これから周辺国は九段線は無効という前提で動き始めるであろう。
中国がいかに言おうと九段線を南シナ海周辺国が受け入れることはまずもってない
ということになり、そのとき、中国はどう対応するかである。
「いじめ」という学校問題を政治に当てはめて考えるのも一つの方法である。
下のニュースは日本と中国のいじめの違いを述べている。
これを中国と周辺国との関係に置き換えるととんな映像が飛来してくるだろう。
『
サーチナニュース 2016-07-14 13:53
http://news.searchina.net/id/1614199?page=1
暴力で短期的に相手をいじめる中国人、
長期的にじわじわいたぶる日本人=中国メディア
時事的な問題というよりも、すでに常に日本社会に付きまとう深刻な問題と化している、学校や職場などにおけるいじめ問題。
実はいじめは中国にも存在する。
中高生が学校で他の生徒からビンタを食らったり、土下座させられたりする動画がネット上に晒され、その都度問題になるのだ。
ただ、その性質はやはり日本のものとは違うという認識のようである。
中国メディア・騰訊網は9日、
「日本社会の陰鬱ないじめ文化」
と題した文章のなかで、日本の学校におけるいじめの特異性について解説している。
日本の「陰湿ないじめ文化」の形成する要因として
「空気を読む」、
「本音と建前」
を挙げ、
「建前」として「いじめはダメ」と言いながらも、「本音」では「誰かをいじめたい」と考えていると説明。
このような空気がいじめ事件の発生を助長しており、
そのターゲットが「空気の読めない」人物になる
のだと論じた。
また、学校におけるいじめが陰湿化した背景には「偏差値」の存在があるという見方もあると紹介。
成績の良い生徒が不満を持つと、成績の悪い「劣等生」をそのはけ口にする傾向が生じるとするとともに、勉強のみならず、運動神経や、声の大きさ、体格といった部分にまではけ口の対象が広がっていくとした。
さらに、
「弱い者いじめ」は全世界の共通点であるものの、
特に日本の場合は「同じであること」を求める圧力が非常に強いため、
一たび「違う」となるとすぐさま凄惨ないじめの対象になってしまうと説明。
そしていじめは多人数で長期的に、軽度かつ陰湿な方法で行われることとなり、しかも悲しいことに周囲の生徒に加え教員からさえも「見てみぬふり」をされてしまうのである、と論じた。
中国の学校で繰り広げられるいじめは、ストレートかつ暴力的。
特に女子生徒が殴る蹴る、服を脱がすといった行為を堂々とやり、
しかも動画を撮影してネット上に流すというのは、
日本人から見ると逆に恐ろしさを感じる。
一方、日本のいじめはひっそりと、精神的な苦痛を与えるケースが多く、中国とは対照的だ。
そこには文化的な違いが存在するわけだが、どんなタイプであれ、いじめは推奨されるべき行為ではない。
両国において、いじめ問題と向き合っていく日々はこれから先も続くのである。
』
この記事を読むと
「日本が中国をいじめる」方法と、
「中国が周辺諸国をいじめる」方法
の違いの差が少しは分かってくるかもしれない。
中国は周辺国をストレートで暴力的にいじめる。
よって中国のいじめ相手は「中国より弱いヤツ」という条件がつく。
自分より強いヤツとは決してやらない。
というより、やれない。
日本は中国を、いたぶるようにいじめる。
真綿で締めるようにいじめる。
裏を返すと、強いヤツをいかに密かにいじめるかという策があるということになる。
『
ロイター 2016年 07月 16日 12:04 JST Pete Sweeney
コラム:南シナ海判断で中国敗北、
アジア貿易に新たな脅威に
[香港 14日 ロイター BREAKINGVIEWS] -
南シナ海の領有権をめぐる常設仲裁裁判所(オランダ・ハーグ)による裁定は、アジアの貿易にとって新たな脅威となるだろう。
南シナ海の大半に主権が及ぶとする主張を退けられた中国のプロパガンダは裁定が出た後、激しい反撃に出ている。
怒り心頭の国家主義者らは、非難の矛先をフィリピン、日本、米国に向けたがっている。
軍事力による威嚇はほぼ無害であっても、経済的な反動はすでに弱っていた地域貿易にさらに追い打ちをかけることになる。
そのような戦術は裏目に出かねない。
尖閣諸島(中国名:釣魚島)をめぐる中国と日本の緊張は2012年、中国本土における反日デモやボイコット、日本へのレアアース(希土類)輸出の一時停止につながった。
その後、デモは鎮静化したが、アジアの2大大国である日中間の貿易と投資が受けたダメージは相当大きかったように見える。
為替変動や一段の景気減速が要因であることも確かだが、2015年の2国間貿易額はドルベースで11%超の減少、今年はこれまでのところ、5.1%減となっている。
他の周辺国に対する中国の取引も減少している。
東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国との間では、輸出・輸入ともに今年は約8%減少している。
他国をこらしめる中国の能力には限りがある。
例を挙げるなら、「爆買い」する中国人観光客の流れを止めるという脅しはむなしいことが証明された。
歴史的な敵国である日本への訪問者数は、過去2年で急増している。
日本は2015年、前年比85%増となる400万人近くの中国人観光客に査証(ビザ)を発給した。
近年、世界全体の輸出額に中国が占める割合は増加しているものの、近隣諸国からの輸入は減少している。
輸出に依存するアジア諸国にとって、それはさらなる圧力となっている。
一方で、中国の経済的台頭は、当初期待されていたよりも地域に与える恩恵が少ないのではないかと疑う声もある。
どちらにせよ、さらなる貿易摩擦はアジアが最も望まないことだろう。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
』
時事通信 7月16日(土)8時29分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160716-00000030-jij-int
米、真価問われるアジア戦略
=南シナ海問題・仲裁判決
米政府は12日の南シナ海問題をめぐる仲裁裁判所の判決を受け、フィリピンと中国の双方に受け入れを求めた。
ルールに基づく東アジア域内の秩序づくりは、オバマ政権が掲げるアジア太平洋でのリバランス(再均衡)政策の柱。
一方、法の支配確立が拒否されれば「米国の信頼性が問われる」との懸念も出ている。
◇「リトマス試験」
「裁判所から連絡があれば、フィリピンは直ちに日米へ知らせることになっていた」。
日米外交筋によれば、両国は判決を受けて多数の関係国から支持を募り、中国に外交圧力をかける方針で調整してきた。
中国との軍事的衝突が非現実的である以上、国際法・規範に基づいた秩序に組み入れるしかないためだ。
オバマ大統領は2月、「地域秩序づくりのビジョン共有」のため、東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳をカリフォルニア州に招待。
