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ロイター 2016年 08月 7日 13:25 JST
http://jp.reuters.com/article/china-robot-idJPKCN10G0Z6?sp=true
焦点:中国でロボット産業ブーム、制御不能な地方債務を露呈
[蕪湖市(中国安徽省) 3日 ロイター] -
長江が流れる中国安徽省蕪湖市──。
マッサージ屋や安ホテルの集まる脇道の奥にあるカフェでは、人間型の給仕ロボットがテーブルの周りを動き回っている。
目は、シンセサイザーの演奏によるクラシック音楽に合わせ赤く点滅している。
小雨の降る金曜日の朝、「ヒーロー」という名のこの給仕ロボットに接客する機会は訪れなかった。
しかし「彼」は、ロボット産業の一大中心地を目指す蕪湖市の希望を表すシンボルとなっている。
同時に、商業的に理にかなっているかは別として、債券発行による資金調達でその夢を実現する地方政府の能力も象徴している。
「ヒーロー」は、近隣のロボット工業団地で6カ月に及ぶ研究開発の末に誕生した。
この工業団地の建設には22億元(約334億円)が注ぎ込まれている。
さらにホテル、展示場、文化センターなどを新設する拡充計画のために、蕪湖市は
地方政府の資金調達を担う融資平台(LGFV)を通じて12億元の追加投資を募り、多彩な企業誘致作戦を展開している。
問題は、こうしたプロジェクトを試みているのが蕪湖市だけではないという点だ。
安徽省蕪湖市は上海の西に位置する人口400万人規模の中都市だが、中国の同規模の都市では
次々とロボット工業団地の建設計画が持ち上がっている。
地方政府がLGFVに代表されるバランスシート外の特定目的会社を通じて、インフラ整備のための資金(必要な場合もあれば、そうではない場合も)を容易に調達できることで、すでに高水準に達している中国の債務負担は急増している。
一方、投資家側は、インフラ整備が経済成長の基盤であり続けるあいだは、中央政府が地方債の債務不履行(デフォルト)を許さないことに賭けており、LGFV債の入札価格は最高値を更新している。
ロボット大国を目指して、中央政府は昨年「メイド・イン・チャイナ2025(中国製造2025)」計画を発表。
これを契機に、多くの地方都市が国内のロボット産業中心地となるべくプロジェクトをスタートさせた。
こうした投資ブームの一方で、自動車・エレクトロニクス産業でロボットへの需要が増大しているにもかかわらず、
ロボット産業はすでに生産能力過剰の注意信号が出始めている。
中国では2015年、産業用ロボットの需要伸び率は17%となり、前年比で3分の2以上低下した。
しかし業界のデータによると、過去2年で、40以上ものロボット工業団地が建設されている。
中国の毎日経済新聞は6月、工業情報化省(MIIT)の辛国斌副部長は、
中国のロボット産業には、
★.過剰投資と
★.「ハイエンド部門のローエンド化」の兆し
が見えている
と警告していると伝えた。
同省はロイターの取材に対し、コメントを差し控えた。
■<成長を支えたLGFV>
LGFVはもともと、地方政府自身による起債を禁止する新規制に抵触せずに地方プロジェクトの資金調達を行う手法として、1990年代に人気を集めた。
世界金融危機のさなかに経済成長を支える重要な役割を担ったが、同時に中国の債務負担を生み出す主因となった。
国際決済銀行のデータによると、2015年末の残高は26兆5600億ドルにも上り、中国の対国内総生産(GDP)比255%に相当する。
そのわずか2年前は同220%であった。
中央政府は2014年後半、LGFVを通じた債券発行の規制を試みたが、昨年に経済成長率が25年ぶりの低水準に落ち込んだことから、規制はすぐに有名無実化した。
中国の金融データ会社WINDから入手した光大証券のデータによれば、中国全体でみると、2016年1─5月のLGFV債による資金調達は、前年同期比で72%増の7400億元に達している。
現在、LGFV債の未償還残高は約5兆元にもなる
という。
「インフラに投資する企業の多くは、資金調達の手段を選んでいられなくなった」
と、メインストリームの債券市場で資金調達が間に合わなくなった企業を対象に高金利融資を行う渤海国際信託のLi Yujian氏は話す。
■<計画経済でも制御不能>
中国は、計画経済国家のわりには財政の地方分権化が進んでおり、公的な財政支出の約85%を地方が占めている一方で、地方に割り当てられる税収は50%。
