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ロイター 2016年 09月 13日 18:04 JST Robyn Mak
http://jp.reuters.com/article/samsung-recall-column-idJPKCN11J0UZ?sp=true
コラム:発火問題でスマホ回収、サムスンブランドに影響か
●9月12日、サムスン電子が発火の恐れを報じられた「ギャラクシーノート7」の回収を急ぐ中、大手の航空会社が同機種の機内での使用を禁止した。写真は回収の対象となった同社製「ギャラクシーノート7」を手にするスタッフ。ソウルで2日撮影(2016年 ロイター/Kim Hong-Ji)
[香港 12日 ロイター BREAKINGVIEWS] -
サムスン電子(005930.KS)が発火の恐れを報じられたスマートフォン(スマホ)「ギャラクシーノート7」の回収を急ぐ中、大手の航空会社が同機種の機内での使用を禁止した。
これを受けてサムスン電子の株価は一時急落。
業績への当面の影響は対処可能だが、サムスン電子製品の評価へのダメージはより深刻な問題だ。
サムスン電子は10日前、バッテリーの欠陥により、10カ国・地域でノート7の販売を中止すると発表した。
回収するのは流通在庫を含めて250万台で、同社としては過去最大規模だが、サムスン電子の対応が迅速だったこともあり、投資家は楽観視していた。
また、ノートシリーズは主力機種の「ギャラクシーS」に比べ、圧倒的に人気がない。
そうした中、米航空当局はノート7について、機内で使用したり、充電したりしないよう、または預ける荷物には入れないよう勧告。
また大手航空会社は乗客が機内で電源を入れることを禁じる方針だ。
サムスン電子が「できる限り早く」電源を切って、回収要請に応じるよう購入者に呼びかけたことも、火に油を注いだかもしれない。
ソウル株式市場では12日中盤の段階で、サムスン電子の株価は約7%安。問題発生時から時価総額で約200億ドルを失った。
直接的なコストを考えれば、過剰反応と言える。
バーンスタインのアナリストの予測によると、ノート7の回収費用などで、サムスンの2016年の営業利益は4%押し下げられるにすぎない。
投資家がこれから備えなければいけないのは、サムスン電子の他機種の販売に及ぶ影響、そしておそらく、訴訟など他の問題だろう。
クレディスイスのアナリストによると、ノート7の総販売台数は約1900万台の見通し。
これに対して、今年のサムスン電子のスマホ出荷台数は3億1000万─3億2000万台とアナリストは予想している。
最大の競合相手である米アップル(AAPL.O)には大きな追い風とはならないだろう。
華為技術(ファーウェイ)などがサムスン電子が失った販売機会を奪うことになるかもしれない。
携帯電話で巻き返しを図ろうとした矢先だっただけに、サムスン電子にとっては厄介な問題で、できる限り早急に収束させる必要がある。
●背景となるニュース
・12日午前のソウル株式市場の取引で、サムスン電子の株価は6%以上下落した。
・サムスン電子は10日、ノート7を購入した全顧客に対し、電源を切り、回収要請に応じるよう呼びかけた。サムスン電子は、発火したとの消費者報告を受けてノート7の回収に踏み切っており、原因にバッテリーの欠陥を挙げている。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。
本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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Record china配信日時:2016年9月14日(水) 7時30分
http://www.recordchina.co.jp/a150327.html
日本に続いて中国も=サムスンのスマホ爆発受け、
航空会社が持ち込み・預け入れを全面禁止―中国メディア
各国が航空機内で使用や持ち込みを規制しており、中国の航空会社も同様の対策を発表した。
中国経済網が伝えた。
サムスンが今年8月に韓国や米国などで発売した最新スマホ「Galaxy Note7(ギャラクシーノート7)」のリチウムイオンバッテリーが爆発するなどの事故が相次いだ。
