習近平の外交はほぼことごとく失敗している。
対アメリカもさることながら、後進国への援助ではとっかかりはいいが、アッという間に破綻して、相手国の反感を買うことが多い。
レアアース政策はレアアース不要という技術革新によってこの作戦は全面的に中国の首をしめる結果になりそうである。
鳴り物入りで進めている高速鉄道輸出はほぼ全面的に失敗している。
一帯一路はイスラム・テロに道を開くものになりそうで、新シルクロードならぬ「テロリスト街道」とも揶揄されている。
南シナ海の九段線は国際社会から全面的に否定され、将来的に誰もこの線の有効性を認めることがないだろう、という結果に終わった。
東シナ海防空識別圏は設定しても、それを守り切るだけの優秀な戦闘機を飛ばすことができずにいるということになり、バカにされるだけのものになっている。
中国外交の勝利といえるものがあるのだろうかと考えると、
何も思いつかないのが現今である。
習近平はその軍事基盤を海軍に求めている。
陸軍は旧来勢力が握っており、それに踏み込むことはできないようである。
陸軍に手出し出来ないことから、海軍を拡張することによってそこに勢力の浸透を計っていると言ったほうが実際的だろう。
陸軍を縮小し予算を切って、それを「即、戦える軍隊」という名目で海軍に回すということである。
だが、それによって図に乗った海軍は時に習近平の思惑を超えて暴走しているような節もある。
この海軍の動きに引っ張られて、習近平も闇雲に走らざるをえないような雰囲気になっている。
しかし、東シナ海での日本の強行路線の前での挫折、そして今度の南シナ海での九段線の国際的否定と、なかなかうまくいかず失敗・敗北が続いている。
そうなると、果たして旧来勢力である
陸軍系がこれまでの屈辱をそのままにしておくだろうか、ということになる。
習近平と海軍を「オモシロクない」と思い始めることになるのではないだろうか。
習近平の外交がそれなりに成果を挙げているのなら問題はない。
陸軍系も沈黙せざるをえない。
だが、そのことごとくがほとんど失敗に終わっている状況を見ると、当然のこととして不満・反感が解放軍陸軍とそれを基盤にする共産党上層部に出てくることになる。
昔ソビエトで突然、フルチショフが解任された例がある。
それが習近平にふりかからないとはいえない。
習近平としてもその辺のところは抑えているであろうが、ある日突然、習近平が姿を消すということもあり得るかもしれない。
国内の不満を民族主義の高揚を目指すという形で外に向けたが、それが成果を挙げられないとなれば、行き着くところは見えてくる。
よって習近平としては、なにより南シナ海の埋め立て地を要塞化して、政治的には
中国国民に新しい領土を切り取った、とアピールする
ことしか道が残されていないということになる。
軍事強硬路線は習近平の保身戦術にもなる。
その延長で南シナ海に加て東シナ海もきな臭くなってくるだろう。
習近平が東シナ海で起死回生の大博打にでるという可能性も大きくなってくる。
もしそうなった場合、奇襲で尖閣を奪取はできるであろうが、その後の展開で
占拠し続けることができるかどうか、
が一番の問題になってくる。
日本がその気になれば尖閣封鎖はたやすいことである。
領空は日本の戦闘機で制空されるであろうし、領海には海自の軍艇がでばり、海底には深く静かに航行する潜水艦が身をひそめることになる。
ここでドンパチがおこれば、中国軍隊の多くが海に沈む。
習近平は
日本はおそらく手だしはしないであろう
という目算で尖閣侵攻に踏み切る
ことになるだろうが、
果たしてそのとき日本は習近平の思惑通りに手をこまねいて見ているだけになる
だろうか。
もし、日本が動けば習近平政権は倒れてしまう。
しかしそれは、
習近平が博打に出るしか後がないほどに、追い詰められている
ということにもなる
なを、蛇足で付け加えておくと、中国は「マレーシア・シンガポール高速鉄道」を死にもの狂いでとりにくる。
