2016年7月28日木曜日

南シナ海仲裁裁判決(8):中国が南シナ海領有権を主張、米国の大型スクリーンで1日120回流す

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ワールドワイド・ビデオ  2016/07/28     2016/07/28
http://videoclip.club/post-13596/

中国が動画で南シナ海の領有権を主張、
米国の大型スクリーンで1日120回流す



 中国は南シナ海の領有権を主張した動画を23日からニューヨーク・タイムズスクエアの大型スクリーンで公開しており、在米華人や中国ネットで多くの反応が寄せられている。

 約3分の動画は8月3日まで公開される予定で、毎日120回流される。動画には南シナ海の美しい風景が映し出されており、中国が最初に発見し命名や開発を行った歴史をアピールしている。
 さらに、中国の専門家や英国・影の内閣のキャサリン・ウェスト外相、パキスタンの駐中国大使らが動画に登場し、南シナ海の主権が中国に属する根拠や、フィリピンが仲裁裁判所に提訴した不当性、南シナ海問題は当事国が話し合いで平和的に解決すべきだと語っている。

 在米華人や中国ネットで動画を支持する声が大半を占めた一方で、
 「南シナ海の領有権が中国に属し、それが疑いのない事実だと言うなら、なぜ大金をはたいてまで宣伝するんだ?」
 「国民の税金をむだ使いしないでほしい」「なぜ米国で宣伝するの?
 中国の同盟国で動画を流しても世界に伝わる。
 米国にお金を渡せば同国を勢い付かせるだけでなく、米国が仲裁大国であるとの誤解を与えてしまう」
との声も聞かれている。

(出典:https://www.youtube.com/watch?v=2Z6xwpuaXAE)



サーチナニュース 2016-08-26 09:51
http://news.searchina.net/id/1617300?page=1

五輪閉会式で巧みにソフトパワーを魅せた日本 
われわれは「チャイナドリーム」をゴリ推ししてないか? =中国メディア

 先日行われたリオ五輪の閉会式では、次回開催地の東京をPRするパフォーマンスが行われた。安倍晋三首相がスーパーマリオに扮して登場したほか、世界的に有名なアニメキャラクターが随所に起用されており、日本のソフトパワーの強さがアピールされた。

 中国メディア・和訊網は24日、
 「日本によるアニメのソフトパワーアピールの、チャイナドリームに対する啓示」
とする記事を掲載した。
 記事は、リオ五輪閉会式において日本が、スーパーマリオのほかにキャプテン翼、ハローキティ、ドラえもんといったアニメキャラクターを登場させたPR動画で「心を引き寄せ、ソフトパワーをアピールし、次の東京五輪への期待を高めさせた」と紹介した。

 そのうえで、日本のアニメ文化が単に経済的価値を創造するに留まらず、外交のツールとして現地の歴史や文化、価値観を国外に伝え、賛同と友情を獲得するのに貢献しているを解説。
 日本は2006年よりアニメを柱とする大衆文化外交の展開を打ち出し、07年の安倍首相初就任時の施政方針演説でもマンガ・アニメ分野の競争力を高めることを盛り込んだと伝えた。

 記事は、中国も06年に制定した文化分野の第11次5カ年計画においてデジタルコンテンツとアニメ産業を文化産業の9大分野の1つに据えて大々的に発展させることを打ち出したと紹介。
 しかし、立ち上がりが遅くなおも初期段階にある中国アニメ界が強い力を発揮し、中国文化の価値を外に伝えるには長い時間が必要であると指摘した。

 さらに、このような状況において
 「我が国がいかにして『ゴリ推し』を避け、ソフトな手段で中国の話を伝えるか
について考える必要があることを、今回の日本のPR演出を契機に認識すべきであるとしている。
 なお、「ゴリ推し」の例として、米ニューヨークで、南シナ海における中国の立場を説明する広告を出したことが挙げられた。
 
 これまで、中国文化の対外的なアピールはいささか独善的な部分があった。
 いかに長い歴史や優れた文化を持っているかを「自画自賛」するような印象があり、時として現地から反発や「文化侵略だ」などといった警戒を受けることもあった。
 そんな中で「ゴリ押しを避けるべき」という声が出てきたのは評価に値するだろう。
 どうしたら相手に抵抗なく受け入れられ、愛されるかを考えることが「チャイナドリーム」を世界に広める近道になるのである。



ロイター 2016年 07月 29日 09:01 JST
http://jp.reuters.com/article/analysis-south-china-sea-us-idJPKCN10811J?sp=true

焦点:南シナ海裁定に「無力化」の恐れ、
腰砕けの米外交戦略

[ワシントン 27日 ロイター] -
 南シナ海の領有権をめぐる中国の主張に関して仲裁裁判所が今月裁定を下すまでの間、米当局者らは、もし裁定を中国が無視するなら、同国の国際的評価に「ひどい」損失を与えるべく、各国と共同戦線を組むことを検討していた。
 しかし、7月12日にオランダ・ハーグの常設仲裁裁判所が、少なくとも文面上は中国にとって屈辱的敗北と見られる判断を発表してからわずか2週間後、米国のそうした戦略は白紙となったと思われる。
 仲裁裁判所による裁定は、その重要性を失う危険にさらされている。

 米当局者らは今月に入り、アジア太平洋諸国や欧州連合(EU)を含む他の地域の国々に対し、仲裁裁判所の裁定は拘束力を持つべきであることを明確にする重要性を繰り返し語ってきた。
 「これは国際法で、非常に重要であり、全ての当事者に拘束力があると、われわれは協調し声を大にして訴える必要がある」
と、2月当時、米国防総省の副次官補(南・東南アジア担当)だったエイミー・シーライト氏は語っていた。
 4月には、アントニー・ブリンケン米国務副長官が、ハーグ裁定を無視するなら、中国は自国の評価に「ひどい」ダメージを被るリスクを冒すことになると語った。

