2016年7月13日水曜日

南シナ海仲裁裁判決(1):「強制力がない」ということが、中国を世界から孤立させてしまうことに

_




毎日新聞2016年7月13日 東京朝刊
http://mainichi.jp/articles/20160713/ddm/003/030/098000c

南シナ海仲裁裁判決 
国際社会、法で圧力 
中国反発、増す緊張(その1)



 南シナ海のほぼ全域を管轄するとの中国の主張に対し、
 フィリピンが申し立てた仲裁裁判。オランダ・ハーグの仲裁裁判所は12日、
 中国が主張の根拠としてきた「九段線」の法的な有効性を真っ正面から否定する中国に極めて厳しい判決
を言い渡した。
 今回の判決を「錦の御旗(みはた)」に国際的な対中包囲網がさらに狭まりそうだ。

■進出歯止め図る

 ハーグの仲裁裁判所が
 中国側の「全面敗訴」となる厳しい判決を言い渡した背景には、
 中国が国際社会の反対を無視する形で南沙(英語名・スプラトリー)諸島の埋め立てなど実効支配を強める中で、
 「海洋法の番人」として「法の支配」の重要性を改めて明示する狙いがあった
ためとみられる。

 中国は、2013年1月にフィリピンが仲裁手続きを申し立てて以降、手続きに参加することを拒否。
 判決も受け入れない考えを示してきた。
 申し立てへの反論を求める裁判所の要請に応じない一方で、14年12月には「仲裁裁判所には訴えを審理する管轄権がない」とする「ポジション・ペーパー」(政策説明書)を発表し、裁判所の外で独自の主張を展開してきた。
 こうした「法廷軽視」の姿勢は、仲裁人(裁判官)の心証を相当悪くしたとみられる。

 国際社会が特に懸念していたのは、中国が「相手国と話し合う用意がある」と強調しながら実効支配の動きを加速させたことだ。
 中国はフィリピンが仲裁手続きを申し立てた後、南シナ海で埋め立てを急速に進め、南沙諸島のファイアリクロス礁(中国名・永暑礁)など3カ所で3000メートル級の滑走路を建設。
 15年9月の米中首脳会談では習近平国家主席が「軍事化の意図はない」と明言したにもかかわらず、軍用の哨戒機まで飛来させるなど言動が一致しないとの批判が出ていた。

 判決は
 「中国はフィリピンの排他的経済水域で巨大な人工島を建設するなどし、
 岩礁の元の状態がどうだったかを示す証拠も永遠に破壊してしまった」
と指摘。
 「問題が解決していない間に紛争をさらに悪化させるような行為を控える義務にも違反した」
と糾弾し、仲裁手続きが進められている間にも人工島での滑走路の建設などを進めた中国の行動を批判した。

■米、硬軟両様で対応



 仲裁裁判所の判決について、米国務省のカービー報道官は12日の声明で「中国、フィリピン両国に対し拘束力を持つ」として順守を求めた。
 さらに、すべての当事者に「挑発的な言動」の自制を促し、判決拒否を表明した中国をけん制した。
 今後、軍事、外交両面で圧力をかけ、地域紛争の芽を摘む取り組みを続ける。

 米国は昨年10月、中国が南シナ海の南沙諸島に築いた人工島から12カイリ内にイージス駆逐艦を派遣する「航行の自由作戦」を実施。
 今年5月まで3回、同様の作戦を展開した。
 米国は、判決は作戦の妥当性を後押しするものとして、今後も継続するとみられる。

 また米国は同作戦以外にも地域の同盟国、友好国と協力し、中国をけん制してきた。
 今年4月には米海軍がフィリピン軍と11日間に及ぶ共同訓練を実施し、対地攻撃機などによる南シナ海の哨戒飛行も行った。
 中国が判決を無視し、南シナ海の軍事拠点化を進めるようならば、軍事的な圧力を強める可能性もある。

