『
サーチナニュース 2016-09-05 07:09
http://news.searchina.net/id/1617967?page=1
中国人が米国で実感した「中国経済が直面する圧力」=中国報道
中国が人件費をはじめとする各種コストの安さを強みに、世界の工場と呼ばれていたころ、ありとあらゆる製品が中国で生産されていた。
しかし、近年はコスト上昇によって中国国内から東南アジアへ工場を移転させる企業が相次いでおり、もはや中国は世界の工場ではなくなりつつあるのが現実だ。
中国メディアの捜狐はこのほど、米国在住の中国人による手記を掲載し、
「米国にいても、中国経済が直面している圧力を感じ取ることができる」
と伝えている。
記事はまず、
★.米国のスーパーでは「食材は大半が米国産」であり、
自国の農産物の保護を行っている米国において、中国産の入り込む余地は少ない
と指摘。
肉類や海産物については米国産のほか、カナダ産や欧州産は多いが、やはり中国産は非常に少ないと紹介した。
また、
★.服飾についても「以前はメード・イン・チャイナを購入しないよう気をつけていた」というが、
こうした注意も近年は不要になりつつあると指摘し、
「米国では服や靴の中国産はどんどん減っており、ベトナムやタイ、インドネシア産が増えている」と紹介した。
★.さらに家電製品のうち、輸入品は日韓産が中心であり、スマートフォンなどにおいてはアップルとサムスンの製品が圧倒的で、中国メーカーのスマートフォンは華人や華僑が使用している程度だと紹介した。
★.一方、おもちゃや文房具のように付加価値の低い分野においては、今なお中国産が存在する
ことを指摘し、こうした中国産は「非常に安価で売られている」と紹介。
しかも多くの開発途上国がその中国産のシェアを奪おうと、続々と競争に参入していることを指摘し、
「付加価値の高い分野では中国産は日本や韓国のように独自のブランドを構築できておらず、シェアも獲得できてないのが現状」
と指摘した。
かつて世界の各大手メーカーは中国国内に工場を設置したり、中国企業の生産を委託するなどしていたが、
★.コスト管理を徹底する大手メーカーほど東南アジアへの移転を進めており、記事が
「中国産は今まさに米国市場から消えつつある」
と危機感を示すのも当然の状況となっている。
』
『
サーチナニュース 2016-09-06 07:09
http://news.searchina.net/id/1618079?page=1
どうすれば良いんだ!
コスト優位を失いつつある中国製造業が生き残る道=中国報道
中国政府は2025年までに製造業の高度化を実現し、製造強国となることを目指す「中国製造2025」を打ち出したが、これは中国製造業が人件費の安さをはじめとするコスト優位を失いつつあることが背景にある。
中国は宇宙開発や原発、高速鉄道など、国が主導する分野においては高い技術力を持つものの、民間の製造業ではまだ技術力の低さが目立つのが現状だ。
中国メディアの東方広播網はこのほど、安価な労働力を中国製造業はどうやって生き延びれば良いのかと疑問を投げかける記事を掲載した。
記事はまず、中国製造業の問題点の1つとして、
★.「大きな市場シェアを有する製品であっても、品質が低い」
ことを指摘し、シェアがあるうちに品質を高める努力を怠ったことを批判。
新しい製品の開発や研究開発に資金を投じず、
中国製造業は今なお付加価値が低く、品質も低い製品の生産に終始している
ことを指摘した。
続けて、中国のコラムニストがかつて「世界には斜陽産業などなく、あるのは斜陽の企業と人」であると指摘したことを紹介し、
★.中国製造業にとって重要なのは消費者の心を捉えることのできる製品を生み出せるかどうか
であり、中国人の心を捉えた製品こそ日本メーカーの温水洗浄便座だと指摘した。
一方、中国でも近年は家電やスマホといった分野において、世界で通用する企業が現れているのも事実だ。
だが記事は、「中国メーカーは品質面で消費者の信頼を勝ち取ることができていない」と指摘、
中国メーカーが国外の大型展示会で巨大なブースを構えても人は訪れないのが現実であることを伝えたうえで、コスト優位を失いつつある中国製造業が生き残るためには「品質」を向上させる以外にないと論じている。
』
『
Yahoo ニュース 2016年9月5日 7時0分配信 坂口孝則 調達コンサル、サプライチェーン講師
http://bylines.news.yahoo.co.jp/sakaguchitakanori/20160905-00061783/
中国調達のこれから
~中国はコンビニとなり「コツ」を知るものだけが生き残る
中国は、フィリピンとの関係に端を発した国際問題が報じられた。ならびに、国内の不調和が聞こえてくる。
そういった政治問題のいっぽうで、日本と中国企業群を取引先とする実情はどうなっているのか。
アジアの巨人は産業の観点からどのような変化を遂げているのか。
中国調達の第一人者であり、中国調達情報の発信者として有名な岩城真さんに、中国調達の実際を聞いた(聞き手・坂口孝則)。
――岩城さんは、これまでビジネスで中国にずっと携わってこられました。
2000年以降中国調達に携わってきた者として、中国調達で求められるもっとも重要な点を述べるとすれば「あたりまえのことが、あたりまえにできる」に尽きる。
日本は、「お客様は神様」といった不思議な商慣習のお蔭で、あたりまえのことが、あたりまえにできなくとも、どうにかなってしまうバイヤーの楽園だ。
ゆえに一人前のバイヤーでなければ、中国では通用しないし、中国で通用するバイヤーは、日本でも、他の海外諸国でも通用する。
もっとも、中国とひとくくりにして語られるが、中国は国土が広大なだけでなく、経済や文化も多様であり、一国として考えるよりEC、ASEANといった地域と同じレベルで捉える方が間違いないかもしれない。
――中国は、製品の品質について、一般的にはまだ悪いイメージがあります。
「中国拠点を“コンビニ”だと思って使ってほしい」と中国現地法人の調達部長は話す。
彼が何を言わんとしているのか、おわかりになるだろうか。
実際に中国調達に携わっているバイヤーならば、「なるほどね」と相づちを打っていただけるはずだ。
――つまり?