 仲裁裁判所に異議申し立てを行ったフィリピンの弁護団を率いた弁護士は、仲裁裁判所による裁定を拒否することは、中国が法の支配を尊重しない「無法国家と宣言しているようなもの」との見方を示した。
 世界で最も交通量の激しい通商ルートの1つである南シナ海の大半に主権が及ぶとする中国の主張は、航行の自由と国際法にとって脅威であるとするフィリピンの提訴を米国は支持した。

 だが、仲裁裁判所が中国の主張を受け入れない裁定を下した後、共同戦線を求める米国の呼びかけは頓挫したように見える。
 裁定は拘束力を持つべきとの米国の主張に呼応したのは、わずか6カ国だった。
 そのなかにはフィリピンも含まれるが、中国が裁定を受け入れた場合に自国も利益を得る可能性がある他の当事国らは入っていない。

 一方、中国は今週、外交的大勝利を得た。
 東南アジア諸国連合(ASEAN)外相会議は25日発表した共同声明で、米国が要求していた南シナ海の領有権問題における仲裁裁判所の裁定について言及しなかった。
 言及するよう求めていたフィリピンが、中国の盟友カンボジアからの反対を受けて、自らの要求を取り下げたのだ。

 また、英国の離脱に揺れるEUは15日、仲裁裁判所の裁定に関する声明を発表したが、中国に直接言及したり、裁定には拘束力があると主張したりすることは避けた。

■<「脚注」程度の重要性>

 ケリー米国務長官は27日、ASEANが法の支配を支持する共同声明を発表したことに満足の意を表し、仲裁裁判所の裁定に全く言及しなかったことで、同裁定の重要性が損なわれるわけではないと述べた。
 ケリー氏はまた、裁定には法的拘束力があるため、その重要性を失わせることは「不可能」だと強調した。

 しかし専門家によれば、米国が友好国や同盟国と協調してこの問題を効果的に推し進めることに失敗したせいで、なおさら裁定が無意味になるリスクに現在直面しているという。
 「裁定が脚注程度にすぎないと見られるようになることを懸念すべきだ。
 なぜなら、裁定の影響力は国際社会によってつくられるものであるからだ」
と、米戦略国際問題研究所(CSIS)の南シナ海専門家、グレッグ・ポーリング氏は指摘。
 「国際社会は何も言わない、ということを表明した。
 『われ関せず。中国をこうした基準に保たなくていい』
というのが、コンセンサスのようだ」

 米シンクタンク、ヘリテージ財団の中国専門家であるディーン・チェン氏は、オバマ大統領の任期も残すところあとわずかで、11月に大統領選を控える米国は、戦略的ライバルであり不可欠な経済パートナーである中国に対し、これ以上の強硬路線は取りたくないように思われると語った。
 「われわれが目にしているのは、
 物理的に、政治的に、違法に、外交的に、南シナ海へ猛進している中国に対し、
 ほとんど何もしない米国の姿だ」
と、チェン氏は述べた。

 オバマ政権が比較的受け身である理由の1つに、仲裁裁判所の裁定後に、南シナ海で中国が埋め立てを拡大したり、防空識別圏を設定したりと事態が大きくエスカレートするのを阻止したい考えがあった可能性が挙げられる。

 中国はこれまでのところ、強硬な発言をするにとどめているが、専門家や当局者らは、9月に20カ国・地域(G20)首脳会議を主催した後に中国が大胆な行動に出る可能性を懸念している。

(David Brunnstrom記者、Matt Spetalnick記者 翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)



ダイヤモンドオンライン  2016年7月28日 吉田陽介[日中関係研究所研究員]
http://diamond.jp/articles/-/96929

中国の強硬姿勢を理解する鍵は「毛沢東思想」にある

 7月1日で創立95周年を迎えた中国共産党は、習近平総書記のリーダーシップの下で「初心に戻る」ことを強調し、党内の引き締めを続けている。
 その際に習総書記は毛沢東の考え方を引いて、個人の利益よりも公の利益を優先させる清廉潔白な党員・幹部像を説いている。
 党の建設で毛沢東思想を継承している習総書記だが、外交政策でも同路線を継承している。
 現在の習政権は周辺諸国との連携を強化する一方で、大国にはものを言っている。

 筆者は、「共産党は理論の党であり、それは創設期から受け継がれている」と他のコラムでも述べてきた。
 習政権の堅持している理論も中国共産党の公式見解がいうように鄧小平理論だけでなく、毛沢東思想も継承している。
 とくに相手国が「底線(最低ライン)」を越えたときの闘争はすさまじいものがあるが、それも毛沢東の闘争の哲学を体現しているといえる。

 中国と日本は政治体制が違うため、中国共産党は何をやろうとしているのかわかりにくく、「理解しがたい党」と見られてしまう。
 本稿では習政権が毛沢東外交のどの部分を継承しているか、中国共産党の「底線」を越えた者に対する闘争について概観し、日本との関係についても考えてみたい。

■闘争性を備えた毛沢東外交
その一方では現実的外交も

 習外交について見る前にまず毛沢東外交の特徴について見ていこう。
 毛時代と現在とでは時代背景や国際環境が違うため、単純に比較できないが、その理念は現在の政権にも受け継がれている。
 毛外交の特徴を筆者なりに整理してみると次の通りである。

