2016年8月26日金曜日

混濁する中国の権力闘争(3):急に変化した対日姿勢 中国外交の行方

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時事通信 8月27日(土)17時41分配信
http://www.jiji.com/jc/article?k=2016082700216&g=int

中国軍副参謀長を拘束=現役将官では初―香港紙

 【香港時事】
 27日付の香港紙サウス・チャイナ・モーニング・ポストは消息筋の話として、中国軍連合参謀部の王建平副参謀長(上将)が25日に規律違反の疑いで身柄を拘束されたと報じた。

 現役将官の拘束は、習近平指導部が軍の反腐敗闘争に乗り出した2013年以降では初めて。

 王氏は視察先の四川省成都市で軍事検察関係者によって連行された。
 妻や秘書らも拘束されたという。

 王氏は09~14年に人民武装警察部隊司令官を務め、無期懲役が確定した周永康・前共産党中央政法委員会書記の側近だったとされる。 



サーチナニュース 2016-08-26 13:04
http://biz.searchina.net/id/1617339?page=1

中国の政権中枢で熾烈な権力争い=大和総研の注目点

 中国の政権中枢で、熾烈な権力闘争が繰り広げられているようだ。
  大和総研経済調査部の主席研究員、齋藤尚登氏は8月26日、
 「政治の季節、熾烈な勢力争いの注目点」
と題したレポート(全1ページ)を発表し、来年秋に予定される中国の第19回党大会を前に、政権実力者の間で様々な駆け引きが繰り広げられている様を紹介した。
 レポートの要旨は、以下のとおり。

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政治の季節、熾烈な勢力争いの注目点 2016年8月26日
経済調査部 主席研究員 齋藤 尚登

http://www.dir.co.jp/research/report/overseas/china/20160826_011196.html

5年に1度開催される党大会は今後5年間の国家の基本方針を決定する最重要会議であり、直後に開かれる党中央第1回全体会議(1中全会)では総書記を筆頭とする政治局常務委員などの指導体制が確定する。
 来年秋に開催が予定される第19回党大会まで1年余りとなり、「政治の季節」が始まるなか、日本でも様々な観測がなされている。

 真偽は全くの不明であるが、曰く、
 「習近平総書記は、改選時に68歳以上の政治局常務委員は再選しないとの内規を変え、盟友の王岐山・規律検査委員会書記を再選させる」、
 「王岐山氏の再選に成功すれば、習近平総書記が、想定される2期10年ではなく、さらなる長期政権を維持する布石になる」
 、「こうした動きを阻止するために、様々な勢力が結集しこれに対抗しようとしている」
など枚挙に暇がない。

 事実として確認できるのは、胡錦濤前総書記や李克強首相らの出身母体である
 共産主義青年団(共青団)への党による指導強化
である。
 2016年2月には規律検査委員会が査察団を派遣し、
 共青団には「党による指導の弱体化、機関化、行政化、貴族化、娯楽化」の問題が存在する
などとして強烈な批判を展開。
 8月2日には、中央弁公室が「共青団中央改革方法」を発表し、共青団への党の指導をより強化し、共青団の中央・省・直轄市の高級幹部を減らし、末端で直接民衆とかかわる職務に人材を手厚くする、などとした。

 共青団出身者は、現在の政治局常務委員こそ李克強首相に限られるが、次を担う可能性のある政治局委員には汪洋氏、李源潮氏、胡春華氏などがいる。
 今回の「改革方法」の発表は、習近平総書記による共青団への牽制と捉えられている。

 引退した老幹部の動静も今後の注目点である。
 習近平政権が誕生した2012年11月の第18回党大会の前には、その10年前に政治局常務委員を退いた老幹部たちの動きが活発化した。
 2012年9月には、国家大劇場で江沢民元総書記が曽慶紅元国家副主席らを伴い歌劇を鑑賞、朱鎔基元首相は10月に、王岐山氏とともに母校・清華大学の会合に出席、といった記事や映像がメディアを賑わせた。
 健在ぶりがアピールされたのである。

 現政権では、江沢民氏の人脈が政権中枢に多く取り入れられたとされるが、朱鎔基氏も「朱鎔基四天王」のうち財政・金融分野の専門家で改革派の3人を政権にとどめることに成功した。
 その3人とは、周小川人民銀行総裁(中央委員を外れたにもかかわらず総裁職を維持)、楼継偉財政部長(財務大臣)、そして次期人民銀行総裁との観測もある郭樹清山東省長(元証券監督管理委員会主任)である。

 老幹部の動静を伝える、どうということもないニュースの裏では、熾烈な勢力争いが繰り広げられているのである。
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現代ビジネス 2016年08月26日(金) 長谷川 幸洋
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49549

領土拡大の野心が招いた中国外交の深刻な"八方ふさがり"
今、日本が通すべき「スジ」は?


