2016年9月7日水曜日

エ!?、北方四島を旧ソ連が日本へ返還を打診したが、日本は拒絶した

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 尖閣問題に絡めた中国の捏造記事なのだろうか?
 それとも、プーチンが本当にそう言ったのか?
 もしプーチンが言ったとしたら、その意図は何?
 ロシアにとって現在の最大の敵はアメリカではない。
 長い国境線を持つ中国である
 これまでロシアからみると中国はレベルの低い国であった。
 そのため西欧ほどに注意を払わなくてもよかった。
 軍事力は圧倒的ソ連が上であった。
 しかし、中国の経済発展はこの国を世界ナンバー2の経済大国に押し上げた。
 豊かなお金をもち、産業やテクノロジーはロシアを凌駕し始めている。
 さらには、その金満により軍事力の増強に走ってもいる。
 そんな国と長い国境線をもつということは、危うい状況に追い込まれているということなる。
 いまのところ軍事力で勝ってはいるが、いつかは逆転するかもしれない。
 そうしたとき、ロシアに国境線を守ることができるのか。
 約十倍の人口を抱える中国である。
 さあどうする!
 それが今のロシアの課題である。

 中国とは対アメリカで手を組み、
 日本とは対中国で手を組まねばならないのがロシアである。
 日本と握手するには北方四島は最大の案件である。
 日本は二島では折り合わない。
 四島が基本である。
 北方四島などはロシアにとってさほど重要ではない。
 これを政治的にどう使うか、である。
 もしかしたらプーチンは旧ソ連は四島返還の交渉をしたということを大々的に宣伝する気なのかもしれない。
 ソ連の提案をプーチンがなぞったところで、彼の独断にはならない。
 四島をエサに日本を引っ張り込み、中国の抑えに使うという計画がもしかしたらあるのかもしれない。
 日本は北島四島という題目を盾にロシアとは深く関わらないことを国是にしてきた。
 日本にとってロシアは正直イヤな相手なのである。
 四島を真ん中において、ロシアとは手を結ばない、というのが日本にとっての良策なのである。
 だが、もし四島返還が実現されるようなことあると、一気に対ロシア政策が変換してしまう。
 その対策はまだできていない。
 ということは日本にとって危険な状態になる。
 このまま、四島を真ん中において睨み合っていた方が日本政府としては有難いことなのである。
 ロシアは日本にとって経済的にはなくてもいい国である。

 ロシアは絶対に四島は返さない。
 これを念頭に日本はロシア外交をすることになる
 ロシアは日本にとっては中国に対するカウンターパワーとしての価値がある。


Record china配信日時:2016年9月7日(水) 2時0分
http://www.recordchina.co.jp/a149683.html

<北方領土問題>
ロシア大統領「旧ソ連は返還するつもりだったが、日本が拒否した」―中国紙

 2016年9月6日、中国日報によると、ロシアのプーチン大統領は5日、北方四島について
 「旧ソビエト連邦(ソ連)が日本へ返還を打診したが、日本は拒絶した」
と述べた。

 中国浙江省杭州市で開かれた主要20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)終了後の記者会見で述べた。
 大統領は
 「経済、安全保障、人道関連の問題がなお存在する、われわれは重点的に注目していきたい」
と語った。



ダイヤモンドオンライン 2016年9月8日 高橋洋一 [嘉悦大学教授]
http://diamond.jp/articles/-/101088

北方領土問題がプーチン来日で動く可能性は十分にある


●G20の前にウラジオストクで行った日ロ首脳会談で、今年12月のプーチン大統領の来日が決まった Photo:首相官邸

■北方領土問題の解決に決意を見せる安倍首相

 あまり報道されていないが、安倍首相が北方領土問題の解決に向けて並々ならぬ決意を見せている。
 ここ1週間の外交ウィークで、G20の前に、日ロ首脳会談を2日にウラジオストクで行った。
 大きな成果として、今年12月のプーチン大統領の来日が決まった。
 それは安倍首相の地元山口で、である。これは、G20での日中首脳会談の前に対中国戦略としてかなり有効だった。
 もともと、安倍首相の悲願は、憲法改正と北方領土返還だ。
 ともに、祖父である岸信介以来の悲願である。
 大きな目標であり、国のあり方の基本を問うという政治家らしいものだ。