★.第一に、革命を主とした外交である。
 毛沢東時代は国際共産主義運動が存在しており、その目標は世界革命の実現だった。
 毛沢東率いる中国共産党はアジア・アフリカ諸国を半植民地国家と認識し、これらの国々の革命を支援する「プロレタリア外交路線」をとり、武装闘争を主とする革命路線を押し広めた。
 文化大革命期の中国外交はイデオロギー的要素が非常に大きくなり、アジア・アフリカ諸国に武装闘争を主とする革命を呼びかけるという「革命輸出」だった。

★.第二に、自主独立外交を展開しつつ、
周辺地域との関係も強化したという点である。
 毛沢東はソ連が創設したコミンテルンの主張する都市プロレタリアートによる革命路線には依拠せず農村を主体とする独自の革命を目指した。
 中国共産党の「自主独立」外交は新中国成立後も受け継がれた。
 「自主独立」は国家主義の現れであり、それは社会主義国の理念である国際主義に反するともいえるが、毛自身は「愛国主義と国際主義の結合」を主張しており、国際主義の精神によって近隣諸国との関係も重視していた。

★.第三に、超大国との闘争を繰り広げるという点である。
 革命時代の中国共産党は当時軍事大国であった日本帝国主義との闘争を進め、戦後はアメリカ帝国主義との闘争を強調し、社会主義政党及び第三世界との「反帝国主義統一戦線」を結成しようとした。
 そして、アメリカと妥協する社会主義政党にはマルクス・レーニン主義に反する修正主義のレッテルを貼った。
 その一方でソ連とも社会主義のあり方を巡ってイデオロギー闘争を展開した。
 当時の中国は帝国主義と修正主義との闘いで妥協することなく、強い姿勢をとり続けた。

★.第四に、社会主義勢力は平和勢力であり、
先に戦争をしかけることはないということである。
 当時は冷戦の真っ只中で、毛自身も「第三次世界大戦は不可避」あるという認識であった。
 また当時の社会主義勢力の認識も「社会主義勢力のもつ兵器は世界戦争の根源である帝国主義に対抗するもの」というものであった。
 1964年に中国は初の原爆実験に成功したが、それは「帝国主義国の核独占に反対する」という建前で行われ、それはあくまでも「防御的」なもので「先に使用することはない」ことを強調した。
 これは現在の中国の「平和的発展」論にも通ずるものがある。

 以上、簡単に毛沢東の外交路線について述べてみたが、
 毛外交に貫かれているのは「闘争の哲学」である。
 毛沢東の活躍していた時代は「戦争と革命の時代」であったため、闘争を非常に重視しており、党内でも闘争を繰り広げた。
 それは対外関係でも同様で、革命期は日本帝国主義、戦後はアメリカ帝国主義、ソ連修正主義を「主要な敵」とした。当時は「戦争と革命の時代」であったため、「闘争」を押し出した外交は必要だった。

 ただその一方で、「実事求是」、つまり現実に合わせて柔軟に対処する面もあった。
 1953年に周恩来が提起した「平和共存五原則」は現実的な外交路線の例であろう。

■周辺諸国との関係強化と同時に
大国にはものを言う

 習政権は発足後活発な外交活動を繰り広げている。
 それは先進国、途上国との関係をともに強化する「全方位外交」で、それは毛沢東思想のプラス面を受け継いで自主独立を堅持しつつ、「国を開く」ことを提唱した鄧小平の路線を継承している。
 「毛沢東回帰」といわれる習政権は自主独立の堅持のほかに、毛外交の次の四つの特徴も継承している。

★.第一の特徴は、「共通の理念」を示し、各国との関係強化を呼びかけることである。
 習総書記は就任間もなく、「中国の夢」を国内に向けて強調したが、外交舞台においても、「中国の夢」は「世界の夢」にも通じるものがあると強調した。
 「中国の夢」自体は厳密な定義はないが、習総書記の発言など考えると、中国国内に向けたそれは「中華民族の偉大な復興」「人々の生活の向上」であり、国際舞台で強調したそれは「共同繁栄、ウィンウィン」と見られる。

 毛時代は中国の重視していた植民地国家との間では社会主義、共産主義の理念で連帯できたが、改革開放路線をとっている現在は「共通の理念」にはなりえない。
 そのため、各国との関係強化を呼びかけるための理念として、「中国の夢」を強調したのである。

★.第二の特徴は、国際主義の精神で他国との関係を強化することである。
 革命時代はプロレタリア国際主義によって他の国の革命運動を支援したが、現在はそうした「国際主義」ではなく、経済協力を主とした「協力・ウィンウィン」外交を展開しており、それは「新しい国際主義」といえよう。
 さらに習総書記は毛沢東と同様に近隣諸国との関係を重視し、「真、実、親、誠」の理念の下、周辺諸国との関係を強化している。

 習総書記は2014年頃から「運命共同体」という言葉をよく使うようになった。
 「一帯一路」の建設はその理念を体現したものであり、沿線各国との政治上・経済上のつながりを強化している。
 これも「新しい国際主義」といえる。

★.第三の特徴は、「衝突せず対抗しない、尊重しあう、協力・ウィンウィン」を旨とする「新型大国間関係」の構築に努めるが、
 大国にはきちんとものを言うという点である。
 毛時代は時代的制約から大国を「主要な敵」と位置づけ対決姿勢をとったが、全面的衝突は避けていた。
 習政権も大国にはものを言うが、基本的に衝突・対抗しない態度である。