サムスンは2日、一部バッテリーの欠陥を確認し、韓国と米国を含む10カ国で250万台のリコールを決めた。
爆発問題を受け、日本の国土交通省は日本国内の航空会社に対し、
機内では電源を切り、充電を行わないことや、
受託手荷物として預け入れないこと
を乗客に対して周知するよう要請した。
日本に続いて中国の航空大手、海航集団(HNAグループ)も関連の対策を発表。
同社は、機内への持ち込みや受託手荷物としての預け入れを従業員に禁止し、同社の関連会社に対し、Galaxy Note7の機内持ち込みおよび受託手荷物としての預け入れを拒否するよう求めた。
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Record china配信日時:2016年9月22日(木) 10時40分
韓国「サムスン共和国」の危機、
さすがの韓国政府も危機感―中国メディア
2016年9月21日、新華網は「韓国『サムスン共和国』の危機」と題する記事を掲載した。
韓国のサムスン電子8月に発売した新型スマートフォン「ギャラクシーノート7」のバッテリー発火によるリコール(回収・無償修理)問題は、同社史上最悪の信用危機問題に発展している。
しかし、韓国国内にサムスンを批判するメディアはない。
むしろ「雷にあたるぐらい珍しいこと」と持ち上げる動きすらあるぐらいだ。
韓国人が「われわれの国はサムスン共和国だ。質の悪いメディアが悪意をもって報じているだけだ」
と言う理由も分かるだろう。
韓国の国内総生産(GDP)の2割を掌握する巨大企業サムスン。
創業から80年近く、徹底的な家族経営で拡大を続けてきた。
2代目となる現在の李健熙(イ・ゴニ)会長の代になり、世界的な企業グループに成長した。
しかし今年に入り、イ会長の女性問題が明らかとなった。
過去に政府、司法、メディアなどと「特別な関係」を築いてきたサムスン。
今回のギャラクシーノートのリコール問題に至り、さすがの韓国政府も危機感を抱くようになっている。
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ロイター 2016年 09月 16日 12:17 JST Allison Silver
コラム:韓国の海運最大手破たんで何が起きているか
[13日 ロイター] -
経営難に陥っていた世界でも有数の海運大手、韓国の韓進海運(117930.KS)が8月31日に法定管理(会社更生法に相当)を申請した。
年間1億トンを超える貨物を運ぶ同社は6月末時点で、推定55億ドル(約5600億円)の債務を抱えていた。
■<破たんの意味>
総額140億ドルを超える貨物がたなざらしの状態に陥っている。
タグボートや荷役の業者が不払いを恐れているため、貨物の一部は、世界各地の港湾で荷降ろしもされないままだ。
米国行きの10数隻が港に曳航されていない一方、世界7位のコンテナ船社である同社船舶の半数以上が立ち往生している。
米連邦破産裁判所は9日、ようやく荷主に貨物の回収を認める判断を下した。
一部の荷主はすでに代替案を立てている。
例えば、韓国サムスン電子(005930.KS)は8日、2隻の韓信海運船舶に積まれた3800万ドル相当の貨物へのアクセスを得ようと裁判所に訴えた。
サムスンはまた、同社製品を荷降ろしするために、少なくとも16機のチャーター機を借りることを提案している。
費用は最低でも880万ドルだ。
■<混乱いつまで続くか>
9日の判決をもってしても、すぐに混乱が収束すると期待してはいけない。
消費者は今年の休暇シーズンに向け、さらなる出費を覚悟すべきだ。
専門家は、韓進海運の船舶が破産管財人の管理下から離れるのは、少なくとも休暇シーズン後になると予測している。
また、貨物スペースに突如プレミアムが発生している。
これはあらゆる品物の海運輸送費が上がることを意味する。
早ければ10月にも、輸送コストが50%上昇するだろう。
標準的な40フィートコンテナ貨物運賃は5月以降、788ドルから1700ドルへと、すでに倍増している。
法外な運賃は一時的なものだと予想されているが、消費者にとって、そのタイミングは最悪だ。
休暇シーズン中は、家具からレンズ豆、靴からステーキに至るあらゆるコストが増加する可能性がある。