左から中国の
王毅外相、日本の岸田外相、韓国のユン・ビョンセ(尹炳世)外相
〔photo〕gettyimages

■外相会談が東京で開かれた意味

 日本と中国、韓国の外相会談が1年5ヵ月ぶりに東京で開かれた。
 尖閣諸島や南シナ海情勢が緊迫する中「成果は期待できない」という声もあったが、会談の開催自体に意味があるのだ。
 中国は少なくとも外交的には八方塞がりになりつつある。

 まず外相会談を開いて、尖閣諸島などの問題がたちまち解決するか。
 するわけがない。
 なにかと言えば「話し合いで問題解決を」と唱える日本共産党じゃあるまいし、そんな期待を抱くほうがどうかしている。
 まったくトンチンカンだ。

 南シナ海で人工島の軍事基地化を進め、尖閣諸島周辺には軍艦を派遣して領海を脅かす中国は、そもそも国際法などどこ吹く風で、尖閣における日本の主権も認めていない。
 「実力で奪い取ったもん勝ち」と腹を固めている。
 これが現状認識の出発点である。
 では、なぜ外相会談に応じたかといえば、軍事優先に変わりはないが、さりとて会談に応じず外交努力を放棄すれば、国際社会の批判と非難が一層、高まってしまうからだ。
 9月4、5日には中国・浙江省杭州で主要20ヵ国・地域(G20)首脳会議を控えている。
 それでなくても東アジアや日米欧が対中批判を強めているのに、3ヵ国外相会談をボイコットすれば「中国はなんだ、話し合いも拒否するのか」という非難が高まってしまう。

 外交戦の勝ち負けは第3国を交えた国際社会の評判にかかっている。
 G20で中国非難が高まるのは外交的敗北にほかならない。
 だから、とりあえずポーズだけでも会談に応じないわけにはいかなかった。
 そうみれば「会談が東京で開かれた」というだけで、日本は1点ゲットである。

■日本の攻勢、防戦一方の中国

 そのうえで中身をみると、日本の岸田外相が
 「中国の一方的行動は認められない。事態の完全な沈静化、再発防止を求める」
と攻勢をかけたのに対して、中国の王毅外相は
 「東シナ海の情勢悪化を防ぎ、不測の事態を回避することが重要だ」
と防戦に回らざるを得なかった。
 中国は日本の言い分に耳を貸さず、たとえば
 「オレたちは自分の領海を守っているだけだ」
と居直ることもできた。
 そうせずに「情勢悪化を防ぐ」と言わざるを得なかったのは、強腰一辺倒では他国の理解を得られないと分かっていたからだ。
 これで、日本は2得点目を挙げた形だ。

 加えて岸田外相はG20での日中首脳会談について
 「東シナ海の状況が改善すれば、大局的な観点からG20での日中首脳会談を含め、対話を通じて日中関係の改善を進めたい」
と述べた。
 これは
 「東シナ海の状況が改善しなければ、日中首脳会談には応じられないよ」
と言ったも同然である。
 逆に
 「改善すれば、対話を進めてもいい」と通告している。
 べつに「何が何でも対話(=外交努力)で解決しましょう」と言っているわけではない。

 あくまで状況が改善するかどうかは中国にかかっている、という認識である。
 それは当然だ。
 事態を一方的に悪化させているのは中国である。
 しかも実際の行動を見る限り、自ら引き下がって普通の対話=外交路線に戻る気配はない。
 日本は「どうするかはあなた次第だ」と押した。
 これがダメ押しの3点目だ。

 中国は軍事力にモノを言わせて縄張りを拡張したいというのが本心なのに、G20を控えて国際世論に配慮せざるを得ないから、日本に会談の流れを支配されてしまった。
 外相である王毅とすれば、会談を決裂させてしまえばG20が大荒れになり、国内で「お前は何をしているんだ」という批判が高まる。
 自分の立場が一段と弱くなりかねない。
 だから内心「クソっ」と思っていても、ここはしおらしく振る舞う以外に手はなかったのである。

■朝日新聞の「お花畑思考」

 そんな外相会談の深部を見ずに、2国間の話し合いだけで問題解決が可能であるかのような「お花畑思考」にとらわれていると「とにかく首脳会談をやれ」という主張になる。
 典型は朝日新聞だ。
 朝日は8月25日付社説で「首脳会談も年内に必ず実現させるべきだ」と書いた。
 そうではない。
 岸田外相が王毅外相に告げたように
 「中国が東シナ海で乱暴なふるまいを慎めば、日本は応じてもいい」
という立場を貫けばいいのである。
 日本側が「何が何でも首脳会談をやりたい」などと言い出したら、相手に足元を見られて「それならああしろ、こうしろ」と無理難題を突き付けられるだけだ。

 そんなイロハも分からず「必ず首脳会談をやれ」などというのは「最初から譲歩しろ」と言っているようなものだ。
 外交のリアリズムを少しは勉強したらどうか。
 繰り返すが、日本が勝利した要因は中国が国際社会の目を気にせざるを得なかったからだ。
 国内の軍事優先派は「実力で押し切ればいい」と思っているだろうが、
 外交当局としては中国の評判を落とすわけにはいかなかった。
 ここは重要である。
 日本としては軍事的に防御姿勢を固めつつ、
 外交的には中国を国際社会の場に引っ張りだす。
 そして「バカなことを続けていると、評判が落ちるだけだよ」と諭していく。
 他国を巻き込みながら、中国を絡めとっていく。
 そんな外交戦が重要になる。
 首脳会談を開けば成功で、開けなければ失敗などという単純な話ではない。