 憲法改正については、衆参ともに憲法改正勢力は一応3分の2以上になった。
 もっとも、憲法のどこを改正するかは今後の話であり、それが決まらない以上、国民投票もありえない。
 まだ道半ばであるが、少しずつ前に進んでいる。
 憲法改正事項では、維新が提示した地方分権、教育無償化、憲法裁判所が面白い。
 民進党の代表戦が今行われているが、その3人の候補はそれらの項目に政策としては前向きだ。
 それが憲法改正項目に直結するかどうかはわからないが、項目として提示されたとき、憲法改正マターでないというのは言いにくい。
 憲法は国の基本を定める。
 政権が変わっても行われるべき政策を定めるものであり、政府に義務を課すものだ。
 例えば、教育無償化を憲法で定めたならば、たとえ財政事情が苦しくとも教育無償化を無視することはできなくなる。
 要するに、教育無償化を最優先させるような制度的な裏付けが憲法なのだ。

■60年間ほとんど進展してない北方領土問題
 ロシアと続いていた「異常な状態」

 一方、北方領土はここ60年間、ほとんど進展してない。
 北方領土は、戦後のどさくさから、ソ連に違法占拠されたままだ。
 今から60年前の1956年日ソ共同宣言で法的な戦争状態を一応終結したが、まだ平和条約は締結できていない。
 これは、誰が考えても「異常な状態」だ。
 その異常な状態は、北方領土問題があるからだ。
 領土問題は、いつでも解決困難であり、極論すれば戦争でしか解決しないのが世界の常識だ。
 その意味で、
 沖縄返還は世界史から見ても画期的な話だった。
 そのほかの例としては、戦争以外というと、
 英国による99年間の香港租借後の中国への返還、
 アメリカによるロシアからのアラスカ購入
が有名な例だ。

 北方領土も平和的な解決は困難な問題であるが、それを避けようとしないのは安倍首相の政治家としての信念であろう。
 現時点で、安倍首相以外にこうしたスケールが大きくタイムスパンが長い政治課題を掲げる政治家はいない。
 この点、自民党総裁の任期延長問題が今議論されているが、長期的な日本の課題を扱う政治家が安倍首相以外に存在しないことは、安倍首相の任期延長に有利に働くだろう。

■日本側が示した8項目の「協力プラン」に対応したロシア

今回の日ロ首脳会談の成果をまとめておこう。
 外務省のホームページを見れば詳細が掲載されている。
 こうした情報は、新聞などの2次情報ではなく公式な1次情報を見るようにしたい。
 簡単にいえば、ソチでの首脳会談において提示した8項目の「協力プラン」を具体的に日本から示したということだ。
 8項目とは、
(1):健康寿命の伸長,
(2):快適・清潔で住みやすく,活動しやすい都市作り,
(3):中小企業交流・協力の抜本的拡大,
(4):エネルギー,
(5):ロシアの産業多様化・生産性向上,
(6):極東の産業振興・輸出基地化
(7):先端技術協力,
(8):人的交流の抜本的拡大
 である。
 ロシア側としては、日本に投げたタマが返されたわけなので、話に乗っていかざるを得なくなったのだ。

この日本側の動きは、外務省ではなく、経産省主導になっている。
 過去、貿易摩擦が華やかだったころは、外交について、外務省と経産省で主導権争いをしていた。
 最近ではそうした動きはなくなり、第三者から見ると外務省主導で派手な立ち回りがなくつまらなかったが、国内で外務省と経産省が競うと、結果として国益にかなう結果が多くなるように感じる。
 筆者はいい意味で競争した方がいいと思っており、その観点から、今回の日ロ首脳会談は経産省が主導しているのは問題ない。
 今回、「協力プラン」の責任者として、経産大臣でもある世耕氏が、ロシア経済分野協力担当大臣を兼任し、同大臣の下に全ての関係省庁を総理官邸が直轄する体制としたことも、経産主導を体制としてもはっきりさせている。

