2016年9月12日月曜日

混濁する中国の権力闘争(4):権力闘争激化、習主席元部下が失脚、全人代代表45人の当選無効

_


時事通信 9月13日(火)17時17分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160913-00000108-jij-cn

習主席元部下が失脚
=天津市トップに江沢民氏側近―権力闘争激化か・中国

 【北京時事】中国で最高指導部の大幅な交代が行われる来年秋の党大会に向けた駆け引きが激しくなっているもようだ。

 10日に天津市トップだった習近平国家主席の元部下が失脚し、後任に江沢民元国家主席の側近が起用された。
 習指導部は多くの政敵を排除し、習主席への権力集中を進めてきたが、状況が変化する可能性もある。
 国営新華社通信は13日、天津市トップの党委員会書記に李鴻忠・湖北省党委書記を充てる人事を伝えた。
 一方、重大な規律違反の疑いで調査を受けていると発表された黄興国・同市党委書記代理兼市長は解任された。
 天津市は2014年末から書記が空席で、黄氏が職務を代行していた。

 浙江省出身の黄氏は同省の党組織に30年以上勤務。
 同省党委書記などを務めた習氏の下で約1年働いた後、03年11月に天津市党委副書記に転じ、市長、党委書記代理へと昇進した。
 一方、李氏は江元主席の影響が強い電子工業省の勤務経験があり、「江派の有力者」とされてきた。

 黄氏の具体的な容疑は不明だが、天津市では昨年8月、173人の犠牲者を出す大規模爆発事故が発生した。
 市幹部らが処分されながら、黄氏は1年以上にわたり職務を続行。
 党規律検査委員会が処分を発表した前日まで、黄氏は公式活動を行っており、習氏との関係から黄氏が昇格するとの観測すら出ていた。




● TBS系 JNNニュース



産経新聞 9月14日(水)7時55分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160914-00000086-san-cn

天津市トップに李鴻忠氏 
江沢民派寄りだが習氏にも忠誠 
注目人事、バランスに苦心?

 【北京=西見由章】
  中国共産党は13日、天津市トップの党委員会書記に李鴻忠・湖北省党委書記(60)を任命する人事を発表した。
 市党委代理書記と市長を兼職していた黄興国氏は「重大な規律違反」に問われた結果、解任された。
 国営新華社通信が伝えた。
 天津市党委書記は党の重要ポストで、李氏は来秋の党大会で政治局員(25人)に任命される可能性が濃厚となった。

 李氏は習近平国家主席と対立関係にある江沢民元国家主席のグループにつながる人物で、習政権の進める反腐敗闘争の標的として何度もささやかれてきた。
 一方、今年1月には湖北省党委員会の会議で習氏を「指導の核心」と持ち上げるなど同氏への忠誠を公言し、“風見鶏”との評もある。

 来秋の党大会に向けた人事の主導権争いで、習氏が側近の黄氏の失脚により痛手を負う中、天津市トップの人事に注目が集まっていたが、各勢力のバランスに苦心した結果になったといえそうだ。

 李氏が湖北省トップ在任中の2015年、同省荊州市の長江で442人が死亡する客船転覆事故が発生。
 16年には豪雨による洪水被害で多数の死者が出たが、経済面での安定的なかじ取りが評価されたとみられる。

 一方で、湖北省省長だった10年には、全国人民代表大会(全人代=国会)期間中の北京で、厳しい質問を浴びせる中国人女性記者のボイスレコーダーを奪い取り、国内メディアからも批判が相次いだ。



TBS系(JNN) 9月14日(水)12時2分配信

中国・全人代代表45人の当選無効、選挙で不正


 中国の国会にあたる全人代(全国人民代表大会)は13日、代表を選ぶ際に不正があったとして、遼寧省の代表45人の当選を無効としました。
  全人代の代表選挙で違反が発覚するのは極めて異例です。

 中国国営の新華社通信によりますと、当選が無効になった45人は、2013年に遼寧省で行われた全人代の代表を選ぶ選挙で金銭を渡して投票を依頼するなどの不正に関わったということです。
 全人代は法律の制定や国家指導者の選出などの権限があり、全国の省などの代表およそ3000人が共産党が管理する選挙で選ばれます。