■予期せぬ武力衝突に備えよ

 中国は3ヵ国外相会談で日本にやられっぱなしになったくらいだから、G20でも攻勢に出るチャンスはまずない。
 南シナ海や東シナ海での軍事行動を言葉でゴリ押しして正当化すれば、日本だけでなく米欧などさらに多くの国から非難を浴びるだけだ。

 北朝鮮は中国の言うことを聞かず核ミサイル開発を続け、
 韓国は高高度防衛ミサイル(THHAD)の配備を決めた。
 台湾では独立派の蔡英文政権が誕生し、
 香港でも反北京勢力が力を蓄えている。
 東アジアでも反中国派が身構えている。
 総じて中国外交はあきらかに失敗しつつある。

 日本が注意しなければならないのは、
 外交的に失敗し続けているからこそ、中国の軍部が強気になって挑発を強める可能性だ。
 日本は予期しない武力衝突(contingency)の事態に備える必要がある。

 韓国についても書いておこう。
 日本は元慰安婦を支援するために韓国が設立した「和解・癒やし財団」に対して10億円の拠出を決めた。
 ソウルの日本大使館前に置かれた慰安婦像が撤去されないのに10億円を払うのはどうか、という批判がある。
 それはよく分かるが、韓国との関係が前進することで対中および対北包囲網が一層、強固になる側面もある。
 実際、韓国は中国の猛反対を押し切ってTHHAD配備を決めた。
 中国には間違いなく大打撃である。

 これまで文句ばかり言ってきた韓国を日本が優しく抱きしめる度量を見せた。
 それで中国が頭に来たなら効果はあった、と理解していいのではないか。



サーチナニュース 配信日時:2016年8月26日(金) 12時50分 如月 隼人
http://www.recordchina.co.jp/a148659.html

<コラム>日中外相会談、こんなに違う両国の「公式発表」

 日中韓外相会談が24日、東京で行われた。同会談出席のために来日した中国の王毅外相は、岸田文雄外相、韓国の尹炳世(ユン・ビョンセ)外相との安倍晋三首相への表敬訪問も行った。
 興味深いのは日中当局の「公式発表」に相当な“落差”が見られたことだ。

★.まず、中国政府・外交部(中国外務省)の公式サイトだ。
 王外相の来日中の会談や発言を紹介する記事だけで、11本を掲載した。
 日本の要人との会談だけでも、岸田外相、安倍首相以外に、二階俊博自民党幹事長、福田康夫元首相、河野洋平氏(肩書は日中の貿易を促進する目的の団体である国際貿易促進会会長)と話し合った内容を伝えた。

 岸田外相との会談の紹介を見てみよう。
 王外相の発言として
 「歴史を正視して未来に向き合う」
 「中国は日本とともに、両国間の4つの政治文書を堅持して、双方の政治的基盤を固め」
などと、中国の従前からの「原則」を繰り返し、
 「中日関係が現在、依然として直面している困難はまさに関門だ。チャンスでもあり挑戦を受けているわけでもある」
と論じた上で
 「分岐点をしっかりと抑制し、各分野での交流を展開し、関係改善の流れを維持したい」
などと、両国関係の改善に前向きな姿勢であることを強調した。

 中国外務省は公式発表で、両外相が述べ合った両国間に続く具体的な問題については触れなかった。
 岸田外相の発言についても、王外相が日中間の「4つの原則的共通認識(解説参照)」を実行することを主張したことを受けるような形で
 「日本側も4つの原則的共通認識をしっかりと実現させることを願う」
と述べた上で、両国が
 「財政と金融、省エネと環境保護、高齢化経済、観光、防災の5分野での協力を強化し、青少年の交流を推進し、反テロの協力を進め、矛盾と分岐を抑制し」
などと、両国関係の再構築に前向きな発言をしたことを強調した。

★.さて、日本の外務省が公式サイトで王外相と韓国の尹外相の来日に絡めて紹介した記事は
 「日中韓外相会議」、
 「日韓外相会談」、
 「日中外相会談」、
 「日中韓外相による安倍総理大臣表敬」
の4本だけだ。
 中国外務省と比べて、扱いはかなり小さい。

 両外相の会談についてはまず
 「岸田大臣から,最近の尖閣諸島をめぐる事態を始めとする東シナ海情勢について,日本側の考えを改めて明確かつ直接伝え,日本側は何ら対応を変えていないにもかかわらず中国側が一方的な行動を続けていることは認められないとした上で、
(ア):事態の完全なる沈静化、
(イ):再発防止、
(ウ):東シナ海全体の状況の改善等を強く求めた」、
 「中国側による一方的な資源開発に極めて強い懸念も示した」
と、日本側からの具体的問題点の指摘を直接に記述した。

 王外相の反応としては
 「尖閣諸島をめぐる情勢についての中国側の見解を説明した上で、
 東シナ海の情勢の悪化を防ぎ、不測の事態を回避することが重要であり、
 日中高級事務レベル海洋協議を開催する等、日中間で意思疎通を積み重ね、日中関係を改善していきたいといった趣旨の発言があった」
と、多少“ぼかす”形ではあるが、領有権についての主張については譲らなかったが、
 関係改善への意欲ははっきりと示した
と紹介した。

 日本の外務省は、岸田外相はさらに、同日朝にあった北朝鮮による弾道ミサイル発射も踏まえ、「北朝鮮の度重なる挑発行動」に対し、中国側には「国連安保理の責任ある常任理事国として責任ある対応を求めたい」と発言したと紹介した。
 さらに双方は南シナ海をめぐる問題について「双方の立場にもとづく発言があった」と紹介した。

