2016年7月11日月曜日

参議院選挙(2):「安全と安定」を選択、動揺する世界にあって日本はそれとは無縁の孤立した島

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  『憲法改正はあって当たり前』
というのが、今の日本の風潮のようである。
 中国がここまで応援してくれれば、
 流れにまかせておいても時が自然にその方向へ連れていってくれる
というような判断が政府側にあったように思える。
 よって、自民党は憲法改正を選挙の争点にしなかった。
 すべては中国の出方で決まる
と読んだのだろう。
 野党はその流れに対抗しようとした。
 つまり今回の選挙は
 『中国対野党』
というなんともヘンテコリンな構図になる。
 そして結果、野党は中国に負けて、漁夫の利を得たのが自民党ということになる。
 裏読みすればそうなるだろう。

ついでに述べておくと、憲法改正といっても要点は2つしかない。
 憲法9条と96条で、96条というのは手続きの項目である。
 この手続とは、
 改正には衆参各2/3の賛成で発議し、
 国民投票にかけ、その過半によって成立する
というものである。
 過去にこの発議をしたものはいない。
 その必要がなかったからである。
 その理由は
★.一つには日本への侵略という外国の脅威がなかったこと、
★.ニつにはあったとしてもアメリカ軍がそれを引き受けてくれる
という了解があったからである。
 そこで現在の状況がどうなっているかとをみると、
 一つ目に対しては現在、中国の脅威というものが肌に染み込むほどに迫ってきている。
 二つ目に対しては、オバマの裏切りにみられるようにオバマ政権の姿勢がアイマイであることや、
 次期大統領候補のトランプにみられるように、
 自分の国は自分で守れといった風潮にアメリカ自体が向かっている
ということである。
 今日本は環境的に憲法改正の方向にある。
 自衛隊の存在自体が過去の「金食い虫」的発想から抜け出ている。
 これは2011年の東北大震災における自衛隊の活躍が日本を救った、ということが前提にある。
 この劇的な事件以降、自衛隊は歴史的に大きく転換して、日本で「市民権」を得るようになった。
 先の鬼怒川大洪水のときの自衛隊はヘリ救助を行い、なんとペットまで救出するという離れ業をやってのけた。
 自衛隊の信頼は現時点では非常に高い
 それゆえに、先の参議員選挙では、「防衛費は人殺し費用」と失言した共産党幹部が陳謝する騒ぎにまで発展してしまった。
 憲法改正の周辺の堀は徐々に埋められている、というのが、現時の状況だろう。
 憲法改正はなにも意図的にやらなくとも国民側から湧き上がってくる。
その強い助っ人に中国という大国が控えているのだから、座っているだけで事がどんどんんと進行していくはずである。

 ちなみに憲法9条改正は条文の後ろに第三項として下記の文言を加えるだけになるだろう。
③日本国民はその生命自由及び安全を守る基本的権利として自衛権を有する。
 つまり、現状を追認する項目を加えるだけになるだろう。


ウォールストリートジャーナル 2016 年 7 月 11 日 10:23 JST 更新 By PETER LANDERS
http://jp.wsj.com/articles/SB11799496104607273993204582181613653091428

日本の参院選、有権者は「安全と安定」を選択

 不安定な政治的情熱によって動揺する世界にあって、
 日本はそれとは無縁の孤立した島だ。

 10日投開票された参院選で、当初の開票結果では、安倍晋三首相率いる連立与党が過半数議席を伸ばし、憲法改正発議に必要とされる議席も確保し、既に政権を担当して3年半、安倍氏は少なくとも2018年まで在任する公算が大きいようだ。

 日本の人口は減少し、成長は横ばいで、低賃金の非正規労働者がかつてないほど増えている。
 現状維持に対する「反発」の条件は存在している。
 それは先月、欧州連合(EU)から離脱を決めた英国、あるいはドナルド・トランプやバーニー・サンダースといった非伝統的な政治家に目を向ける米国と似た反発条件だ。

 なぜ日本ではそうした反発が起こらないのだろうか? 
 一つ挙げられるのは、他国で不満をかき立てたスタグネーション(景気停滞)はここ日本では全く目新しいことではないことだ。
 この国は、四半世紀以上前のような
★.経済的けん引役であることをやめてしまい、
 金利とインフレは1990年代末以降ゼロ近辺になっている。