5月にはベトナムに対する武器禁輸を全面解除するなど、入念に布石を打った。
中国の支配下にある南シナ海の人工島などから12カイリ内に米艦船を送り込む「航行の自由作戦」も3回実施した。
ただ、中国側は既に南沙(スプラトリー)諸島で12.14平方キロを埋め立てた。
アボット前オーストラリア首相の補佐官を務めたアンドリュー・シェアラー氏は、取材に「現在のアジア太平洋の勢力均衡でルールを確立できなければ、今後さらに困難になる。
これは米国の地域への一貫性や決意を試すリトマス試験だ」と警告した。
◇大陸国家vs海洋国家
中国は、仲裁裁判をめぐる一連の動きを米国による封じ込め策とみて、警戒を強めてきた。
判決を受け入れる考えはなく、在韓米軍への地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」配備の動きを含め「米国の戦略目標は、地域での主導的立場の維持にある」(共産党機関紙・人民日報)と反発する。
一方で仲裁手続きを拒否する中国の主張を支持するよう各国に働き掛け、国営メディアは「60カ国以上が支持した」と伝えた。
しかし、米シンクタンク「AMTI」によると、実際に
★.中国支持を表明したのは10カ国にとどまり、
★.40カ国は判決への支持を明らかにしている。
中国の習近平国家主席は6月下旬、ロシアのプーチン大統領と会談し、結束を確認した。
中国の専門家は「アジアで大陸国家(中ロ)と海洋国家(日米)との対立構図が生まれつつある」と指摘する。
中国で開催する20カ国・地域(G20)首脳会議を9月に控え、議長国として外交の巻き返しを図るとみられる。
◇ASEANは股裂き状態
「判決を支持するいかなる共同声明も出さない」。
親中派と目されているカンボジアのフン・セン首相は6月の演説で、ASEANが判決を支持する共同声明を発表することに反対の立場を鮮明にした。
外交筋によると、ASEAN各国は日米と中国からそれぞれ支持と反対を求められ、股裂き状態となった。
ASEAN議長国で親中派のラオス高官も最近「ASEANのコンセンサスに従う」と発言。
ASEANは全会一致を原則とするが、カンボジアが反対しているので共同声明は出せないとの考えを示したと受け止められている。
今月下旬にはラオスでASEAN関連の外相会議が開かれる。
南シナ海問題で結束が試される場になるが、
「ASEANの声は壊れたレコードのようなものだ。
中国と戦う能力はない」(関係国の国防筋)
と、南シナ海問題をめぐるASEANの「不協和音」に自嘲めいた声も出ている。
』
『
WEDGE Infinity 日本をもっと、考える 2016年07月16日(Sat) 城山英巳 (時事通信社外信部記者)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/7314
「全面敗北」皮肉な結果を生んだ強国路線のツケ
南シナ海仲裁判決を絶対受け入れない習近平の危機感
オランダ・ハーグの仲裁裁判所は7月12日、南シナ海における中国の主権を全面的に認めない判決を下した。
国際社会や海外メディアは判決前から、中国共産党・政府が、国際法に基づく裁決を尊重すべきだと訴え、中国が国際ルールや国際機関を尊重する「責任ある国家」がどうかの試金石になると指摘していた。
しかし中国は西側諸国から圧力が加えられればより意固地になり、独自の道を歩む。習近平指導部は「宣伝戦」「外交戦」「軍事戦」を駆使し、伝統的な「統一戦線」と「持久戦」で危機を乗り切る戦略を展開するだろう。
■フィリピンと「一戦の覚悟」
判決は中国の行動が国連海洋法条約違反だと訴えたフィリピンの勝訴、訴えられた中国の「全面敗北」となった。
中国が南シナ海の大半を囲み、「歴史的権利」と主張する「九段線」に関しても「国際法上の根拠がない」と一蹴する、という予想以上に踏み込んだ内容となった。
もはや国際法の論理で中国政府が南シナ海をめぐる従来の主張を押し付けることはできなくなった。
「中国の夢」「中華民族の偉大な復興」という政治スローガンを掲げ、2012年11月に登場した習近平共産党総書記(国家主席)は、歴代指導者の誰よりも主権や領土に固執し、決して妥協を許さない指導者だ。
にもかかわらず、今回は国際社会に主権を否定される皮肉な結果になった。
これは習主席が進めた露骨な強国路線に周辺国が反発したツケと言えた。
北京にいた筆者が、南シナ海の異変が表面化したのは12年4月、スカボロー礁周辺で中国の海洋監視船とフィリピンの艦船が2カ月にわたりにらみ合いを続け、中国側が事実上支配してしまったことだった。
中国政府は同年6月、南シナ海に三沙市を創設したと突然発表。
胡錦濤・温家宝時代末期だが、次期総書記に内定していた習近平国家副主席(当時)が内政・外交の実権を握っていた。
その頃、北京の共産党関係者は「中央は南シナ海でフィリピンと一戦交えることも辞さない覚悟だ」と話していたのを覚えている。
■妥協許さない政治風土
強国路線をむき出しに、ナショナリズムを高めつつ、「中国が新たな秩序をつくり、他国はそれに従え」と言わんばかりの中国対外戦略の変化が表れたのは2008年から09年にかけてだ。
08年の北京五輪を一応は成功させ、リーマンショックからいち早く抜け出した自信を背景に、習氏は
「社会主義体制の絶対堅持」
「領土・主権の断固防衛」
ということを最優先に、
国内では「体制に脅威を与える言論や人権派への激しい弾圧」、
国際社会では「野心的な海洋進出」
に関して手段を選ばなくなった。
朝日新聞は仲裁判決を受けて13日付朝刊の社説で
「国際法による秩序の発展に責任をもつ国になるのか、
それとも秩序に挑戦する国か。
中国の習近平政権は、その岐路にあることを自覚すべきである」
と指摘した。
しかし
習近平は国際孤立を深め、国際的イメージを損なうと分かっていても、この二つの問題で決して妥協することはない。
その背景には、現在の共産党独裁体制が受ける脅威として、
★.一つには「(共産党体制と対峙する)民間社会の台頭」、
★.もう一つは「海外敵対勢力の浸透」に強く警戒していること
がある。
しかし特に後者の問題で妥協すれば、「売国奴」とみなされる。
後世の名声に最も敏感となる中国の最高指導者として「妥協」は非、「抵抗」は正義とみなされる。
西側の諸国・価値観や領土・主権が侵害される事態への徹底した抵抗が美化される政治風土は変わっていない。
■天安門事件以降の最大の外交打撃か
「巨大な外交的打撃だ。
おそらく1989年以来で最大のものの一つだろう」。
香港英字紙サウス・チャイナ・モーニングポストは、仲裁判決「全面敗訴」が中国にとって89年6月の天安門事件で西側諸国から受けた制裁によって国際的孤立に陥った際に匹敵するものだという専門家の論評を掲げた。
当時の中国外交責任者・銭其琛の回顧録『外交十記』によると、最高権力者・鄧小平は、同年7月に極秘訪中したスコウクロフト米大統領補佐官(国家安全保障担当)に対してこう言い放った。
「中国人は中国人としての気概と気骨を持たなければならない。