■<なぜ破たんは起きたのか>
大きな環境変化の下で、コンテナ業界全体が深刻な問題に直面している。
2008年の金融危機以降、海運会社は大きな問題を抱えている。
★.それは世界貿易が鈍化しているという事実以上のものだ。
例えば、多国籍企業は世界各地に製品輸送するより、現地工場の建設に注力してきた。
その一方で、コンテナ企業は船舶数を競って増やし、破滅的な供給過剰を生み出すほど建造しすぎてしまった。
★.また、もう1つの予期せぬ問題は、これらの船舶が原油価格高騰時に造られていることだ。
そのため、船舶は巨大で航行速度が遅い。原油価格がこれほど低迷している状況では、これは役に立たない。
コンテナの過剰スペースは、これまで以上に海運会社の収益力を圧迫している。
例えば、韓進海運は今年、輸送する各コンテナ当たり約100ドルの損失を被ってきた。
巨大な「トリプルE」クラスの貨物船であれば20フィートコンテナを約1万8000個も積載できることを想像してみてほしい。
★.さらに、海運業界全体が近代化で遅れを取っている。
船舶が登場した1950年代には、ハイテクの代表だったかもしれない。
しかし現在、最も効率よくコンテナを積み重ねる方法を生み出すソフトウエアも持たないことが多い。
コンテナの正確な位置と中身を追跡するためのセンサーを、多くの会社が取り付けていないためだ。
これは問題だ。
船荷を積み込み、海に送り出す速さは極めて重要だからだ。
たとえ韓進海運の問題が解決したとしても、この先に明快な予想があるとは期待しない方がいいだろう。
*筆者はロイター・オピニオンのエグゼクティブ・エディタ―。
*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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ロイター 2016年 09月 21日 13:38 JST
http://jp.reuters.com/article/hanjin-shipping-debt-usa-bankruptcy-idJPKCN11R0BE
NY港で待機の韓進海運の船舶、
出港計画未定のため入港できず
[20日 ロイター] -
法定管理(会社更生法に相当)を申請した韓国の海運最大手、韓進海運は、米ニューヨーク地域の港の外で待機している「韓進マイアミ号」の荷下ろし資金を調達した。
だが、船舶の入港許可を得る以前に、どのように出港するかの計画がない、という新たな問題に直面している。
韓進マイアミ号は、同社の経営破たんにより立ち往生している米国行きの船舶10隻の1隻。
8月31日の韓進海運の法的管理申請を受けて、世界中の港湾では同社の船舶に対する入港や荷役の拒否が相次ぎ、物流網に大きな混乱が生じている。
米国連邦海事委員のドイル氏は16日、韓進海運には韓進マイアミ号の入港資金があると述べた。
だが、荷下ろしした後、空の貨物コンテナにバラスト(船底に積む重し)を入れるかどうかなど、出航方法が解決されていないため、韓進マイアミ号の入港は許可されていない。
20日夕までに、交渉に詳しい情報筋2人が韓進マイアミ号は入港予定で、空のコンテナを積んで出航する見通しだと語った。
船の追跡サイトは、22日に入港し、次の日に出港予定だと述べた。
だが、マイアミ号が入港予定とされるニューアークのターミナルの運営関係者は、このコメントを拒否した。
マイアミ号は現在、トムソン・ロイター・アイコンのデータによると、ニューヨーク沖約300マイル(480キロ)に停泊中。
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Wedge 2016年9月9日 長内 厚
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/7727
iPhone7「失敗」に脅える日本メーカーの苦悩
日本企業が多数の部品を供給しているiPhone。
アップルがくしゃみをすれば、日本企業は風邪をひく、そんな関係性にあると言えるが、そのアップルは深刻な病にかかりつつある─。
米国時間の9月7日、アップルがiPhone7の発売をリリースし、防水機能や日本のおサイフケータイに対応するFeliCaチップ搭載が話題となっている。