 日中両国の外務省はそれぞれ自らの公式サイトで、上記内容を「自国語」で紹介した。
 つまり、基本的には自国向け、自国民向けの情報発信ということになる。
★.中国側の発表で目立つのは、
 「日本との関係改善には困難も存在するが、中国は誠意をもって現状打破に努力している」とのニュアンスだ。 

 一方の日本側の発表で感じられることは、両国関係の改善と推進への意欲を前提としながらも、
★.両国間にある「厳しい現実」を改めて具体的に取り上げ、
 「日本側は主張すべきことはきちんと主張している」
とのアピールだ。 

 中国では特定外国との「対立」が発生した場合、「愛国世論」が爆発的に盛り上がることがある。
 少なくとも今回の外交部の取り組みからは、そのような気配を感じることができない。

 一方で、日本側の発表は、「相手側の問題点を妥協せずに指摘した」との点で、中国側がこれまで多用した自国民向けの情報発信の仕方と、よく似た構図になっている。

◆解説◆
「4つの原則的共通認識」は2014年11月7日に日本の国家安全保障局谷内正太郎局長と、中国の楊潔チ国務委員(「チ」は竹かんむりに褫のつくり、副首相と一般閣僚の間に位置)の間で一致した、日中間の問題を処理するための大原則となる合意事項。

(1):双方は日中の4つの政治文書の原則と精神を遵守し、戦略的互恵関係を発展させつづける(2):双方は「歴史を正視し未来に向き合う」の精神にもとづき、両国関係に影響を与える障害を克服する
(3):双方は尖閣諸島と東シナ海を巡る緊張情勢において異なる主張があることを認識し、対話と交渉により自体の悪化を防止することに同意する
(4):双方はさまざまなパイプを通じ、政治、外交、安全について対話し、政治的な相互信頼を構築することに努力する
――の4点。(8月26日寄稿)

■筆者プロフィール:如月隼人
日本では数学とその他の科学分野を勉強したが、何を考えたか北京に留学して民族音楽理論を専攻。日本に戻ってからは食べるために編集記者を稼業とするようになり、ついのめりこむ。「中国の空気」を読者の皆様に感じていただきたいとの想いで、「爆発」、「それっ」などのシリーズ記事を執筆。



WEDGE Infinity 日本をもっと、考える 2016年08月26日(Fri)  石 平 (中国問題・日中問題評論家)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/7628

安倍首相の「G20荒らし」を恐れる中国
「対日友好姿勢」の真意

 8月23日から24日、日中韓外相会談が東京で開かれ、中国の王毅外相が就任以来初めて日本を訪問した。
 23日の晩、王外相は日本の岸田文雄外相主催の歓迎晩餐会に出席。
 翌日にはメインの三カ国外相会談に参加したほか、旧知の自民党の二階俊博幹事長と会い、岸田外相との日中外相会談にも応じた。
 最後には、韓国外相と共に安倍晋三首相への表敬訪問も行った。

■急に変化した対日姿勢

 このようにして、王外相は短い日程の中で精力的な対日外交を展開したことがよく分かるが、さらに注目されるのは、一連の会談において王外相の示した、意外とも言えるほどの柔軟な対日姿勢である。


(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 たとえば、岸田外相との会談後、王外相は
 「小さい問題が残っているが、日本側も(中国側と)同様に前向きな意志があれば、われわれはすぐに合意できる」
と述べ、海洋での不測の事態回避に向けた「海空連絡メカニズム」に関して、高級事務レベル協議を開いた上で早期にスタートできるとの認識を示した。
 今まで、日本側が同メカニズムの早期運用を強く要求してきたが、中国は難色を示してきた。
 しかし今回、王外相は一転して合意への意欲を示し、「双方の努力で海上摩擦をコントロールする」と前向きな姿勢を見せた。

 同時に、王外相は日中首脳会談の早期開催にも積極的な姿勢を見せた。中国側が想定しているのは、一つは年内開催予定の日中韓首脳会談であり、もう一つは、9月4日から中国杭州で始まる20カ国・地域(G20)首脳会合に合せての日中首脳会談である。

 実際、東京での日中外相会談の翌日、北京では中国外交担当トップの楊潔篪国務委員(副首相級)が日本の国家安全保障会議(NSC)の谷内正太郎国家安全保障局長と会談し、まさにG20に合わせた安倍首相と習近平国家主席の首脳会談の開催に向けて調整したとみられる。
 当日、中国の李克強首相までが「数段格下」の谷内氏と会ったことからも、中国政府の「対日重視姿勢」がことさらに示された。
 G20に合わせた日中首脳会談の開催はほぼ確定事項となっている模様だ。