★.第四の特徴は、「社会主義は平和愛好勢力」という考えを継承し、帝国主義勢力への「抑止力」として一定の軍備が必要であるということである。
 中国は「平和的発展」を堅持しているが、それは他国を侵略するというものではなく、「防御的国防」である。
 昨年9月3日の抗日戦争勝利70周年記念パレードについて、何のために行ったかとよく言われているが、「社会主義勢力は平和勢力」という旧来のイデオロギーの影響を受け、現在なおも存在する強権政治に対処するためなのではと筆者は見ている。

 また、毛沢東の外交も習時代のそれも「底線」を設けており、それを超えた場合は、猛然と反撃してくる。
 毛時代の「底線」は社会主義の理論に反すること、革命の放棄であり、習時代のそれは「核心的利益」の侵害である。

 「底線」を越えた者に対する闘争は2012年の尖閣諸島問題、先般大きく報道されている南シナ海問題はその例である。
 この特徴はかつての国際共産主義運動の論争の進め方とよく似ている。

 ここ最近の習政権の動きを見ていると、「ものを言う外交」になっている。
 改革開放が始まった当時は、割合抑制的な態度であったが、現在は総合的国力が向上したしたことから大国としての「自信」がついてきたことが大きな要因だろう。
 また国内に向けても国民の支持を得るため「強い中国共産党」を見せる必要がある。
 毛沢東時代は総合国力が高いとは言えなかったが、独自の革命を成功させた社会主義大国のひとつとして、大国にものを言った。
 「大国としての自信」という点では、毛沢東と習近平総書記の外交は重なるところがある。

■中ソ論争の思考からまだ脱却してない?
大国と対峙する際の中国共産党の「闘争」

 中国共産党は国際協調主義的外交を展開する一方で、中国が設定する「核心的利益」に関わる問題、「底線」に触れたときの反撃は非常に激しい。
 その闘い方は毛時代に繰り広げられた中ソ論争のそれに似ており、現在もその影響が残っていると筆者は見ている。

 中ソ論争は1956年のスターリン批判から66年までの10年間に中国とソ連との間で繰り広げられた大論争である。
 これは主に理論上の論争、つまり、アメリカに対する見方、社会主義への移行は議会を通じて可能か、などの問題を巡って激しい意見が戦わされ、それは国家間関係にも影響した。
 この論争の中での中国共産党の思考を整理すると次の通りである。

★.第一に、「わが党の意見が真理であり、他の党は間違っている」という点である
 中国共産党を含む世界の共産党は、論争当時自らの意見を発表する際にこのような言葉を述べた。
 共産党間での論争のない現在はさすがにこのようなことを言わないが、当時は社会主義陣営、「国際共産主義運動の総路線」が存在し、各国の共産党はそれに「総路線」に照らして理論問題を考えていたため、このような態度になる。

 中国共産党の外交の動きを見ていると、現在の中国共産党も少なからずそのような思考が残っており、
 日中間の歴史認識問題、領土問題、南シナ海の問題でも「わが党が正しい」
という思考で意思を表明し、相手国の主張を退けている。

★.第二に、共同文書を独自に解釈して相手の主張は「国際共産主義運動の総路線」に反していると主張し、その遵守を強調する点である。
 中ソ論争当時は、「国際共産主義運動の総路線」というものが存在するというのが世界の共産党の共通認識となっており、自国の主張がそれに合致しているか否かは大変重要だった。

 当時の理論的拠り所だったのは、1957年と1960年に開かれた世界共産党と労働者党が集まった会議で採択された「モスクワ宣言」と「モスクワ声明」だった。
 論争の際、中ソ両党はこれらを独自に解釈して、相手の主張を論破するのに用いた。
 そのやり方は、日本との歴史問題、領土問題での摩擦や南シナ海問題でも見られ、歴史的事実などを挙げて相手を論破する。

 中国の共同文書の態度について若干述べておこう。
 中国のような社会主義国は特に文書を重視する国である。
 社会主義国の堅持する民主集中制の原則によると、党中央の発する文書は下の党員が守るべきものである。
 対外関係についても同様で共同文書の有無は非常に重要な意味を持つ。
 とくに意見の相違を抱えた国や党に対してはなおさらである。

 ゆえに、日中間で何か問題が起きたとき、中国側は、日本側の行動は「四つの基本文書」の精神に反すると主張し、その遵守を求める。
 また、2014年11月に日中首脳会談が実現する前、日中間の「四つの合意」が文書となって、それが会談を行う上での「底線」となったのである。

★.第三に、「原則問題」では妥協しないという点である。
 中国人はよく「原則問題」を口にするが、それは論争当時の中国共産党の説明によると、
 マルクス・レーニン主義の精神に合致し、プロレタリアートの利益にプラスとなる政策で、
 本稿で述べている中国の「底線」である。
 中ソ両党の意見の食い違いが公開論争に発展した当時、ソ連共産党は中国共産党に公開論争を停止すべく、国際会議を開いて両党の意見の相違について話し合い、世界共産党の団結を強化しようと提案したが、中国共産党はそれに消極的態度だった。
 なぜなら、中国側は形式的な団結は何の役にも立たないという立場だったからである。

 ただ、中国は原則的政策を堅持するときでも柔軟性をもたせる必要性を認めている。
 その柔軟性とは、原則的政策を逸脱しない範囲内でのものである。
 現在の中国の「原則問題」は日中関係で言うと、歴史問題での中国の「原則問題」は過去の戦争の過ちを認めるという点、また領土問題でのそれは「領土問題は存在し、話し合いによって解決する」というものである。

★.第四に、あらゆるメディアを利用して「世論戦」を展開することである。
 中ソ両党の論争が公開論争に発展して以降、両国は国内のあらゆるメディアを使って相手国の主張を批判する記事や評論を掲載し、一種の「世論戦」を展開した。