 オバマ大統領は中国の習近平国家主席との会談のたびに自制を要請。
 5月末の主要7カ国首脳会議(伊勢志摩サミット)の首脳宣言にも、南シナ海を念頭に「紛争の平和的管理や解決の重要性を強調する」ことが盛り込まれた。
 外交の場を通じても判決の順守を中国に訴えていく考えだ。

 ただ中国は米国にとって、北朝鮮核問題や地球温暖化などに対処するための重要なパートナーだ。
 世界2位の経済大国の中国の協力がなければ解決できない課題も多く、硬軟織り交ぜた対応を迫られそうだ。

■日本「妥当な結果」

 日本政府は12日夕、判決を受けて岸田文雄外相の談話を出した。
 談話では
 「仲裁判断は当事国を法的に拘束する。
 当事国は従う必要がある」
として、中国を念頭に判決の受け入れを求めた。
 日本はフィリピンへの支持を表明しており、政府・与党内では
 「妥当な結果だ」(政府関係者)
と判決を歓迎する声が上がった。

 政府は今後、中国の海洋進出に懸念を強める国々と協力し、中国への国際的な圧力を強める方針。
 安倍晋三首相は今月15、16両日にモンゴルで開催されるアジア欧州会議(ASEM)首脳会議の出席に合わせ、ドイツなどとの2国間会談で対応を話し合う。

 東南アジア諸国は中国への対応が分かれることも多かったが、外務省幹部は
 「判決の効果で、国際ルール違反を認めないという国際世論ができてくるのでは」
と期待感を示した。
 ただ、日本は中国が強硬姿勢を強め、緊張が高まることも警戒。
 先月には中国海軍の艦船が尖閣諸島周辺の接続水域に初めて入るなど中国軍の行動は東シナ海で活発化する一方だ。
 事態の打開を目指し、中国側にはASEM首脳会議の際の安倍首相と李克強首相との会談を呼びかけている。
 外務省の杉山晋輔事務次官も月内に中国・北京を訪れ、張業遂筆頭外務次官と会談する予定で、関係改善の糸口を探る構えだ。

■東南アジア協調カギ

 フィリピンにとり、仲裁裁判所が中国の主張や行為を事実上違法と認めた意義は大きい。
 強制力のない判決に対し、周辺国や米欧、日本など「法の支配」を重視する国際社会と協調し、いかに実効性を伴う形で中国に圧力をかけられるかが今後のカギとなる。

 世界の貿易量の3割以上が南シナ海を通過しているとされる。
 フィリピンのヤサイ外相は6月、毎日新聞に
 「南シナ海を不安定化させる中国の行動は、フィリピンだけでなく、航行の自由を重視する全ての国の利益に反する」
と強調。
 広く国際社会を巻き込み、中国の「囲い込み」を図りたい考えを示していた。
 フィリピン側の代理人を務めたライクラー弁護士はワシントンで毎日新聞の取材に
 「偉大な判決だ。
 南シナ海で中国と同様の係争を抱える国々にとっても勝利となる。
 中国指導者には賢明な判断を求めたい」
と述べた。

 ロイター通信によると、フィリピン同様、中国との対立が深刻化するベトナムは、判決を受けて外務省が声明を発表し南シナ海問題の「国際法に基づく平和的解決」を要求。
 中国船とのトラブルが最近目立つインドネシアの外務省も「全ての当事国に国際法を尊重するように求める」との声明を発表した。

 ただ、これまで東南アジア諸国連合(ASEAN、加盟10カ国)は、対中国で結束できずにいた。
 カンボジア、ラオス、ブルネイは4月下旬に王毅(おうき)中国外相の訪問を受け入れ、中国の立場について説明を受けた。
 「親中国派」の国であるカンボジアのフン・セン首相は6月、「いかなる内容であろうとも判決を支持しない」と断言していた。

 中国が判決を無視し続ければ、南シナ海情勢は行き詰まり、中国をめぐるASEANの分断も広がる可能性がある。

 ■ことば
島、岩、低潮高地
 国連海洋法条約では、自然に形成された陸地で水に囲まれ、高潮(こうちょう)時にも水面上にあるものを「島」と規定する。島は排他的経済水域(EEZ)などを設定できるが、人が住めない「岩」はEEZの設定ができない。一方、「低潮高地」は低潮時には水面上にあるが、高潮時には水没するもので、それ自体では領海もEEZも設定できない。