解放後、我々は米国と戦争した。
あの時、我々は絶対的に劣勢だったが、恐れたことはなかった」
「中華人民共和国の歴史は、共産党が人民を指導し、抗米援朝(朝鮮戦争)も加えれば25年間も戦争を続け、2000万人以上に上る犠牲の上にやっと勝ち取ったものだ。
中国の内政にはいかなる外国人も干渉させない」
89年11月、中国指導部の招請に応じて北京を訪問したキッシンジャー米元国務長官も回顧録で、銭が
「中国は自らの国益によって規定される自らの歩調で動き、外国人の指図は受けない、として、説明に耳を貸そうとはしなかった」(『キッシンジャー回顧録中国(下)』岩波書店)
と明かした。
当時も今も共産党指導部は、天安門事件や南シナ海問題などは、体制・主権問題に関わる内政問題であり、外交マターと捉えていない。
他国と比べても、国益と完全一致しない限り、外交は一歩も前進しない傾向が強い。
今回の仲裁判決でも、「外圧」を受けた形での妥協は決して選ばない。
■尖閣国有化時と似た事後処理
中国政府は、仲裁判決の結果を「想定内のものだ」と内外に「中国の余裕」を感じさせる宣伝工作を重視した。
「紙クズ」「茶番」と強気の発言を繰り返した中国指導部も実は、内心では屈辱的な仲裁判決に対する対応を間違えれば、国際的孤立は深まり、中国の国益を損なうと憂慮しているのは間違いない。
中国外交は突発事態への「戦略」は苦手でも、予想される事態に対して自国の主張が崩れないよう独自の論理を組み立てる「事後処理」には長けている。
実は仲裁裁判判決後の対応は、日本政府による尖閣諸島国有化(12年9月)の際の経過と似ている。
最初に着手したのは「宣伝工作」。
例えば、仲裁裁判所の判決内容の発表は日本時間午後6時だが、中国国営通信・新華社が「不法無効ないわゆる最終採決を出した」という至急電を配信したのは英語版が発表前の午後5時39分4秒、中国語版が同6時00分12秒。
極めて迅速な反応だ。
中国政府はもともと自分たちに不利な裁定になることは掴んでいたが、発表前に当事国に通告された内容を基に新華社を通じて公表した。
「紙クズ」と言いながら、判決がもたらす重大性やセンシティブさというものを「スピード」によってまずは国際社会に、続いて国内に認識させようとしたのだ。
新華社通信を見ると、その後も、中国政府声明(6時44分)、外務省声明(同48分)、国防省声明(同57分)と相次ぎ発表。
続いて習近平が訪中していた欧州連合(EU)のトゥクス大統領との会談で仲裁判決に触れ、
「中国は南シナ海領土・主権や海洋権益の問題で、いかなる状況下でも裁決の影響を受けず、裁決を基にした主張や行動を受け入れない」
と反発した。
李克強首相もトゥクス氏に「国際法に基づき、交渉協議を通じて争いを平和的に解決する」という公式見解を表明した。
2人に先立ち王毅外相の談話も公表され、王氏は
「仲裁案件は徹頭徹尾、法律の衣をまとった政治的茶番であり、この本質は徹底的に暴露されなければならない」
とより強い言葉で反論した。
公式声明に続き、外国要人との会談で最高指導部が問題に触れ、問題のステージを上げ、「譲れない問題」だとアピールするのも尖閣諸島国有化の際の対応を踏襲した。
声明に続き「白書」を発表して自国の立場をさらに宣伝する手順も同じである。
■日米は「敵」、フィリピンを「味方」に
外交工作は宣伝工作とリンクしているが、外務省報道官談話を見れば一目瞭然だ。
仲裁判決の順守を求めた岸田文雄外相の発言に対して、
「仲裁裁判の裁判官を選定した国際海洋法裁判所所長だった柳井俊二氏が、安保法制をめぐる安倍晋三首相の私的諮問機関の座長を務めた」
と指摘し、
「仲裁裁判は最初から政治問題化していた」
と反発。
また仲裁判決に「法的拘束力がある」と述べた米国務省報道官の声明には
「米国は国連海洋法条約に加盟していないのに、とやかく言う資格はあるのか」
と反論した。
一方、中国政府は、提訴の当事国であるフィリピンの現政権には批判の談話を出すどころか、13日に発表した白書のタイトルを「中国は南シナ海の争いをフィリピンとの交渉を通じて断固解決する」とした。
50ページの冊子でかなり前から判決を予想して作成したとみられる。
習近平は、ドゥテルテ新大統領就任の祝電で「中国とフィリピンは引っ越しできない近隣だ」と持ち掛けた。
これは、日本と接近したい時にもよく使ったフレーズで、「秋波」に近い決め文句だ。
中国政府は、仲裁判決を棚上げしてフィリピンとの交渉を進めると断言しているが、
ドゥテルテ政権は自分たちに有利な判決に基づき対中交渉を進める構え。
習近平は経済協力などをちらつかせ、ドゥテルテ大統領や特使を早期に北京に招待するなどして抱き込み、仲裁判決に関係なく二国間で交渉が進められることを示し、日米などが口出しする余地をなくしたい狙いだ。
さらに中国外務省報道官は、実効支配する太平島が「岩」と位置づけられ仲裁判決に反発した台湾に向けて
「海峡両岸の中国人は、中華民族に残された祖先からの財産を共に守る責任と義務がある」
と呼び掛けた。「一つの中国」を受け入れず交流を停止した蔡英文政権に対して「共闘」を呼び掛けたと受け止められるコメントを素早く公表したことは注目に値する。
「敵」と「味方」に分け、味方を取り込み、敵を牽制する統一戦線工作は中国の伝統的な対外戦略だ。
共産党中央対外連絡部が12日、
「90カ国以上と230以上の政党・政治組織が南シナ海問題での中国の立場を公開で支持した」
と発表したのは、統一戦線を順調に進めているよう見せる宣伝工作の一環だ。
新華社は中国の支持者としてキルギス、モンゴル、パキスタン、バングラデシュの友好人士を挙げたが、どこをどう計算すれば、「90カ国以上になるのか」と疑問視するのが大勢の見方だ。
いずれにしても日米は「敵」であり、これまで敵だったフィリピンのほか、緊張関係にある台湾に近づき、日米を牽制しようとする外交宣伝を展開している。
しかし現実はどうだろうか。
国際法を極めて重視する欧州諸国が仲裁判決を軽視することはなく、東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国の中でも中国と距離を置く国が増えている。
結局のところ統一戦線工作はうまく進まないだろう。
ただ中国当局の宣伝に操作されている国内世論を有利な方向に誘導する効果はあるのかもしれない。
■「統一戦線工作」と「持久戦」
最後の「軍事戦」では、判決に先立つ7月5〜11日、南シナ海で大規模な軍事演習を展開し、軍事力で主権を誇示した。
また実効支配を示すため、12、13両日に南沙(英語名スプラトリー)諸島の滑走路で民間機が試験飛行を行った。
国際圧力に対抗するため、習指導部はますます、南沙諸島での軍事拠点化などを今後も続けるのは間違いない。
中国の人工島周辺への「航行の自由作戦」を強化する米軍との武力衝突の可能性は以前より高まったと言える。
なぜなら判決への妥協が許されない政治環境の中、より強い決意で領土・主権問題に臨むことになった習指導部が「引く」という選択肢はあり得ないからだ。