これまで商業的外交の失敗という汚名をはらす最後のチャンスになるからである。
もしこれを逃せば、習近平の「一帯一路」は足元で瓦解してしまう。
それは同時に習近平の失墜にもからんでくる。
中国としては何が何でもこの鉄道計画は成功裏に取得しなければならない。
そのために相当な無理もすることになる。
マレーシア・シンガポール両国にとっては考えられないような好条件となるだろうことは予測できる。
『
WEDGE Infinity 日本をもっと、考える 2016年07月18日(Mon) 岡崎研究所
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/7303
ニクソン訪中以後最悪の米中関係
1972年のニクソン訪中以来、今ほど多くの問題で米中両国が鋭く対立したことはあまりなく、「米中戦略経済対話」でも、協力より競争が勝り、
せいぜい事態の悪化を食い止めることぐらい
だろうと、6月4-10日号の英エコノミスト誌が述べています。
要旨は、以下の通りです。
■露骨になってきた中国の挑戦
米国主導の世界秩序に対する中国の挑戦は露骨なものになってきた。
中でも、南シナ海での人工島造成は、沿岸諸国を揺さぶり、米国の海軍力の優越性の空虚さを露呈させた。
米国の力も、中国の建設攻勢は抑止できず、本格的な戦争以外、人工島を解体する、あるいは中国の支配下からもぎ取る術があるとは思えない。
そうした中、米中は互いに相手が南シナ海を軍事化したと非難した。
さらに、人工島造成の目的は純粋に非軍事的なものだと言ってきた中国国防部は、先月起きた自国戦闘機の米軍偵察機への異常接近事件を利用して、「防衛施設建設の完全な正しさと絶対的必要性」を主張している。
米国を不安にさせているのは、南シナ海での中国の振る舞いが、あるパターンに合致しているように思えることだ。
3月にカーター国防長官は、
「海洋においても、サイバー空間においても、グローバル経済においても、中国は他の国々が努力して築いた原則や体制から利益を得てきた」
と、歴代の米大統領が言ってきたことを改めて強調した。
中国ほど現行の体制の恩恵に与った国はないのに、今や中国は独自のルールに基づいて動き、その結果、「自らを孤立させる長城」を築いていると指摘した。
これに対し、中国は、米国も独自のルールで動くと反論。
中国外務省の報道官は、カーターは「冷戦時代」に留まっており、米国防省は中国をハリウッド映画の悪役の固定イメージで見ていると非難した。
実際、カーターが示唆したように、米中が反目しているのは、海洋での冒険主義だけではない。
両国の間では従来からの不和が拡大する一方、新たな不和も生じている。
例えば、米国の指導者にとり、中国が反政府派への弾圧を強める中で、人権派ロビイストの主張を無視するのは難しい。
経済界も中国のサイバー・スパイ行為や知的財産の窃盗、米中投資協定の協議の行き詰まり、そして、中国の経済政策が開放よりも自給自足と保護主義に向かっていることに不満を抱いている。
鉄鋼等の中国製造業の過剰生産能力が貿易摩擦を生み、米大統領選で反中演説を煽っていることもマイナスに働いている。
かつては、多くの分野で対立していても、米中関係は非常に複雑かつ重層的なので、そこには必ず双方の利益になる分野があり、緊張緩和に繋がると言われていた。
現在両国の関係がこれほど緊張している理由の一つは、そうした分野がほとんどないことにある。
今最も有望なのは、クリーンエネルギーとCO2排出制限の推進であり、北朝鮮問題でも米中は協力している。
しかし、後者について、中国は核よりも、制裁の実施で金政権が倒れることをより懸念しているのではないかとの疑念は拭えない。
戦略経済対話の成果に懐疑的になる最後の理由は、両国首脳の政治的事情だ。
本来、「戦略経済対話」は官僚の協議の場だが、習近平はいくつもの党小委員会の委員長となって自らに権限を集中し、官僚は脇に追いやられている。