 これに対してロシアがどう出てくるかは、今の段階では未知数である。
 外交交渉とはそういうものであるので、今後の交渉次第ともいえる。
 そこで、北方領土が返ってくるかといえば、
 60年間も進展のないものがそう簡単に動き出すはずはない。
 しかし、何とか一歩でも進めたいというのが安倍首相の信念である。

■ロシアの国内事情からいえば
 北方領土と経済協力はまったく別物

 ロシアの国内事情からいえば、北方領土と経済協力はまったく別物だ。
 8項目の協力プランは、日本の優れた技術を各分野で提供しており中身はいいが、ロシアは北方領土と切り離して考えている。
 あるロシア問題専門家によれば、ロシアにとって領土問題は解決済みであり、プーチン大統領は話し合う余地はあると匂わせているが、日本からの経済協力が欲しいので、日本を引っ張っているだけという。
★.最終的には、北方領土を返さずに平和条約を締結して、経済協力だけを引き出すのがロシアの戦略という。
 なにしろ、ロシア国民の8割が北方領土返還に反対している。

 領土問題は、過去の経緯が複雑でそれを丹念にたどると膨大な紙数を要する。それを省き、現状を簡単にいえば、以下の通りだ。
(1):日本は、4島一括返還が先で、その後平和条約を締結する。
(2):ロシアは、平和条約締結を先行させて、その後2島返還で決着させる。
 ただし、
★.日本側は1998年の橋本=エリツィンの川奈会談で、
 四島を日本領土と確定させれば、ロシアの施政権を認める
という譲歩もしている。

 一方、ロシアは北方領土を実効支配し、現在1万8000人のロシア人が住んでいる。
 さらに、北方領土の軍事化も進めている。
 実効支配が長引けば長引くほど、領土返還は難しくなる。
 返還すれば、住民に対する莫大な補償問題にもなるという。
 つまり、年々、領土返還のハードルは高くなっているのだ。

■12月はアメリカ外交の空白時期
 北方領土問題が動く可能性は?

 これらの状況から、北方領土返還は実際問題として難しいのは事実だが、プーチン大統領の訪日を12月に設定できたのは、今回の日ロ首脳会談の成果である。
 というのは、12月は次期アメリカ大統領の始動前で、アメリカ外交の空白時期でもあるのだ。
 このあたりはプーチン大統領も計算済みであり、あえて安倍首相の提案に乗ってきたわけだ。
 これに対してロシアがどう出てくるかは、今の段階では未知数である。
 外交交渉とはそういうものであるので、今後の交渉次第ともいえる。



日本テレビ系(NNN) 9月7日(水)23時15分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/nnn?a=20160907-00000092-nnn-bus_all

世耕経産相、露の極東発展相と会談



 ロシア経済分野協力担当相を兼務する世耕経産相は7日、都内でロシアの極東発展相と会談し、今後、協力内容を具体的に詰めていくことで一致した。

 世耕経産相とガルシカ極東発展相の会談は約50分にわたって行われた。
 会談で世耕経産相は、ロシアへ経済協力として示している農業や水産業の産業振興など8項目の協力プランについて、具体化を全力で進める考えを示し、ガルシカ氏もこれに応じたという。

 両閣僚は、12月に行われる日露首脳会談に向けて、具体的な協力内容を詰めることにしている。


ダイヤモンドオンライン 2016年10月3日  北野幸伯 [国際関係アナリスト]
http://diamond.jp/articles/-/103394

北方領土「2島先行返還」は日本にとって損か得か?

プーチンが12月に訪日することが決まり、日ロ関係が動いている。
日本政府もロシア政府も、訪日時に成果を出すべく、活発に交渉していることだろう。
日本側最大のテーマは「北方領土」だ。一方、経済危機まっただ中のロシアは、「経済協力」の大きな進展を期待する。
今回は、北方領土問題の展望と、日ロ関係の現状と未来について考えてみよう。