ウォールストリートジャーナル 2016 年 7 月 13 日 09:23 JST By ANDREW BROWNE
http://jp.wsj.com/articles/SB10368883563906114164704582185730324987796
 
南シナ海仲裁裁判で敗訴の中国、
米国に矛先
中国が最も恐れていた屈辱的な結果だった

 【上海】中国が最も恐れていた屈辱的な結果だった。
 小国フィリピンがアジア太平洋地域の覇権国になる野望を持つ中国を徹底的に打ち負かす判決が国際仲裁裁判所から下ったためだ。
 中国政府は引き下がるわけにはいかない。

 判決は明白かつ全員一致で、歴史的に南シナ海の大部分に主権が及ぶという中国の主張をはねつけた。
 中国が珊瑚礁の周囲を埋め立てて人工島を造成したことを強く非難した上で、
 中国に威嚇されていたフィリピンの漁師の主張を支持したことで、中国政府が唱える正当性は危うくなった。

 中国政府は、ナショナリスティックな国民の反応に加え、
 「オランダ・ハーグにある国際仲裁裁判所の判事らは、中国の台頭抑止を謀る米国の手先なっている」
との確信を背景に対応していくだろう。
 中国は次に怒りの矛先を米国に向けることになる。
 中国の英字紙「チャイナ・デイリー」は12日、「米政府演出の茶番」と論評。
 新華社も「外部により念入りに演出された茶番だ」と同様な記事を配信した。

 緊張が急速にエスカレートしている状況では、差し迫った危機は、判断ミスや事故を引き金に中国と米国が紛争にもつれ込む可能性があることだ。

 判決に先立ち、中国による国際仲裁裁判所の非難が最高潮に達する中、中国は実効支配しているパラセル(中国名:西沙)諸島の沖合で実弾演習を実施。
 習近平国家主席は「中国は騒ぎになることは恐れない」と述べていた。
 先に同海域には米軍が空母打撃群を派遣していた。

 地図で見ると、仲裁裁判所が今回無効判断を下した「九段線」は、中国南部の海岸から南方に垂れる牛の舌のような形をしており、南シナ海のほぼ全域がこの中に入る。
 中国国民の目から見れば、国威発揚を示し誇りに思えるものだ。
 中国政府が発行したパスポートにはこの線が記されている。同じく人工島も中国復興の代表的な象徴となった。

 かつて帝国主義の犠牲になったことを引き合いに出して国際法に訴えることが多い
 中国にとって、今回の判決は法律上だけでなく道徳上の難題でもある。
 中国の王毅外相は2年前、国際連合(UN)の会合で
 「強者がやりたいように振る舞い、弱者が痛手を負うような無法地帯の法律は拒否すべきだ」
と訴えた。

 中国が今後、埋め立てによる造成で地域の地理にさらに手を加え、係争中の他の領土でも領有権を主張したり、さらには南シナ海上空に領空を設定したりすることはいずれも考えられる。
 そうなれば中国は、違法行為に出たと世界の大方からみなされるだろう。



ロイター 2016年 07月 13日 06:30 JST
http://jp.reuters.com/article/southchinasea-ruling-usa-idJPKCN0ZS2Q2

仲裁判断は法的拘束と見なすべき 米見解、
中国は不快感表明

[ワシントン 12日 ロイター] -
 国際的な仲裁裁判所が、中国には南シナ海の海域内の資源に対する歴史的な権利を主張する法的な根拠はないとの判断を下したことについて、
 米政府は12日、仲裁判断は最終的かつ紛争当事国を法的に拘束するものと見なすべきであり、
 緊張を高める理由にしてはならない
との見解を示した。

 アーネスト米大統領報道官は
 「判断を挑発行為に関与する機会として用いないよう、すべての当事者に求める」
と呼びかけた。
 またこれに先立ち、国務省のカービー報道官は
 「南シナ海における紛争の平和的解決という共通目標に大きく貢献するもの」
とした上で、
 「米国はすべての当事者がそれぞれの責務を順守するよう希望する」
と述べた。

