が発議をかけ、国会で通過すればそこからは国民投票の段階に入る。
 そうなれば、日本の根幹と未来を決定する平和憲法が書き換えられる可能性が出てくる。
 日本が戦後70年間守ってきた平和憲法が消えてなくなる可能性が高くなるのだ」

  「安倍総理がどんなレトリックを使い、どんな手段で企みを隠したとしても、憲法第9条を改正することの実質は戦後平和憲法の束縛を脱却し、日本が一歩一歩昔の軍国主義の道へと進むことにほかならないのである」

 「平和憲法は1947年の施行以来日本社会に根付き、広範な日本国民の意思を代表してきた。
 改憲の企みは多くの日本国民の疑問と抗議に遭っている。
 しかし、安倍政権は改憲で戦後レジームの脱却という目的を達成するために、これまで時間をかけて策を練ってきた。
 そして今回の選挙でも欺瞞的な手段によって選挙に勝つことを惜しまなかった。
 現在、改憲勢力は国会で多数の優勢を得たことによって、改憲という目的の実現を堂々と推し進めることが可能になった。
 安倍総理がこのやり方を使ったのは今回が初めてではない。
 《特定秘密保護法》のとき、安保法案を強制的に通過させたときも同様であった」

  「安倍氏が総理に就任して以来、日本の侵略戦争の歴史を認めず、靖国神社に参拝し、集団的自衛権の行使を解禁し、安保法案を強制的に通すなど一連の右翼的な行動を取ってきた。
 国際社会で高度の警戒と懸念を生じさせた。
 禍根はすでに埋まっている。
 日本にとって、一旦平和憲法という守護神を失えば、戦争の道へと滑り落ちることは避けられないだろう。
 国際社会にとって言えば、“戦争を行える普通の国家”へと戻った日本が再び戦争発動者という前科を踏むのか否かは誰にも断言できない状況を意味しているということである」

  「以上から、改憲勢力が勝利したという事実は、いま現在、そして将来を含めて、日本という国家の幸いを意味するものでは決してないと言える」

■どんなことがあっても「反日」を放棄できない根源的な理由

 中国共産党体制としてこの記事に体現されているような反応を示すことは、全くもって想定の範囲内であった。
 これまでも、歴史問題や安全保障問題で、日本の総理や政府が中国共産党の党益に符合しない政策や行動を取るたびに、党指導部は自らのマウスピースである新華社を始めとした宣伝機関に“日本軍国主義の復活”というロジックで世論工作をさせてきた。
 その背景には、中国共産党が中華人民共和国建国以来、社会全域・国民全体に対してトップダウン型で施してきたいわゆる“愛国主義教育”が横たわっている。

 同教育のなかでは、中国共産党は日本軍国主義者に勝利し、国民党との内戦に競り勝ち、その結果として新中国を建国したというロジックが貫徹されている。
 中国共産党が日本社会で広範に議論・批評されるいわゆる“反日教育”に執着し、どんなことがあってもそれを放棄できない根源的な理由がこのロジックの中に見いだせる。

  “反日”を放棄すること、それはすなわち建国のロジックを否定することにつながる。
 と同時に、
★.中国共産党が中国大陸を統治してきた正統性そのものを揺るがしかねない事態に陥る
ことになるのである。
 したがって、中国共産党にとって、程度の差はどうであれ
★.“反日”を止める可能性は論理的に存在しない。

 そして、中国社会にとって、論理はすなわち政治を意味する。

 我々日本人が、中国当局にいわゆる“反日教育”を止めるべきだという要求を安易にしていくことが限りなく幻想に近い背景がここにある。
 もっとも、すべての中国国民が共産党の“愛国教育”に賛同しているわけではない。
 自国の政府や政策を客観的に見て、批判的に分析する人間も少なくないと私は理解している。
 日本社会としては、そんな独立思考を持ったチャイニーズシティズンとの相互対話・理解を促進すべく、民間交流を多角的に推し進めていくべきであろう。
 長期戦に備えた先行投資を大胆不敵に行使すべきだと私は考える。

