2016年8月18日木曜日

インドネシア:親中派のインドネシアまで’、中国と堂々わたりあうインドネシア

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日本経済新聞 2016/8/17 21:39
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM17H7B_X10C16A8000000/

インドネシア、違法漁業の監視施設 中国けん制 

 【ラナイ(インドネシア・ナトゥナ諸島)=共同】
 インドネシア政府は17日、中国漁船による違法操業が頻発している南シナ海南端のインドネシア領ナトゥナ諸島ラナイで、17日の独立記念日に合わせ、
 違法漁業の監視施設の開設式と違法操業者を拘束する施設の起工式を行った

 違法操業の取り締まりに強い姿勢を示すことで、国威を発揚するとともに中国をけん制する狙いだ。
 スシ海洋・水産相が「ナトゥナ諸島を外国漁船が水産資源を盗むための海域にしてはならない」と述べ、警備体制強化を訴えた。

 インドネシア政府は17日、違法操業で拿捕(だほ)していた外国漁船「58隻」をナトゥナ諸島などで海に沈めた
 船籍は明らかにしていない。

 監視施設はラナイの軍事施設内に設置され、レーダーを装備し、ナトゥナ諸島周辺の漁船を監視する。
 ナトゥナ諸島にはインドネシア海軍の駆逐艦など約10隻が配置されており、監視施設と連携して不審な漁船の追尾などを行う。

 中国が独自に引いた境界線「九段線」は、ナトゥナ諸島沖のインドネシアの排他的経済水域(EEZ)と一部が重なっている。
 同諸島沖では3~6月、インドネシア当局による違法操業の中国漁船の拿捕などが相次いだ。

 地元紙によると、当局が今年に入って拿捕した違法操業漁船は約60隻に上り、それぞれに少なくとも乗組員8人が乗船。
 既存の拘束施設は手狭となっており、今回新たに建設する。
 また、インドネシア政府はこれまでに170隻以上の違法漁船を爆破処理した。

 インドネシア軍はナトゥナ諸島に駐留する兵士を約2千人に倍増させ、将来的には潜水艦基地を建設するなど防衛体制も強化する方針。
 漁業振興のため、同諸島に魚の貯蔵施設なども建設する予定だ。



フジテレビ系(FNN) 8月19日(金)4時50分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20160819-00000718-fnn-int

インドネシア政府、違法漁船を一斉処分 
中国の海洋進出けん制も



 中国漁船が違法操業を繰り返す南シナ海で17日、インドネシア政府が、摘発した外国漁船を一斉に沈めて、処分した。
 中国の海洋進出をけん制する狙いもある。

 インドネシア政府は17日、拿捕(だほ)した外国漁船58隻を海に沈めたほか、南シナ海のナトゥナ諸島に、海上を監視する施設を作った。
 指揮を執ったスシ海洋・水産相は、「魚を違法にとれば、どこの国の船であっても沈める」と強調した。
 ナトゥナ諸島周辺では、中国当局が、インドネシア当局による取り締まりを妨害するなど、緊張が高まっている。
 スシ海洋・水産相は、これまでも違法な外国漁船を爆破するなどしていて、さらに取り締まりを強化することで、中国の海洋進出をけん制する狙いがある。
 インドネシアで、スシ海洋・水産相は、自ら市場でマグロを解体して、国産の魚の消費を呼び掛けるなど、人気を集めている。



フジテレビ系(FNN) 8月24日(水)2時14分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20160824-00000125-fnn-int

インドネシアのスシ海洋・水産相を単独直撃 
「違法漁船は沈める」



 首都ジャカルタの自宅で22日、FNNの単独インタビューに応じた、インドネシアのスシ海洋・水産相は、違法漁船を拿捕(だほ)して爆破する措置は、一定の効果を上げていて、インドネシアの漁業は改善していると述べた。
 スシ海洋・水産相は
 「わが国の排他的経済水域での操業は、違法であり、そのような漁船は沈める」
と述べた。
 また、南シナ海を「伝統的な漁場」とする中国の主張は認めないとした一方で、中国と国際司法の場で争わず、個々の犯罪行為に対処するとの考えを示した。



ニューズウイーク 2016年8月29日(月)16時35分 大塚智彦(PanAsiaNews)
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/08/post-5728.php