 当時の中国共産党が発表した論文は「互いに相手が自己を批判した文章をぜんぶ発表し、全国人民、全世界人民に考えさせて誰がまちがっているかを判断させようではないか」と述べ、メディアを駆使した「世論戦」に肯定的だった。
 それは先ほど述べた自らが「原則問題」では間違っていないという自信があるためであると筆者は考える。

 こうした「世論戦」も、2012年9月に日本が尖閣諸島の「国有化」を決めた後に『釣魚島は中国固有の領土』と題する白書を発行し、日本の尖閣諸島「国有化」を批判する評論が中国メディアで多く出たことに似ている。

 以上、時代背景が異なるためやや乱暴な形ではあることは承知しているが、国際共産主義運動の論争の中での中国の闘争のやり方は、現代中国の外交にも同じような傾向が見られるのではという問題意識から、あえて中ソ論争を取り上げてみた。

 中国は改革開放以降、資本主義国との交流も多くなり、また経済・政治的にも国際的地位が向上し、「独自のスタンダード」を押し通すなら、「国際ルールを無視している」という批判がくる。
 しかし、長い間培った思考は容易に変えられるものではないし、中国がすでに世界に影響を与える大国になったが、その位置づけにまだ慣れていないという要因もあって、世界各国の理解を得られるには長い時間が必要ではないかと思う。

■現代に生きる毛沢東の「二分論」
今後の日中関係は共通の利益を探すことが必要

 ここまで中国共産党の「底線」に触れた相手に対する「闘争」について中ソ論争を例にとって見てきたが、ここでは日本との関係について簡単に見ていく。

 今年の全人代で李克強首相が指摘したように、日中関係はまだ脆弱な状態にある。
 習政権発足当初は尖閣問題や靖国参拝問題など「原則問題」の影響を受け、日本に対しては厳しい姿勢をとり、2014年の全人代の「政府活動報告」では名指しこそ避けたが、明らかに日本を批判するくだりがあった。
 当時は先ほど述べたような「世論戦」が繰り広げられたが、現在は日本を批判するもののそれほど厳しくはなく、加えて首脳同士の会談も途切れていないため、両国関係の「最悪な時期」は脱したといえる。

最近の中国の動きから、その原因として次の三つが考えられる。

★.一つは、習政権は現在内外ともに課題が多く、日中関係をこれ以上悪化させるのではなく現状維持にするという判断がはたらいているのではないか考えられる。
★.二つは、現在のところ安倍政権に代わる政権が生まれる可能性が低いため、同政権と長期的スパンで付き合っていく必要があると習政権が考えているためである。
★.三つは、習政権は毛沢東の「二分論」に基づいて、日本軍国主義者と広大な日本人民を区別して民間交流を続けていくことを基本方針としているためである。

 毛沢東の「二分論」は「戦争と革命の時代」という時代背景、闘争性を持つ毛沢東路線が生み出したものであった。
 1950~60年代の中国は、アメリカ帝国主義を「主要な敵」としており、アメリカの軍事基地のある日本の広範な人民の、アメリカ帝国主義とその代弁者である日本反動政権に反対する闘争に期待しており、日中両国の人民が連帯して日本革命を実現するというのが毛沢東の考えであった。

 ただ、現在は毛時代のような「戦争と革命の時代」ではなく「平和と発展の時代」であり、中国共産党の外交のスタンスも経済建設にプラスになる対外関係に変わっている。
 だが、日本については、歴史問題など「原則問題」があり、ひとたびそれに関する意見の対立があれば、両国の関係が冷却化する恐れもあるので、両国関係の「二分論」は現在も有効なのである。

 現在、日中関係は最悪とはいえないが、先ほども述べたようにまだ「脆弱」である。
 今後、両国は「共通の利益」を見出だす必要があろう。
 これは中国の日本研究者も指摘している。
 「二分論」がかつて比較的容易に日本の人々に受け入れられたのは、その当時の人々が戦争を経験しており、贖罪意識があったこともあるが、日中両国の「共通の利益」があったことも否めない。

 かつての日中両国の「共通の利益」はアメリカ帝国主義に反対することであり、中米国交樹立後はソ連の脅威に対抗することだった。
 改革開放後は、ソ連への対抗のほかに、経済面での関係強化があった。
 ソ連崩壊後は日中両国の安全保障面での共通の利益がなくなっている。
 そのため、政治問題で波風が立つことも多くなった。

 今後の日中関係の発展にとって必要なのは何を両国の「共通の利益」にするかだろう。
 中国は現在、世界第二の経済大国であるが、課題はまだ多くバージョンアップが必要である。
 そのため、日中両国の「共通利益」は経済面から見出す必要がある。
 長いスパンで見れば中国の建設している「一帯一路」の建設の参加を視野に入れることは、日中両国の「共通の利益」になりうる。



JB Press 2016.7.28(木)  W.C.
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47472

世界の厄介者、ロシアと中国に働く吸引力
牛歩ながら着実に進み始めた? "同盟関係"

 中国の傅瑩(Fu Ying)・全人代外事委員会主任委員が、米外交雑誌「Foreign Affairs」の1/2月号に「中国から見たロシア」と題した露中関係論を寄稿している。
 その結論から見ると、
  「米国の今の動きはアジアにとって危険である、一方、
 中露には反米ブロックを形成するつもりなど毛頭ない」
という米国向けのアピールが狙いだったようだ。