 安倍氏の包括的経済政策、つまり「アベノミクス」は、抜本的な金融緩和や、企業の社外取締役増加などビジネス慣行変更などを盛り込んでいるが、日本を急速な経済成長に戻すことはなかった。
 しかしそれは株式市場と企業利益を押し上げた。
 最近逆転しているとはいえ円安のおかげだった。
 その結果、安倍氏はバラ色の数字を、少ないながら吹聴できた。
 不運な指導者が続いた後、日本の多くの有権者は安倍氏のつつましい実績を前向きに評価しようとしたのだ。

★.2つの数字が、日本がなぜ異質であるかを説明するカギになる。
 1.3%と350万ドル(約3億5000万円)だ。

★.最初の「1.3%」は、日本の総人口に占める非日本人の割合だ。
 それは深刻な移民問題を醸成するクリティカル・マス(臨界質量)にはほど遠い。
 つまり、メキシコとの間に壁を構築するというトランプ氏の提案につながった反移民感情、ドイツの州選挙で反移民政党が過去最高の投票率を記録するに至った雰囲気、そしてブレクジット(英国のEU離脱)運動を勝利に導いた状況などとは無縁なのだ。

 東京の民間シンクタンクを主宰する船橋洋一氏は
 「日本の最大の弱点、つまり閉鎖された労働市場は、
 実際には逆説的に多大な恩恵を日本にもたらした」
と述べた。
 「彼らは移民に責任を押しつけられない」
のだ。

★.もう一つの数字、350万ドルについて。
 これは時価総額で日本最大の企業であるトヨタ自動車の豊田章男社長の直近の年俸だ。
 それはトヨタが200億ドルを上回る純利益を計上し、自動車販売台数が世界一になった年の年俸だ。
 ちなみに、米ゼネラル・モーターズ(GM)のメアリー・バーラ最高経営責任者(CEO)の2015年の総報酬は2860万ドルで、前年比77%増だった。

 野党陣営の候補者たちは、アベノミクスは金持ちを優遇していると非難した。
 だが、反エリート主義的な攻撃目標自体が欠如しており、それが、野党陣営に政治的な得点を稼がせるのを難しくしたのだ。

 批判者を封じ込めるため、安倍氏はほとんどすべての経済公約について、介護施設の数や高齢者介護者数の引き上げといった提案に終始した。
 野党民進党の牧山弘恵参院議員は安倍氏のそうした出方について、民進党の政策を模倣していると批判した。

 選挙後のアベノミクスは、こうした家族問題や財源問題に集中する公算が大きい。
 一方で、安倍氏は外国投資家に関心のあるテーマ、例えば解雇を容易にする労働市場改革や、非熟練労働者(訳注=外国人労働者)の大量受け入れ問題については慎重に動くだろう。

 10日の選挙結果が現状維持の追認に該当するのであれば、両陣営の選挙レトリックも現状維持の追認だった。

 長野県の古い城下町・松本の駅前で開かれた投票数日前の野党集会で、21歳の学生活動家ホンマ・ノブカズさんは、安倍氏が日本の平和憲法を権威主義的な憲法に変えようとしていると非難した。
 ホンマさんは聴衆(主として年配の人々だった)に対し、彼の目的は第2次世界大戦終了以降に永続して来たものを大切に守ることだと述べた。
 彼は「わたしがここに立っているのは、それを守りたいからだ」と語った。

 最後のスピーカーが演説を終了して数分後、野党の支持者たちは、次に与党陣営による集会が予定されているため礼儀正しくその場を立ち去った。
 すると安倍氏を乗せた車がやって来た。
 同氏は演説のためバンの上に登った。

 安倍氏は、憲法改正について何も言わなかった。
 安倍氏は、日本の確立された秩序に対する本当の脅威は、野党陣営から来ていると述べた。
 そして与党に投票することは、60年間続いている日米同盟と、この国の自衛隊の力を堅持する投票を意味すると述べた。
 また安倍氏は、自衛隊は自然災害後に人々を支援することが主要な任務だと語った。

 10日夜、選挙の勝利を祝いながらも、安倍氏は憲法改正問題を討議するのは国会だと述べるにとどまり、これを質問しようとするインタビュアーにおおむね拒絶的な発言に終始した。