そのため北京で米国は不適切な相手と協議することになる可能性がある。
一方、米国では、オバマ政権は終わろうとしている。
中国は南シナ海で強硬な行動に出るに際し、オバマの慎重な外交姿勢を考慮に入れていた可能性がある。
トランプの下であろうと、クリントンの下であろうと、米国はオバマ政権の時ほど柔でなくなると中国が見ているのは間違いない。
出 典:Economist ‘Dialogue of the deaf’ (June 4-10, 2016)
http://www.economist.com/news/asia/21699915-china-and-america-continue-talk-past-each-other-asia-frets-dialogue-deaf
米中戦略・経済対話では、習近平総書記の冒頭のスピーチからも分かるように、中国側は、「対立は脇に置き、共通利益を拡大しよう」という基本方針で臨みました。
米国は、ケリー国務長官のスピーチにあるように、「対立を緩和させ取り除こう」という立場でした。
その結果、シンガポールの「聯合早報」が伝えるように、「南シナ海の紛争、人権、NGO問題など、中核となる問題において合意は成立せず」に終了しました。
■強硬にならざるを得ない中国の対外姿勢
中国の対外姿勢は、ますます内政の影響を強く受けるようになっています。
習近平の権力掌握は一歩後退を余儀なくされており、組織の統制に苦しんでいます。
江沢民と胡錦濤は、各人の利益に配慮し、その見返りとしてトップの指導を尊重させるやり方を基本としましたが、習近平は、そうではありません。
その分、対外姿勢は強硬とならざるを得ませんし、習近平に対する揺さぶりを目的とする不規則な動きも目立ってきます。
米国側代表団と習近平との会談の内容については、詳らかではありませんが、ケリー長官は、記者会見で、「とても生産的な会談であった」と言っています。
楊潔篪も閉会式のスピーチで、「両軍関係の新たな発展を推進するために努力する」と言っています。
人民解放軍の最近の不規則な動きは、これらの党中央の動きに対する反発の現れと見るのはうがち過ぎでしょうか。
来年の秋の党大会まで、諸勢力のつばぜり合いは続きます。
』
『
朝日新聞デジタル 7月18日(月)19時27分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160718-00000044-asahi-int
中国軍、南シナ海で再び演習へ
実効支配のアピール狙う
中国軍が19~21日、南シナ海で再び軍事演習をすることがわかった。
中国の海南海事局が18日、ウェブ上で明らかにした。
また中国空軍は同日、スカボロー礁の周辺を警戒監視飛行する主力爆撃機の写真を初めて公開。
中国は軍事プレゼンスを強化することで南シナ海への実効支配をアピールする狙いだ。
海事局は、19~21日の午前7時~午後5時、中国海南島の南東海域で「軍事活動を実施するため進入を禁止する」とした。
具体的な演習内容は明らかになっていないが、範囲に島の一部を含めていることから、島しょ上陸作戦のほか、短射程のミサイル発射訓練を行う可能性もある。
中国は、南シナ海の領有権をめぐる常設仲裁裁判所の判決が出る12日の前後に、南シナ海で軍事演習を実施。
5~11日にベトナムと領有権を争う西沙(英語名パラセル)諸島を含めた広い海域で、南シナ海を管轄する南海艦隊など3大艦隊の計約100隻の艦船と数十機の軍用機を動員し、中国海軍トップの呉勝利司令官が現場指揮をとった。
また12~14日には島しょ上陸作戦も行った。演習には戦車や車両を運ぶ「エアクッション艇」も導入するなど、実戦化に向けた内容を強化している。
』
『
レコードチャイナ 2016年7月19日(火) 18時0分 勝又 壽良
http://www.recordchina.co.jp/a145269.html