 共産党最高指導部の張徳江全人代委員長は13日の全人代の会議で、「中国建国以来、初めて起きた省レベルの不正であり、社会主義民主政治への挑戦だ」と述べ、厳しく処分する方針を示しました。
 省の現職の代表が選挙の不正によって失職するのは極めて異例ですが、習近平指導部は今回の決定を通じて反腐敗運動をアピールする狙いがあるとみられます。

産経新聞 9月15日(木)7時55分配信

遼寧省事件、標的は李首相? 
習主席との対立激化 中国

 ■代表の半数が当選無効「禁じ手だ」

 【北京=矢板明夫】中国の全国人民代表大会(全人代=国会)常務委員会が13日、選挙違反を理由に遼寧省選出の代表45人の当選を無効だと発表した問題が中国国内で波紋を広げている。
  遼寧省は経済政策などで習近平国家主席と対立する李克強首相のかつての勤務地。
  李首相の側近への責任追及の可能性も浮上しており首相周辺に打撃を与える狙いだと指摘する声もある。

 全人代代表は間接選挙で選ばれ、遼寧省の定員は102人。
 うち8人は全人代常務委員会の指定枠で、94人が同省の政財官界の要人から選ばれた。
 その半数近くが2013年1月の選挙の際、省高官や省人民代表大会の有力者に賄賂を渡した疑いで、代表資格を剥奪されたことになる。
 その多くは地元の国有企業トップなど財界関係者で、逮捕者が出ることも予想され
 「遼寧省の経済は壊滅的な打撃を受ける可能性がある」
といった意見も聞かれる。

 「習執行部は禁じ手を使ってしまった」。
 北京の共産党関係者はそう述べ、
 「どこの省の選挙文化もほとんど同じで、国民は遼寧省だけが違反しているとは思わない。
 事件の公表で全人代への信頼そのものが崩れかねない」
と指摘した。

 このタイミングで遼寧省の事件が表面化した背景について、一部の党関係者は党内の権力闘争との関連を指摘する。
 習主席の側近だった天津市の黄興国党委代理書記が10日に失脚し、習派には大きな打撃となった。
 一方、その3日後に明るみに出た遼寧省の選挙違反事件は、李首相周辺への影響が大きいからだ。

 04年から07年に遼寧省トップを務めた李首相自身も、失職した代表らと交流したことがある。
 また、事件が起きた13年1月には李首相の側近である陳政高氏が遼寧省長を務めていた。
 同省選出の全人代代表でもある陳氏は代表資格剥奪を免れたが、今後、事件への関与などが追及される可能性もある。
 党関係者は「来年秋の党大会を控え、こうしたことが頻繁に起きそうだ」と話している。

ニューズウイーク 2016年9月14日(水)16時00分 遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

中国、全人代当選無効は日常茶飯事

 13日、中国の国会にあたる全人代(全国人民代表大会)遼寧省代表の選挙で票の買収があったとして現職45人の当選が無効となった。
 省レベルでは異例かもしれないが、市レベルでは過去に518名が買収で無効となるなど日常茶飯事だ。

■遼寧省で不正発覚

 中国政府の通信社・新華網によれば、9月13日、全人代常務委員会は、全人代の代表を選ぶ過去の遼寧省の選挙において票の買収があったとして現職45人の当選を無効にすると決めたとのこと。

 張徳江・全人代常務委員長は13日午後に閉幕した全人代常務委員会第二十三次会議で、遼寧省人民代表大会が選出した第12回全人代代表の当選者45人の当選を無効とすると発表した。
 中国では全人代代表を村レベル代表の選挙から積み上げていって、郷鎮、県、市、省・直轄市・自治区レベルの人民代表を選び、その中から全国人民代表大会(全人代)の代表を決めるという仕組みになっている。
 全人代(全国レベル、国会に相当)以外の人民代表大会は、「地方各級人代」(地方議会)という呼び方をする。

 この呼称に従えば、「全国人代と地方各級人代の選挙法」というのがあり、その選挙法第五十七条には、「金銭やその他の財物などの賄賂で当選した者は無効とする」という規定がある。
 張徳江委員長は13日、
 「新中国建国以来、初めて起きた省レベルの不正で、重い規律違反であり、選挙制度を破壊する重大案件だ」
と述べた。