■「2島先行返還」か、「4島一括返還」か
悩ましい北方領土問題

 9月23日付読売新聞に、
 「北方領土、2島返還が最低限…対露交渉で条件」
と題した、とても興味深い記事が載った。
 引用してみよう(太線筆者、以下同じ)。

政府は、ロシアとの北方領土問題の交渉で、歯舞群島、色丹島の2島引き渡しを最低条件とする方針を固めた。
 平和条約締結の際、択捉、国後両島を含めた「4島の帰属」問題の解決を前提としない方向で検討している。
 安倍首相は11月にペルー、12月には地元・山口県でロシアのプーチン大統領と会談する。
 こうした方針でトップ交渉に臨み、領土問題を含む平和条約締結に道筋をつけたい考えだ。
 複数の政府関係者が明らかにした。
 択捉、国後については日本に帰属するとの立場を堅持する。
 その上で、平和条約締結後の継続協議とし、自由訪問や共同経済活動などを行いながら、最終的な返還につなげる案などが浮上している。>

 整理してみると、

1.歯舞群島、色丹島を引き渡してもらう。
2.平和条約を締結する。
3.択捉、国後については平和条約締結後に継続協議し、最終的返還を目指す。

 つまり、「まず歯舞、色丹を返してもらい、平和条約を締結」(あるいは、平和条約を締結し、歯舞、色丹を返してもらう)、「択捉、国後については、継続協議」。これは、鈴木宗男氏が主張している、「2島先行返還論」と同じだろう。

 ちなみに菅官房長官は、この記事について「そうした事実はまったくない」と明確に否定している。
 しかし、読売新聞が、「複数の政府関係者が明らかにした」と書いているように、「日本が大きく譲歩する可能性がある」という話は、いろいろな方面から流れてきている。
 総理も「今までとは違うアプローチで解決を目指す」と言っている。
 「今まで」とは、「4島一括返還論」のことだろうから、「違うアプローチ」が、「2島先行返還論」だったとしても不思議ではない。

 ところで、「4島一括返還」は、なぜ実現が難しいのだろうか?
 これを知るために、ロシア側が北方領土問題をどう捉えているか考えてみよう。

 日本外務省のホームページには、以下のように説明されている。

・ソ連は、日ソ中立条約を破って対日参戦した。
・ポツダム宣言受諾後の、1945年8月28日から9月5日までに、北方4島を占領した。

 それで、日本側は「不法占拠だ!」と捉えているのだが、ロシア側の意識は、日本とまったく異なっている。
 ロシア人と話していて感じるのは、彼らには、「固有の領土」という言葉の意味がわからないということだ。

■ロシア人が「北方領土は自国の土地」と
単純に信じているのはなぜか?

 なぜだろうか?
★.ロシア人は、「領土というのは、戦争のたびに変わるもの」という意識なのだ。
 これは、おそらくロシアの歴史と深く関わっている。
 ロシアの起源は、882年頃に成立したキエフ大公国だ。
 首都はキエフだったが、現在はウクライナの首都になっている。
 ロシアの起源である都市が、外国にあることに注目だ。

 キエフ大公国は1240年、モンゴルによって滅ぼされた。
 その後、モスクワ大公国(1263年~1547年)→ロシア・ツァーリ国(1547年~1721年)→ロシア帝国(1721年~1917年)と発展した。
 このように、ロシアは東西南北を征服して領土をひろげ、ついに極東にまで到達した。

 つまり、ロシア領のほとんどは、歴史的に繰り返された領土争いによって獲得した「征服した土地」で、
 いわゆる「固有の領土」は、比率的にとても小さい。

 こういう歴史を持つロシアに、「固有の領土だから返してくれ!」と言っても、「固有の領土とは何ですか?」と逆に質問されてしまう。
 だから、北方領土について、
 「ロシア(ソ連)は日本に戦争で勝った。
 結果、北方4島はロシア(ソ連)の領土になった」
という意識なのだ。

 インテリになると、もっと論理が緻密になる。

  「1875年、樺太・千島交換条約で、樺太はロシア領、千島は日本領と決められた。
 ところが日ロ戦争の後、勝った日本は南樺太を奪った。
 ロシアが、南樺太を返してくれと言い続けていたら、日本は返還してくれただろうか?」
と質問をされることがある。 

 筆者は、「返さなかっただろう」と正直に答える。

 さらに、
 「日本は、日清戦争で勝って台湾を奪ったが、清が返せと主張し続けたら、返しただろうか?」
と続ける。
 筆者は、「返さなかっただろう」とまた答える。

 すると、ロシアのインテリは
 「日本は戦争に勝って奪った領土を、話し合いでは返さない。
 しかし、自分が負けた時は、『固有の領土だから返せ!』という。フェアじゃないよね」
と言う。