<コラム>中国はなぜ、南シナ海裁定に「実力抗議」を抑えたのか
=三つの事情が絡み合い今のところ「波静か」
7月12日、常設仲裁裁判所は南シナ海問題で劇的な裁定を下した。
(1):中国の主張する九段線の「歴史的権利」について否定。
(2):7つの岩礁について、「島」ではなく「岩」か「低潮高地」と認定
した。
これにより、周辺海域での資源開発への主権的権利も中国は主張できなくなった。
事前の予想では、(2)についてだけフィリピンの提訴を認めると見られていた。
結果は(1)まで含むもので、中国外交はメンツ丸つぶれになった。
裁定が出る直前まで、中国海軍は南シナ海で実弾演習をしていた。
裁定後は当然、抗議の姿勢で実力行使に及ぶと見られていたが、猛烈な抗議声明だけに終わっている。
中国に実力行使を抑制させた背景は3つ考えられる。
★.一つは、九段線について「歴史的権利なし」との裁定が出たこと。
これでは、中国が実力の抗議をしたくても、その根拠を失っている。
★.二つは、年内に「G20」が中国議長で開催される手前、手荒なことをすれば猛非難をあびること。
★.三つは、次の報道である。
「フィリピンのロレンザーノ国防相は、仲裁判断に先立ち、カーター米国防長官と会談したことを明らかにした。
その際カーター国防長官は、中国が米国に対して自制を確約し、米国も同様の確約をしたと語った。
カーター長官は、フィリピンにも同様の確約を求め、フィリピンも同意した、とロレンザーノ国防相は述べた」(『ロイター』7月13日付)。以上のような、三つの事情が絡み合って、今のところは南シナ海「波静か」である。
■筆者プロフィール:勝又 壽良
横浜市立大学商学部卒 経済学博士(中央大学)元『週刊東洋経済』編集長、元東洋経済新報社編集局長、元東海大学教授、元東海大学教養学部長。2010年5月から、アメブロで中国と韓国を主体に「勝又壽良の経済時評」を毎日更新。経済・外交などのメディア情報に基づきこれまでの経験を生かし執筆している。経済記者30年、大学教員16年で得た知見を生かして日々の内外情報と格闘している。どうぞ、ご支援を!
』
日本テレビ系(NNN) 7月20日(水)0時5分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/nnn?a=20160719-00000093-nnn-int
中国空軍 南シナ海に軍用機派遣、偵察飛行
中国空軍は南シナ海に軍用機を派遣し、偵察飛行を行った。
仲裁裁判所による判決で否定された南シナ海での主権をアピールする狙いがあるとみられる。
中国空軍は、南シナ海のスカボロー礁周辺などに爆撃機や偵察機、空中給油機を派遣し、上空の偵察を行ったと18日夜に発表した。
飛行の目的について、空軍の報道官は「実戦能力を高め、国家主権と安全を守るため」としている。
南シナ海をめぐっては、先の仲裁裁判所の判決で、南シナ海のほぼ全域に主権が及ぶとする中国の主張が否定されたが、中国側は受け入れないと反発している。
今回の行動も南シナ海での主権をアピールするものとみられ、中国空軍は「今後もこうした活動を常態化させていく」と主張している。
一方、中国海軍の呉勝利司令官は18日、訪中しているアメリカ海軍のリチャードソン作戦部長と会談した。
国営の中国中央テレビによると、呉司令官は会談で「中国は領土主権で一切譲らない」とした上で、「中国は他国の圧力で島の建設をやめることは決してない」などと話したという。
』
『
新潮社 フォーサイト 7月13日(水)15時34分配信 ジャーナリスト・野嶋剛
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160713-00010001-fsight-int
台湾・ASEANから見た「南シナ海」裁決