 こうしたなか、中国国営新華社通信によると、中国政府は国務省報道官の声明に強い不快感を表明。
 外務省の陸慷報道局長は米国の声明に強く反対するとした上で、米国の行為は法の精神や国際法の規範に反するもので、領土問題において一方だけ支持しないとの宣言にも逆行していると述べた。





ロイター 2016年 07月 12日 23:33 JST
http://jp.reuters.com/article/hague-tribunal-south-china-sea-idJPKCN0ZS0W8

ハーグ仲裁裁判所、中国の「九段線」内の権利認めず

[アムステルダム/北京/マニラ 12日 ロイター] -
  オランダ・ハーグの仲裁裁判所は12日、中国が南シナ海で主権が及ぶと主張している境界線「九段線」について、中国には同海域内の資源に対する歴史的な権利を主張する法的な根拠はないとの判断を下した。

 また、中国当局の警戒行動はフィリピン漁船と衝突するリスクを生じさせたほか、人工島などの建設活動によりサンゴ礁に回復不能な損傷を与えたと指摘した。

 これに対し中国外務省は、中国人は同海域で2000年以上も活動してきた歴史があり、排他的経済水域(EEZ)の設定は可能と主張し、仲裁裁判所の判断を受け入れない考えをあらためて示した。

 中国は南沙(スプラトリー)、西沙(パラセル)諸島を含む南シナ海の島々に対する主権を有し、中国の立場は国際法と国際慣行にのっとっていると強調した。

 中国の王毅外相は、今回の動きは始めから終わりまで茶番であり、緊張や対立を深める結果となったとする一方、状況を正しい軌道に乗せる時期が来ており、フィリピンのドゥテルテ新政権は関係改善への対応に誠意がうかがえると述べるなど、融和的な姿勢もにじませた。

 フィリピンのヤサイ外務相は記者会見で
 「この重要な判断が及ぼすものについて慎重かつ徹底的に精査している」
とした上で
 「関係国・地域に対し自制と誠意を求める。
 フィリピンは今回の画期的な決定を強く支持する」
と述べた。

 日本政府は仲裁判断が最終的なもので、紛争当事国を法的に拘束するとの見方を示した。
 ベトナムな歓迎する意向を表明する一方、
 台湾は受け入れないとした。

 ISEASユソフ・イシャク研究所のイアン・ストーリー氏は
 「南シナ海の管轄権を主張する中国にとって、今回の判断は法律的に大打撃で、
 中国は今後、間違いなく激しい怒りを表明してくるだろう。
 南シナ海で一段と積極的な行動をとる可能性もある」
と述べた。


ロイター 2016年 07月 12日 18:18 JST

アングル:南シナ海仲裁判断、なぜ重要か

● 7月11日、常設仲裁裁判所は、南シナ海の大半に主権が及ぶとする中国の主張に反発してフィリピンが提訴した仲裁手続きについて、12日に判断を下す。写真は、スプラトリー諸島のヒューズ礁とみられる衛星画像。米戦略国際問題研究所(CSIS)が運営するサイト「アジア海洋透明性イニシアチブ」が2月に提供(2016年 ロイター/CSIS Asia Maritime Transparency Initiative/DigitalGlobe/Handout via Reuters/File Photo)


[香港/アムステルダム 11日 ロイター] - 
 オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所は、南シナ海の約90%に主権が及ぶとする中国の主張に反発してフィリピンが提訴した仲裁手続きについて、12日に判断を下す。

以下にいくつか重要ポイントを挙げた。

1.なぜ仲裁裁判所の裁定は重要なのか。

 フィリピンによる提訴は、南シナ海の領有権をめぐる争いで、初めて法的に異議申し立てられたケースだ。
 重要な国際海上交通路にまたがる南沙(英語名スプラトリー)諸島を中心に、南シナ海は長い間、緊張状態にあり、近年はその度合いが一段と高まっている。