 安倍氏が憲法改正を議論したくないのは、この種の話をしたら同氏を追認したばかりの有権者がろうばいする恐れがあるからだ。
 権力の座にとどまるため、安倍氏は日本を再び偉大にする必要はない。
 安定を求める人々の希望を満たすのに十分な状態に保つだけでいいのだ。

(筆者のピーター・ランダースはWSJ東京支局長)


Yahoo ニュース 2016年7月11日 18時30分配信 田中良紹  | ジャーナリスト
http://bylines.news.yahoo.co.jp/tanakayoshitsugu/20160711-00059870/

敵に塩を送って自らの首を絞めた愚かな野党政治家

 今朝の新聞各紙には軒並み「3分の2」の見出しが躍った。
 参議院選挙の結果、自民、公明、おおさか維新、日本のこころの4政党と無所属の議員を合わせ、憲法改正に賛成の議員が発議に必要な3分の2を超えたというのである。

 しかし昨日投票した有権者は憲法改正の発議を求めて投票したわけではないだろう。
 選挙戦で憲法改正の発議を巡る議論が戦わされたわけでもない。
 それが選挙結果を伝える朝刊の見出しになったのは、野党が「3分の2を阻止する」と訴えてきたからである。

 安倍自民党も公明党も「憲法改正」を選挙争点にすることを避けた。
 そして「アベノミクス」のエンジンを「さらに吹かせる」とひたすら訴えた。
 その「アベノミクス」は国際社会から既に「失敗」の烙印を押されている。
 ところが野党は「アベノミクス」のポンコツぶりを国民に意識させるより、それを脇に置いて「3分の2阻止」を訴え、それに失敗したのである。

 さぞかし安倍総理はにんまりしているに違いない。
 そもそも安倍総理は憲法改正を難しいと考えたから、衆参両院議員の3分の2の賛成が必要な発議の条件を緩和しようとしたり、集団的自衛権の行使容認を政府の解釈を変えることで実現した。

 そのやり方が立憲主義に反すると昨年は多くの国民が怒りの声を上げ、そのやり方の是非を審判するのが今回の参議院選挙のはずであった。
 ところが野党は、前回の衆議院選挙からここまでの安倍政治の審判という参議院選挙の位置づけを無視し、「これから憲法が改正されるぞー」と国民の目を将来に向け、国民には何の実感も経験もない「憲法改正の発議」を争点化しようとした。

 国民の関心は将来の目に見えない世界ではない。
 目の前には上がらない賃金や子育ての厳しさ、将来に目を転ずれば年金、医療、介護、老後破産などの現実不安が連なって見える。
 そうした時に「憲法改正の不安」という抽象的なことを言われても国民にはピンとこないのが正直なところではなかったか。

 安倍総理は憲法改正をしばしば口にはするが、私の見るところ野党を説得する自信も信念もないから堂々とした政治の王道を放棄して解釈改憲に打って出た。
 その解釈改憲はアメリカの要求通りでアメリカは十分に満足である。
 それ以上の憲法改正には日本がアメリカから自立する道を拓く可能性もあるので望むところではない。

 公明党にとっても解釈改憲がせいぜいの許容範囲で、それ以上の協力には慎重な姿勢を見せている。
 おおさか維新にしても安倍自民党の改憲論と同じではない。
 そして憲法改正の必要を感じている議員は民進党の中にこそ多くいるはずである。
 そうした内実を考えると「改憲勢力が3分の2を超えた」という見出しに何も実質的な意味はない。

 ただ意味があるとすれば安倍総理が「民意は憲法改正を求めている」と都合のよい解釈をして、国民に憲法改正の発議を意識させ、それを安倍政治の失点隠しに利用する恐れが出てきたことである。

 「アベノミクス」という車がポンコツであることは世界が認めている。
 円高基調が続く限りこれからも日本経済の舵取りは容易でない。
 また秋の臨時国会でTPPの審議が再開されれば、これも与党には重い足かせとなる。
 この選挙で東北の1人区が野党の優勢を許したところにそれが表れている。

 「アベノミクスはまだ道半ば」と言いながら3年半。
 これから先にどれほど有効な経済政策が打てるのか、今のところまだ何も見えてはいない。
 そうした時に経済から目をそらさせるために用意されているのがプーチン大統領との日ロ外交だが、それ以外に憲法審査会での議論に国民の関心を集めることができるようになった。