 ここまで書いてきて今さらかもしれないが、そもそもなぜ中国政治、特に中国が何らかの形で民主化するか否かを議論・検証することを主旨とする本連載で、中国共産党が日本の参院選をどう評価しているかというテーマを扱わなければならないのか。
 両者の間に何らかの相関性があるというのか。

 大ありである。

 ここからは、日本の参院選が中国共産党政治の盛衰にどのような影響を及ぼし得るのかを考えていきたい。

■日本の「軍国主義復活」を導き出さざるを得ない理由

 キーワードはやはり“改憲勢力”である。
 前述の原因・背景から、中国共産党としては、大衆迎合主義、論理的整合性、および政治的正確性という観点から、「日本の国会で改憲勢力が過半数を占めた」という事実をもって、「日本軍国主義が復活する」という論理を導き出さざるを得ない。

 “導き出さざるを得ない”という文脈がポイントである。

 中国当局としては、共産党の正統性を死守するという国内政治的な需要からそうせざるを得ない。
 一方で、国際政治の舞台において、中国がその需要を満たすためだけの外交を展開することは非現実的であり、共産党とてそれは十二分に理解している。
 本連載でも適宜指摘してきたように、
★.日本との関係を安定的にマネージすることは、
 中国経済、対米関係、地域協力といった観点からも共産党にとって充分なインセンティブをもたらすものである。

 ましてや、国連常任理事国である中国は今となっては世界第二の経済大国であり、“大国としての責任”をいかに果たしていくかは切実な国益でもある。
★.日本との関係を上手に管理できない中国、
 政治問題がなにかと経済関係を束縛する中国、
といったイメージが国際社会で蔓延してしまうことは、中国の国益に符合しないと言える。

 余談になるが、私自身は、
★.いま中国に最も求められている能力は
 “持続可能な信用を健全に勝ち取る力”
と考えている。

 話を戻すと、だからこそ習近平総書記、李克強首相は安倍晋三首相の歴史認識、安全保障政策などに不満を持ちつつも、断続的に会談に応じ、政治関係の安定的管理に努めてきたのである。

■国内政治と国際政治の狭間で揺れ動く中国のジレンマ

 そんな共産党指導部が、今回の参院選を受けて政治的に内心最も懸念していることは何か。

 それは、「改憲勢力の前進」とそれがもたらす
★.「軍国主義復活の危険性」を根拠に“反日”を煽らざるを得ない国内政治に立脚した需要と、
★.21世紀のグローバリゼーション時代において経済・外交的な利益を保証しなければならない国際政治に立脚した需要
との間に存在するジレンマと関係している。
 中国共産党の対日外交は、両者のあいだで振り子のように揺れ続けざるを得ない運命にあるのだ。

 前者が行き過ぎれば後者が行き詰まる。後者が行き過ぎれば前者が暴走する。

 今回の参院選に関して言えば、中国が、特に安倍政権の残りの任期の間、継続的に日本の改憲に対する警戒と批判を煽り続けるのは必至である。
 その過程で、いわゆる“愛国主義教育”によって潜在的に、マグマのごとく蓄積されてきた“反日感情”が水面上に出てくる可能性が高くなる。
 そんな国内世論の下、共産党指導部が日本との関係を前進させようとしたり、日本の政策を評価したりする言動を取れば、人民は当局に対して反発的になる。

  「平和憲法を改正し、軍国主義を復活させようとしている輩となぜ仲良くするのか?」
と。

 この過程で、“反日”が引き金となる形で当局と人民の関係が緊迫化し、
 人民が当局に反発すべく“愛国無罪”を掲げて暴徒化し、
 両者が対立する過程で、内戦を彷彿させるような武力衝突が起こり、
 結果的に社会が不安定化・無秩序化していくこと。
 これが、
 日本の参院選が中国共産党政治の盛衰にもたらし得る最大級の潜在的リスク
だと私は考えている。
ただ、現段階でこのリスクが顕在化する可能性は低そうである。

