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ロイター 2016年 09月 29日 12:04 JST 斉藤洋二ネクスト経済研究所代表
http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-yoji-saito-idJPKCN11W12A?sp=true
コラム:リオリエント時代の主役はインドか=斉藤洋二氏
[東京 29日] -
国際通貨基金(IMF)の世界経済見通し(2016年4月時点)によれば、
★.2015年のインドの実質国内総生産(GDP)成長率は「7.3%」
となり、7%を割り込んだ中国(6.9%)を上回った。
★.16年についても「7.5%」の成長が予想されており、
ハードランディングの可能性も懸念される中国をさらに引き離す見込みだ。
もちろん、成長率ではなく経済規模や平均的な生活水準で見れば、インドは中国に遠く及ばない。
IMFによれば、2015年の名目GDPは、米国に次ぐ世界2位の経済大国である中国の5分の1程度。
同年の1人当たり名目国民総所得(GNI)も購買力平価ベースで見て、中国の半分にも満たない(世界銀行データ)。
だが、ポテンシャルという意味では、インドは中国以上と言えよう。
そもそもインドの人口は2015年時点ですでに13.1億人と、中国の13.8億人に次いで世界2位だが、国連の「世界人口予測」(2015年7月時点)によれば、2022年には中国を抜き、世界最大の人口を抱える国になる見通しだ。
また、人口が多いだけでなく、人口構成が若く(24歳以下が半数程度を占める)、人口ピラミッドを描くと、理想的な三角形となる。
前述した国連の予測によれば、2025年には、インドの人口は14.6億人(中国14.1億人)となり、
★.2070年に17.5億人でピークを迎える見通しだ
★.(中国のピークは2030年の14.2億人で、2070年には12億人まで減少)。
つまり、
★.今後数十年にわたって、インドでは人口ボーナス期(生産年齢人口が多い状態)が続くと見られる。
これは、人口構造の急速な高齢化が懸念される中国に対して、大きな経済的アドバンテージである。
さらに、2014年5月に船出したモディ政権(インド人民党)が、後述するような歴史的・社会的事情に阻まれながらも、経済成長重視の旗印を降ろしていない点も将来に対する期待感をつなぎ止める。
経済発展に伴い中間所得層の拡大も見込まれており、今世紀半ばに中国を上回る世界有数の巨大市場が南アジアに出現するかどうか注目されるところだ。
■<モディノミクスも期待先行型>
まずは、インドの足元の経済情勢とモディ政権の経済政策(モディノミクス)の課題について見ておこう。
インド経済の問題点と言えば、慢性的な高インフレや双子の赤字(経常収支と財政収支の赤字)だが、経常収支については、ここ数年は原油など資源安を背景に、赤字幅が減少してきた。
一方、財政赤字は、依然として大規模だが、対GDP比で見れば、だいぶ改善が進んだ。
加えて、著名な経済学者であるラジャン総裁が率いてきたインド準備銀行(中央銀行)が高インフレを抑え込み、モディ首相との連携プレーで海外投資家からの信認を獲得してきた(構造改革を補完するような金融政策運営の透明性向上や金融機関の不良債権処理なども好感された)。
そのおかげで、モディ政権発足以来の2年間は、保険・防衛分野などで、改革の目玉である海外資本の誘致に成功するなど総じて順調に推移してきたと言えよう。
こうしたなか、9月初旬にラジャン総裁が任期切れで退任した。
モディノミクスの今後について市場が不安視するのはやむを得ないところだ。
持続的な成長基盤の確立に向けた改革の実現は道半ばであり、今後膨大な時間を要するものになるとの見通しも根強い。
日本でも構造改革がなかなか進まないのと同様に、地方政府の発言力が強いインドにおいてモディ首相主導による改革が成功するのか疑問が呈されてもいる。
社会に根付いたカーストや土地所有に関わる制度上の問題が結局、モディノミクスを挫折させるとの指摘も少なくない。
振り返ればインドの経済自由化政策はこれまでもたびたび挫折と停滞を余儀なくされてきた。
近年では、インド人民党が与党として臨んだ2004年の総選挙で、「輝くインド(India Shining)」をスローガンに経済重視路線で政権持続を狙ったが、大方の予想に反し、第2党に後退したことは記憶に新しい。