 このように、日中韓外相会談を機に、中国政府が急スピードで対日関係の改善に乗り出したことは明々白々であるが、つい最近までの中国側の厳しい対日姿勢とはまさに打って変わっての豹変ぶりであろう。
 今年の夏に入ってから、中国は軍艦を日本の領海に侵入させ日本に対する軍事的恫喝を行ったり、公船や偽装漁船を大量に日本の近海に来襲させ、緊張を高めてきた。
 中国側の一連の軍事的挑発行動によって、日中関係は一時「開戦前夜」のような危険水域に入ったのはつい8月中旬までのことであるが、下旬になると、前述のように中国政府は今までの対日強硬姿勢から一転して日本との関係改善に急ぐような外交を始めたのは、いかにも不自然な方針の急転換である。
 こうした外交姿勢の180度の急転換の背後には、一体何があるのか。
 この答えとなるキーワードは先ほどすでに登場した。
 そう、中国が議長国となる「G20首脳会合」の開催なのである。

■すべては、G20を成功させるため

 王外相は前述の岸田外相との会談後に記者団に対し、来るべきG20について「日本側も成功に向けて中国と共に努力したいと表明した」と強調したが、実は日本側からの、「中国と共に努力したい」という態度表明こそ中国政府が喉から手が出るほど欲しかったセリフであり、王外相はまさにこの言質一つを取るために日本にやってきて一連の対日改善外交を展開していたと言っても良い。

 すべては、中国が議長国となるG20を成功させるためなのである。
 9月4日、5日の2日間、中国浙江省杭州市で開催される予定のG20は、中国にとって、とりわけ中国の習近平国家主席にとって、どれほど重要な会議であるかは、この半年間の中国を取り囲む国際環境の変化を一目見れば十分に分かる。

 まずは5月下旬に開かれた伊勢志摩サミットを見てみよう。
 伊勢志摩サミットの首脳宣言は、サミットとしては初めて南シナ海問題を取り上げた。
 名指しこそ避けているものの内容は中国に対する牽制と警告と批判となっていることは明白である。矛先は完全に、中国に向いている。

 一方、オバマ大統領がサミットで日本に来る前に、まずベトナムを訪問した。
 その際、オバマ大統領はベトナムに対して、今後アメリカはベトナムに対する武器の禁輸を、全面的に解除すると宣言した。
 アメリカが社会主義国家に対して武器の禁輸を全面解除するというのは驚きであるが、その狙いはただ一つ、ベトナムの後押しを以って中国に対抗するためである。

 伊勢志摩サミット終了直後から、シンガポールで毎年恒例のアジア安全保障会議が開かれたが、ここでもまた、中国にとって大変衝撃的な出来事が起きた。

■アメリカと歩調を合わせると言うフランス

 会議ではアメリカが先頭に立ち、カーター国務長官が中国を厳しく批判したが、中国にとって一番意外だったのは、会議に参加したフランス国防大臣の発言であろう。
 アメリカは去年から断続的に、南シナ海で中国を封じ込める為に航行の自由作戦を展開してきていることは周知の通りだが、上述のアジア安全保障会議において、フランスの国防大臣はフランスもいずれこの南シナ海の航行の自由作戦に参加すると宣言した。
 それだけではなく、フランスは今後、EU各国に呼びかけて、アメリカと歩調を合わせて南シナ海で航行の自由作戦に参加するとも言い出した。

 今までフランスは、南シナ海の問題に関してはいわば「部外者」の立場を取っていてあまり口出しはしなかった。
 しかもどちらかと言えば中国とは友好関係にある。
 このフランスまでが、アメリカと歩調を合わせて中国を押さえつけ封じ込める姿勢に出たことにより、習近平政権の孤立化がより一層深まったといえよう。

 そして7月、周知のようにオランダ・ハーグの仲裁裁判所が、南シナ海における中国の主張や行動は国連海洋法条約違反だとしてフィリピンが求めた仲裁手続きについての裁定を公表した。
 それは、中国が南シナ海の広い範囲に独自に設定した「九段線」に「法的根拠はない」と明確に認定した画期的な裁定であった。
 この裁定内容は、南シナ海の主権に関する中国政府の主張をほぼ全面的に退けたものだ。
 いわゆる九段線の「歴史的権利」が完全に否定されることによって、南シナ海全体への中国支配の正当性の根拠が根底からひっくり返されたのである。
 裁定に対する中国政府の反応について、6月1日掲載の私の論考で詳しく記述しているが、それはまさに「凄まじい」との一言に尽きる。
 ありとあらゆる手を使い、裁定に反発したのだ。

 このように、今年5月の伊勢志摩サミットから7月の国際裁判所の南シナ海裁定までの一連の流れにおいて、いわば南シナ海問題を巡って、習近平政権の進める覇権主義外交は国際社会の反発と抵抗に遭ってかなりの劣勢に立たされ、中国の孤立化が進んでいることは明らかだ。
 こうした中で、7月13日、これまでにアジアの中でも突出して中国と親密関係にあった韓国が、習政権の強い反発を跳ね返して米軍の「高高度防衛ミサイル(THAAD)」を韓国国内に配備することを決めた。
 中国はこれで、アジア最大の「親友」であるはずの朴政権に対しても厳しい姿勢で臨む羽目になり、孤立感がよりいっそう深まったはずだ。
 習政権からすると、今の中国周辺はまさに「敵ばかり」のような状態であろう。

■「主題は経済成長であり、妨害はさせない」

 このような外交的行き詰まりをどうやって打開するのかは、習近平政権にとって重大かつ緊急の課題となっているが、そこで習政権が目を付けたのは当然、久しぶりに中国で開かれる国際的重要会議のG20である。
 中国が議長国として采配を振るい、日米首脳を始め世界の先進国とアジア主要国の首脳が一堂に集まるこの会議は、習政権にとってはまさに劣勢挽回のための起死回生のチャンスとなる。これを最大限に利用しない手はないのである。