国連海洋法条約に基づくオランダ・ハーグの仲裁裁判所が7月12日、フィリピンが中国を相手に訴えた案件について、中国が南シナ海の島々に対する領有権を主張する根拠としてきた「9段線」は、国際法上の根拠がないと認定した。
南シナ海で領有権紛争が起きている南沙諸島(スプラトリー諸島)の島々についても、「島」ではなく「岩」、あるいは「低潮高地(暗礁)」として、領海あるいは排他的経済水域(EEZ)を形成できないとの考えを示した。
内容からすれば、中国の全面敗訴という形となり、予想以上に中国にとって厳しい結果となった。
■「常識」を無視する中国
中国がこの裁決を無視する態度に出ることは、事前の「宣伝」が効いていて国際社会でも織り込み済みの感があるが、今後、中国はすでに実効支配している島々に対して、より大きな軍事的プレゼンスの誇示や、漁港・観光面での人や物資の送り込みなど、さらなる実効支配の強化をアピールする行動を起こすだろう。
中国内では一部識者から南シナ海での防空識別圏の設定も取りざたされている。
その意味で、短期的にこの海域での緊張は高まるかもしれないが、
国際社会における中国の立場は当然苦しいものとなる。
特にASEAN(東南アジア諸国連合)内の国々との関係において、
中国とこの問題をめぐって対立していたフィリピンやベトナムは別として、
その他おおむね中立的か距離を置く態度を取っていた
シンガポール、タイ、インドネシアあたりの国が、この裁決をきっかけに中国に厳しい立場を取る可能性がある。
なぜなら、最低限の国際規範の遵守という点が、それぞれ異なる利害を抱えながら結束してきたASEANの「つなぎ目」になっているからだ。
今回の仲裁裁判所とは違う国際司法裁判所の案件ではあるが、
★.かつてシンガポールとマレーシアが領有権争いを行ってきたマラッカ海峡のペドラ・ブランカ島について、
2008年の判決でシンガポールの勝利となり、両国ともその判決に全面的に従ったケースがあった。
国際規範の遵守という「常識」を一切無視するかのような中国の態度は、対ASEAN関係で中長期的に不利な影響を及ぼすことは免れない。
要するに、中国は信頼できるパートナーではないと見なされるのである。
■台湾の戦略
一方、この裁決は、半ば当事者とも言える台湾に大きなショックを与えた。
以前から筆者がフォーサイトで指摘してきたように、中国が主張する「9段線」のオリジナルは、いまの台湾の政治体制である中華民国が、第2次世界大戦後の1945年から大陸を喪失する1949年までの間に、現地への軍艦の派遣、実効支配化、国際社会への領有の説明などを通してその法的論拠を固めた「11段線」である(2015年6月4日「『南沙諸島』の領有権を中国が主張する理由」など参照)。
中国はその中華民国の継承政権として、その主張を引き継いでいるに過ぎない。
現在の台湾でも11段線の主張は捨てておらず、南シナ海では、南沙諸島最大の太平島や東沙諸島を実効支配下に置いている。
今回の裁決に対し、台湾側も「口頭弁論にも呼ばれていない我々に対して法的拘束力はなく、また、絶対に受け入れられない」と強く反発し、すでに13日、台湾海軍のフリゲート艦を太平島近海に派遣した。
実際のところ、台湾の蔡英文政権の内部では「9段線」の否定までは事前に想定しており、台湾は国連加盟国ではないので国連海洋法条約を批准もしていないが、ハーグの仲裁裁判所が指摘するように、現代の国連海洋法条約の世界秩序においては「9段線」の主張は説得力を持たないという現実認識はあった。
そのため、判決で否定された場合は、将来の「11段線」に固執した馬英九前政権の路線修正を視野に入れて台湾内の合意形成を図ることも議論していた。
そこでは「9段線」の否定は領有権の否定にまではつながらないというロジックを取り、国際社会との協調を目指しつつ、実効支配下に置く太平島などの現状維持は譲らない、という戦略を目指すことが検討されていたようだ。
しかし、今回の裁決では、当事国であるフィリピンと中国が争っているスカボロー礁やジョンソン礁などについてだけでなく、太平島まで「島」ではなく「岩」だとされてしまった。