だが、iPhone発売でお祭り騒ぎをしているのは、もはや日本ぐらいかもしれない。
著者が住むボストンなどアメリカ東海岸地域は、元々西海岸に比べるとアップル熱が高くないエリアである。
アメリカの携帯電話市場において、ハイエンドのメイン商品が
iPhoneからサムスンのGalaxy SシリーズやGalaxy Noteシリーズにシフトしてきている
ことは日本ではあまり知られていない。
●減速傾向が明らかになってきたアップル(写真・REUTERS/AFLO)
■主要マーケットで唯一伸びている日本
市場調査会社IDCの今年7月の発表によると、2016年第2四半期のグローバル市場シェアは、アップル11・8%に対してサムスンは22・4%。
サムスンの好調はハイエンドのGalaxy S7、S7 edgeが牽引しているという。
ボストン近郊の家電販売店や携帯電話会社の直営店などで話を聞くと、主力はサムスン製であり、iPhoneも主力の一部ではあるが、かつてほどの勢いはないと話す。
7月にはiPhoneの販売台数が対前年比で15%減少と報じられたが、やはりiPhoneは凋落してきているのだろうか。
アップルの4~6月期の決算をみると、売り上げは420億ドル(約4・2兆円)で、対前年比15%減、営業利益も10億ドル(約1兆円)で同28%減と減収減益になっている。
ただ、地域別の売り上げをみてみると、アメリカ11%減、欧州7%減、中国33%減と軒並み下がっているのに対し、日本のみ23%増と伸びている。
カンターなどの調査でも、日本では依然としてiPhoneが50%以上の市場シェアを有していることを示しており、グローバル市場と日本市場を浮き彫りにしている。
iPhone7でわざわざ日本仕様を出したことにも納得がいく。
■迷走する有機ELの技術を上回ってしまった液晶
今年8月、アップル日本法人は、昨年日本企業865社から300億ドル(約3兆円)以上の部品を仕入れたと発表したが、それだけiPhoneの動向は日本のエレクトロニクス産業に大きな影響力をもっているといえる。
例えば、液晶は一部韓国メーカーも供給しているが、ほとんどがJDI(ジャパンディスプレイ)やシャープといった日本企業である。
画質を重視した場合、まだ日本企業に優位性があるということだろう。
しかし、業界関係者は発売されたばかりのiPhone7には過大な期待を寄せていないようである。
報道されているところをみても、JDIは産業革新機構に支援を求めていたり、iPhoneそのものを製造している鴻海の傘下に入ったシャープも、新任社長が日本の液晶産業全体へ更なる支援が必要と述べるなど、例年ならiPhone向けパーツの量産で忙しいはずのこの時期、苦しい状況を示唆する話しか聞こえてこない。
コンデンサーなどを供給している村田製作所の4~6月期決算も、iPhoneの不調が響き、減収減益となっている。
平井社長体制になってエレキ各部門の経営状況が上向いてきているソニーでも、稼ぎ頭だったはずのCMOSセンサービジネスが赤字部門に転落しており、アップル向け需要の減少が大きな要因とみられている。
次世代iPhoneへの期待感で有機EL関連の事業が数カ月前に話題になっていたが、早期の有機ELパネルの採用がなさそうなことから沈静化している。
この有機ELにしてもおかしな話である。
日本が得意で付加価値を高めてきた小型液晶の事業が低調になってきたので、有機ELに次世代事業として投資をする、というのがこのときのJDIやシャープの話だ。
しかし、その有機ELの供給先はやはりアップルだというのだが、そもそもiPhoneの需要が落ちてきたから、液晶が低調になってきたのに、そのアップルを頼って新型デバイスにかけるというのはかなりリスキーな話である。
それが筋の良い技術ならよい。
だが、当初液晶よりも画質が良く視野角が広いといわれていた有機ELは、今では液晶パネルの技術が進化し、画質も視野角も液晶のほうが上回っている。
この液晶の優位性を自慢しているのもまた日本の液晶パネルメーカーである。
有機ELに投資をして、来年か再来年のiPhone向けパネルをつくることがブレイクスルーになるというのだろうか。
筆者にはアップルと心中するようにしか見えない。
iPhoneの良さは機能・性能だったのだろうか?