当面は「宣伝戦」と「外交戦」を前面に出し、国際社会との過度な摩擦を避けるだろうが、機に及んで「当然権利はあり、我々の総合的判断で決まる」と主張する南シナ海防空識別圏の設置も中期的な目標として念頭に置いているとみられる。
長期的な持久戦で主権を主張し続け、その裏で南シナ海の実効支配を既成事実として積み重ねていく戦略も変わらないだろう。
■自ら煽ったナショナリズムに怯える
習指導部が国際社会での孤立と同様に、より危機感を感じているのは、もしたかしたら国内の反応だったのではないか。
習近平は就任以来、「中国の夢」などを掲げて国民向けに民族・愛国感情を煽ってきた。
そのナショナリズムが仲裁裁判の全面敗訴によって火が着き、熱しやすい国民が、
習指導部の対国際社会「弱腰」姿勢への追及を強め、
その結果として批判の矛先が自分に跳ね返ってくる事態を恐れた。
インターネット上で話題になった「緊急通知」がある。
発出したのは、北京市応急弁。
首都で緊急突発事件が発生した際に対処する部署だ。
緊急通知は12日午前8時から17日24時(18日午前零時)まで各部門に対して応急対策について24時間態勢で「戦時状態」に入るよう指示している。
北京市当局はフィリピン大使館前で警戒に当たる警官数を大幅に増やし、大使館前の道路を封鎖した。
本当にフィリピン大使館前に抗議に行くほど、判決に強烈な怒りを抱えた人たちがどれだけ存在するか定かではないが、当局は不測の事態を何としても避けようとした。
2012年9月の尖閣国有化に伴う大規模かつ暴力的な反日デモでは、北京の日本大使館が標的になった。
これは、地方の農村も含めて大量の人たちが動員され、
警察当局も黙認した官製デモであったが、
全国レベルでナショナリズムが爆発した反日デモを容認した習近平は、自身が最高指導者に就く年5年に1度の党大会(12年11月)を控え、国内的に主権・領土問題で一歩も譲歩しない強力な権力を誇示する必要に迫られた。
しかし今回の仲裁判決でナショナリズムが高まり、社会にあふれる不満に火が着けば、「反共産党・政府」に転じかねないと神経を尖らせた。
政府・外務省・国防省、官製メディアが一体となって判決批判の宣伝キャンペーンを展開した背景には、国内向けに
「指導部はしっかり批判しているから、我々に任せてほしい」
というメッセージを送り、熱しやすい国民をなだめる狙いがあった。
■「中南海」にこそ問題
共産党指導部にとって天安門事件以降も、欧米など西側諸国から一斉批判を浴びた事件は数多い。
民主派作家・劉暁波氏の拘束と懲役11年判決、
その後のノーベル平和賞受賞(2008〜10年)に対する反応もそうだし、
最近では人権派弁護士やNGOに対する弾圧、
中国共産党批判本を扱う香港の書店関係者の越境連行
もその一例だ。
今回の南シナ海の仲裁判決をめぐっても、改革派知識人の間から出てくる指摘は、
「法の支配」を無視する共産党体制に本質的な問題がある、という観点だ。
ネット上では
「南海(南シナ海)問題はない。
あるのは中南海(共産党政権)問題だけだ」
という皮肉あふれる書き込みが転送された。
北京の外交筋は
「南シナ海も、言論・人権弾圧も突き詰めれば、根っこは同じで、共産党体制に根本的な問題がある」
と漏らす。
中国共産党・政府が国際ルールや法の支配を無視するという事態は今に始まったことではない。
ただ習近平体制になってより鮮明になったのは、
「カネ」(経済支援)と力(軍事的な圧力)を駆使して
「中国共産党にすり寄る国家だけを抱き込んでいく」
という「歪んだ協調路線」だ。
既存の国際秩序から離脱する傾向は強まり、周辺国への高圧的な拡張路線を進めた結果として国際的孤立はますます深まっている。
どうすれば中国共産党が国内的にも、国際社会においても法を順守する国に変わるか。
仲裁判決に対して何と反発しようと、EUやASEANを含めた国際社会からそっぽを向かれることは避けたいのが習近平の本音だろう。
列強に侵略された屈辱の歴史がいまだトラウマとして残り、主権・領土問題になると過剰に反応する中国指導部に、仲裁裁判の判決に順守させるのはほぼ不可能に近い。
ただ強気の姿勢を誇示する習近平が国際的孤立を恐れる中、仲裁判決を切り札にして、「法の支配」が国益にかなうと、共産党・政府にも、国民にも認識させる外交努力が、日本を含めた国際社会に求められる。
そして国内でも今回の判決が「法の支配」を意識する転換点になることを期待したい。
』
『
朝日新聞デジタル 7月16日(土)13時50分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160716-00000039-asahi-int
「法に基づく解決重要」 ASEM声明、
南シナ海念頭
モンゴルで開かれていたアジア欧州会議(ASEM)首脳会合は16日、海洋の安全保障について「国連海洋法条約など国際法に基づく紛争解決が重要」とする議長声明を採択し、閉幕した。
声明は首脳らが「航行や上空飛行の自由を確保することを確認した」としている。
名指しは避けながらも、南シナ海での中国の領有権の主張を否定した常設仲裁裁判所の判決の尊重を促したとみられる。
安倍晋三首相は同日、首脳会合で仲裁判決に言及し、
「仲裁裁判所の判断は最終的なものであり、紛争当事国を法的に拘束する。
当事国が判断に従うことにより、紛争の平和的解決につながっていくことを強く期待する」
と述べた。
安倍首相は首脳会合で、
「航行、上空飛行の自由は地域の平和と安定にとり、死活的に重要だ」
として、関係国が平和的解決に向けて努力することの重要性を訴えた。
また、首脳会合はフランス・ニースで起きたテロ事件を受け、「凶悪で卑劣なテロ攻撃を強く非難する」との共同声明を発表した。
犠牲者やその家族に哀悼の意を表すとともに、欧州やアジアでテロが頻発している事態も踏まえ、「多発するテロ攻撃に力を合わせて立ち向かう決意を再確認し、テロの関与者を処罰する必要性を強調する」と訴えた。
』
● FNNニュース
『
Record china 配信日時:2016年7月17日(日) 7時10分
http://www.recordchina.co.jp/a144950.html
<南シナ海問題>
全面勝訴」でも比新政権は及び腰気味、
中国猛反発、
解決のめど全くたたず
2016年7月15日、南シナ海をめぐり、常設仲裁裁判所(PCA、オランダ・ハーグ)は12日、中国の領有権主張に異議を唱えるフィリピンの言い分に軍配を上げた。
「全面勝訴」にもかかわらず、比政府の反応は及び腰気味。
PCAに猛反発する中国が判決を受け入れるはずもなく、問題解決のめどが全く立たないためだ。
国連海洋法条約に基づく比側の仲裁申し立てを受けた今回の判決で、PCAは中国が歴史的権利と強調し、南シナ海での広範な領有権の根拠とした「九段線」について当初の予想に反して踏み込んで判断。
「この海域を排他的に支配してきた証拠はない」
と明確に否定した。
南沙(英語名・スプラトリー)諸島で中国が造成を進める7カ所の人工島に関しても、200カイリの排他的経済水域(EEZ)や大陸棚を構成する「島」ではないと判示。