 中国、台湾、ベトナム、マレーシア、ブルネイが、スプラトリー諸島とその周辺海域、あるいは周辺海域の領有権を主張している。
 中国、台湾、ベトナムは、南シナ海北方の西沙(同パラセル)諸島を自国の領土だと主張している。

 南シナ海の領有権問題によって、台頭する中国と長年支配者として振るまってきた米国は、同海域で政治的・軍事的に激しい争いを続けている。
 中国が拡張する自国海軍の活動領域を見据える一方、
 米国は日本やフィリピンといった従来の安全保障上の同盟国だけでなく、ベトナムやミャンマーのような新たな友好国との関係を強化している。

 中国専門家らは、海南島を拠点とする潜水艦が同国の核抑止力にとって今後決定的に重要となることを考えれば、南シナ海の重要性は増すばかりだと指摘する。

2.裁判に何が関係するか。

 フィリピンは2013年、中国の主張が国連海洋法条約(UNCLOS)に違反し、同条約で認められた200カイリの排他的経済水域(EEZ)に含まれる南シナ海で開発を行う自国の権利が制限されているとして、仲裁裁判所に提訴した。

 中国は、フィリピンの提訴によって審理を進められることに対して繰り返し警告し、聴聞会への参加も拒否してきた。
 裁判官を任命する権利も無視している。
 仲裁裁判所には権限がなく、南シナ海における中国の歴史的権利と主権は、UNCLOSが定められるより以前から存在していると同国は主張。

 UNCLOSは主権に関する問題は扱わないが、海上における行動のみならず、さまざまな地理的特徴から国が主張できることを規定している。
 同条約は島嶼(しょ)や岩礁から12カイリを領海とし、ヒトが持続して居住可能な島から200カイリをEEZと定めている。
 EEZは主権のある領海ではないが、同水域内において漁業や、石油、ガスなどの海底資源を採取する権利は与えられる。

 中国とフィリピンを含む167カ国がUNCLOSに署名している。
 米国はそのなかに含まれていないが、南シナ海における海上パトロールなどにおいて、同条約を国際的な慣例法として認識している。

3.カギを握るのは何か

 フィリピンによる提訴は、自国がEEZを利用する権利を明らかにしようとする約15の項目から成る。中国によるスプラトリー諸島の7つの岩礁における埋め立てや人工島の造成だけでなく、漁業や浚渫(しゅんせつ)、当局による監視などの活動に対しても異議を申し立てている。
 また、黄岩島(同スカボロー礁)を中国が実効支配していることに対しても異議申し立てを行っており、スカボロー礁が完全にフィリピンのEEZ内であるとする判断を求めている。

 南シナ海の大半に主権が及ぶとの主張において、中国が基準としている「九段線」の合法性をめぐる裁定は、どのような内容であれ、注視されるだろう。
 九段線は他の国々のEEZに交わっており、東南アジア海域の中心部にまで深く入り込んでいる。

 フィリピン側の弁護団はまた、スプラトリー諸島における島嶼や岩礁などのどれもEEZを主張するほど十分ではないと主張している。

4.次に何が起きるか。

 裁定結果には法的拘束力があるものの、UNCLOSは執行機関を持たず、専門家らによると、
 中国が判断を無視した場合、どうなるかはまだ分からないという。
 実際の主権をめぐる裁定に関わるケースは、該当国間の合意が必要であり、国際司法裁判所(ICJ)によって審問される。
 ICJによる判断は、中国が常任理事国である国連安全保障理事会が強制執行できる。

 中国当局者らは、自分たちの主張を実行するため、将来的な軍事活動を排除していない。
 それにはスカボロー礁での人工島建設や防空識別圏の設定なども含まれる。
 中国は、南シナ海における米軍のさらなるプレゼンス拡大には警告を発してきた。

 こうした中国の動きに対しては、米国はいわゆる「航行の自由」作戦や上空飛行を増やしたり、東南アジア諸国への防衛支援を強化したりすることで対応可能だ。
 米当局者が匿名を条件に語った。