 参院選直後の7月⒒日に中国外交部が開いた定例記者会見において、陸慷報道官は記者からの質問に答える形で次のようにコメントしている。

  「本来、日本国内の参議院選挙は日本自身の内政であるが、皆が周知の原因によって、中国を含めた国際社会、特にアジア地域の関連国家は現在日本国内で起こっているいくつかの政治動向に懸念を抱いている。
 これは完全に理解できることだ。
 緊張する問題は存在しない。
 しかし、日本が歴史的にアジア人民に対して犯した深刻な罪の行為ゆえに、今日の日本が軍事・安全保障の分野で取る政策動向がアジア国家と国際社会の高度な懸念を受け続けるのである」

  「我々はこれまでも幾度となく主張してきた。
 日本は歴史の教訓を切実に汲み取り、アジアの隣国や国際社会の安全保障的な懸念を重視すべきであると。
 我々は日本が平和的発展の道を堅持し、軍事・安全保障の分野で慎重に行動し、地域の平和、安定、安全に資することを多くする日本を見たいと願っている」

 中国外交当局として安倍政権に対する警戒と牽制を露呈する内容ではあるが、前出の新華社記事と比べれば抑制の効いたものであることは容易に見て取れる。
 国際政治に立脚した需要に重心が置かれたパフォーマンスであり、中国が引き続き日本との関係を重視し、あらゆる機会を利用して日中関係を安定的にマネージしていこうという意思表示でもあるとも言える。

 実際に7月15日、参院選の後、南シナ海問題を巡ってフィリピンの主張を全面的に受け入れる、すなわち中国にとっては不利な判決が出た直後という微妙な時期、ASEM首脳会合に出席中の安倍総理と李首相が会談を実現させた。

 会談では、ダッカ襲撃テロ事件での日本人犠牲者及び南スーダンでの中国PKO要員の犠牲者に対し,互いに弔意の表明があった。
 テロ対策や世界経済を巡って日中が協力を強化していくこと、戦略的互恵関係の原点に立ち、日中関係を前進させていくことなどで意見と立場の一致をみた。
 安倍総理が、9月に中国・杭州で開催されるG20首脳会議を成功させるために日本として協力していきたいという意思を伝えれば、李首相からは、G20サミットに際して安倍総理が中国を訪問することを、心から歓迎したいという立場が伝えられた。

 この状況を見る限り、習近平・李克強政権が、改憲勢力の優勢が可視化された参院選後、国内で“反日”が高ぶらざるを得ない展望を前にしてもそれに故意に迎合して、あるいはそれを利用する形で日本との関係改善に後ろ向きになったり、“反日”をめぐって当局と人民が国内的に対立・衝突し、中国社会が不安定化したりするリスクは低いと言える。

 日中関係、および日本の対中政策という観点からすれば朗報であろう。

■習近平体制は必ずしも安定せず、
 対日重視が国内の無秩序化を招く?

 最後に、そんな朗報を可能にしている背景であるが、やはり習近平政権の権力基盤が相当程度強固になっていて、対外関係のなかでも政治的に最も敏感である対日関係を管理する上でも、大衆世論に迎合・遠慮することなく政策を展開できるようになった現状が挙げられる。

 もっとも、“強固”は必ずしも“安定”を意味しない。
 集団的指導体制を掲げる共産党政権において、習近平総書記1人に権力が集中しすぎることによって体制内部で不満や鬱憤が蓄積し、何らかの突発事件が引き金となって政権運営が行き詰まる、政権そのものが弱体化する、場合によってはクーデター的な動きが発生する、といった可能性は全くもって否定できない。

 そして、そんな引き金に日本、あるいは“反日”が加担してしまうことになる構造的矛盾を既存の体制は抱えている。
 中国共産党の対日政策が一筋縄にはいかないゆえんが、ここにも存在する。



YAHOO ニュース 2016年7月18日 11時17分配信 鈴木崇弘  | 城西国際大学大学院客員教授
http://bylines.news.yahoo.co.jp/suzukitakahiro/20160718-00060105/