 実際、習政権がこの会議にかける意気込みは並々ならぬものである。
 8月17日の産經新聞の記事によると、会議の開催地となる中国浙江省の杭州市では、早くも厳戒ムードが広がっているという。
 市内に向かう他省ナンバー車に厳格なチェックが義務づけられ、不審物を警戒し会議場付近や観光地でマンホールが封印された。
 大気汚染対策として周辺の工場に停止命令を出したりするなど、強権的な措置も相次いで発動されているのである。
 習政権は会議の「円満成功」に全力を挙げていることがよく分かる。

 もちろん中国政府もよく分かっているように、この首脳会議を中国の望む形で「成功」させるためには、現地の保安体制の強化程度ではまったく不十分だ。
 G20を中国の外交的劣勢挽回のチャンスとして最大限に生かすためには、中国がいくつか、重要な外交戦略を講じなければならないのである。

 その一つはすなわち、会議の議題を中国のアキレス腱となっている「南シナ海問題」から完全に切り離して、会議全体の基調を中国にとって有利な方向へと誘導していくことである。

 8月15日、中国外務省の李保東次官は、9月のG20会議に関する記者会見を行ったが、彼がそこで語ったことに、中国の思惑のすべてが凝縮されていると感じられる。
 李次官はまず、会議の議題について
 「主題は経済成長であり、妨害はさせない」
として、南シナ海問題を議題にしようとする動きを議長国として強く牽制した。

 李次官はさらに、世界経済について「依然として比較的大きな下振れ圧力に直面し、国際貿易は低迷し、保護主義が台頭するなど、不安定で不確定な要素が増加している」と指摘した。
 こうした中で、参加国は会議や中国に大きな期待を抱いているとして
 「世界経済の行方を指し示すといったG20の指導力の発揮と、国際的な経済協力の強化、協力のための新たなメカニズムの創設」
などを目標に掲げた。

 海外メディアが「南シナ海問題について、中国の立場を説明するよい機会ではないのか」
と質問すると、李氏は
 「国際会議では、一部の国が自ら関心のある問題を持ち出そうとするが、
 参加国の総意は経済問題に集中することだ」
と釘を刺した。

 李次官のこの一連の発言から、習近平政権の企む「G20戦略」は火を見るより明らかだ。
 要するに、中国の外交的劣勢の原因となる「南シナ海問題」に関する議論を会議から一切排除した上で、会議の関心点と方向性を、中国と周辺国との紛争の源である領土・領海問題とは無関係の「国際経済問題」へと持っていくことである。
 そうすることによって、中国は面倒なことが避けられ、参加国から批判の嵐に晒されずにすむであろう。
 そして、中国が「指導力」を発揮して「国際的な経済協力のメカニズムを創出する」という形を作り出すことによって、中国は「アジアの問題児」であるどころか、むしろ「世界のリーダー」として再び、国際社会での主導権を握ることになる。
 もちろんその結果、南シナ海問題から発したところの中国の外交的劣勢は完全に払拭されることになる、という目論見であろう。

■安倍首相を懐柔する以外にない

 以上が、G20首脳会議開催に向けての中国政府の外交戦略の概要であるが、その目的達成のために、中国政府はもう一つ、急いで講じなければならないのがまさに「日本対策」なのである。
 G20会議を中国にとっての「成功」へと導くために、南シナ海問題が会議で提起されることを排除しなければならないのは前述の通りだが、この点に関して、中国にとって安心材料となるのは、今、南シナ海の領有権問題で中国ともっとも激しく争っているベトナムとフィリピンの両国が、G20会議の参加国ではないことである。
 その他のアジアからの参加国に関していえば、インドにしてもインドネシアにしても韓国にしても、「南シナ海紛争」とは一定の距離をおいているから、これらの国々の動向も中国にとってそれほどの心配はない。

 その中で、中国がもっとも警戒しているのはやはり日本であり、
 日本の安倍政権こそが、中国の心配と悩みの種なのである。
 少なくとも中国から見れば、前述の伊勢志摩サミットを中国批判の方向へと誘導したのはまさに日本の安倍晋三首相であり、例の南シナ海裁定を全面的に支持しているのも日本である。
 そして日本政府こそが今まで、あらゆる国際会議を利用して南シナ海問題を持ち出して中国批判を強めてきている、という考えであるから、G20会議を「成功」させるためには、安倍首相の「会議荒らし」をいかに事前に防ぐのかが、中国政府にとっての重大な外交課題となっている。

 しかし一方、議長国として安倍首相の会議参加を拒否することは当然できないし、一国の首脳の発言を会議の席で封じ込めることも出来ない。
 そうすると、中国政府にとっての選択肢はただ一つしかない。
 要するに、会議の開催の前に急いで日中関係の改善に乗り出して安倍首相を懐柔する以外にない、ということである。