うち人工島3カ所は満潮時に海面下に沈む「低潮高地」で、12カイリの領海も認められないとした。
判決はまた、中国が実効支配するスカボロー礁(中国名・黄岩島)で比漁民の伝統的な権利を侵害していると指摘。
さらに、人工島造成は付近のサンゴ礁に深刻な被害をもたらし、海洋法条約の環境保護義務に違反すると断じるなど、中国の主張はことごとく退けられた。
判決について、ヤサイ比外相は
「この画期的な判断が南シナ海をめぐる問題の解決に向けて重要な役割を果たすと確信している」
と歓迎。
同時に「詳細を検討する」とも述べ、慎重な構えをのぞかせた。
中国は「判決は無効で拘束力もない」と猛反発。
中国外務省の劉振民次官は13日の記者会見で、仲裁人(判事に相当)5人のうちの4人が当時、PCA所長だった柳井俊二・元駐米大使によって任命されたことに言及。
「今回の仲裁裁判は、完全に柳井氏が操っており、仲裁裁判の過程においても影響を与えた」
と、日本にも批判の矛先を向けた。
南シナ海問題について、6月末に就任したドゥテルテ比大統領は判決前、「
われわれは西側諸国の同盟だ」
として、アキノ前大統領の「対中強硬路線」の継承を示唆。
その一方で、中国との対話重視や南シナ海での共同資源探査の可能性にも言及していた。
中国が呼び掛ける当事国間の直接対話に応じるにしても、国際的な“お墨付き”を得た以上、それが開始の前提になる。
比外務省は14日、モンゴルで開催されるアジア欧州会議(ASEM)首脳会議で、「判決を当事者が尊重する必要性を訴える」との声明を発表。
ドゥテルテ大統領は中国との対話の糸口を探るため、ラモス元大統領に特使として訪中するよう依頼したことを明らかにした。
比メディアによると、仲裁申し立てを主導したアキノ前大統領は判決後、PCAの審理に尽力した関係者の名前を列挙し、「国の勝利だけでなく、全員の勝利だ」と称賛した。
中国との安易な対話開始に早速、クギを刺した形だ。
ドゥテルテ政権は国内的に盤石ではなく、議会などでは少数派。
当面は突出を避け、東南アジア諸国連合(ASEAN)各国などとも連携しながら、慎重に対応していく方針とみられる。
』
● FNNニュース
『
Record china 配信日時:2016年7月17日(日) 16時10分
http://www.recordchina.co.jp/a145086.html
<南シナ海>
中国支持のカンボジアに630億円プレゼント、
中国国民には知らされず―仏メディア
2016年7月16日、RFI中国語版サイトは記事
「李克強首相、フンセン首相と会談し6億ドル援助を約束
=南シナ海での支持に感謝か、中国メディアは報道せず」
を掲載した。
アジア欧州会議(ASEM)のため、モンゴル・ウランバートル市を訪問した中国の李克強(リー・カーチアン)首相とカンボジアのフンセン首相は15日に首脳会談を行った。
フンセン首相は、南シナ海問題は当事国同士の対話によって解決するべきだと発言。
国際仲裁裁判所の判決を暗に批判した。
カンボジア華字紙・華商伝媒によると、
カンボジアの支持表明に中国側は6億ドル(約629億円)もの援助で「返礼」したという。
ただし中国国営通信社の新華社は首脳会談については報じたが、資金援助については取り上げていない。
』
WEDGE Infinity 日本をもっと、考える 2016年07月16日(Sat) 城山英巳 (時事通信社外信部記者)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/7314
「全面敗北」皮肉な結果を生んだ強国路線のツケ
南シナ海仲裁判決を絶対受け入れない習近平の危機感
オランダ・ハーグの仲裁裁判所は7月12日、南シナ海における中国の主権を全面的に認めない判決を下した。
国際社会や海外メディアは判決前から、中国共産党・政府が、国際法に基づく裁決を尊重すべきだと訴え、中国が国際ルールや国際機関を尊重する「責任ある国家」がどうかの試金石になると指摘していた。
しかし中国は西側諸国から圧力が加えられればより意固地になり、独自の道を歩む。習近平指導部は「宣伝戦」「外交戦」「軍事戦」を駆使し、伝統的な「統一戦線」と「持久戦」で危機を乗り切る戦略を展開するだろう。
■フィリピンと「一戦の覚悟」
判決は中国の行動が国連海洋法条約違反だと訴えたフィリピンの勝訴、訴えられた中国の「全面敗北」となった。
中国が南シナ海の大半を囲み、「歴史的権利」と主張する「九段線」に関しても「国際法上の根拠がない」と一蹴する、という予想以上に踏み込んだ内容となった。
もはや国際法の論理で中国政府が南シナ海をめぐる従来の主張を押し付けることはできなくなった。
「中国の夢」「中華民族の偉大な復興」という政治スローガンを掲げ、2012年11月に登場した習近平共産党総書記(国家主席)は、歴代指導者の誰よりも主権や領土に固執し、決して妥協を許さない指導者だ。
にもかかわらず、今回は国際社会に主権を否定される皮肉な結果になった。
これは習主席が進めた露骨な強国路線に周辺国が反発したツケと言えた。
北京にいた筆者が、南シナ海の異変が表面化したのは12年4月、スカボロー礁周辺で中国の海洋監視船とフィリピンの艦船が2カ月にわたりにらみ合いを続け、中国側が事実上支配してしまったことだった。
中国政府は同年6月、南シナ海に三沙市を創設したと突然発表。
胡錦濤・温家宝時代末期だが、次期総書記に内定していた習近平国家副主席(当時)が内政・外交の実権を握っていた。
その頃、北京の共産党関係者は「中央は南シナ海でフィリピンと一戦交えることも辞さない覚悟だ」と話していたのを覚えている。
■妥協許さない政治風土
強国路線をむき出しに、ナショナリズムを高めつつ、「中国が新たな秩序をつくり、他国はそれに従え」と言わんばかりの中国対外戦略の変化が表れたのは2008年から09年にかけてだ。
08年の北京五輪を一応は成功させ、リーマンショックからいち早く抜け出した自信を背景に、習氏は
「社会主義体制の絶対堅持」
「領土・主権の断固防衛」
ということを最優先に、
国内では「体制に脅威を与える言論や人権派への激しい弾圧」、
国際社会では「野心的な海洋進出」
に関して手段を選ばなくなった。
朝日新聞は仲裁判決を受けて13日付朝刊の社説で
「国際法による秩序の発展に責任をもつ国になるのか、
それとも秩序に挑戦する国か。
中国の習近平政権は、その岐路にあることを自覚すべきである」
と指摘した。
しかし
習近平は国際孤立を深め、国際的イメージを損なうと分かっていても、この二つの問題で決して妥協することはない。
その背景には、現在の共産党独裁体制が受ける脅威として、
★.一つには「(共産党体制と対峙する)民間社会の台頭」、
★.もう一つは「海外敵対勢力の浸透」に強く警戒していること
がある。
しかし特に後者の問題で妥協すれば、「売国奴」とみなされる。
後世の名声に最も敏感となる中国の最高指導者として「妥協」は非、「抵抗」は正義とみなされる。
西側の諸国・価値観や領土・主権が侵害される事態への徹底した抵抗が美化される政治風土は変わっていない。