 安倍政権はおそらく9条など議論が対立する条文の改正には踏み込まないだろう。
 しかし選挙とは異なる国民投票という運動に国民を巻き込み、それを経験させることで、形だけの憲法改正を実現させれば安倍総理は歴史に名を残すことができるかもしれない。

 安倍総理の自民党総裁任期は2018年9月。
 その年の通常国会会期末に衆議院解散を設定し、総選挙と国民投票を連動させれば、憲法改正に手を付けた政府与党が勝利する可能性は高い。
 そこから逆算して憲法審査会の議論を終え、衆参両院が3分の2以上の賛成をもって発議するタイムスケジュールが作られていくと思う。

 そして総選挙の勝利をもって安倍総理は自民党総裁任期延長を実現し、2020年東京オリンピックを総理として迎え、歴代総理の在任期間1位の座を狙うことになる。
 おそらく今朝の朝刊に躍った「3分の2」の見出しを眺めながら安倍総理はそんなことを考えたのではないかと推測する。

 私の見るところ安倍総理に塩を送ったのは野党である。
 本来、憲法改正は与党と野党が協力しなければ実現してはならないという意味で3分の2という高いハードルが設定された。
 したがって野党第一党が与党と協力して改正を行うのが望ましい。
 それが今回のように「3分の2阻止」を掲げた野党第一党が選挙に敗れて与党が3分の2の議席を支配できるようになったのだ。

 これから野党第一党は憲法改正にどのような関わり方をするのだろうか。
 実は2000年1月から2003年末まで衆参両院の憲法調査会は「21世紀の日本のあるべき姿」と題して参考人質疑を行った。
 将来の憲法改正に備え有識者と国会議員が400時間に及ぶ議論を行ったのである。

 その時の審議内容をつぶさに見た私は有識者の証言を『憲法調査会証言集「国のゆくえ」』(現代書館)として出版した。
 当時の野党第一党民主党は憲法改正を巡って党内が分かれていたが、自由党との合流によって「論憲」から「創憲」へと踏み込む姿勢を見せ、ゆくゆくは自民党と協力をして憲法改正を行う可能性を感じさせた。

 それから10年余り、安倍政権による解釈改憲の強行で国内には対立と分断がもたらされ、それを審判するはずの選挙が「改憲勢力3分の2超える」と報道される結果となった。
 昨年の国民の怒りはどこに向かうことになるのだろうか。

 欧米の政治に地殻変動が起き「大衆の反乱」が相次いでいるときに、日本で安倍自民党の「一強」を支えているのは、国民大衆というより選挙協力に磨きをかけた公明党支持者の存在である。
 そしてそれ以上に大きいのが選挙協力をやり切れずに敵に塩を送る野党指導者の勘違いではないかと思う。



Record china 配信日時:2016年7月12日(火) 2時0分
http://www.recordchina.co.jp/a144549.html

安倍首相、参院選圧勝で「改憲議論に期待」、
中国は懸念示す
=米国ネット「中国の軍事的に強硬な姿勢が安倍首相を改憲に向かわせた」

 2016年7月11日、ロイター通信によると、日本が参院選で与党が圧勝したことにより、改憲に向けて議論が進むことになったことについて、中国・新華社が改憲が地域の安定に危険をもたらすと警告する論説記事を掲載した。

 日本で10日に行われた参院選の結果、安倍首相が目指す憲法改正を支持する勢力が、国会での発議に必要な3分の2以上の議席を確保した。
 安倍首相は11日の記者会見で、改憲を実現することは総裁の責務であるが簡単なことではないと述べ、
 「国会で議論を進めていくことが期待される」
との考えを示した。

 新華社は11日の論説記事で、
 「日本の平和憲法が深刻な状況にある中での安倍政権の勢力拡大は、日本と日本の周辺国の両方にとって警戒すべきことだ」
と指摘し、
 「日本の軍事化はどちら側にも恩恵をもたらさない」
と述べた。
 また、中国外交部の陸慷(ルー・カン)報道官は11日の記者会見で、
 「日本に対しては繰り返し、歴史から学んでアジアの周辺国や国際社会の懸念に注意を払うよう促してきた」
と述べ、中国をはじめとするアジア各国が日本の「政治的方向」に懸念を抱くのは理解できることだとの考えを述べた。