 だからこそ、8月24日からの中国王外相の一連の慌ただしい対日外交の展開が見られたのであり、中国は一転して意外とも言えるほどの「対日友好姿勢」を示し始めたわけである。
 この一連の対日外交工作の仕上げはすなわち、G20会議に合わせての日中首脳会談の開催であるが、おそらく習政権からすれば、それほどの友好姿勢を示して安倍首相と日本政府に好意を寄せた以上、さすがに安倍首相はG20会議では中国の意を汲んで南シナ海問題に言及せず、もっぱら経済問題を語り中国主導の「国際的経済協力メカニズム」の創立に協力してくるのであろう。そうなれば、中国の目的は自ずと達成できることになるのである。

 以上が、王毅外相の日本訪問から始まった一連の「対日友好外交」の真意と、G20首脳会議にかけた中国側の思いと戦略的思惑であるが、問題は、G20会議が中国側の思惑通りに運ばれて中国の目的が達成した暁には、一時的な便宜としての「対日友好姿勢」は果たしてそのまま継続するかどうかである。

 日本政府と安倍首相はこの点も見据えた上で、今後の対中外交の方針と日本自身の「G20戦略」を定めていくべきであろう。



ハンギョレ新聞 8月27日(土)21時53分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160827-00025018-hankyoreh-kr

THAADめぐる韓中の対立を尻目に日中が再び接近

 安倍首相の「外交策士」、
 李克強首相と面談 
 G20サミットでの日中首脳会談にむけた布石 
 THAAD以降「疎通不足」の韓中とは対照的 
 「主催国の危機管理」
との見方も

 来月4~5日、中国杭州で開かれる主要20カ国・地域(G20)首脳会議を控え、中国と日本が首脳会談の開催に向けた事前作業に乗り出した。

 中国の李克強首相は25日午後、人民大会堂で中国を訪問した谷内正太郎・国家安全保障局長と面談した。
 李首相はこの場で
 「現在、日中関係は改善されつつある状況だが、依然としてかなり脆弱だ。
 再び正常な発展軌道に乗れるように推進・努力しなければならない」
と述べたと、中国外交部が伝えた。
 朝日新聞は、李首相が
 「一日も早く中日関係を正常な軌道に復帰させる必要がある」
と述べたと報じた。
 ニュアンスの違いはあるが、どちらも李首相が両国の関係正常化に対する意欲を強調したものと言える。
 谷内局長は
 「互恵で安定的な日中関係の構築を望む」
との内容が盛り込まれた安倍晋三首相の親書を手渡した。

 谷内局長は、安倍首相の「外交策士」と呼ばれる人物で、中国や韓国と厳しく対立した安倍政権の外交が転換点を迎える度に前面に登場してきた。
 彼は2014年にも中国の北京で開かれたアジア太平洋経済協力体(APEC)会議の開幕を4日後に控えた時点で直接中国を訪問し、習近平・国家主席と安倍首相との初めての首脳会談を実現させた。
 谷内局長は、今回も中国の外交政策を総括する楊潔チ国務委員とG20サミットでの日中首脳会談など主要懸案について意見を交わした。

 G20サミットをはじめとする下半期の外交日程を控え中国と日本が接近する姿は、高高度防衛ミサイル(THAAD)配備の発表以降、対話チャンネルが十分に作動していない韓中関係とは対照的だ。

 王毅・外交部長が24日、「交渉を通じた解決策の模索」に言及したことと関連し、陸慷・中国外交部報道官は25日、定例記者会見で「韓国政府が米国のTHAADの(朝鮮)半島への配備決定に同意して以来、中国は外交的に様々なレベルで韓国との接触を維持し、交渉を提案した」としながらも、「交渉過程は現在、始まっていない」と明らかにした。

 韓中の「THAAD交渉」がなかなか実現しないのは、基本的に「自衛的手段」を強調する韓国と「配備の撤回」を要求する中国との間で、接点を見出すのが難しいからだ。
 米国を排除して韓国だけと在韓米軍のTHAAD配備問題について交渉するという中国の主張も(THAAD交渉の)障害となっている。
 しかし、中国からは対話に向けた韓国政府の努力不足を指摘する声もあがっている。
 中国社会科学院の王俊生・研究員は
 「韓国はTHAAD配備決定の発表前にも後にも、中国と適切な疎通をしようとしなかった」
と指摘した。

 G20杭州サミットの開催を控えた中国が日本と接近するのは、開催成功のための主催国としての「危機管理」に過ぎないとの見方もある。
 2014年のAPEC会議でも習主席と安倍首相が会談を行ったが、それによって日中対立が電撃的に解消の局面に入ったわけではなったからだ。
 中国が表面的には国際会議の開催を控え、情勢の安定を強調しているが、内部的には強硬対応に向けた論議を進めているとする見方もある。
 米外交協会(CFR)のスコット・スナイダー上席研究員は「 ヴォイス・オブ・アメリカ」(VOA)放送のインタビューで
 「(THAAD配備を決めた後)中国軍部も米国との衝突の際に必要な潜在的対応策を準備する過程で、
 在韓・在日米軍基地を攻撃するかどうかについて選択を迫られているだろう」
と話した。


Yahoo ニュース 2016年8月28日 18時53分配信 遠藤誉

G20と「人民の声」の狭間で
――中国、硬軟使い分け

 王毅外相は「訪日」したのではないとして笑顔を見せることも報道も禁じながら、二階幹事長には笑顔を見せ、谷内局長の訪中は大々的に報道する。
 追い詰められ硬軟使い分ける中国は、北朝鮮非難声明にまで賛同した。