このため、地方政府はこのギャップを埋めるために地方債を発行する。
その結果、中央政府は地方政府の動きを明確に把握できないことが多い。
各都市で互いに信頼できるデータがほとんど入手できず、重複投資という危険な傾向が生まれる。
この傾向が特に顕著なのが、ロボット産業のように中央政府が大きな期待をかけて支援する分野である。
また、リスクが伴いがちな地方プロジェクトに資金を流すスキームは複雑に入り組んでおり、失敗したときの責任の主体をいっそう分かりにくくしている。
「うちは、ただ資金を調達して融資するプラットフォームだ」と、蕪湖市が出資する鳩江区建設投資有限公司のYang Bin氏は語る。
この法人は、ロボット工業団地の拡張資金調達のために債券発行を担当した。
この資金は、ロボット工業団地に参入する建設業者に使われる。
また、企業誘致のために地方政府と中央政府の補助金が用意されている。
しかし、こうした複雑な仕組みを支えているのは、やはり政府による公式・非公式のテコ入れである。
市場参加者は、LGFVへの投資は、地方政府に対する円滑な信用の流れを維持する中央政府の意欲に賭けているのだと言う。
「こうした企業はどれも信用評価がとても低い。
それでも融資を得られるのは地方政府の支援のおかげだ。
そして、地方政府の支援は中央政府の方針次第だ」
と、中国大都市のLGFVにも投資するウエスタン・アセット・マネジメント(シンガポール)のJie Peng氏は言う。
昨年は3兆2000億元に拡大された債務スワップなど、中央政府の支援があるために、LGFVは比較的高い利回りを提供しつつ、投資した事業が不振に陥っても手痛い目には遭わないだろうという安心感を投資家に与えている。
鳩江区建設投資有限公司の発行する12億元の債券の最終利回りは3.8%であり、これは同じ地域の地方政府本体が発行する債券よりも約0.5%ポイント高い。
多くの投資家にとっては、この利回りは魅力的に見える。
この1年、他の業界でデフォルトが増えるなか、LGFV債利回りは大部分の社債を上回った。
しかし、地方債ブームは過剰投資の懸念を再燃させている。
中国の各都市では、ロボット産業以外の分野でも、必要以上に巨大なスポーツスタジアム、概して近隣都市の施設に対抗できるほどの魅力に欠ける遊園地、起業家の集まらないイノベーションセンターが次々と建設されている。
■<意欲的なベンチャー企業>
現在、蕪湖にあるロボット工業団地の産業用ロボットの生産規模は年間約1000体であり、年間1万体への増産を計画中だ。
この団地が成功を収めるかどうかは、今の時点ではまだ分からない。
団地の参入企業には、賃料補助、ローン補助、債務保証、優秀な人材を集めるための報奨金制度などの特典を受ける資格がある。
しかし、こうした支援策にもかかわらず、入居している大手企業は、自動車産業用ロボット製造の安徽埃夫特智能装備を含めてわずかだ。
工業団地に工場を構える約20のロボットメーカーの大部分は、意欲的なベンチャー企業か、安徽古德納克科技有限公司をはじめとする、新しいニッチ市場を狙う機器メーカーだ。
同社は、農業機械、チェーンソー、芝刈り機なども製造している。
工業団地の当局者と蕪湖市鳩江経済開発地区委員会は、この記事の取材依頼を断った。
また、工業団地の広報担当者にコメントを求めたが、返事はなかった。
この工業団地で開発中の製品のなかには、オーケーロボットという会社が製造する「ヒーロー」など、アイデア商品に近いものもある。
同社は、給仕ロボットや軍用セグウェイのほか、空調付ヘルメット、病院向けの仰臥位(ぎょうがい)用シャワー設備、高齢者や障害者の歩行を助けるスーツ型ロボットなど、実にさまざまな製品を開発している。
ゼネラルマネジャーのWang Lipeng氏は、パワーポイントのプレゼンテーションを示しながら
「75歳のお父さん、お母さんも若者みたいに暮らせる。
それがわが社の夢です」
と語った。
スライドには、ロボット型スーツを着た男性が女性を抱え上げたり、炎の中から現れ出たりする姿が映し出されていた。
「この工業団地の政策はとてもありがたい。
おかげで、多くの企業から投資や製造の引き合いが来る」
と、Wang氏は語った。
(翻訳:エァクレーレン)
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Yahoo ニュース 2016年8月21日 7時0分配信 団藤保晴 | ネットジャーナリスト、元新聞記者