この報道に、米国のネットユーザーがコメントを寄せている。

「またしても、中国のナンセンスだ。
 周辺国の平和を脅かすことをしてきている唯一の国は中国だ」 
「ははは。中国は、日本のことを主戦論者だと非難できるほど自分たちが道徳的に優位な立場にあると考えているのか?」 
「中国がアジアで軍事的に強硬な姿勢を見せていることが、
安倍首相を改憲に向かわせた」 
「他国が既に持っている、攻撃能力のある軍隊を日本が持つようになることは警戒すべきことだが、中国が東シナ海や南シナ海で領有権を主張していることは警戒すべきことではないのか?」 
「日本は必要なら武力を使って、再び大東亜共栄圏を打ち立てるべきだ」



The Huffington Post  |  2016年07月11日 19時58分 JST 泉谷由梨子
http://www.huffingtonpost.jp/2016/07/11/kaiken_n_10922892.html

「改憲勢力が3分の2」って本当? 
民進党は護憲を否定、
公明は「9条変えない」【参院選】

  参議院議員選挙から一夜開けた7月11日、新聞の各紙は「改憲勢力が3分の2議席を獲得し、国会で改憲を発議する要件が整った」などと伝えているが、良く比較してみると微妙に表現が違っている。

 さらに、選挙の大勢が判明した10日夜、テレビ番組に出演した民進党の枝野幸男幹事長は「護憲ではない」、公明の山口那津男代表は「9条は変えない」と発言した。
 おや?民進は「3分の2をとらせない」と言っていたはず、公明は「改憲4党」の一角だったはずでは...?
 「3分の2」とは一体何だったのか?
 もう一度整理してみたい。

■3分の2に「迫る」朝日、「超えた」産経。
 この違いはなぜ?

 参院選挙の結果、「改憲前向き4党」と言われた政党が獲得した議席は合計「77」(自民56議席、公明14議席、おおさか維新7議席、日本のこころ0議席)だった。

 その結果を受けて、7月11日の朝日新聞デジタルは
 「自公と維新の改憲3党77議席 参院「3分の2」に迫る」
と報じている。
 これに対して、産経新聞などは「改憲勢力3分の2超」としている。
 結局、超えたのか、それとも超えてないのか?なぜ表現が違うのだろうか?
 実は、朝日新聞がこの原稿で採用していた改憲ラインは「78議席」、
 産経新聞は「74議席」だった。

★.朝日新聞が「78議席」としていた根拠は以下の通りだ。
 参院(定数242)では、非改選の121議席のうち、与党とおおさか維新、日本のこころの「改憲4党」で84議席を占めており、今回の参院選で計78議席以上を得れば3分の2(162議席)を確保し、発議が可能となる。
 (改憲、自民じわり言及 合区解消など「入り口に」 参院選:朝日新聞デジタルより 2016年7月7日05時00分)

 しかし、その後の各社の取材などで非改選の無所属参議院議員のうち、松沢成文、井上義行、渡辺美知太郎の3氏、日本を元気にする会代表のアントニオ猪木氏の合計4人が憲法改正に前向きであることがわかった。

★.産経ニュースはこの4人を足して、7月5日の時点で先行して、改憲ラインが「78から74議席に減った」と報じていた。

 今回の参院選で改憲勢力が
 憲法改正の国会発議に必要な3分の2(非改選と合わせて162議席)を確保するために必要なのは、78議席から74議席に減る。
 
(【参院選】改憲勢力「3分の2」の攻防ライン「78→74」に 無所属など4氏が改正賛成で - 産経ニュースより 2016.7.5 19:42)
朝日新聞は7月11日の朝刊紙面(15版)では、記事中に「4党が持つ84議席に加え、改憲に積極的な姿勢を見せる無所属議員が少なくとも4人いる」との情報を加えて、微修正している。

 超えたのか、超えていないのか。
 この違いは、非改選の無所属参院議員ら4人の動向をどう見るかで変わってくる。

 しかし、安倍首相は「すでに超えた」と認識しており、7月10日夜、NHKの番組に出演して「いよいよ憲法審査会に議論の場が移る」と改憲に向けた作業を進めると発言している。