今後の改憲論議を、仮説を立てて、大胆に予測する

 去る参議院選挙において与党が勝利し、同院でも改憲勢力がほぼ三分の二を占めることになった。
 これに伴い、安倍晋三総理の悲願である改憲の可能性が、正に現実味を帯びてきた。

 日本が第二次世界大戦に敗北し、現行憲法である日本国憲法は、1946年11月3日に公布され1947年5月3日に施行されて以来約70年間改正されたことはない。
 だが、同憲法の制定の過程などから、「押し付け憲法」などと主張する者なども存在しており、長らく与党である自民党はその結党以来、自主憲法の制定を党是としてきた。
 特に、その結党時の党幹部であり、安倍総理の祖父にあたり、総理にも就任した岸信介氏は、一貫して憲法改正の必要性を持論としながら、政治活動をし続けたといわれる。
 安倍総理は、その岸元総理の影響を幼少期から強く受けて成長し、憲法改正への思いは、非常に強いといわれる。

 このような状態の中、国内においても、憲法改正に関するさまざまな動きや反対も起きてきている。
 特に、日本国憲法論議の中で、最も注目されるのは、いわゆる憲法9条の問題であり、護憲派の多くは、その改正により、日本は戦争に巻き込まれることを恐れている。

 だが、筆者はその点に関して、別の仮説をもっている。
 それは、次のようなものだ。
●・安倍総理は、現行憲法を何としても改正したいと考えている。
●・安倍総理は、自衛隊を軍隊とし、日本を強い国にしたいと考えている。
●・だが、憲法9条を改正するつもりは少なくとも現時点ではない。
 一見すると、上記の仮説は矛盾しているともいえよう。
 だが、筆者は、安倍総理が、現行憲法を改正し、日本を軍事的にも戦える国にしたいが、憲法9条を変えるつもりはないと考えている。

 それは、安倍総理は、国民や国会において多くの反対にも関わらず、昨年安保法制を改正し、日本は実質上集団的自衛権を有し、海外派兵ができるようにしたことで、
 実質上憲法9条をすでに変えてしまっている
からである。
 であれば、今さら、反対が強くそして多く、国論を二分しかねず、その論議と改正に多くの時間やエネルギーが必要とされる同9条の改正に踏み込む必要はないのである。
 しかも、安倍総理の自民党総裁としての任期も、党則変更で延期できようが、それにしても、大幅延長をすることは、政治的にもかなり困難であり、今後の衆参選挙の今よりも厳しいと予想される結果を踏まえても、また野党や党内にも強い対応勢力はないにしても、安倍総理の時間的余裕は実はそれほどないのである。

 これらのことを考えていくと、憲法第9条よりもむしろもっと国民や国会での支持を得やすく、ハードルの低いテーマ、例えば環境権の問題や第96条の憲法改正のおける国会の発議などの制度論に関する条文を加えるなり、変更することに着手するのではないかと考える。
 それでもできれば、憲法改正を実現し、その改定と安保法制による集団的自衛権が認められてことを合わせ技として、実質上の憲法第9条の改正をしたことになるといえる。
 また、それにより、戦後70年間行われることのなかった憲法改正を成し遂げ、祖父の岸元総理を超え、自己の願望を実現すると共に、安倍総理の名は歴史に残ることになるのである。

 筆者のこの考えや論法はどうだろうか。
 読者の皆さんはどう思われるだろうか。
 これはあくまでも、筆者の仮説に過ぎないが、その仮説と比較しながら、今後の安倍総理の実際の憲法改正論議の行方をぜひ注目していただきたいところである。



JB  Press 2016.7.19(火)  筆坂 秀世
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47385

土俵はできた
~今こそ真正面から客観的な憲法論議を
中国、韓国、護憲派の懸念はお門違い

 改憲派が衆参で3分の2以上を確保したことに対して、中国や韓国が投票日翌日の11日、一斉に懸念を表明するという予想通りの反応を見せている。

 中国外務省の報道官は、
 「日本が歴史の教訓を汲み取り、アジアと国際社会の安全への懸念を重視することを希望する」
と語り、中国国営新華社通信は
 「平和憲法を初めて改訂するための障害を一掃した。
 戦後70年守られてきた平和憲法がたちまちのうちに無になる可能性がある」
という論評を行っている。