http://bylines.news.yahoo.co.jp/dandoyasuharu/20160821-00061338/
急拡大する中国ロボット産業は脅威か、実態探る
中国は世界最大の産業用ロボット市場になり、国をあげてロボット産業を育成し千社もメーカーが出来ました。
独ロボット大手クーカの買収にも手を出す急拡大ぶりが脅威になるか、最近続く報道から実態を探ってみます。
2015年に世界の産業用ロボット市場で売られたのは24万8000台、この内、6万7000台が中国に導入されています。
中国が世界一の市場になったのは2013年からであり、2018年には15万台と2倍以上になると予測されています。
世界産業用ロボット市場の推移と2015年の各国シェアをグラフで見ましょう。
今世紀に入ってしばらく停滞していたのに2011年から世界市場が急拡大しています。
2011-2012年は日米が引っ張ったのに対して2013年からは中国が躍り出ました。
2015年で中国が27%を占め、今後はさらに大きな市場になっていきます。
しかし、2015年に導入された中国のロボットは海外製品が圧倒的でした。
サーチナ《中国の産業用ロボット市場は世界最大、だが市場は外資メーカーのもの》がこう伝えました。
《15年の中国の産業用ロボット市場におけるシェアは、
日本のファナックが18%、
ドイツのクーカが14%、
スウェーデンのABBが13.5%、
安川電機が12%、
中国を除くその他のメーカーが合わせて34.5%であり、
中国メーカーのシェアは合計でも8%
に過ぎない》
アップルからiPhone組み立てを請け負うフォックスコンが単純労働による人海戦術で増産を凌いだ結果、多数の自殺者を出した悲劇は記憶に残っています。
そのフォックスコンが従業員11万人が働く崑山工場で6万人を何千台もの産業ロボットで置き換えると5月に発表しています。
製品の質を安定させるためにも、また生産年齢人口が頭を打ち減少期に入った人手不足対策としても活用され始めたのです。
しかし、全体では好意的に見ているウォールストリートジャーナル
《【寄稿】到来する中国のロボット革命 成長力と競争力に貢献か》
の記述を見ても、現在のロボット導入が初歩的な段階にある点は明瞭です。
《中国がロボット革命を支持したのは遅かった。
中国では製造業労働者1万人当たりロボット台数は依然としてわずか36台だ。
これに対し日本では、1万人当たり315台、
韓国では同478台だ。
しかし中国はこの差を縮めるべく大胆に動いている。
中国政府は労働者1万人に対するロボット台数を2020年までに100台以上に引き上げる目標を設定した》
昨年の第481回「中国の夢、技術強国化は構造的に阻まれている」で指摘したように、中国の自主ブランド自動車メーカーの多くが自前のエンジンを生産できません。
ロボットで言えば、力を伝え動きを制御する高度な減速機を造れていません。
形にならないアフターサービスにお金を払わない国民性も大きな妨げになるでしょう。
それにもかかわらず40ものロボット工業団地が地方で相互に連絡もなく作られ、バラバラに動き出しています。
中国自身には世界と戦える技術はありません。
そんな中で中国家電大手の美的集団が今月、大手ロボットメーカー、独クーカへの株式公開買い付けで94.55%の株を獲得したのは衝撃的でした。
美的集団は本社としてクーカに干渉せず、独占禁止法に関する審査を経て来年3月にも買収完了の意向だといいますが、ニューズウィーク《中国美的の独クーカ買収、自由貿易派メルケル首相のジレンマに》が伝える大問題が残っています。
ドイツ政府が強力に進めたい「インダストリー4.0(第4次産業革命)」の鍵になる企業だからです。
《ドイツは自由貿易を掲げているものの、国内の一部ビジネスリーダーは、美的によるクーカ買収計画が「インダストリー4.0」を推し進める国の努力に水を差すのではないか、と懸念している。
独IT業界のある幹部は匿名を条件に、クーカの技術が「インダストリー4.0」の中核であるにもかかわらず、もっと大きな騒動になっていないことに驚いていると語った》
例えば日本大手のファナックを中国が買収となれば黙って見過ごされるとは考えにくいと断言できます。
ドイツの対外貿易法には戦略的に重要な企業を保護するための拒否権があり、今は沈黙しているメルケル政権がどう出るかは分かりません。
団藤保晴
ネットジャーナリスト、元新聞記者