インドネシアが南シナ海に巨大魚市場
──対中強硬策の一環、
モデルは築地市場 


●Antara Foto/Indonesian Navy/via REUTERS

<南シナ海で対中強硬策を掲げるインドネシアは、
 中国と互いに船で体当たりしたり威嚇発砲したりと果敢な「ドンパチ」を繰り広げているが、
 その一方で、中国が権益を主張するインドネシア領ナツナ諸島に、築地市場をモデルにした魚市場を作ろうとしている> 
(写真は、ナツナ諸島近海でインドネシア海軍の艦船の前を横切る中国海警船)

 南シナ海を巡る覇権争いがエスカレートしているが、
 南沙諸島で領有権を主張しているのは
 中国、台湾、フィリピン、ベトナム、マレーシア、ブルネイ
の5カ国1地域である。
 オランダ・ハーグの仲裁裁判所が7月12日に中国が全海域に及ぶ領有権主張の根拠としている「九段線」内の権益に「法的根拠はない」との判断を下したことで、中国は国際社会を敵に回し「分の悪い闘い」を強いられている。 

 あまり報道されていないが、実はこの九段線の南端、「舌の先端」に当たる部分がインドネシア領ナツナ諸島の排他的経済水域(EEZ)と重なっていることから、中国の権益主張にインドネシアも対処せざるを得ないという実状がある。
 インドネシアは特に海洋政策においては対中強硬策を取り続けており、
 南シナ海の南端では中国漁船とインドネシア海洋治安当局、 海軍による仁義なき闘いが繰り広げられている。


●ナツナ諸島の位置 Google マップ

【参考記事】南シナ海で暴れる中国船に インドネシアの我慢も限界

■拿捕、拘留そして撃沈の強硬策

 南シナ海の地図をみてみると、マレー半島とボルネオ島(インドネシア語でカリマンタン島)のほぼ中間にあるナツナ諸島は大小約150の島からなり、北部の大ナツナ島を中心に約7万人が住むインドネシア領である。
 南シナ海とジャワ海やマラッカ海峡を結ぶ海の大動脈に位置する戦略上きわめて重要な諸島である。

 中国はナツナ諸島北方海域を「中国の伝統的な漁場」として海警局艦船を伴った漁船群による違法操業を続けている。
 なぜ問題かというとナツナ諸島から200海里(約370km)のインドネシアのEEZ内や領海内にまで侵入して違法操業を繰り返しているからだ。
 この海域は豊かな漁場で中国だけでなくベトナムやタイ、マレーシアの漁船も入り乱れて違法操業を続けている。

 その「波高し」の現場で今年3月19日、中国違法漁船を摘発しようとしたインドネシアの海洋取締当局の監視船に対し、中国海警局の船舶がレーザーを照射し、そして体当たりで摘発を妨害するという事態が発生した。こうした非常事態にインドネシアは正規の海軍大型艦艇を現場海域に急派して警戒を強化した。
 6月17日には違法操業中の中国漁船に対し、海軍艦が警告したもののこれを無視して逃走しようとしたため海軍艦が威嚇発砲して拿捕、乗組員を拘束した。
 現場にいた中国海警局の船は相手が正規の海軍艦では手が出せなかったという。

 こうして拿捕した各国の違法漁船は、インドネシア政府が「みせしめ」として無人状態を確認した後に海上で爆破、撃沈させるという強硬手段をとっている。

【参考記事】中国密漁船を破壊せよ インドネシアの選択

■産業振興の目玉は「築地魚市場」

 こうした海上での一触即発のバトルの一方で、インドネシアのジョコウィ政権はナツナ諸島の産業振興、開発にも力を入れようとしている。
 ハーグ仲裁裁判所の裁定を受けて「今後中国がさらに活動を活発化させる懸念がある」として、
 インドネシアは同諸島海域での軍事力増強と同時に
 「ナツナを地域の一大漁業拠点とする構想」と硬軟両様の対策を打ち上げた
のだった。

 具体的には年間漁獲量100万トンを取り扱う巨大市場ゾーンの建設を目玉として、冷凍保存設備が完備し水産加工工場を併設した約1,000平方メートル規模の魚市場を開設、地域の流通拠点にするというものだ。
 政府の試算では現状では周辺海域の水産資源の約9%しか活用できておらず、これを限りなく向上させる計画だ。

 構想を具体的に説明したリザル・ラムリ海事調整相は「ナツナには東京の築地魚市場のような魚市場をつくりたい」と語っており、築地魚市場をモデルにしたナツナ魚市場の誕生が期待されている。