 日ソ中立条約を破った件や、ポツダム宣言受諾後に北方4島を占領した件については、
 「1945年2月のヤルタ会談で決められたこと。米英も承認している」
とかわされる。
 つまり、ロシアは
 「米英がソ連の参戦を要求した。その見返りとして、南樺太、千島はソ連領になることを認めた」
ということで、まったく「悪いことをした」という意識がないのだ(ちなみに日本は、北方4島は千島ではないという立場を取っている)。

■「2島返還」実現のハードルは低いが
その後の方向性が難問に

 こういう歴史的国民意識がある中で、いくら親日プーチンでも、「4島一括返還」は厳しいといわざるを得ない。

 しかもロシアは現在、「経済制裁」「原油価格暴落」「ルーブル暴落」の三重苦で苦しんでいる。
 プーチンの支持率は、依然として高い。
 与党「統一ロシア」は、9月18日の下院選挙で大勝した。
 しかし、経済危機が長期になれば、プーチンも安心していられない。このような状況下で、「4島返還」を発表すれば、プーチン人気が急落し、政権の安定が崩れるかもしれない。

 政治的にも4島返還は、簡単ではないのだ。

 では、「2島先行返還論」は、実現可能なのだろうか?
 実をいうと、「2島返還」は、「法的基盤」があるので、両首脳が決断すれば実現は可能だ。

  「法的基盤」とはなんだろうか?
  1956年の「日ソ共同宣言」のことだ。

 日ソ共同宣言の内容を簡単に書くと、
 「日ソ両国は引き続き平和条約締結交渉を行い、条約締結後にソ連は日本へ歯舞群島と色丹島を引き渡す」
である。
 この宣言は、日ソ両国の国会で批准されており、「法的拘束力」をもっている。
 そして、日ソ共同宣言については、ロシアでも広く知られている。

 つまり、プーチンがこれを根拠に2島を返還しても、大きな反対運動は起こらない。
 しかし、「2島返還」には、問題もある。
 2島返還後のことだ。

 日本は、返還対象外の残り2島について、「継続協議」としている。これが、「先行返還」(=先に2島を返してもらい、後で残りの2島を返してもらう)の意味だ。
 ところが、ロシアは、「2島返還」で「画定」したい。
 つまり、歯舞、色丹は日本領、択捉、国後はロシア領で最終決着し、後々話を蒸し返さないつもりだ。

 ロシア側は、ここ数十年間「北方領土の話しかしない」日本に正直うんざりしている。
 4島返すにしても2島返すにしても、現状からすると、ロシアに「大損」だからだ。

 日本の主張する「2島先行返還論」を認めると、これからも永遠に、「択捉、国後をいつ返してくれますか?と言われ続ける」と考えている。
 ところが、日本側は2島で終わりにすることができない。

 ロシアとの平和条約締結は、「歴史的」だが、それが善か悪かは、わからない。

  「2島先行返還」なら、2島取り戻したことで、安倍総理は「歴史的偉業」を成し遂げたと賞賛される可能性がある。
 しかし、2島返還で「終わり」であれば、残り2島を切り捨てたことで、逆に、「国賊」と批判されるリスクもある。
 この辺をどう調整するのだろうか?

 ロシアは国民に、「最終決着しました」と説明し、日本政府は国民に、「2島は取り戻しました。残り2島は継続協議です」と言うのだろうか?

 このように2島返還は、「日ソ共同宣言」という「法的根拠」があるので、実現は可能だ。
 しかし、大きな問題を残したままとなる手法なのだ。

■日本がロシアと和解する最大の理由は
「対中国」であることを忘れるな

 これまで何度も書いてきたが、日本がロシアと和解しなければならないのは、「安全保障上の理由」があるからである。
 「安全保障上の理由」とは、はっきりいえば、「対中国」だ。

 筆者は、2008年から「尖閣諸島から対立が起こり、日中が戦争になる可能性がある」と書いてきた。
 日中関係はその後、「尖閣中国漁船衝突事件」(10年9月)、「尖閣国有化」(12年9月)などで「戦後最悪」になってしまった。