■天安門事件以降の最大の外交打撃か
「巨大な外交的打撃だ。
おそらく1989年以来で最大のものの一つだろう」。
香港英字紙サウス・チャイナ・モーニングポストは、仲裁判決「全面敗訴」が中国にとって89年6月の天安門事件で西側諸国から受けた制裁によって国際的孤立に陥った際に匹敵するものだという専門家の論評を掲げた。
当時の中国外交責任者・銭其琛の回顧録『外交十記』によると、最高権力者・鄧小平は、同年7月に極秘訪中したスコウクロフト米大統領補佐官(国家安全保障担当)に対してこう言い放った。
「中国人は中国人としての気概と気骨を持たなければならない。
解放後、我々は米国と戦争した。
あの時、我々は絶対的に劣勢だったが、恐れたことはなかった」
「中華人民共和国の歴史は、共産党が人民を指導し、抗米援朝(朝鮮戦争)も加えれば25年間も戦争を続け、2000万人以上に上る犠牲の上にやっと勝ち取ったものだ。
中国の内政にはいかなる外国人も干渉させない」
89年11月、中国指導部の招請に応じて北京を訪問したキッシンジャー米元国務長官も回顧録で、銭が
「中国は自らの国益によって規定される自らの歩調で動き、外国人の指図は受けない、として、説明に耳を貸そうとはしなかった」(『キッシンジャー回顧録中国(下)』岩波書店)
と明かした。
当時も今も共産党指導部は、天安門事件や南シナ海問題などは、体制・主権問題に関わる内政問題であり、外交マターと捉えていない。
他国と比べても、国益と完全一致しない限り、外交は一歩も前進しない傾向が強い。
今回の仲裁判決でも、「外圧」を受けた形での妥協は決して選ばない。
■尖閣国有化時と似た事後処理
中国政府は、仲裁判決の結果を「想定内のものだ」と内外に「中国の余裕」を感じさせる宣伝工作を重視した。
「紙クズ」「茶番」と強気の発言を繰り返した中国指導部も実は、内心では屈辱的な仲裁判決に対する対応を間違えれば、国際的孤立は深まり、中国の国益を損なうと憂慮しているのは間違いない。
中国外交は突発事態への「戦略」は苦手でも、予想される事態に対して自国の主張が崩れないよう独自の論理を組み立てる「事後処理」には長けている。
実は仲裁裁判判決後の対応は、日本政府による尖閣諸島国有化(12年9月)の際の経過と似ている。
最初に着手したのは「宣伝工作」。
例えば、仲裁裁判所の判決内容の発表は日本時間午後6時だが、中国国営通信・新華社が「不法無効ないわゆる最終採決を出した」という至急電を配信したのは英語版が発表前の午後5時39分4秒、中国語版が同6時00分12秒。
極めて迅速な反応だ。
中国政府はもともと自分たちに不利な裁定になることは掴んでいたが、発表前に当事国に通告された内容を基に新華社を通じて公表した。
「紙クズ」と言いながら、判決がもたらす重大性やセンシティブさというものを「スピード」によってまずは国際社会に、続いて国内に認識させようとしたのだ。
新華社通信を見ると、その後も、中国政府声明(6時44分)、外務省声明(同48分)、国防省声明(同57分)と相次ぎ発表。
続いて習近平が訪中していた欧州連合(EU)のトゥクス大統領との会談で仲裁判決に触れ、
「中国は南シナ海領土・主権や海洋権益の問題で、いかなる状況下でも裁決の影響を受けず、裁決を基にした主張や行動を受け入れない」
と反発した。
李克強首相もトゥクス氏に「国際法に基づき、交渉協議を通じて争いを平和的に解決する」という公式見解を表明した。
2人に先立ち王毅外相の談話も公表され、王氏は
「仲裁案件は徹頭徹尾、法律の衣をまとった政治的茶番であり、この本質は徹底的に暴露されなければならない」
とより強い言葉で反論した。
公式声明に続き、外国要人との会談で最高指導部が問題に触れ、問題のステージを上げ、「譲れない問題」だとアピールするのも尖閣諸島国有化の際の対応を踏襲した。
声明に続き「白書」を発表して自国の立場をさらに宣伝する手順も同じである。
■日米は「敵」、フィリピンを「味方」に
外交工作は宣伝工作とリンクしているが、外務省報道官談話を見れば一目瞭然だ。
仲裁判決の順守を求めた岸田文雄外相の発言に対して、
「仲裁裁判の裁判官を選定した国際海洋法裁判所所長だった柳井俊二氏が、安保法制をめぐる安倍晋三首相の私的諮問機関の座長を務めた」
と指摘し、
「仲裁裁判は最初から政治問題化していた」
と反発。
また仲裁判決に「法的拘束力がある」と述べた米国務省報道官の声明には
「米国は国連海洋法条約に加盟していないのに、とやかく言う資格はあるのか」
と反論した。
一方、中国政府は、提訴の当事国であるフィリピンの現政権には批判の談話を出すどころか、13日に発表した白書のタイトルを「中国は南シナ海の争いをフィリピンとの交渉を通じて断固解決する」とした。
50ページの冊子でかなり前から判決を予想して作成したとみられる。
習近平は、ドゥテルテ新大統領就任の祝電で「中国とフィリピンは引っ越しできない近隣だ」と持ち掛けた。
これは、日本と接近したい時にもよく使ったフレーズで、「秋波」に近い決め文句だ。
中国政府は、仲裁判決を棚上げしてフィリピンとの交渉を進めると断言しているが、
ドゥテルテ政権は自分たちに有利な判決に基づき対中交渉を進める構え。
習近平は経済協力などをちらつかせ、ドゥテルテ大統領や特使を早期に北京に招待するなどして抱き込み、仲裁判決に関係なく二国間で交渉が進められることを示し、日米などが口出しする余地をなくしたい狙いだ。
さらに中国外務省報道官は、実効支配する太平島が「岩」と位置づけられ仲裁判決に反発した台湾に向けて
「海峡両岸の中国人は、中華民族に残された祖先からの財産を共に守る責任と義務がある」
と呼び掛けた。「一つの中国」を受け入れず交流を停止した蔡英文政権に対して「共闘」を呼び掛けたと受け止められるコメントを素早く公表したことは注目に値する。
「敵」と「味方」に分け、味方を取り込み、敵を牽制する統一戦線工作は中国の伝統的な対外戦略だ。
共産党中央対外連絡部が12日、
「90カ国以上と230以上の政党・政治組織が南シナ海問題での中国の立場を公開で支持した」
と発表したのは、統一戦線を順調に進めているよう見せる宣伝工作の一環だ。
新華社は中国の支持者としてキルギス、モンゴル、パキスタン、バングラデシュの友好人士を挙げたが、どこをどう計算すれば、「90カ国以上になるのか」と疑問視するのが大勢の見方だ。
いずれにしても日米は「敵」であり、これまで敵だったフィリピンのほか、緊張関係にある台湾に近づき、日米を牽制しようとする外交宣伝を展開している。
しかし現実はどうだろうか。
国際法を極めて重視する欧州諸国が仲裁判決を軽視することはなく、東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国の中でも中国と距離を置く国が増えている。
結局のところ統一戦線工作はうまく進まないだろう。
ただ中国当局の宣伝に操作されている国内世論を有利な方向に誘導する効果はあるのかもしれない。
■「統一戦線工作」と「持久戦」