■「護憲じゃない」民進と「9条変えない」公明

 一方、政党側はどうか。

 民進党は「まず、3分の2をとらせない」を今回の参院選のスローガンにしていた。
 しかし実は、「改憲4党」に入っていない民進党の中にも、改憲に前向きな議員はいる。
 この点について、7月10日夜の日本テレビ系の選挙特番「ZERO×選挙2016」で問われた
 枝野幸男幹事長は
 「まず護憲ではない。
 私たちは(憲法が)良く変わる、なおかつ基本原則を前提にして微調整・微修正することはは否定していない」
と話した。

 また、当選した蓮舫氏も、7月10日夜のハフポスト日本版の取材に対して
 「我々も憲法を『一文字も変えてはいけない』とは言っていません」
とした。

 逆に、自民党との連立政権を組む公明党は「改憲4党」の一角とみられてきた。
 しかし、山口那津男代表は、7月10日のNHKの番組で、憲法9条改正については
 「当面、必要ないと思います。
 憲法解釈の限界をきっちり決めた平和安全法制の有効性を確かめるべきで、9条の改正は必要ないと思っています」
と話した。

 こうした発言からわかるのは、「3分の2」という分かりやすい基準が使われているが、実は、公明と民進が、わかりやすく改憲に前向き、後ろ向きとは断言できないということだ。
 今後すんなり改憲発議に至るかどうかは、不透明な情勢だ。

■そもそもなぜ「3分の2」が大事なのか

 総務省のサイトなどによると、条文ごとの変更や新設を提案する「憲法改正原案」が国会に提出されれば、その原案について衆議院・参議院の憲法審査会での議論が始まる。

 その憲法審査会で、過半数の賛成を得て、衆参本会議でそれぞれ総議員の3分の2以上の賛成があれば、その「憲法改正原案」が議決される。
 これを「発議」と呼び、この賛成者を得るために「3分の2」が非常に重要な要素になっている

 発議された「憲法改正案」は、60~180日の周知・広報期間を経て、国民投票にかけられる。

 なお、6月22日現在、衆議院(475議席、欠員1)は自民・公明の与党で3分の2を超えている(自民290議席、公明35議席)。
 そのため、今回の参院選で焦点となっていた。

ニュースフィア 2016年7月15日  山川真智子

改憲は妥当も今は好機ではない? 
優先すべき政治課題、求められる国民の覚悟…海外の視点

 10日に投開票された参院選で与党が大きく議席を伸ばし、改憲を支持する他の党の議席も合わせると、改憲勢力が3分の2を占める結果となった。
 すでに衆院では与党が3分の2の議席を確保しているため、改憲発議が事実上可能な状態になったが、海外メディアは改憲への道のりは長く、ハードルも高いと見ており、拙速を避けるべきとアドバイスしている。

◆9条はすでに時代に合わない

 改憲に関し、海外メディアがもっとも注目するのは戦力の保持、交戦権を認めない憲法9条だ。
 APは、テロリズム、北朝鮮の核兵器、中国の台頭などへの不安から、9条改正を支持する日本人もいる一方、この条文を戦後民主主義のシンボルとみなし、不戦の誓いにプライドを持つ人々もいると述べる。

 フィナンシャル・タイムズ紙(FT)も、9条改正については、アメリカとともに危険な冒険に乗り出すことにもなりかねないことから強い反対があるとしながらも、現実的には、日本の防衛政策はすでに憲法が許す範囲を超えていると指摘する。
 軍隊を持たないという規定にもかかわらず自衛隊は存在し、集団的自衛権の行使も可能となっていることから、憲法は時代遅れだと述べており、地域情勢の変化も含め新たなる現実に対処するため、憲法を変化に適応できるものにしたいという政府の考えは正当だとしている。

◆改憲は事実上可能。しかし、好機ではない

 しかし、「参院で3分の2を確保したとはいえ、改憲はありそうにない」と国際基督教大学の国際政治の専門家、スティーブン・ナギ教授は述べる。
 同氏は参院選での自民党の成功は、改憲への承認ではなく、安定を有権者が選択したこと、また野党に選択肢がなかったことを反映したもので、多くの有権者が出口調査で「3分の2」の重要性を認識していなかったと答えたことも、改憲問題に関心が薄かったことを示していると説明する。
 結局政治家にとっては、9条改正に貴重な政治的資源を費やすより、経済成長と大胆な構造改革の遂行が優先事項だと同氏は述べている。(AP)。