 韓国でも朝鮮日報が「戦争できる日本、改憲ライン確保」と報じ、東亜日報は社説で、
 「改憲は国内問題だとはいえ、帝国主義日本のアジア侵略の歴史と絡み、韓国と中国から警戒を呼ぶ素地がある。
 無理に改憲をすれば、北東アジアに深刻な葛藤を招くということを、安倍政権は胆に銘じるべきだ」
としている。

 中国外務省は、「アジアと国際社会の安全への懸念」と言うのだが、中国と韓国以外にアジアのどの国が「安全への懸念」を表明しているのだろうか。
 それどころか安全保障法制が成立した際には、中国と韓国を除くアジアのすべての国々が歓迎を表明していたものである。

 ましてや新華社通信の論評などは、“語るに落ちる”の典型である。
 中国はこれまでさんざん日本軍国主義などと非難してきた。
 ところが、日本は平和憲法を持っていると言うのである。だとすれば、これまでの一方的な非難はなんだったのか。

 そもそも、序文に「マルクス・レーニン主義や毛沢東思想」など、特定のイデオロギーと歴代共産党指導者の理論を国民に強制するような文言が入っているような憲法しか持たない中国に、他国の憲法を論じる資格はない。

 また東亜日報は、「無理に改憲をすれば、北東アジアに深刻な葛藤を招くということを、安倍政権は胆に銘じるべきだ」と指摘するが、「無理な改憲」とは何か。
 最終的に憲法を改正するか否かは日本国民が国民投票によって決することである。
 「無理な改憲」などあり得ないのである。

■どの政党も改憲論議を拒否すべきではない

 民進党の岡田代表は「安倍政権下では憲法改正論議はやらない」と述べていたが、方針を転換したようだ。
 7月14日の定例記者会見で、
 「憲法改正、あるいは議論そのものを一切しないと言っているわけではない。
 球は首相にある」
と語ったと報じられている。

 「日本国憲法の改正手続に関する法律」(国民投票法)が2007年5月18日に公布されたのに伴い、国会法が改正され、衆参両院に憲法審査会が設置されることになった。
 憲法を改正する際は、改正案をこの審査会で審議することになる。

 ただし改正案を提出するのは、衆議院では100人以上、参議院では50人以上の賛同者がなければならない。
 その上で改正案がまとまれば、衆参両院の本会議で3分の2以上の賛成によって、国会として憲法改正案が発議されることになる。

 憲法96条には、
 「この憲法の改正は、各議院の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。
 この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行われる投票において、その過半数の賛成を必要とする」
と定められている。
 しかし、国民投票法が制定されるまでは、この具体的な手続き法規がないため、憲法改正は現実的な課題とはなってこなかった。

 護憲派の人々は、この96条も含めて護憲の立場のはずである。
 もし96条は例外であると主張するのであれば、改正はできないように、改正しなければならない。そうでなければ首尾一貫した態度とは言えない。

 すでに土俵はできているのである。
 民進党の岡田代表の態度変更は結構なことだと思う。
 改正に反対であろうとなかろうと、土俵にも上がらないというのでは、野党は逃げているという非難を免れないだろう。

 問題は、共産党である。
 防衛予算を「人を殺すための予算」と発言し、政策委員長を辞職せざるを得なくなった藤野保史衆議院議員などを見ていると、まともに憲法を研究したことがあるとは到底思えない。
 共産党が憲法制定時にどういう態度をとったのか。
 その理由は、何だったのか。
 共産党の安全保障論は、どう変遷してきたのか。
 おそらくほとんどの共産党国会議員がこういうことを学んだことがないと思う。
 いささかでもこういう知識があれば、藤野発言などあり得なかったはずである。

 改憲派の主張や議論を頭から聞く耳を持たないという態度をとることは、単なる頑迷に過ぎず、自らの貧困な知識をさらけだすだけだということを知るべきだ。
 自らの主張に自信があれば、何も恐れず堂々と議論できるはずである。