 領有権を主張する他国、とりわけベトナムが、中国に対して独自に提訴するかも非常に注目されている。
 ベトナム政府は法的選択肢を模索しており、同国の当局者らはそのような行動に出ることを排除していない。

5.常設仲裁裁判所とは何か。

 1899年に設立された常設仲裁裁判所(PCA)は、最も歴史ある国際司法機関。
 PCAは、中国とフィリピンが署名するUNCLOSのような国際条約の下で紛争を解決することがしばしば求められる。

 南シナ海問題における手続きをボイコットしている中国は、裁判官の任命を拒否。
 フィリピンはドイツ国籍の裁判官1人を任命している。
 残りの裁判官は国際海洋法裁判所の所長が任命した。

 中国は、裁判長がガーナ人、他の4人の裁判官が欧州人であることは、世界の法制度の多様性を適切に反映していないとし、自国に対して偏見を持たれる恐れがあることを示唆している。

 PCAは執行力を持たず、同裁判所の裁定で勝利した該当国は通常、自国の裁判所で主張を追求するが、成果が得られないことが多い。


Record china 配信日時:2016年7月13日(水) 13時0分
http://www.recordchina.co.jp/a144688.html

南シナ海仲裁判決、東南アジア諸国、米国、日本が「歓迎」表明―台湾メディア

 2016年7月13日、南シナ海のほぼ全域に主権が及ぶとする中国の主張には根拠がないと否定した仲裁裁判所の判決を受け、東南アジア諸国、米国、日本が歓迎の立場を表明した。
 台湾・聯合新聞網が伝えた。

 フィリピンのヤサイ外相は、「専門家が内容を精査中だ」とし、各方面に「冷静と自制」を求めた上で、「フィリピンはこの歴史的な裁決への尊重を重ねて表明する」と述べた。
 ベトナム外務省は「平和的な手段で解決されることを強く支持する」とするコメントを発表。
 シンガポールのビビアン・バラクリシュナン外相は「理想的な状態は東南アジア諸国連合(ASEAN)の国々が共通の声を上げることだ」と述べた。

 米国務省は、仲裁判断は最終的かつ紛争当事国を法的に拘束するものであり、挑発的な言及や行動を避けるよう呼び掛けた。
 同省のカービー報道官は「南シナ海における紛争の平和的解決という共通目標に大きく貢献するもの」と評価した。

 日本の岸田文雄外相は「当事国がこの判断に従うことにより、今後南シナ海における紛争の平和的解決につながっていくことを強く期待する」との談話を発表した。

 欧州理事会のドナルド・トゥスク議長は
 中国に対し、国際的な体系や秩序を尊重・保護するよう求めた上で、「この問題はわれわれの目の前にある最大の挑戦だ」
と述べた。


Record china 配信日時:2016年7月13日(水) 14時30分
http://www.recordchina.co.jp/a144694.html

「Chexit」「中国は南シナ海から出て行け」仲裁判決にフィリピン歓喜―英メディア

 2016年7月13日、オランダ・ハーグの仲裁裁判所が、フィリピンが申し立てた南シナ海の領有権をめぐる中国の主張について「法的な根拠はない」と判断したことを受け、フィリピン国内では歓喜の声が多く上がっている。
 交流サイト(SNS)では、英国の欧州連合(EU)離脱を指す「Brexit」(BritainとExitを組み合わせた造語)にちなみ、
 中国は南シナ海から出て行くべきだと主張する「Chexit」という言葉も生まれている。
 英BBCが伝えた。

 インドネシア紙ジャカルタ・ポスト(電子版)は
 「フィリピン人がChexit集会を開催、南シナ海仲裁判決を祝賀」
と題した記事で、フィリピンに有利な判決が出ることを確信するマニラ市民数百人がレストランに集結し、勝利集会の準備をしているとした上で、
 「彼らは太鼓を鳴らし、歌い踊りながら、Chexitと叫び、中国はフィリピンの海域から出て行くべきだ主張している」
と伝えた。



【自ら孤立化を選ぶ中国の思惑】




_