 外国人観光客のビザ発給要件を緩和あるいは撤廃して、2020年の東京五輪を目指して観光振興を進めている日本に中国人に加えて最近は多くのインドネシア人やマレーシア人、タイ人が訪れている。
 中でも「ツキジ・フィッシュ・マーケット」は東京を訪れる東南アジアからの観光客の人気スポットであることから「モデルとして築地魚市場の名前が出たものとみられる」(在ジャカルタ日本人記者)という。

■中国の真の狙いは海底資源

 こうした構想実現のためジャワ島周辺で操業する民間漁船の約400隻をナツナ海域に派遣して漁獲高の40%増を目指し、漁民を周辺の島々に移住させることで漁業関連産業の育成やインフラの整備、そして最終的には観光地としての開発も視野に入れているという。

 こうしたナツナ総合開発計画とも言うべき構想の背景には、
 南シナ海全域で国際司法の裁定すら無視して身勝手な主張と危険な行動を続ける中国へのインドネシア政府としての断固とした強硬な姿勢がある。

 中国がこの海域に注ぐ関心の最大の理由は、実は世界有数の埋蔵量とも言われる豊かな海底資源にあるのだ。
 インドネシアが確認している天然ガス田、石油田は16あるが、これまでに生産体制に着手しているのは5鉱区にとどまっている。
 このためインドネシア政府エネルギー鉱物資源省が国営石油ガス公社プルタミナに対してさらなる資源調査と4つの鉱区での入札準備などの「開発のペースアップ」を指示した。

 漁業資源と海底資源が豊かなナツナ諸島周辺での中国の動きに対する警戒を強めながら、インドネシアは着々と自国権益の保護と開発を進めている。
 「南シナ海」という国際的な呼称の「ナツナ海という名称への変更手続き」、さらに「違法操業からの自国権益保護のため中国を国際司法裁判所へ提訴」などの変化球を交えながら堂々と渡り合っている現状に中国も次第に焦り濃くしており、「波の高い緊張状態」は今も続いている。

otsuka-profile.jpg[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など


WEDGE Infinity 日本をもっと、考える  2016年08月30日(Tue)  岡崎研究所
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/7586

南シナ海で中国に対抗へ鍵を握る3国



 豪戦略政策研究所(ASPI)のロング研究員が、同研究所ブログStrategist の7月25日付記事で、仲裁裁判所の判決で面子を潰された中国は、南シナ海における主導権の回復を目指しているので、ASEAN全体が結束できないまでも、フィリピン、インドネシア、マレーシアが協力関係を強化することが有益である、と論じています。要旨次の通り。

 7月12日の仲裁裁判所の判決は、中国が主張する「九段線」を認めず、フィリピンに有利なものとなったが、中国は判決を拒絶し、「南シナ海における主権を守るためのあらゆる措置をとる」と言明している。
 東南アジア諸国が対抗するのは容易でない。
 自国の主権を護る能力が限られ、中国と対決する意志も動揺しがちだからである。

 東南アジア諸国が国際法にも適いレッドラインも踏まえた統一路線を執ることが出来れば理想的だが、このような路線は、フィリピンのドゥテルテ大統領にとっては特に困難な挑戦となる。
 中国との関係を「リセット」するとの方針を維持するか、最大の貿易相手国である中国と対決するか、選択を迫られるからである。
 フィリピンの対応は、中国と意見が違う場合の対応の先例となる。

 インドネシアも中国との間に国境問題は存在しないとの立場を判決で認められたことになるが、中国漁民の排他的経済水域への侵入や、中国艦船による漁民保護がやむわけではない。
 近年、インドネシアは自国の水域での中国の行動への対抗を強化している。
 ナツナ諸島沖の水域での海洋権益を主張する中国外務省声明を強く批判し、ジョコウィ大統領が同諸島を訪問するなどしている。
 判決の後、リャミザルド国防大臣は、ナツナ諸島周辺に軍艦、ジェット戦闘機、地対空ミサイル、無人機を配備し、港湾施設を建設すると発表した。

 ASEANの事実上の指導国であるインドネシアにとっては、将来の中国による領域侵害に対抗する先例ともなり得る地域的対応を奨励することが課題となっている。
 ASEANが結束して南シナ海におけるASEAN=中国の行動規範を仕上げることが出来れば、地域の緊張緩和と海洋の安全保障の将来にとって良い前例となるが、ASEANのように多様で中国との経済依存度も大きく異なる諸国のグループが結束を保つことは難しい。