■護憲派の批判は中国、韓国と同じレベル

 護憲派の議論の特徴は、ともかく「改憲」をおどろおどろしく描くということにある。
 安保法制の審議の際にも、法案を「戦争法」と呼び、「徴兵制の復活」などと批判してきた。
 安倍首相が、「徴兵制の復活などあり得ない」と明言しても、そんなことはお構いなしであった。
 中国や韓国の「軍国主義復活」という批判と同じレベルのものである。
 要するに、真剣な吟味を行ったうえでの批判とはまったく違う、為にする議論でしかない。

 徴兵制が、そう簡単にできるものではないことは明らかだ。
 それとも護憲派は、徴兵制など簡単に実現できると思っているのだろうか。

 軍国主義批判も同様だ。
 普通に考えれば、軍国主義とは、軍が国の実権を握り、政治体制、財政、経済、教育、社会など、すべてを軍事最優先にする体制である。
 しかもそこには、それを正当化する偏狭なイデオロギーも必要となろう。
 こんな体制がいまの日本で本当に実現する危険性があると思っているのだろうか。

 言い方を変えれば、そんな体制を日本国民が許すとでも思っているのであろうか。
 そうだとすれば、護憲派は最も国民を信頼していない勢力だということになる。

■“特殊”な主張の押し付けこそ立憲主義に反している

 いまの憲法が、占領軍であったアメリカによって作られたということは常識である。
 現憲法は1946年(昭和21年)11月3日に公布され、翌年5月3日に施行された。
 いうまでもなく、当時、日本はGHQ(連合国総司令部)の占領下に置かれていた。
 1952年(昭和27年)にサンフランシスコ講和条約が発効するまで、日本に国家主権も国民主権もなかった。

 GHQは日本政府への指令や命令によって、行政機構を動かす間接統治方式をとっていた。
 日本は政治、経済、財政、出版、言論などのすべてがGHQの支配下に置かれていた。
 GHQの意向に反することは、一切行えなかった時代である。

 そんな時代、すなわち国家主権も国民主権もなかった時代に、現憲法は制定されたのである。
 国民投票も行われなかった。
 この成立過程を何の問題もなかったなどと、どうして言えるのか。

 憲法9条にしてもそうである。
 アメリカは、平和を願ってこの条項を入れたわけではない。
 日本が再び軍部を保持しアメリカに逆らうことがないように、牙を抜いただけのことである。
 だからこそ1949年の中国革命、50年の朝鮮戦争などによって東アジア情勢が激変すると、日本に再軍備をもとめ、自衛隊の前身である警察予備隊を作らせたのである。

 それはまた、米軍の半永久的な日本駐留を不可避にするものでもあった。
 「米軍基地をなくせ」と護憲派は主張する。
 だったら同時に叫ばなければならないのは、「憲法9条改正」でなければならない。

 「丸腰(非武装)の日本でよい」などと主張することは、非現実的で、無責任なだけではない。
 実は、これこそが立憲主義に反しているのだ。
 日本には、非武装では日本は守れないと考えている人は数多くいる。
 だからこそ自衛隊を容認している。
 その状況で、“丸腰の日本でよい”などという、国際情勢にも合わない特殊な主張を他者に押し付けるのは、多様な生き方を容認する立憲主義の立場に反していると言わざるをえない。

 「戦争法」とか「軍国主義復活」「徴兵制」など乱暴なレッテル貼りではなく、正しい情報に基づき客観的に憲法を論じることを護憲派には強く求めたい。



産経新聞 7月20日(水)7時55分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160720-00000063-san-pol

「9条抜き」民共支持層6割賛成 合同世論調査


●主な政党支持別の改憲容認割合(9条維持含む)(写真:産経新聞)

 産経新聞社とFNNによる合同世論調査では、
★.民進党や共産党の支持層で憲法改正に「賛成」と答えた人は2割台
 にとどまった。
 ただ、
★.9条を残す条件での憲法改正に「賛成」と答えた人も含めると、
 民進、共産両党とも約6割が改憲に容認姿勢
を示した。