最後の「軍事戦」では、判決に先立つ7月5〜11日、南シナ海で大規模な軍事演習を展開し、軍事力で主権を誇示した。
また実効支配を示すため、12、13両日に南沙(英語名スプラトリー)諸島の滑走路で民間機が試験飛行を行った。
国際圧力に対抗するため、習指導部はますます、南沙諸島での軍事拠点化などを今後も続けるのは間違いない。
中国の人工島周辺への「航行の自由作戦」を強化する米軍との武力衝突の可能性は以前より高まったと言える。
なぜなら判決への妥協が許されない政治環境の中、より強い決意で領土・主権問題に臨むことになった習指導部が「引く」という選択肢はあり得ないからだ。
当面は「宣伝戦」と「外交戦」を前面に出し、国際社会との過度な摩擦を避けるだろうが、機に及んで「当然権利はあり、我々の総合的判断で決まる」と主張する南シナ海防空識別圏の設置も中期的な目標として念頭に置いているとみられる。
長期的な持久戦で主権を主張し続け、その裏で南シナ海の実効支配を既成事実として積み重ねていく戦略も変わらないだろう。
■自ら煽ったナショナリズムに怯える
習指導部が国際社会での孤立と同様に、より危機感を感じているのは、もしたかしたら国内の反応だったのではないか。
習近平は就任以来、「中国の夢」などを掲げて国民向けに民族・愛国感情を煽ってきた。
そのナショナリズムが仲裁裁判の全面敗訴によって火が着き、熱しやすい国民が、
習指導部の対国際社会「弱腰」姿勢への追及を強め、
その結果として批判の矛先が自分に跳ね返ってくる事態を恐れた。
インターネット上で話題になった「緊急通知」がある。
発出したのは、北京市応急弁。
首都で緊急突発事件が発生した際に対処する部署だ。
緊急通知は12日午前8時から17日24時(18日午前零時)まで各部門に対して応急対策について24時間態勢で「戦時状態」に入るよう指示している。
北京市当局はフィリピン大使館前で警戒に当たる警官数を大幅に増やし、大使館前の道路を封鎖した。
本当にフィリピン大使館前に抗議に行くほど、判決に強烈な怒りを抱えた人たちがどれだけ存在するか定かではないが、当局は不測の事態を何としても避けようとした。
2012年9月の尖閣国有化に伴う大規模かつ暴力的な反日デモでは、北京の日本大使館が標的になった。
これは、地方の農村も含めて大量の人たちが動員され、
警察当局も黙認した官製デモであったが、
全国レベルでナショナリズムが爆発した反日デモを容認した習近平は、自身が最高指導者に就く年5年に1度の党大会(12年11月)を控え、国内的に主権・領土問題で一歩も譲歩しない強力な権力を誇示する必要に迫られた。
しかし今回の仲裁判決でナショナリズムが高まり、社会にあふれる不満に火が着けば、「反共産党・政府」に転じかねないと神経を尖らせた。
政府・外務省・国防省、官製メディアが一体となって判決批判の宣伝キャンペーンを展開した背景には、国内向けに
「指導部はしっかり批判しているから、我々に任せてほしい」
というメッセージを送り、熱しやすい国民をなだめる狙いがあった。
■「中南海」にこそ問題
共産党指導部にとって天安門事件以降も、欧米など西側諸国から一斉批判を浴びた事件は数多い。
民主派作家・劉暁波氏の拘束と懲役11年判決、
その後のノーベル平和賞受賞(2008〜10年)に対する反応もそうだし、
最近では人権派弁護士やNGOに対する弾圧、
中国共産党批判本を扱う香港の書店関係者の越境連行
もその一例だ。
今回の南シナ海の仲裁判決をめぐっても、改革派知識人の間から出てくる指摘は、
「法の支配」を無視する共産党体制に本質的な問題がある、という観点だ。
ネット上では
「南海(南シナ海)問題はない。
あるのは中南海(共産党政権)問題だけだ」
という皮肉あふれる書き込みが転送された。
北京の外交筋は
「南シナ海も、言論・人権弾圧も突き詰めれば、根っこは同じで、共産党体制に根本的な問題がある」
と漏らす。
中国共産党・政府が国際ルールや法の支配を無視するという事態は今に始まったことではない。
ただ習近平体制になってより鮮明になったのは、
「カネ」(経済支援)と力(軍事的な圧力)を駆使して
「中国共産党にすり寄る国家だけを抱き込んでいく」
という「歪んだ協調路線」だ。
既存の国際秩序から離脱する傾向は強まり、周辺国への高圧的な拡張路線を進めた結果として国際的孤立はますます深まっている。
どうすれば中国共産党が国内的にも、国際社会においても法を順守する国に変わるか。
仲裁判決に対して何と反発しようと、EUやASEANを含めた国際社会からそっぽを向かれることは避けたいのが習近平の本音だろう。
列強に侵略された屈辱の歴史がいまだトラウマとして残り、主権・領土問題になると過剰に反応する中国指導部に、仲裁裁判の判決に順守させるのはほぼ不可能に近い。
ただ強気の姿勢を誇示する習近平が国際的孤立を恐れる中、仲裁判決を切り札にして、「法の支配」が国益にかなうと、共産党・政府にも、国民にも認識させる外交努力が、日本を含めた国際社会に求められる。
そして国内でも今回の判決が「法の支配」を意識する転換点になることを期待したい。
』
『
朝日新聞デジタル 7月16日(土)13時50分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160716-00000039-asahi-int
「法に基づく解決重要」 ASEM声明、
南シナ海念頭
モンゴルで開かれていたアジア欧州会議(ASEM)首脳会合は16日、海洋の安全保障について「国連海洋法条約など国際法に基づく紛争解決が重要」とする議長声明を採択し、閉幕した。
声明は首脳らが「航行や上空飛行の自由を確保することを確認した」としている。
名指しは避けながらも、南シナ海での中国の領有権の主張を否定した常設仲裁裁判所の判決の尊重を促したとみられる。
安倍晋三首相は同日、首脳会合で仲裁判決に言及し、
「仲裁裁判所の判断は最終的なものであり、紛争当事国を法的に拘束する。
当事国が判断に従うことにより、紛争の平和的解決につながっていくことを強く期待する」
と述べた。
安倍首相は首脳会合で、
「航行、上空飛行の自由は地域の平和と安定にとり、死活的に重要だ」
として、関係国が平和的解決に向けて努力することの重要性を訴えた。
また、首脳会合はフランス・ニースで起きたテロ事件を受け、「凶悪で卑劣なテロ攻撃を強く非難する」との共同声明を発表した。
犠牲者やその家族に哀悼の意を表すとともに、欧州やアジアでテロが頻発している事態も踏まえ、「多発するテロ攻撃に力を合わせて立ち向かう決意を再確認し、テロの関与者を処罰する必要性を強調する」と訴えた。
』
『
Record china 配信日時:2016年7月17日(日) 7時10分
http://www.recordchina.co.jp/a144950.html
<南シナ海問題>
全面勝訴」でも比新政権は及び腰気味、
中国猛反発、
解決のめど全くたたず
2016年7月15日、南シナ海をめぐり、常設仲裁裁判所(PCA、オランダ・ハーグ)は12日、中国の領有権主張に異議を唱えるフィリピンの言い分に軍配を上げた。