 伝統的に非同盟政策をとり南シナ海で領有権を主張していないインドネシアが、ASEANの結束を図るための主導権をとるべき理由はない。
 しかし、ASEANが領土紛争解決の場として役立たないとすれば、インドネシアが信頼と協調を築くための新たな形の防衛外交の枠組みに近隣諸国の参加を求めることはあり得る。
 具体案としては、インドネシア、マレーシア、フィリピンによるスールー海とセレベス海の合同パトロール構想の実現が考えられる。

 ASEANの政策決定者たちは、領土要求の有無にかかわらず、今回の判決が与えた自信を生かして、自国の主権を守るルールに基づく秩序を築くために活用すべきである。

出典:Amelia Long ,‘After arbitration: enforcing the rules in Southeast Asia’(ASPI Strategist, July 25, 2016)
http://www.aspistrategist.org.au/arbitration-enforcing-rules-southeast-asia/

■精いっぱいの努力

 先般の仲裁裁判の判決が中国外交にとって大きな痛手であったことは疑いありません。
 中国は懸命な外交努力の結果、7月25日に発表されたASEAN外相会議の共同声明では、この判決に直接言及することを阻止することに成功しました。
 中国としては失点挽回のために精いっぱいの努力をしたということでしょう。

 しかし、判決が最終的なものであることに変わりはありません。
 今後、中国が埋め立てや人工島の造成・軍事化を進めれば、国際的批判が更に高まることは確実です。
 中国は9月に杭州市で開催される予定のG20首脳会議を控え、当面は南シナ海における過激な行動を控える可能性もあります。

 7月25日の人民日報は、ライス米大統領補佐官と会談した習近平主席が笑顔で握手を交わす模様を大きく報じ、同主席が「中国は国際秩序に挑戦する意図はない」と述べ、南シナ海については「互いの核心的利益を尊重すべきだ」と述べた、と報じています。

 なお、インドネシア、マレーシア、フィリピンがスールー海、セレベス海で共同パトロールを実施するとの構想は、実現できれば極めて有益でしょう。
 中国の南シナ海における高圧的行動を声高に非難するだけでなく、沿岸国が自らの海洋管理能力を高めることが不可欠だからです。


共同通信 2016.10.7 00:39
http://www.sankei.com/photo/story/news/161007/sty1610070001-n1.html

南シナ海で大規模軍事演習 インドネシア、中国けん制

●6日、インドネシア・ナトゥナ諸島で、戦闘機に乗り込むジョコ大統領(インドネシア大統領府提供・共同)

【ジャカルタ共同】インドネシア空軍は6日、南シナ海の南端にある同国領ナトゥナ諸島周辺で過去最大規模の軍事演習を実施、ジョコ大統領が観閲した。
 地元テレビが伝えた。南シナ海での領有権を主張し、同諸島周辺で漁船の違法操業を続ける中国を強くけん制する狙いがある。

 空軍によると、演習には兵士約2千人、戦闘機やヘリコプター計約70機のほか空母も参加。
 空中戦や戦闘機による攻撃などを演習。ナトゥナ諸島沖での演習は2014年以来。
 中国が独自に引いた境界線「九段線」は、ナトゥナ諸島沖のインドネシアの排他的経済水域(EEZ)と一部が重なっている。
 同諸島沖では3~6月、インドネシア当局による違法操業の中国漁船の拿捕などが相次いだ。

 インドネシア国軍は6月、中国漁船取り締まりのため、ナトゥナ諸島沖に軍艦5隻と軍用機を派遣。
 ジョコ大統領も同月にナトゥナ諸島沖を訪問した。
 ナトゥナ諸島にレーダーを備えた施設を設置し、漁船の監視を続けている。
 国軍のガトット司令官は5日、記者会見で、今回の演習は南シナ海問題で緊張が続く中国を念頭にしたものではないと述べ、外交的に配慮した。


ロイター  2016年 10月 8日 09:21 JST
http://jp.reuters.com/article/southchinasea-indonesia-idJPKCN1270SX?sp=true

アングル:インドネシアが大規模演習、南シナ海懸念が増大 




● 10月6日、インドネシア空軍は、中国が領有権を主張する南シナ海の南端で大規模な軍事演習を実施した。写真はインドネシアのF16戦闘機。ナトゥナ諸島のラナイで6日撮影(2016年 ロイター/Beawiharta)