玉石混淆のネットから玉を見つける水先案内人――新聞記者をしていた1997年、インターネット隆盛期に「INTERNET WATCH」で連載コラム「インターネットで読み解く!」を始め、ネットジャーナリストとして活動。科学技術、政治、経済、社会、文化など幅広い取材経験をベースに、ネット上の知的資源を検索の駆使で結び合わせ、社会的意味を明かします。膨大化するネットと劣勢にあるメディアの相克もテーマです。
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Forbes JAPAN 8月9日(火)10時37分配信 John Kang
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160809-00013166-forbes-bus_all
中国最大の半導体メーカー「長江」社が誕生
3Dメモリで世界制覇狙う
先週、中国の半導体設計大手である清華紫光集団が、同国半導体メーカー最大手の一つ、武漢新芯集成電路製造(XMC)の株式の過半を取得し、「中国最大のチップメーカーが誕生した」とウォール・ストリート・ジャーナルが報じた。
XMCには、半導体産業の発展を支援する「国家集積回路産業投資ファンド」が出資している。
新たに設立される持ち株会社の名称は「長江存儲科技(Yangtze River Storage Technology)」で、資本金は189億元(約2,800億円)になる。
中国は国家政策として半導体産業の強化に取り組んでおり、今回の業界再編も中国政府主導で行われた。
新会社の設立は、半導体の自給率向上に向けた大きな一歩になると見られている。
ガートナーの上海事務所のロジャー・ションによると、中国の半導体企業同士の買収としては今回が初めてのケースで、長江存儲科技には清華紫光集団の投資部門とXMCのエンジニアチームが統合されるという。
中国は半導体を年間約2,000億ドル(約20兆4,000億円)輸入しており、
新華社通信によると半導体分野では世界最大の貿易赤字国だという。
長江存儲科技の設立は長期的に国益に適うが、
短期的には中国国内の中小半導体メーカーの経営にマイナス影響を与えるだろう
とションは分析する。
「一番影響を受けるのはメモリ事業に投資を検討している中国企業だ。
中国政府は長江存儲科技に手厚いサポートを提供しており、他の企業や地方政府は長江存儲科技ほどの出資を得ることができない」
とションは話す。
■2018年には3Dメモリの量産開始
ションによると、長江存儲科技は商業生産までに少なくとも2、3年を要し、清華紫光集団が最先端の3次元NANDフラッシュメモリやDRAMの生産工場を持ったメーカーを買収しない限りは、海外メーカーにとっては直ちに脅威になるわけではないという。
しかし、XMCは年末までに3次元NANDフラッシュメモリの試作に成功し、2018年上期には量産が可能になるとHISテクノロジーで中国半導体市場担当のシニアアナリストを務めるフェイ・ホーは話す。
「中国で量産体制が整い、安価なメモリを大量に供給するようになれば、世界のメーカーは大きな打撃を受けて、中国メーカーが世界市場を制覇する可能性がある」
とガートナーのションは言う。
影響を受けるメーカーは、
韓国のSKハイニックスや
日本の東芝(東芝はサンディスクと共同でフラッシュメモリを生産している)、
アメリカのマイクロンテクノロジー(清華紫光集団は230億ドルでマイクロンの買収を試みたが、安全保障リスクを理由に頓挫した)、
インテル
などだ。
HISのホーによると、インテルは大連にある工場で先月より3次元NANDフラッシュメモリの製造を開始したという。
サムスンは先週行った2Q決算発表の中で、半導体事業が来年の利益を牽引するとしているが、今回の中国での業界再編の影響を受けることは必至だ。
現状、XMCは中国で唯一3次元NANDフラッシュメモリ技術の開発を行っている企業だ。
ホーは、同社が2020年までに製品を市場に投入し、2030年までには世界トップクラスの半導体企業になると予測する。
新設された長江存儲科技は、投資能力と技術者チームを併せ持つことになるが、ガートナーのションは
「大きな課題は、海外の主要なメモリメーカーが持つ技術の入手が困難なことだ。
買収やライセンス契約によって海外の技術が獲得できるまで、中国政府は国内の半導体技術の育成に注力したい考えだ」
と話す。
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