 中国の米国対策でロシアが出汁に使われた感がなきにしもあらずだが、露中関係は第三国を敵視することなく2国間の協力により互いの目標を達成し合って行くという、安定した戦略的パートナーシップであると誇らしげに説き、歴史を乗り越えてそのような関係構築に成功したことは、大国同士がどう平和裏に共存できるかを示す好例である、とまで述べる。

 米国もこれに見倣ってほしい、というところだろう。
 それゆえ彼女に言わせれば、露中関係を否定的に捉える西側の互いに相反する2つの見方 - 露中両国の現在の関係は便宜上の結婚に過ぎず、いつかは破綻する運命にある、あるいは、戦略面や思想面で露中が反米・反西側同盟を形成する - はいずれも的外れでしかない、ということになる。

■ロシアと中国で見識の差

 しかし、彼女は少なくとも1つだけ間違っている。
 両国関係を否定的とは言わずとも、彼女とは異なった目で見ているのは西側だけではない、ロシアの知識人やメディアも、なのだ。
 傅瑩の説くように、露中が同盟関係には立ち至っていない点には同意しつつ、カーネギー財団モスクワ・センター所長のD.トレーニンは今の露中関係を、
 「決して対立はしないが、常に同調とも限らない。
 露中の間の距離は近い、しかし近過ぎもしない」
と表現する。
 そして、
 「中国と強固な同盟が作れなかったことは、ロシアの東進政策での失敗とは言えまい、
 なぜなら過度にロシアが中国に依存することを避け得たから」
と付け加えることを忘れない。 
 こうした地政学的な観点は、物事を冷めた目で見るのが仕事だから、その種の表現がロシア側の対中熱気の薄れを表象、とまでは言えまい。
 それがあるとすれば、前回このコラムでも触れたように、両者の経済関係で、だろう。

 トレーニンの下で、カーネギー財団モスクワ・センターのアジア・太平洋方面部長を務めるA.ガブーエフは、ロシアが自国の投資環境の改善を果たさぬままに東進政策を加速し始め、それが世界の資源価格下落と中国の成長鈍化にぶつかってしまった不幸を指摘する。

 他のロシアの論者も、これらの要因で中国企業がエネルギー分野への投資に慎重になってしまったと嘆き、
 ロシア中銀は、中国経済の1%の減速がロシア経済の0.5%の減速をもたらす
と弾く。

★.昨年の露中貿易額は対前年比で約30%と大幅に減少し、
ロシアは中国にとって16番目の貿易相手国
でしかなくなってしまった。
 今年に入ってからも1~4月で昨年同期の2.7%増に過ぎず、2020年で貿易総額2000億ドル達成の看板はまだ下ろしていないものの、ロシア政府高官からはこれに懐疑的な溜息が聞こえんばかりだ。
 貿易の減少は、それでもまだ短期的な話として片付ける余地があるかもしれない。
 しかし、中国の対露直接投資の額が昨年で5.6億ドルと、中国の対外直接投資全体の0.5%でしかないとかになると、ロシア側の失望感は否が応にも増してしまう。

 「中国経済が下り坂だから?」

 ならば、中国の対露直接投資残高が同じCIS内のカザフスタンに向けての額(2014年末で271億ドル、ユーラシア銀行の数値)の1/10強でしかない事実をどう説明できるのか?
 露中政府間委員会(双方のトップはI.シュヴァロフ/第一副首相、張高麗/第一副首相)が両国の共同投資案件として58件(総額500億ドル)を選択したものの、露紙によれば具体的に話が進んでいるのはその中でわずか12件(5件という説も)という牛歩。

 V.プーチン大統領自らが声を枯らして投資を呼び込む極東の先進特区では、案件総数166に対し、中国企業はその中の8件にしか参画しようとしていない。
 そして、金融分野では、在露の中国商銀子会社がすでに昨年の11~12月に資産を大きく減らした(中国銀行で45.3%減)と報じられる。

 こうなると、資源価格下落や中国経済の成長鈍化といった説明そのものまで、何やら胡散臭く見えてしまう。
 ロシアの失望感は、
 「中国にはロシアをその経済苦境から引っ張り上げる積りなどない、
 結局中国も融資などでは対露制裁の影響を恐れてしまう」
といった評に行き着く。

■中国、ロシア経済を酷評

 だが、中国側にも言いたいことは山ほどある。
 昨年の12月に新華社のロシア語版は、ロシア経済はお先真っ暗、との論評を掲載した。
 その中でロシアは、経済戦略が行き詰まり、脱工業化と農業停滞の中で出口なきシステム危機に陥っている、と酷評される。
 こんな危ないところにどうして投資などできようか、だ。
 経済制裁を受ける身で、かつ通貨・ルーブルが大幅下落と来ては、投資を考える側のリスクは際限なく膨れ上がってしまう。

 より問題なのは、ロシアのD.メドベージェフ首相が訪中で李克強首相と経済協力拡大に向けた会談を行ったまさにその日(12月17日)に、この論評が公表されたことだろう。
 あからさまな中国側の意思表示とすら受け取れる。
 ロシアでは早速これに対して、露中経済関係の歩みの鈍さの原因をロシアに押し付けようとの意図だ、とかの指摘が出される。

 5月末にソチで行われた露中の経済会議では、双方から実務面での問題提起がなされ、中国側からはロシアの諸手続きでの官僚主義、特に労働許可取得の難しさが批判される。
 中国人は、そこにロシア官憲の対中警戒心を感じ取ってしまう。