[ラナイ(インドネシア) 6日 ロイター] - 
 インドネシア空軍は6日、中国が領有権を主張する南シナ海の南端で大規模な軍事演習を実施した。
 フィリピンの突如とした米国離れが招いた域内の先行き不透明感を、さらに強めている。

 インドネシアのジョコ大統領はナトゥナ諸島のラナイで、何百人もの軍当局者とともに、戦闘機約70機によるドッグファイト(空中戦)や沿岸目標物への爆弾投下を含む演習を視察した。
 「大統領は、戦略的に重要なすべての周辺諸島は、空であれ、海であれ、陸であれ防衛強化されなければならないとの方針を持っている」
と国軍のガトット司令官は報道陣に話した。

 「われわれの国は傘を必要としている。
 隅から隅まで守らないといけない」

 ルトノ外相はラナイでの記者会見で、演習が「定期的」なものだと述べたが、それは過去最大の軍事演習であり、ジョコ大統領が6月にナトゥナ諸島沖の軍艦上で開いた閣議に続くものだ。

 インドネシア当局者は、当時のジョコ大統領の軍艦搭乗が、天然ガスが豊富な南シナ海南端の海域で同国海軍が中国漁船を拿捕するなか、中国に対する強烈なメッセージになったと述べる。
 中国はインドネシアが主張するナトゥナ諸島の領有権を争っていないが、その近郊にあるナトゥナ海と呼ばれる海域において「重複する領有権主張」があると指摘し、インドネシアを怒らせた。
 中国は、年間5兆ドル(約520兆円)規模の貿易路となっている南シナ海ほぼ全域の領有権を主張している。
 ブルネイ、マレーシア、フィリピン、台湾、ベトナムも同海での一部領有権を主張している。

 インドネシアは南シナ海での領有権争いには加わっていないが、中国が同海での領有権主張のために設定した「九段線」に、ナトゥナ諸島周辺水域が含まれているとして反発している。
 インドネシア政府は歴史的に南シナ海の領有権争いでは中立的な立場を維持。
 東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国で紛争当事国となっているフィリピン、ベトナム両国と、中国とのあいだで緩衝国としての役割を果たしてきた。

 「ASEANの総合的な強みは、インドネシアが外交上の仲介役を買って出てきたことに大いに依存している。
 だからこそ、われわれはそのぐらつきを目にしているのだ」。
 シドニーに拠点を置く、ローウィ国際政策研究所のユアン・グラハム氏は指摘する。

■<流動的な状況>

 インドネシアの軍事演習以前からも、一部の国々が従来の立場を強く主張したり、中国寄りになったりするなか、南シナ海をめぐる現状に対する疑念が高まっていたと外交官やアナリストは指摘する。
 シンガポールと中国のあからさまな舌戦や、
 ベトナムが今週米軍艦2隻のカムラン海軍基地へ寄港を許したことは、
 フィリピンやマレーシアによる親中国的な動き
とは対照的だ。

 「とても流動的な状況に現在直面している」
とシンガポールにある東南アジア研究所(ISEAS)の南シナ海問題専門家、イアン・ストレイ氏は指摘する。
 「一部の国が一貫した方針を効果的に示す行動を取っている一方、
 別の国々は中国にさらなる敬意を払い、その前で転がったり、腹をさすられるのを待ったりしている」
 フィリピンのドゥテルテ大統領が示す米国に対する敵意と長年の米比軍事同盟への疑念が、長期的な先行き不安を助長しているとストレイ氏や他のアナリストは指摘する。
 南シナ海で初の合同訓練を先月行った中国とロシアが、より密接な安全保障関係を築く可能性も、不安を助長する要因となっている。
 「間違ってはいけない。
 ドゥテルテ大統領が自らの言葉を実行に移すならば、それは南シナ海問題の全般的な力学だけでなく、東南アジア全域にわたる幅広い戦略的な前提を変える可能性がある」
とストレイ氏は指摘する。

 香港の嶺南大学で中国本土の安全保障を専門に研究する張泊匯氏は、
 ドゥテルテ大統領の米国離れに、中国がすぐに付け込むかもしれないと語る。

 「中国エリート層の一部は、これを中国への神の恵みとみている。大きな変化の可能性を示している」と張氏は話す。

(Eveline Danubrata記者 翻訳:高橋浩祐 編集:下郡美紀)







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