「眠れる巨人」とはインドを形容する際によく使われてきた言葉だが、モディ政権だから目覚めるとの確信を持てない人が多いのも当然だろう。
実際、報道によればインフラや産業向けの土地収用を容易にするための連邦レベルでの政令更新を断念するなど、農業主体から商工業を中心とした産業構造転換を目指すモディノミクスは早くも壁にぶつかっている。
ただ、インド社会の多様性を考えれば、他のアジア工業国のように、一足飛びに物事が進まないのも無理はない。
憲法で定められた22の指定言語があるように、民族、宗教、文化、社会階層が極めて多様であり、民意をまとめ上げるのは至難の業だ。
また、「世界最大の民主主義国家」と言われるインドでは、連邦・州レベルから個々の村レベルまで民主主義が尊重されている。
共産党一党独裁による中央政権の断行力を存分に生かして投資・輸出主導により高度成長を実現した中国とは、政治システムが根本から異なる(また、その中国は今、過剰債務問題にあえいでいる)。
見方によっては、緩やかな経済自由化はインドの宿命であり、改革の頓挫・逆行という最悪のシナリオを回避するためには必要な道のりだとは言えないだろうか。
■<中国の成長ノウハウを吸収>
さて、インドの将来に期待を抱かせる、もう1つの理由は、中国の成長ノウハウを積極的に取り込もうとしている姿勢だ。
確かに、外交面で言えば、インドと中国は対立軸で語られることが多い。
実際、モディ外交は、かつて第3世界をけん引したネルー初代首相以来の伝統的な「非同盟・中立」の立場をアピールしながらも、中国への警戒心は相当根強いように思える。
中国が「一帯一路」構想に沿って、南シナ海からインド洋、そしてパキスタンとの経済回廊開設などを弾みに、アラビア海へと進出を図ろうとしていると映るためだろう
(モディ外交の根底には、
★.パキスタンと中国への対抗、
★.ロシアとの連携、
★.日米との関係強化
という方針があるように思われる)。
とはいえ、インドの対中スタンスは、経済・金融面では実は協調的でもある。
例えば中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)では第2位の出資比率を確保し、さらに新開発銀行(BRICS銀行)では初代総裁の座を手に入れるなど中国との連携を模索している。
中国経済が離陸する30年ほど前までは両国間の経済格差は限定的だったものの、中国が社会主義市場経済を導入して高度成長を達成したことについて、インドは強く意識し後追いを始めたと言えるだろう。
また、インドには、引き続き大きなポテンシャルを持つ産業がある。
★.カースト制の対象にならない職業分野である情報技術(IT)産業だ。
インドの主な経済的アドバンテージを挙げれば、前述した人口動態に加えて、
★.英語と数学に強い国民性、そして
★.米国の裏側にあるという時差的・地理的メリット
がある。
このような利点を生かしてこれまでもバンガロールを中心にIT産業の発展が試みられてきた。
確かに、アウトソーシング業務が中心との低評価もあろうが、欧米の成長企業とのパートナーシップで培われたノウハウが、フィンテック、あるいはAI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)など第4次産業革命に活かされるのは間違いない。
ITの強みは、すべての産業に活用し得る。
労働生産性の向上と、人口ボーナス期のアドバンテージとが相まって、インド経済の押し上げに有利に働く可能性は十分あるだろう。
■<アジアは世界経済の5割強占める存在へ>
現在、中国、インドそして日本などアジアのGDPは、すでに世界経済の30%程度を占めている。
経済協力開発機構(OECD)の長期経済見通しに関する報告によれば、
2060年には中国(24%)に次いでインド(18%)が世界2位の経済大国となるなどアジアは世界経済の50%超を占めると試算されている(ちなみに、日本は3%にとどまると見込まれている)。
それは17世紀から18世紀にムガル帝国が隆盛を極め、また清朝が乾隆帝の治世下において史上最大の版図へと拡大した頃に匹敵する。
英国の経済学者アンガス・マディソンによる有名な世界経済史研究によれば、19世紀初頭までアジアのGDPシェアは5割を超えていた(1820年時点で、中国が32.9%、インド16.0%、日本3.0%、それ以外のアジア地域7.3%)。