「全面勝訴」にもかかわらず、比政府の反応は及び腰気味。
PCAに猛反発する中国が判決を受け入れるはずもなく、問題解決のめどが全く立たないためだ。
国連海洋法条約に基づく比側の仲裁申し立てを受けた今回の判決で、PCAは中国が歴史的権利と強調し、南シナ海での広範な領有権の根拠とした「九段線」について当初の予想に反して踏み込んで判断。
「この海域を排他的に支配してきた証拠はない」
と明確に否定した。
南沙(英語名・スプラトリー)諸島で中国が造成を進める7カ所の人工島に関しても、200カイリの排他的経済水域(EEZ)や大陸棚を構成する「島」ではないと判示。
うち人工島3カ所は満潮時に海面下に沈む「低潮高地」で、12カイリの領海も認められないとした。
判決はまた、中国が実効支配するスカボロー礁(中国名・黄岩島)で比漁民の伝統的な権利を侵害していると指摘。
さらに、人工島造成は付近のサンゴ礁に深刻な被害をもたらし、海洋法条約の環境保護義務に違反すると断じるなど、中国の主張はことごとく退けられた。
判決について、ヤサイ比外相は
「この画期的な判断が南シナ海をめぐる問題の解決に向けて重要な役割を果たすと確信している」
と歓迎。
同時に「詳細を検討する」とも述べ、慎重な構えをのぞかせた。
中国は「判決は無効で拘束力もない」と猛反発。
中国外務省の劉振民次官は13日の記者会見で、仲裁人(判事に相当)5人のうちの4人が当時、PCA所長だった柳井俊二・元駐米大使によって任命されたことに言及。
「今回の仲裁裁判は、完全に柳井氏が操っており、仲裁裁判の過程においても影響を与えた」
と、日本にも批判の矛先を向けた。
南シナ海問題について、6月末に就任したドゥテルテ比大統領は判決前、「
われわれは西側諸国の同盟だ」
として、アキノ前大統領の「対中強硬路線」の継承を示唆。
その一方で、中国との対話重視や南シナ海での共同資源探査の可能性にも言及していた。
中国が呼び掛ける当事国間の直接対話に応じるにしても、国際的な“お墨付き”を得た以上、それが開始の前提になる。
比外務省は14日、モンゴルで開催されるアジア欧州会議(ASEM)首脳会議で、「判決を当事者が尊重する必要性を訴える」との声明を発表。
ドゥテルテ大統領は中国との対話の糸口を探るため、ラモス元大統領に特使として訪中するよう依頼したことを明らかにした。
比メディアによると、仲裁申し立てを主導したアキノ前大統領は判決後、PCAの審理に尽力した関係者の名前を列挙し、「国の勝利だけでなく、全員の勝利だ」と称賛した。
中国との安易な対話開始に早速、クギを刺した形だ。
ドゥテルテ政権は国内的に盤石ではなく、議会などでは少数派。
当面は突出を避け、東南アジア諸国連合(ASEAN)各国などとも連携しながら、慎重に対応していく方針とみられる。
』
● FNNニュース
『
Record china 配信日時:2016年7月17日(日) 16時10分
http://www.recordchina.co.jp/a145086.html
<南シナ海>
中国支持のカンボジアに630億円プレゼント、
中国国民には知らされず―仏メディア
2016年7月16日、RFI中国語版サイトは記事
「李克強首相、フンセン首相と会談し6億ドル援助を約束
=南シナ海での支持に感謝か、中国メディアは報道せず」
を掲載した。
アジア欧州会議(ASEM)のため、モンゴル・ウランバートル市を訪問した中国の李克強(リー・カーチアン)首相とカンボジアのフンセン首相は15日に首脳会談を行った。
フンセン首相は、南シナ海問題は当事国同士の対話によって解決するべきだと発言。
国際仲裁裁判所の判決を暗に批判した。
カンボジア華字紙・華商伝媒によると、
カンボジアの支持表明に中国側は6億ドル(約629億円)もの援助で「返礼」したという。
ただし中国国営通信社の新華社は首脳会談については報じたが、資金援助については取り上げていない。
』
『
Record china 配信日時:2016年7月17日(日) 8時10分
http://www.recordchina.co.jp/a145062.html
南シナ海問題における仲裁裁判決の「3つの錯覚」―米メディア
2016年7月16日、米誌ナショナル・インタレストは
「南シナ海問題における仲裁裁判決の3つの錯覚」
と題する記事を掲載した。
環球時報(電子版)が伝えた。
記事は、南シナ海での中国の主権主張を否定した仲裁裁判所の判決で、米国政府が指摘する
「中国は判決に従わなければならない」
「米国は中国に圧力をかけるべき」
「中国が国際法を無視すれば世界秩序の脅威になる」
の3点は、いずれも論理的とはいえないと指摘する。
「中国は素直に判決を受け入れるか、それともさらなる強硬姿勢に出るか」。
中国のメンツが傷つくことを考えると、受け入れる可能性は低く、
「中国が国際法に違反したのは、他国が一貫して中国を批判してこなかったからだ」
との指摘もある。
中国に圧力をかけ続ければ、代償を払わせられるとの意見もある。
しかし、それで中国が引くとは思えない。
逆に民族主義を刺激し、地域の協調を破壊し、南シナ海での衝突リスクを高めるだけだ、
と記事は主張する。
記事は、中国は国際海洋法条約を無視しているとする一方、「それは米国の手法にならっているだけ」とも指摘。
米国のイラク攻撃は世界秩序を破壊した最たる例で、その道においては中国を遥かに上回るほどやり過ぎてきたのだ、としている。
』
Record china 配信日時:2016年7月17日(日) 8時10分
http://www.recordchina.co.jp/a145062.html
南シナ海問題における仲裁裁判決の「3つの錯覚」―米メディア
2016年7月16日、米誌ナショナル・インタレストは
「南シナ海問題における仲裁裁判決の3つの錯覚」
と題する記事を掲載した。
環球時報(電子版)が伝えた。
記事は、南シナ海での中国の主権主張を否定した仲裁裁判所の判決で、米国政府が指摘する
「中国は判決に従わなければならない」
「米国は中国に圧力をかけるべき」
「中国が国際法を無視すれば世界秩序の脅威になる」
の3点は、いずれも論理的とはいえないと指摘する。
「中国は素直に判決を受け入れるか、それともさらなる強硬姿勢に出るか」。
中国のメンツが傷つくことを考えると、受け入れる可能性は低く、
「中国が国際法に違反したのは、他国が一貫して中国を批判してこなかったからだ」
との指摘もある。
中国に圧力をかけ続ければ、代償を払わせられるとの意見もある。
しかし、それで中国が引くとは思えない。
逆に民族主義を刺激し、地域の協調を破壊し、南シナ海での衝突リスクを高めるだけだ、
と記事は主張する。
記事は、中国は国際海洋法条約を無視しているとする一方、「それは米国の手法にならっているだけ」とも指摘。
米国のイラク攻撃は世界秩序を破壊した最たる例で、その道においては中国を遥かに上回るほどやり過ぎてきたのだ、としている。
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