★.憲法改正に「反対」と答えた民進支持層のうち、
 9条を残す条件であれば「賛成」と答えた人は
「58・1%」で、
★.共産支持層では「54・3%」。
 前提条件を付けずに改憲に「賛成」と答えた人も含めた割合は、民進支持層で59・7%、共産支持層では58・8%に上った。

 また、憲法改正に向けた議論が活発化することに「期待する」と答えた民進支持層は55・2%で、「期待しない」の38・8%を引き離した。
 共産支持層でも「期待する」と「期待しない」がいずれも47・1%と拮抗(きっこう)した。

 一方、公明党の支持層は前提条件なしの改憲賛成が46・3%にとどまり、自民党(62・9%)、おおさか維新の会(55・1%)などの「改憲勢力」支持層との間で異なる傾向となった。
 だが、9条抜きの改憲賛成も含めれば、公明支持層に占める改憲容認派は68・5%に上った。


ニュースソクラ 7月20日(水)12時20分配信 土谷 英夫(ジャーナリスト、元日経新聞論説副主幹)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160720-00010001-socra-pol

改憲論議、参議院改革から始まるか

■イタリアは上院改革で10月に国民投票

 「参議院改革」が、憲法改正の突破口になるかもしれない。
 与党圧勝が見えた参院選挙戦の終盤、BS番組に出演した高村正彦自民党副総裁が、合区を解消するための憲法改正にふれ「各党の合意が得られれば入り口になり得る」と語っている。

 鳥取と島根、徳島と高知の合区は、参院選挙区の1票の格差を最高裁に「違憲状態」とされた国会が、今回選挙から導入した苦肉の策だ。
 だが、評判が悪くて都道府県代表にせよ、という声が政界に根強い。

 また、2つの合区を経ても1票の最大格差は3倍強、
 最高裁の合憲基準の2倍未満をクリアできず、今回も弁護士グループが選挙無効訴訟を起こした。
 もし、参院を都道府県代表にするのなら
 「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する」
という憲法43条の書き換えが必要になる。

 参院が何を代表する院なのか、は古くて新しい問題だ。
 現行憲法が審議された70年前の帝国議会でも、憲法学者の佐々木惣一貴族院議員が
 「全国民を代表するという同じ任務を持つものが2つ必要か。
 参院には衆院と違う職責がなければならぬ」
と指摘をしていた。

 参院改革を論じるなら、選挙制度にとどまらず、参院の職責・権限の見直しも不可避だ。
 「第2院」の参院だが、権限はほぼ衆院並み。
 多数派が衆院と同じなら「衆院のコピー」になり、多数派が異なる“ねじれ”だと「政局の府」と化し、国政が機能不全になる。

 主要先進国で議院内閣制の国は、両院の権限や議員の選び方に差をつけている。
 英国の上院(貴族院)は任命制の一代貴族と世襲貴族から成り、選挙で選ばれる下院の優越が明白だ。
 ドイツの上院にあたる連邦参議院は各州政府の代表から成り、権限は限られる。
 例外が日本よりも両院が対等のイタリアで、上院にも解散があり、政権は両院の信任を必要とする。
 G7(主要7カ国)で突出して首脳の交代が多いのが「強すぎる第2院」をもつ日伊両国なのは、偶然ではない。

★.そのイタリアで、「強すぎる上院」の改革と県(州と市町村の中間)の廃止がテーマの憲法改正の国民投票が、10月に行われる運びとなっている。

 上院議員の数を3分の1以下に減らし、公選から州議会議員や市町村長の代表にし、議決対象などの権限も大幅に削るという内容で、レンツィ首相は政治生命を賭ける決意を表明している。

 英国のBREXIT国民投票の影響や、イタリアの金融危機の兆候など、予断を許さぬ要因もあるが、仮にイタリアの上院改革が実現すれば、日本の参院改革を入り口にした改憲論議には、追い風になるだろう。





【自ら孤立化を選ぶ中国の思惑】




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