その後、英国はじめ欧米列強は産業革命により経済成長しアジアを圧倒する時代が18世紀後半から200年以上にわたり続いた。
しかし、欧米先進国の成長率は今や、未曾有の金融緩和にもかかわらず、およそ0%から2%台の「長期停滞」に沈んでいる。対照的にアジアでは中国に続き東南アジア諸国、そしてインドが経済の本格的な離陸態勢に入りつつある。
ドイツ生まれの経済歴史家アンドレ・グンダー・フランクが説いた「リオリエント(東洋への回帰)」もいよいよ現実味を増している。
いずれにせよ、日本はそう遠くない将来に、アジア域内第3位の経済規模に転落する見込みだ。
世界において経済面でも安全保障面でもどのようなポジショニングを目指すのか、そしてそのためにはいかなる戦略が必要なのか、今のうちから頭の体操を十分にしておく必要がある。
*斉藤洋二氏は、ネクスト経済研究所代表。1974年、一橋大学経済学部卒業後、東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行。為替業務に従事。88年、日本生命保険に入社し、為替・債券・株式など国内・国際投資を担当、フランス現地法人社長に。対外的には、公益財団法人国際金融情報センターで経済調査・ODA業務に従事し、財務省関税・外国為替等審議会委員を歴任。2011年10月より現職。近著に「日本経済の非合理な予測 学者の予想はなぜ外れるのか」(ATパブリケーション刊)。
*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。
*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。
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サーチナニュース 2016-10-02 22:19
http://news.searchina.net/id/1619964?page=1
日本人の気持ちがわかった・・・
インドの「反中」映画に違和感=中国メディア
中国は現在、複数の国とさまざまな摩擦を抱えている。
その結果、中国に対する国民感情にも影響が出ているようだ。
中国メディアの一点資訊はこのほど、インドで「反中映画」が公開されたことを紹介。
「盲目的な愛国主義は実に愚かだ」と主張する一方で、その描写を通じて「日本人が抱く気持ちが分かった」という。
中国が抱える各国との摩擦は多岐にわたる。国内における生産能力の過剰を背景に、だぶついた鉄鋼製品を安価で世界中に輸出し貿易摩擦を起こしたり、領土をめぐる係争も多く抱えたりしている。
日本とは尖閣諸島(中国名:釣魚島)をめぐって対立しているほか、南シナ海問題でも中国は埋め立てを強行し、その強引な態度には世界から批判の声があがった。
また、9月上旬には中国人民解放軍がインドが主張する実効支配線を超えてインド側に侵入していたことが問題視されている。
摩擦が増え問題が増えると中国に対する国民感情が悪化してもおかしくはない。
それはインドも同様のようだ。
中国メディアの一点資訊はこのほど、インドで「反中映画」が公開されたと伝えた。
記事はまず史実である1962年の中印国境紛争を取り上げ、同紛争の結果として中印両国の関係が悪化し、
「インド政府はインド国内に中国に対する敵意に満ちた言論をばらまき、
中国を邪悪な国家として作り上げ、
インド人の心の中に敵対心を植え付けた」
と主張。
こうした敵対心が反中映画誕生のきっかけとなったとした。
続けて2016年1月にインドで公開された「Moondraam Ullaga Por」というアクション映画を紹介。
同映画の舞台は2025年に始まったとする戦争で主人公はインド人兵士、中国は敵として描かれている。
記事はこの映画に登場する中国人は態度が非常に悪く、まさに悪役という表現がぴったりな描写であることを紹介。
あわせて反中映画について「盲目的な愛国主義は実に愚かだ」と批判した。
一方で、その描写についてまるで
「中国における抗日ドラマ」に登場する日本兵のようだった
とし、
「インドの反中映画で感じた違和感と滑稽さと同じものを、日本人は中国の抗日ドラマから感じているに違いない」
と伝えている。
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