 12年11月、中国はモスクワで、「反日統一共同戦線」戦略を、ロシアと韓国に提案した。いつも書いているが、戦略の骨子は、

1.中国、ロシア、韓国で「反日統一共同戦線」をつくる。
2.中ロ韓で、日本の領土要求を断念させる。日本には、尖閣だけでなく、沖縄の領有権もない。
3.米国を「反日統一共同戦線」に引き入れる。
(詳細はこちらの記事を参照)

 中国は以後、全世界で大々的に反日プロパガンダを続けている(それで、安倍総理が13年12月に靖国参拝した際、中韓だけでなく、米欧ロ豪、台湾、までがこれを非難した)。
 さらに軍事的挑発を徐々にエスカレートさせ、領海、領空侵犯を常態化させている。
 今年8月、中国公船15隻と漁船400隻が尖閣周辺の海域に集結したことは、日本国民に衝撃を与えた。

 筆者が08年に「日中戦争」の可能性を書いたとき、「妄想」だと言われたが、今では普通に「あるかもしれないですね」と言われる。
 そして、日本の領土をあからさまに狙う中国は、すでにGDPで日本の2.5倍、軍事費で8倍の大国である(世界銀行のデータによると、日本の防衛費は15年470億ドル、中国は3858億ドル)。

 つまり、日本一国で中国に勝つのは、非常に難しい。
 では、同盟国の米国はどうなのか?
 トランプは、「日本がもっと金を出さなければ、米軍を日本から撤退させる」と宣言している。
 ヒラリーは、長年中国から金をもらっていたことが明らかになっている(詳細はこちら)。

 一方、ロシアは「クリミア併合」時、「唯一味方になってくれた」ということで、中国とは事実上の同盟関係になっている。

■北方領土問題の最善策は
「棚上げ」である理由

 つまり、現状は以下のように整理される。

1.中国は、はっきりと尖閣・沖縄を狙っている。
2.米国は、トランプ、ヒラリーどちらも親日ではない。
3.ロシアは、中国と事実上の同盟関係にある。

 このような状況がさらに悪化すれば、日本vs中国・ロシアの戦争に発展しかねない。
 その場合、米国は中ロを非難する声明を出すが、事実上は不干渉を貫くかもしれない。
 そうなれば尖閣は中国領になり、沖縄も危険な状態になってくる。

 こういう緊迫した現状で、北方領土問題の解決は、(重要ではあるが)「最優先課題」ではありえない。

 では何が「最優先課題」なのか?
 まず第1に、米国との関係をますます強固にすることだ。
 これは、ヒラリー、トランプ、どちらが大統領になってもやらなければならない。

 第2に、ロシアとの関係を強化し、結果的に中ロを分裂させることだ。
 そのためには、ロシアの望むもの(=経済協力)を与えなければならない。
 しかし、ロシアに対し「慈善事業をしろ」といっているわけではない。
 「長期的に良好な関係を築こう」とすれば、「WIN-WIN」になれる案件を発展させる必要がある。

 ちなみに世界一の戦略家エドワード・ルトワックは、北方領土問題について、著書「自滅する中国」の中で、こう書いている。

<日本政府が戦略的に必要な事態を本気で受け入れるつもりがあるならば、北方領土問題を脇に置き、無益な抗議を行わず、ロシア極東地域での日本の活動をこれ以上制限するのをやめるべきだ。
 このこと自体が、同地域での中国人の活動を防ぐことになるし、ロシアが反中同盟に参加するための強力なインセンティブにもなるからだ。>(192p)

 このように、ルトワックは、北方領土問題の「棚上げ」を勧めている。

 もちろん、「2島先行返還論」をロシアが受け入れれば、それでもよいだろう。
 しかしロシア側が妥協するしないにかかわらず、ロシアが望む経済協力は推進していくべきだ。
 総理は、「日ロ関係深化は、対中国」という「大戦略観」を常に忘れないでいただきたい。

 「北方領土返還実現」は確かに「歴史的」だが、
 「戦わずして、中国の戦略を無効化させる」
ことは、真の意味で「歴史的」である。


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