◆笑顔を見せるか否かは
 ネットユーザーの声に支配されている

 尖閣諸島沖で漂流していた中国漁船の船員の命を日本の海上保安庁に救助された中国政府は、ネットユーザーの非難の声に追い込まれ、ようやく日本の功績を認めた。
 そのような面目丸つぶれの中、王毅外相が訪日することは「売国行為」に等しく、中国は対応に苦労した。
 そこで日中韓外相会談開催の日程調整発表を延期するなど苦しい抵抗を試みたものの、結局、8月24日に東京で開催された。
 
 9月4日から中国の浙江省杭州市で開催されるG20に対する悪影響を避けるためである。
 それでもなお、中国の外交部をはじめ中国政府系サイトは一律に
 王毅外相は“訪日”などしていない。
 日本がどうしても日中韓外相会談開催のために日本に来てくれと頼んでくるので、仕方なく、“その用件を果たすために日本に行った”だけである」
と書いた。
 日本のメディアが「習近平政権はじまった以来、初めての訪日」と書いたことに対しても、
 「日本のメディアは“訪日”でないことを、分かっているのか?!」
などと、実に苦しい批判をしていた。
 このような状況だから、もし王毅外相が岸田外務大臣などに笑顔でも見せようものなら、どれだけ「売国奴」として叩かれるかわからない。
 そこで中国政府全体の方針として、笑顔を見せてはならない場面と見えてもいい場面を使い分けたのである。

  ニ階幹事長に笑顔を見せたのは、二階氏は中国では強烈な親中派と位置付けられているからだ。
 特に2015年5月に当時総務会長だった二階氏が3000人からなる訪中団(財界や日中友好団体の関係者らで構成)を率いて訪中し習近平国家主席と面談した際、握手した習主席の手を高々と掲げて見せたことがある。
 中国側の適当な写真が見つからないので、これをご覧いただきたい。
 このとき習主席は二階氏率いる訪中団の一行を「正義と良識のある日本人」などと褒めたたえた。
 そんなこともあり、二階氏に会う時は笑顔を見せてもいいし、また「日本語を話しても許される」のである。
 王毅外相はもともと駐日本国の中国大使を務めていた人。
 そのころは親日的態度で、日本語もペラペラ。
 しかし中国にとっては、「(歴史を反省しない)敵国日本の言葉を使うことは、日本にへつらったに等しい」。
 したがって習近平政権誕生以来、日本の要人と会う際に日本語を使うことはご法度となっている。
 それでも親中派とされている二階氏に対しては、「日本の中に敵と味方を形成する」という習近平政権のの戦略においては、許可されているのである。
 それだけではない。
 王毅外相の「訪日」に関しては、
 中国の中央テレビCCTVは、ただの一秒間も報道しなかった。

◆谷内局長訪中は大々的に報道

 一方、谷内国家安全保障局長が訪中して李克強国務院総理(首相)と会ったことに関しては、CCTVが大きく報道した。
 それは日本が中国を訪問して
 「G20における日中首脳会談の実現を中国に頭を下げてお願いしに来た」
という位置づけができるからだ。
 日本が朝貢外交のために「北京詣で」をしたという形で、ネットでも書き立てていた。

 中国共産党機関紙「人民に報」の日本語版も伝えており、李克強首相の表情からも読み取れよう。
 本当はニコリとしたいが、日本に笑顔を見せてはならない中国の「国情」がにじみでている。
 言論の自由がない中国では、ネット言論が持つ力は尋常ではない。
 インターネットというのは、日本とは位置づけが異なる。
 世界でも最もネット言論を気にしているのは中国だと言っても過言ではないだろう。
 こうまでしてでも、日中韓外相会談で強がりを見せたり、谷内局長の訪中を誇大報道したりする背景には、万一にもG20 で中国包囲網が形成されるのを恐れるからである。

◆北朝鮮非難報道声明に賛同した中国

 その証拠に、あそこまで抵抗していた北朝鮮を非難する国連安全保障理事会の報道声明に対し、中国は8月26日、賛同の意を表するに至った。
 中国が報道声明に難色を示していたのは、アメリカが韓国にTHAAD(地上配備型迎撃システム「終末高高度防衛」)ミサイルを配備することに対して強烈に反対していたためだったが、G20のためには「一時休戦」という道を選んだものと思われる。
 その意味で、「こわがっている」のは中国政府の方で、怖がっている相手は国際社会と、何よりも自国のネット言論なのである。


時事通信 8月29日(月)18時32分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160829-00000086-jij-cn

「日本は私利追求」と批判=TICADで中国

 【北京時事】中国外務省の華春瑩・副報道局長は29日、ケニアで開かれたアフリカ開発会議(TICAD)首脳会議に関し、
  「日本はアフリカ各国に自らの考えを強要し、私利を追求して、
 中国とアフリカの間にもめごとを起こさせようとした」
と批判した。
 
 華副局長は、TICAD首脳会議の事前調整で日本が国連安保理改革や海洋安全保障問題に重点を置こうとしたため、「アフリカの強烈な不満を招いた」と主張。
 「アフリカ各国はアジアの問題をアフリカに持ち込むことに強く反対した」
と語り、日本が東・南シナ海問題を提起したと示唆した。 







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