 FTも、安倍首相は数十年に渡って繰り返すデフレから日本を救うことに注力するほうが正しいと述べ、物議を醸す改憲には、好機を待つべきだとする。
 さらに、改憲には衆参両院の支持に加え、国民投票も必要で、達成には政府の負担は大きいと指摘。
 また、パートナーである公明党が改憲に関しては首相と考えを異にしているため、急げば政府の不安定化にも繋がると述べる。
 対外的にも、扱いを間違えれば地域の緊張をあおることにもなりかねず、特に中国を刺激する恐れがあるとしている。

 APは、9条以外にも、与党は2012年の改正草案において、天皇を中心とした戦前の伝統と家族の価値観を復活させるとし、憲法の「基本的人権」と国益とのバランスを取るとしており、この種の根本的な改正は、国民投票で承認を得ることは言うまでもなく、議会を通過させることも困難だろうと述べている。

 しかしながら、巷では首相は3期目を狙っているという噂もあり(党則では2期まで)、2021年秋まで任期が伸びれば、改憲を成し遂げるかもしれないという政治アナリストの見方をAPが紹介している。

◆国民主権をあきらめるな、国民は結果に責任を

 FTに寄稿した米外交問題評議会のシニアフェローで日本研究者のシェイラ・スミス氏も、拙速な憲法改正に警鐘を鳴らす。
 同氏は、明治憲法は日本の近代化のため国に権限を持たせ、国の目的に仕えるため、天皇制によって正当化されたものであったと指摘。
 これに対し現在の憲法は、戦後連合軍によって作られたものとはいえ、個人の自由や選択を守り、国民主権を支えることによって、戦前の国家の力を相殺したものだと述べ、その役割を評価している。

 同氏は、改憲が国家と国民の関係をもう一度修正するものになるのか、単に時代のニーズに合わせるために国のリーダーが言い回しを下手にいじくりまわして微調整に終わるのか、今の段階では何ともいえないと述べつつも、改憲の機会を作ってしまった有権者自身が、民主主義への移行を支えた現行憲法を変えることへの態度を決めかねているとし、懸念を示している。

 最終的には国民投票で改憲の有無は決まるため、主権者であるなら、すべての国民は結果に責任を持つべきだと同氏は主張する。
 そして主権者の関与が薄く議論の深まらない改憲のための改憲は、内外を問わず日本の民主主義における信用を弱めるだけだと結論づけている(FT)。


ビデオニュース・ドットコム 最終更新:7月16日(土)21時51分
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160716-00010000-videonewsv-pol

参院選でわれわれが選んだもの
/小林良彰氏(慶応義塾大学法学部教授)

 この選挙で日本の有権者が選んだものは、ただの「現状維持」だったのか。

 参議院選挙は与党勝利で幕を閉じた。
 自民党は6議席を上積みし、追加公認などを加えると参院で121人の単独過半数を得ることとなった。
 自民党が参議院で単独過半数を得るのは、消費税導入直後の1989年に宇野政権下の参院選で過半数割れして以来、27年ぶりのこととなる。
 公明党も5議席上乗せし、おおさか維新の会などのいわゆる改憲勢力としては戦後初めて、衆参両院で憲法改正の発議に必要な全議席の3分の2を超える結果となった。

 一方の野党陣営は、一人区での統一候補擁立が功を奏し、全体としては善戦したが、最大野党の民進党が前回選挙から14議席減らして、更に勢力を縮小させたことで、与野党の力の差は更に拡がる結果となった。

 与党、とりわけ自民党の勝因について、2000人を超える有権者を独自に世論調査した政治学者の小林良彰・慶應義塾大学教授によると、圧倒的に多くの有権者が景気対策や年金、社会保障問題などの経済問題を優先課題にあげていたという。

 野党が与党の攻撃材料として強く前面に押し出してきた安保法制や憲法改正の問題は、関心がないわけではないが、日々の生活の苦しさや将来不安の方が有権者にとっては遥かに優先課題だったことがうかがえる。