 在露中国企業家連合の会頭は、別の場でロシア人を前にして、
 「君らは我々のカネを愛しても、我々を愛しているわけではないだろう」
と言い放ったという。
 よほど日頃のフラストレーションが溜っていたようだ。
 冒頭に紹介した傅瑩は、
 中国からの移民問題や中央アジアが中国経済圏に飲み込まれてしまうことへロシアが懸念を持ち、
 そして中国も1800年代に多くの領土をロシア帝国に奪われたことへのこだわりを持つ、
という双方の問題が存在することを認めながら、それらが両者の関係を阻害するには至っていないと結論付ける。
 しかし、例えばウラジオストクがかつては中国の町であり、それがいつかは必ず中国に戻って来ると信じる向きが中国にはまだ多い、などとメディアが思い出したように書けば、それが気にならない方がおかしい。

 この点を意識してか、中国社会科学院ロシア・東欧・中央アジア研究所の李勇泉(Li
Yongquan)教授は、
 極東での中国の拡張をロシアが懸念する限り投資流入はあり得ない
と指摘する。
 ロシアが懸念するような材料など、実際にはない、がその趣旨だろう。
 中国の大学で働くロシアの女性学者は、
 「中国人の知るロシアとは、プーチン大統領とロシア美人だけ」
とコメントしている。
 無知や無関心は、それはそれで問題だろうが、中国人の中にいれば、少なくとも彼らがロシアから目を離さず、近いうちに押しかけてきてその領土を持って行ってしまう、というわけでもない、と分かってくる。

 あれやこれやで露中両国民の相互理解がまだ十分ではなく、それが少なからず経済実務に支障を与えていることは、どうやら間違いないようだ。
 しかし、それは露中間に限った話でも別段なく、双方が付き合いの経験値を積んでいく中で、やがて時が解決してくれる部分もあると考えれば、悲観ばかりに暮れる必要もないのだろう。 

■大局観と抽象化が十八番のロシア

 経済外交の分野で東進政策や対中接近が必ずしも円滑に進んでいないなら、何がロシアの根本問題なのかをロシアの論者は突き詰める。
 この種の大局観にあふれ、そして時には抽象化が独り歩きする分析はロシア人の十八番だ。

 ガブーエフは、
 東進=対中接近が、が単に反西側の反射なのか、それともそれ自体に意味があるものなのか、
についてロシアが結論を出せていないことが問題だと述べる(腰が座っていないという意味では、ロシアが本気で東に向かうのかに半信半疑の中国も同様)。

 似たような趣旨を、外交雑誌編集長のF.ルキヤーノフも述べている(参照1、2)。

●:ソ連崩壊以降の世界の状況は、崩壊前後のソ連・ロシアの指導層の誰もが考えもしなかった形で進んでおり、ロシアはその中で一種の自己喪失(Identity crisis)に陥っている。

●:「絹の道」への中国の膨大なインフラ投資はロシアへの挑戦でもあるが、同時にロシアに参画の機会も与えるはず。
 だが、その中でどう自分を位置付けるかがまだ決まっていない。

●:ロシアは西側への従属を拒絶するが、だからといって東方で諸々での指導的立場に立てるわけでもない。
 従って、その存在を発揮することも叶わないという中途半端な状態に置かれている。

 トレーニンも、ロシアにアジアに向けた戦略と呼べるものはなく、あるのは「de facto」戦略、すなわち国ごとの個別の関係だけ、と切って捨てる。
 プーチンの次元で、ロシアを世界的な存在とすることや、東シベリア/極東の経済を発展させ、アジア・太平洋地域での主要プレーヤーとなることが目標となってはいても、それに見合った戦略に落とし込まれてはいないということになる。
 要は何が理由であろうと、戦略不在ということなのだ。
 そうさせているのは、
 自分はこうだと他国に自信をもって主張できる何かがロシアに欠けている
からなのだろう。

 その欠けているものとは恐らく、
 まずは経済力、
 そしてさらには自国への自信そのものの礎となるはずの国の一体性
ではないのか。
 プーチンがある日突然いなくなってしまったならロシアは空中分解か、などと怯えるようでは一体性も何もあったものではない。
 だから多くの論者は、経済外交をやるならとにもかくにも自国の経済状況を改善せよ、相手が中国であろうとなかろうと、ロシアの投資環境を改善せよ、と主張する。

 また、ガブーエフやルキヤーノフは、ロシアの思考回路での問題点を以下のように衝く(参照1、2)

●:偉大なロシアがアジアで単なる原料供給国であってはならない、といったロシアの確信(命題)が物事の進展を阻害している。

●:経済力で中国の弟分になりたくはない、と言うが、中国がもし1970年代以降の対米関係で弟分に成り下がることを単なる感情論で拒んでいたなら、今の中国経済の奇蹟はなかっただろう。

●:欧州もロシアに比べてはるかに経済規模は大きいが、彼らに弟分とはみなされてはいないではないか。

■同盟関係には程遠い

 トレーニンの“地政学的”な分野に立ち返ると、露中が将来的に同盟関係にまで進むかどうかが議論される。
 彼の論に従えば、2014年からロシアの東進政策と対中接近が喧伝されたものの、これまでのその実態は、トップ同士の相互理解進展、中国企業のロシアの資源へアクセス拡大、ロシアによる人民解放軍への最新兵器供与、中国と欧州を結ぶ交通路確立でのロシア内インフラの利用、といった程度に終わっており、同盟関係には程遠い。

 彼や他の多くの論者が述べるように同盟関係が成り立っていないとなれば、それはなぜか、となる。
 その答えには、
 両者間に信頼が欠如しているから、といった厳しい発言(前駐露大使・李輝(Li Hui))や
 両者の経済力格差、
 それに中国がロシアを基本的にはアジアではなく欧州の国家とみなし、それゆえに自分がコントロールできる相手でもないと思っているから、
などが出されている。