これに対しては、台湾側にも妥協の余地はなく、裁決そのものを否定する方向で反発を示すしかなくなった形である。
■日本の沖ノ鳥島は……
今回の裁決が、大局的には中国封じ込めに大きな意義を持つことは言うまでもない。
ただ一方で、「米国、日本、台湾、フィリピン、ベトナム」という第1列島線の関係国であり、かつ、東シナ海・南シナ海の領土・領海問題で中国と対立・利害関係を抱える国々の共同戦線から台湾が抜け落ち、中国と結びつく理論的余地を残すことになったことは、今後注目すべきポイントになるだろう。
また、筆者は判決文原文を詳細に読んでいないので「島」否定の論拠を十分に検討できたとは言えないが、常識的に考えても、日本の占領時代から長く軍事施設が置かれ、人間が生活し、植物もそれなりに広がり、わき水もある太平島が「島」でなく「岩」であるならば、日本の沖ノ鳥島はどう考えても島ではない、という自然の論理的帰結が導かれる。
少なくとも、「中国は今回の裁決に従うべきだ」と語った日本政府の言質を取って、「ならば日本の沖ノ鳥島はどうなのか」と突っ込んでくるだろう。
蔡英文政権になって緊張状態が一時的に収束した沖ノ鳥島問題において、いったんは軟化した台湾の態度が今後再び硬化することも十分に予想される。
』
『
Record china配信日時:2016年7月15日(金) 15時0分
<南シナ海問題>立ち向かわなければ中国は止められない、
インドネシアが漁民派遣を計画―中国メディア
2016年7月14日、環球網によると、インドネシア政府が漁民100人のナトゥナ諸島派遣を計画している。
南シナ海南端に位置するナトゥナ諸島はインドネシアの領土だが、その沖合いは中国が領有を主張する海域「九段線」と重なっている。
多くの中国漁船が活動しているが、インドネシア側は違法操業だとして警戒感を強めてきた。
13日付ロイター通信によると、インドネシアのリザル・ラムリ海事担当調整相はインドネシア人漁民にナトゥナ諸島で暮らし、その沖合いで操業するよう奨励すると発表した。
漁民には住宅が与えられ、島内の給電設備やインターネット設備も改善される。
「こうしなければ、(中国は)より多くの主張をしてくる。
そうなればインドネシアの領土が失われる」
とラムリ海事担当調整相はコメントした。
』
●NNNニュース
』
『
Record china配信日時:2016年7月21日(木) 7時50分
http://www.recordchina.co.jp/a145359.html
「九段線」印刷の中国旅券、
ベトナムが入国スタンプ押印を拒否―中国メディア
2016年7月20日、国際在線によると、ベトナム政府はこのほど、中国が南シナ海全域に主権や権益が及ぶと主張する根拠となっている「九段線」が印刷された中国の新版パスポート(旅券)について、ベトナムへの入国スタンプを押すことを避けるため、あえて別紙による単発の到着ビザの発行を開始した。
ベトナム紙・青年報によると、ベトナム北西部で中国と国境を接するクアンニン省の幹部が明らかにした。
12年に発行された中国の新版パスポートは、ビザ(査証)のページに薄く印刷された地図に、はっきりと「九段線」が印刷されている。
ベトナム政府はパスポートに直接入国スタンプを押した場合、「九段線」の存在を認めることになると判断。
別紙でビザを発行し、そこへスタンプを押すことで抗議の意志を表明するものとみられる。
パスポートの「九段線」については、フィリピンやインドなど中国と領有権を争っている国々が相次いで抗議の意を表明。
フィリピンは別のビザ用紙にスタンプを押している。
インドは独自の地図を印刷した紙でビザを発行。
そこにスタンプを押すなどの対策を取っている。
』
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