 その点、経済政策については、自民党は野党の訴える政策を巧みに取り入れ、経済政策で差別化を図ろうとする野党の戦略を無力化することに成功した。
 結果的に有権者からは、優先課題の経済政策で自民党と野党の政策の区別がつきにくくなり、「ならばよりリスクの小さい与党に」という結果になったと見られると小林氏は言う。

 自民党がメディア報道にもあれこれ注文を付けたり、選挙期間中に党首討論や記者会見を避けたことも、争点隠しの成功に貢献したとみられる。

 しかし、中身のある政策論議まで行き着かなかった最大の責任は野党、とりわけ民進党にあると小林氏は指摘する。
 各党ともあれこれ公約や政策を打ち出してはいるが、有権者の関心とはずれていた。
 また、選挙公約にいい言葉が並んでいても、財源の裏付けがないものが多いなど、有権者が現実に期待できる政策を提案できていた政党は皆無だった。
 それでは「アベノミクス」という強力なキーワードに対抗することはできない。

 民進党の岡田代表は記者会見で、今回、議席は減らしたものの、3年前の参院選よりも民進党に対する支持が回復してきたとして、これを党勢回復のきっかけにしたいと、やや楽観的な抱負を語っていた。
 しかし、民進党の比例区の当選者はほぼ労働組合関係者に独占されているほか、比例区の得票数で自民党が大幅に得票を伸ばす一方で、民進党はその半分程度にとどまるなど、依然として民進党に対する不信感が根強いことも浮き彫りになった。

 小林氏は民主党の政策を見ても、自民党と大きな差異が見つけられないところに敗因があったと指摘する。
 安倍政権が民進党の政策を真似したなどと文句を言っているが、それは民進党の政策が自民党と大差がないものだったことの証左でもあった。
 与党がとても真似できないような強いアピールを持った政策を打ち出せなければ、本当の意味での野党への支持は回復しないだろう。

 結果的にこの選挙によって自民党は参院でも単独過半数を獲得し、改憲勢力も両院の3分の2を超えた。
 選挙後の記者会見で安倍首相はアベノミクスの継続が信任を得たとして、今後アベノミクスを加速させていくことを宣言し、手始めに年内にも実施される予定の大型の経済対策の検討に入ったという。
 政府内では10兆円規模の補正予算が取りざたされているという。
 ここ当分の間、日本は金融緩和の継続と公共事業の拡大を両輪として、経済を回していくことになりそうだ。

 また、安倍首相は憲法改正についても、憲法審査会での議論を前進させていくことに強い意欲を見せている。
 どうも安倍首相は、選挙で勝った以上、安倍政権の政策が全面的に国民の信任を得たと受け止めているようにも見える。

 しかし、小林氏は選挙の勝利が白紙委任を意味するわけではないと、警鐘を鳴らす。
 安倍首相がそれを見誤れば、リスク回避目的で今のところ自民党に集まっている消極的な支持が、一気に雲散霧消する可能性もある。
 また、同じく有権者側も白紙委任状を渡したわけではないことを認識し、引き続き辛抱強く政治を監視していく姿勢が求められる。

 与党が圧勝し、野党陣営でも組織選挙が目立った参院選だったが、新しい政治参加の形が見えてきた選挙でもあった。
 上智大学の三浦まり教授によると、この選挙ではこれまで政治に積極的に参加してこなかった市民層の多くが、独自に政治との回路を開拓していたと指摘する。
 利益団体だけでなく、こうした一般市民層の政治参加が進み、とりわけ野党がその勢力との合流に成功すれば、政治に健全な競争が生まれ、政治に緊張感が戻ることが期待されるところだ。

 今回の参院選でわれわれが選択したものは何だったのか。
 与党に勝利をもたらした有権者の投票行動は、われわれのどのような政治的意思を反映したのか。
 また、野党には何が欠けていたのか。
 今回の選挙における有権者の行動分析や各党の政策と選挙結果などを参照しながら、ゲストの小林良彰氏とともにジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。

小林良彰こばやし よしあき
慶応義塾大学法学部教授
1954年東京都生まれ。77年慶応義塾大学法学部卒業。82年同大学大学院法学研究科博士課程修了。法学博士。ミシガン大学客員助教授、プリンストン大学国際問題研究所客員研究員、慶応義塾大学助教授などを経て、91年より現職。著書に『政権交代 民主党政権とは何であったのか』、『選挙・投票行動』など。

(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)






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