 李勇泉は、どうやらロシアが本気で東に向かっているとはあまり信じられないようで、その東進政策の意味は、せいぜいが中国の存在によるロシアのエネルギー資源輸出多岐化の実現、と述べている。
 これに対して、欧州国家であることが理由でロシアとの距離があると中国が見るなら、中国はGeo-economic playerではあっても、まだGeo-political playerではない、とトレーニンは評する。

 傅瑩もそうだが、ロシア外交評議会・アジア太平洋地域プログラム担当のL.ヴィクトローノヴァは、必要がないから同盟関係に立たないだけで、もしその必要が生じるなら2001年締結の「露中善隣協力条約」で対処可能と説く(同条約第9条 では、一方が第三国から脅威を受けた際の協議条項が規定されている)。
 できないのではなくその必要がないから、とは、俗世間でも負け惜しみで使われることが多い説明のような気もするが、自分を犠牲にしても相手のために、が国際政治の場では夢物語にすらならない現実を踏まえれば、露中間で同盟が成るかどうか、という問いは、当の露中よりも、この2カ国に同盟を組まれたなら不都合と思う他国の詮索の産物なのかもしれない。

 それでも、対米・対西側への出方でのこれまでの両国の差が、鉄の同盟には至らない理由であったことも事実だろう。
 中国が主として経済でのつながりの面から、ロシアほどには米国や西側との対立を求めてはいない、とは多くのロシアの論者も認めてきた。

 米露間の冷戦思考継続に中国は驚くのみ、と書く傅瑩は、ウクライナ問題で中国は、旧ソ連内でのロシアと他国との歴史的な関係を考慮しても、同国の独立・主権・領土の一体を尊重すべき、しかし、西側の教唆で発生したカラー革命やNATO(北大西洋条約機構)の東進には疑問を呈さざるを得ない、という中国の姿勢を鮮明に述べている。
 国内にウイグルや民主化といった問題を抱える以上、それらを後押しするような動きや概念は、それが米露にどう関わる話であろうと片っ端から否定していくしかない。

 EUやTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)への対応でも両者に差が見られる。
 そして、中国が「一帯一路」や「絹の道」構想を推し進める中央アジアも、露中関係が微妙な地域ということになる。
 ロシアは「絹の道」への参画に2014年までは前向きではなかったし、これに安全保障問題にも関係する上海機構が絡んでくると、即座に中国と手に手を取って、というわけにはいかなくなる。

■度重なる首脳会談

 そのため、この6月にウズベキスタンで行われた上海機構首脳会議が「絹の道」と上海機構の連結という点では大した成果を挙げなかったことに、ロシアは内心では安堵していると、オスロの国際平和研究所上級研究員・P.バーエフは分析している。
 こうした第三国への対応で、露中は今後接近していけるのだろうか。

 プーチンはこの6月にタシケント、北京と場所を変えて2度も続けて習近平と会談した。
 それにしては具体的な大型契約の新たな締結発表などがなく、ロシア側の失望も買ったのだが、今回はどうやら習近平の方がプーチンを無理矢理にでも北京に呼び込んだようだ。

 WSJ(ウォールストリート・ジャーナル)は、中国が南シナ海関連でロシアを味方にせねばならない立場に追い込まれたとして、ウクライナ問題で中国が取った対応(制裁に加わらず、批判せず)と同じようにロシアが南シナ海問題で行動することを習近平が強く期待している、との観測を報じる。

 南シナ海を巡る対米・対隣国の関係が緊張する中で、仲間は1人でも多い方がいい。
 そして9月の杭州でのG20サミットでは、中国の株を上げるためにプーチンにも一役買ってもらわねばならない・・・。
 最近開催されたASEAN(東南アジア諸国連合)外相会議での
中国外相のなりふり構わぬ動きを見れば、習近平がそう考えていることも容易に察しが付く。
 ロシア外務省は、公式には南シナ海での問題に対し中立の姿勢を崩してはいないが、従来に比べれば中国の肩を持つ姿勢が目立つようになる。
 ならば、これが首脳会談で中国側が得た最大の成果だろう。

 トレーニンは、露中間の経済関係は実利主義に基づき政治は絡まない、と断じているが、バーエフは、ロシアの南シナ海問題での協力への見返りに、ヤマールLNGへの中国からの融資120億ドルを習近平が認めた、と見る。
 これが“プーチンの案件”だからである。

 大西洋評議会の上級研究員・S.ブランクはつとに、「露中関係がしょせんは便宜的関係に終わる」という米国に多い見方が、中国がロシアを引き留めるために譲歩したり、ロシアも対中関係維持のために第三国との関係悪化も辞さない行動に出ている、といった最近の露中接近を見逃している、と指摘している。 

 物事は既成概念を超えて動き出しているのかもしれない。
 そして、それが南シナ海の問題のみならず、千島列島でのロシア軍基地建設や、韓国へのTHAAD(終末高高度防衛ミサイル)配備にまでつながっているのなら、日本にとっても露中関係は他人事ではなくなる。

 もっとも、ロシアでは外交政策で指導層の意見がまとまり切っているわけでもなく、中国も対米で今のところは手一杯の状態、そして何より米国の次期大統領がどのような外交政策に乗り出してくるのか予断を許さない以上、露中関係に当面は大きな変化はないだろう 
- そうロシア科学アカデミー・極東研究所のV.カーシンは予測する。 

 動きがない、に越したことはない。
 それが米国の新政権が発足する来年の1月までの話でしかなくとも。




【自ら孤立化を選ぶ中国の思惑】



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