08年に日本の携帯電話端末メーカーが出していた当時の「全部入り」ケータイといえば、おサイフケータイ、ワンセグ、FMラジオ、防水、指紋認証など、さまざまな機能が搭載されていた。
この中でiPhoneが持っているのは指紋認証ぐらいであり、それもiPhone 5sまで待たなければならなかった。
機能・性能でいえば、ガラケーからiPhoneへの流れは退化であった。
しかし、それを退化と見せなかったのは、iPhoneがそれを上回る感覚的で感性的な価値を顧客に提供していたからである。
スマートフォンというデバイスの機能ではなく、それでできること、それによって実現される新しいライフスタイルに対する憧れ、価値の次元を大きく変えてやることが、アップルが成功フェーズに入るときのお決まりのやりかただった。
アップルの創業者であるスティーブ・ジョブズは「ソニーをつくりたい」といってアップルをつくった。
ソニーはノスタルジックな「ソニーらしさ」にしがみつくエレキ至上主義のマネジメントの下、自らの手で自らの過去の製品や事業をぶち壊すようなビジネスができなくなった頃から凋落していった。
●CMOSセンサーが赤字に転落したソニー(写真・BLOOMBERG/GETTYIMAGES)
対照的に、ジョブズのアップルは、従来のソニーのように振る舞い、自ら作り上げたiPodという成功ビジネスをiPhoneという新事業で自らシュリンクさせ、常に自らの手で脱成熟を繰り返してきた。
そのジョブズも今はアップルにいない。
ジョブズが馬鹿にして「絶対にiPhoneではやらない」と言ったサムスンの大画面液晶スマホを、創業者の遺言を忘れたかのように出してしまった。
いや、創業者の遺志に縛られる必要はないのだが、サムスンという先行者のマネをし始めたあたりからアップルらしさがなくなった。
今回の防水やおサイフケータイ機能も、ソニーのXperiaのマネでしかないと言える。
■日本企業への影響が大きい
「iPhoneが売れなくなる日」
それでももはや最大のiPhone市場と化した日本があるうちは、グローバル市場でのiPhoneのシェアが急激に減少することはないだろう。
海外メディアを中心に、昨年あたりからiPhoneに対する不安の声が出始めている。
筆者も2年前に講演会でiPhoneの先行きが不安だという話をしたら、ビジネス誌の記者から「それは日本の常識的な見方からは随分離れているようだが……」という指摘を受けた。
そこがまさにポイントである。
日本の常識的な見方は日本市場で得た情報に基づく判断であり、
判断のもととなる状況が日本とそれ以外の国で異なるとしたら、日本の常識は世界の非常識になる。
先に触れた通り、アメリカでiPhoneは高級品である。
しかし、日本では最もイニシャルコストがかからない、買い方によってはタダになるかバックマージンまでもらえてしまう端末である。
世界の携帯電話市場をみると、アメリカ、中国、日本というのは規模の大きなマーケットであり、日本市場を押さえていることの意味は大きい。
日本で大量のiPhoneをばらまき、限界利益が出せるだけの数量を生産することができれば、残りの地域ではニッチな高級機種として販売していくこともできよう。
日本のフィーチャーフォンはガラケーと呼ばれ、その所以(ゆえん)はご存じの通り、スマホ登場以前に日本だけ国内端末メーカーが、携帯電話を独占するガラパゴスのような市場というところからきている。
スマホになり、アップルやサムスン、LGといった海外メーカーに門戸は開かれたが、今度はアップルが日本で異常にシェアが高いという他国には見られない状況がつくり出され、第二のガラパゴスと化した市場になっている。
これがiPhoneの高い収益性を支える仕組みになっていると言える。
ちなみに携帯キャリア各社が安価にiPhoneをばらまいてもアップルの利益が損なわれるわけではない。
iPhoneを安く売るための原資は日本のメーカーがつくったガラケーやスマホを使い続けている人たちが支払っている端末料金や通信料金からの収益である。
最初のガラパゴスでは日本の端末メーカーに収益が入る仕組みであったが、新しいガラパゴスでは日本のメーカーからアップルへ収益が吸い上げられるという、まだ前のガラパゴスのほうが良かったのではないかという状況になっている。
いずれにせよ、アップルに残された時間は少ないのかもしれない。
それは、アップルに依存する日本のサプライヤーにも危機が迫っていることを意味するのは言うまでもない。
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。
◆Wedge2016年10月号より
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Wedge 2016年9月9日 長内 厚