 しかし、この発言は「省レベルで」という言葉に注目すべきで、市レベル以下のレベルでは、日常茶飯事的に起きている普遍的現象だ。

■湖南省衡陽市では518人の人民代表大会代表が無効

 たとえば、2012年12月28日から2013年1月3日まで、湖南省衡陽市の代表選挙があった。
 ところが、この選挙に関して不正があった(金銭で票を買収した)という訴えが2013年2月から中国大陸のネットで出始めていた。
 そこで湖南省・中国共産党委員会の紀律検査委員会が調査を始めたところ、汚職行為があったことが判明。
 2013年年12月28日に、527人の代表のうち518人が辞職させられたと新華網が公表した。
 なんと全代表の98.3%に不正があったということになる。

 汚職金額は総計で1億1000万元(当時のレートで換算すると、日本円で約19億円)に上る。

 これは実は拙著『中国人が選んだワースト中国人番付――やはり紅い中国は腐敗で滅ぶ』(小学館新書、2014年)で書いた「中国人が選んだ中国人クズ・ランキング」の組織分類で第3位を占めたスキャンダルである。

 同じく拙著『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』で書いた 「広東烏坎(ウカン)村村長選挙」でも類似のことが起きており、村民委員会から全人代代表に至るまで、中国はどこもここも金銭による不正(腐敗)だらけなのである。どんなに努力しても、それを絶滅させることは不可能に近いだろう。

 その原因は、一党支配体制の中で自由経済を許したからだ。
 社会主義国家と自由経済という矛盾した体制の中では、「政治体制改革」を行なわない限り権力者側は腐敗の温床を形成するばかりで、政治体制改革を行なえば、「一党支配体制」は必ず崩壊する。中国はそのジレンマの中にある。

 今回の事件は、そのジレンマの氷山の一角にすぎない。

読売新聞 9月17日(土)7時25分配信

中国全人代45人当選無効
…「反腐敗」新手法か

 中国の全国人民代表大会(全人代=国会)が、遼寧省の代表45人を買収行為などの疑いで当選無効にした決定が波紋を広げている。

 来年の共産党大会をにらんだ人事の主導権争いが強まる中、
 習近平(シージンピン)国家主席が各勢力をけん制するため、
 党幹部や政府官僚らを摘発してきた「反腐敗」の新手法
として「議会」を巡る汚職摘発を活用するとの見方がある。

 全人代代表は、全国31の直轄市・省・自治区や軍などから党がコントロールする間接選挙で選出された約3000人。
 習氏ら党指導者もいずれかの代表に属する。
 選出の仕組みはほぼ全国一律で、「(腐敗は)遼寧省だけにとどまらない」(党関係者)との見方が一般的だ。
 習氏は全人代を標的とした摘発で「議会の浄化」を掲げ、就任以来続けてきた「反腐敗」の新たな推進力とする可能性がある。


jiji.com (2016/09/17-14:25)
http://www.jiji.com/jc/article?k=2016091700183&g=int

遼寧省で不正摘発拡大=権力闘争影響か-中国


 【北京時事】中国東北部の遼寧省で、不正が問題視された高官の失脚が相次いでいる。
 習近平指導部による反腐敗闘争の一環で、過去に例のない全国人民代表大会(全人代、国会に相当)代表選挙の大規模な不正行為も判明し、多くの代表が失職する事態となった。
 最高指導部の大幅な交代が行われる来年秋の共産党大会を控え、権力闘争が影響しているとみられている。

 全人代常務委員会は13日、遼寧省代表を選ぶ選挙で票の買収があったとして45人の代表を当選無効とする決定を下した。
 全人代の代表は、省人民代表大会の代表による投票で選ばれる。遼寧省の選挙では約600人いる省代表の8割以上に当たる523人が買収に関わっていたという。
 今回の決定後、張徳江・全人代常務委員長(議長)は「建国以来、初めて省レベルで起きた重大案件だ」と述べ、事態を深刻に受け止めていると強調した。
 ただ、省以下の選挙では大掛かりな不正が過去に発覚しており、今回の選挙違反は「氷山の一角」(北京の大学教授)ともいわれる。
 遼寧省が汚職摘発の重点的なターゲットになっているため、今回の不正が明るみに出たという見方は強い。











_