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/7727
iPhone7「失敗」に脅える日本メーカーの苦悩
日本企業が多数の部品を供給しているiPhone。
アップルがくしゃみをすれば、日本企業は風邪をひく、そんな関係性にあると言えるが、そのアップルは深刻な病にかかりつつある─。
米国時間の9月7日、アップルがiPhone7の発売をリリースし、防水機能や日本のおサイフケータイに対応するFeliCaチップ搭載が話題となっている。
だが、iPhone発売でお祭り騒ぎをしているのは、もはや日本ぐらいかもしれない。
著者が住むボストンなどアメリカ東海岸地域は、元々西海岸に比べるとアップル熱が高くないエリアである。
アメリカの携帯電話市場において、ハイエンドのメイン商品が
iPhoneからサムスンのGalaxy SシリーズやGalaxy Noteシリーズにシフトしてきている
ことは日本ではあまり知られていない。
●減速傾向が明らかになってきたアップル(写真・REUTERS/AFLO)
■主要マーケットで唯一伸びている日本
市場調査会社IDCの今年7月の発表によると、2016年第2四半期のグローバル市場シェアは、アップル11・8%に対してサムスンは22・4%。
サムスンの好調はハイエンドのGalaxy S7、S7 edgeが牽引しているという。
ボストン近郊の家電販売店や携帯電話会社の直営店などで話を聞くと、主力はサムスン製であり、iPhoneも主力の一部ではあるが、かつてほどの勢いはないと話す。
7月にはiPhoneの販売台数が対前年比で15%減少と報じられたが、やはりiPhoneは凋落してきているのだろうか。
アップルの4~6月期の決算をみると、売り上げは420億ドル(約4・2兆円)で、対前年比15%減、営業利益も10億ドル(約1兆円)で同28%減と減収減益になっている。
ただ、地域別の売り上げをみてみると、アメリカ11%減、欧州7%減、中国33%減と軒並み下がっているのに対し、日本のみ23%増と伸びている。
カンターなどの調査でも、日本では依然としてiPhoneが50%以上の市場シェアを有していることを示しており、グローバル市場と日本市場を浮き彫りにしている。
iPhone7でわざわざ日本仕様を出したことにも納得がいく。
■迷走する有機ELの技術を上回ってしまった液晶
今年8月、アップル日本法人は、昨年日本企業865社から300億ドル(約3兆円)以上の部品を仕入れたと発表したが、それだけiPhoneの動向は日本のエレクトロニクス産業に大きな影響力をもっているといえる。
例えば、液晶は一部韓国メーカーも供給しているが、ほとんどがJDI(ジャパンディスプレイ)やシャープといった日本企業である。
画質を重視した場合、まだ日本企業に優位性があるということだろう。
しかし、業界関係者は発売されたばかりのiPhone7には過大な期待を寄せていないようである。
報道されているところをみても、JDIは産業革新機構に支援を求めていたり、iPhoneそのものを製造している鴻海の傘下に入ったシャープも、新任社長が日本の液晶産業全体へ更なる支援が必要と述べるなど、例年ならiPhone向けパーツの量産で忙しいはずのこの時期、苦しい状況を示唆する話しか聞こえてこない。
コンデンサーなどを供給している村田製作所の4~6月期決算も、iPhoneの不調が響き、減収減益となっている。
平井社長体制になってエレキ各部門の経営状況が上向いてきているソニーでも、稼ぎ頭だったはずのCMOSセンサービジネスが赤字部門に転落しており、アップル向け需要の減少が大きな要因とみられている。
次世代iPhoneへの期待感で有機EL関連の事業が数カ月前に話題になっていたが、早期の有機ELパネルの採用がなさそうなことから沈静化している。
この有機ELにしてもおかしな話である。
日本が得意で付加価値を高めてきた小型液晶の事業が低調になってきたので、有機ELに次世代事業として投資をする、というのがこのときのJDIやシャープの話だ。
しかし、その有機ELの供給先はやはりアップルだというのだが、そもそもiPhoneの需要が落ちてきたから、液晶が低調になってきたのに、そのアップルを頼って新型デバイスにかけるというのはかなりリスキーな話である。
それが筋の良い技術ならよい。
だが、当初液晶よりも画質が良く視野角が広いといわれていた有機ELは、今では液晶パネルの技術が進化し、画質も視野角も液晶のほうが上回っている。
この液晶の優位性を自慢しているのもまた日本の液晶パネルメーカーである。
有機ELに投資をして、来年か再来年のiPhone向けパネルをつくることがブレイクスルーになるというのだろうか。
筆者にはアップルと心中するようにしか見えない。
iPhoneの良さは機能・性能だったのだろうか?
08年に日本の携帯電話端末メーカーが出していた当時の「全部入り」ケータイといえば、おサイフケータイ、ワンセグ、FMラジオ、防水、指紋認証など、さまざまな機能が搭載されていた。
この中でiPhoneが持っているのは指紋認証ぐらいであり、それもiPhone 5sまで待たなければならなかった。
機能・性能でいえば、ガラケーからiPhoneへの流れは退化であった。
しかし、それを退化と見せなかったのは、iPhoneがそれを上回る感覚的で感性的な価値を顧客に提供していたからである。
スマートフォンというデバイスの機能ではなく、それでできること、それによって実現される新しいライフスタイルに対する憧れ、価値の次元を大きく変えてやることが、アップルが成功フェーズに入るときのお決まりのやりかただった。
アップルの創業者であるスティーブ・ジョブズは「ソニーをつくりたい」といってアップルをつくった。
ソニーはノスタルジックな「ソニーらしさ」にしがみつくエレキ至上主義のマネジメントの下、自らの手で自らの過去の製品や事業をぶち壊すようなビジネスができなくなった頃から凋落していった。
●CMOSセンサーが赤字に転落したソニー(写真・BLOOMBERG/GETTYIMAGES)
対照的に、ジョブズのアップルは、従来のソニーのように振る舞い、自ら作り上げたiPodという成功ビジネスをiPhoneという新事業で自らシュリンクさせ、常に自らの手で脱成熟を繰り返してきた。
そのジョブズも今はアップルにいない。
ジョブズが馬鹿にして「絶対にiPhoneではやらない」と言ったサムスンの大画面液晶スマホを、創業者の遺言を忘れたかのように出してしまった。
いや、創業者の遺志に縛られる必要はないのだが、サムスンという先行者のマネをし始めたあたりからアップルらしさがなくなった。
今回の防水やおサイフケータイ機能も、ソニーのXperiaのマネでしかないと言える。
■日本企業への影響が大きい
「iPhoneが売れなくなる日」
それでももはや最大のiPhone市場と化した日本があるうちは、グローバル市場でのiPhoneのシェアが急激に減少することはないだろう。
海外メディアを中心に、昨年あたりからiPhoneに対する不安の声が出始めている。
筆者も2年前に講演会でiPhoneの先行きが不安だという話をしたら、ビジネス誌の記者から「それは日本の常識的な見方からは随分離れているようだが……」という指摘を受けた。
そこがまさにポイントである。
日本の常識的な見方は日本市場で得た情報に基づく判断であり、
判断のもととなる状況が日本とそれ以外の国で異なるとしたら、日本の常識は世界の非常識になる。
先に触れた通り、アメリカでiPhoneは高級品である。
しかし、日本では最もイニシャルコストがかからない、買い方によってはタダになるかバックマージンまでもらえてしまう端末である。
世界の携帯電話市場をみると、アメリカ、中国、日本というのは規模の大きなマーケットであり、日本市場を押さえていることの意味は大きい。
日本で大量のiPhoneをばらまき、限界利益が出せるだけの数量を生産することができれば、残りの地域ではニッチな高級機種として販売していくこともできよう。
日本のフィーチャーフォンはガラケーと呼ばれ、その所以(ゆえん)はご存じの通り、スマホ登場以前に日本だけ国内端末メーカーが、携帯電話を独占するガラパゴスのような市場というところからきている。
スマホになり、アップルやサムスン、LGといった海外メーカーに門戸は開かれたが、今度はアップルが日本で異常にシェアが高いという他国には見られない状況がつくり出され、第二のガラパゴスと化した市場になっている。
これがiPhoneの高い収益性を支える仕組みになっていると言える。
ちなみに携帯キャリア各社が安価にiPhoneをばらまいてもアップルの利益が損なわれるわけではない。
iPhoneを安く売るための原資は日本のメーカーがつくったガラケーやスマホを使い続けている人たちが支払っている端末料金や通信料金からの収益である。
最初のガラパゴスでは日本の端末メーカーに収益が入る仕組みであったが、新しいガラパゴスでは日本のメーカーからアップルへ収益が吸い上げられるという、まだ前のガラパゴスのほうが良かったのではないかという状況になっている。
いずれにせよ、アップルに残された時間は少ないのかもしれない。
それは、アップルに依存する日本のサプライヤーにも危機が迫っていることを意味するのは言うまでもない。
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。
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