“コンビニ”とは、何でもそろって便利、の意味と同時に、価格は安くない意味でもある。
かつては、中国から調達できれば激安でモノを買えた。
中国と関わりだした2000年当時、日本で一般化していたNC旋盤やマシニングセンターといった工作機械も、中国の中小零細加工業者には普及していなかったし、基本的な技術や管理も未熟だった。
そのため調達できるものは加工難易度が低く、リードタイムをたっぷり確保でき、多少の不良が発生して納品数量が減っても困らないものに限定された。
日本のバイヤー企業は、中国サプライヤに品質管理や生産技術のエンジニアを派遣する。
これが中国調達の一般的なイメージとして、すっかり定着していた。
――中国が高い、とは逆説的ですね。
今の中国は10年ちょっとの間に大きく変貌を遂げている。
かつて
「日本にあって中国にないものなんてない、探せば必ずある。
ただし、“のようなもの”だけどね」
と話していた。
しかし、今は“のようなもの”から“本物”はもちろん、今の日本では作れないものまである。
くだんの調達部長いわく、
「日本でサプライヤがみつからない時も、間違いなく中国ならみつかる。」
――日本のサプライヤよりも中国のサプライヤを探すべきでしょうか。
ご存じのように、日本の景気は回復しているものの、今の景気がこのまま続くなどとは誰も信じていない。
サプライヤの経営者は、合理化投資はしても増産投資はしない。
最近は、設備よりも従業員の問題が大きい。
鍛造、鋳物の3K職場はもちろん、製缶・溶接、機械加工、表面処理でも将来の従業員を確保できるかどうかが、日本のサプライヤに重くのしかかる。
人口構成のシュリンクに先行して、製造業従業員のシュリンクが始まっている。
日本国内でも、新しいサプライヤと取引を始めるのは意外に難しい。
日本で行き場を失った部品製造は、中国に流れている。
――でも中国企業もおなじく困難に直面していませんか?
もちろん中国も労働人口が減少に転じ、製造業の従業員確保は、難しくなっている。
しかし、日本に比較すると、まだ余力がある。
新聞やビジネス誌には、急速な円安人民元高をきっかけにした国内回帰が報じられているが、帰るところのない部品製造は帰ってこない。
中国調達市場は、くだんの調達部長が言うように“コンビニ”なので、激安ではない。
今、中国のサプライヤの多くは設備過剰に苦しんでおり、為替変動分を価格に転嫁できていない。
円建て取引の場合はもちろん、ドル建て、人民元建ての取引であっても、日本側の予算は円建てで設定されているので、何らかの影響はある。かつてのような激安見積りはない。
中国の内陸部はともかく、日本とほとんど同じレベルの生活ができる上海などの沿海部では、円安の影響もあって、生活物価は日本と同等か、それ以上である。
日系ブランドの牛丼単品は300円前後、マクドナルド、ケンタッキーといったグローバルブランドのハンバーガーセットは600円以上する。
日本と同じものを求めれば、日本並み以上の価格になる。
――奇妙な話のようにも聞こえます。
中国調達市場は、“コンビニ”になったといっても、リアルなコンビニと異なる点がひとつある。
それは、市場全体として、何でも供給できるのであって、1社で何もかもを生産できるのではない。
かつては、力のあるサプライヤ1社に、何を注文しても、再外注、再々外注によって、“のようなもの”は、供給された。
中間マージンが、しっかり乗っても激安だった。
今はそうは行かない、しかるべきサプライヤを選び、発注しなくては、品質、価格、デリバリーの満足できるものは供給されない。
これは、あたりまえなのだが、“バイヤーの楽園”日本に甘え、身につけるべきスキルを身につけていないバイヤーにはつらい。
日本のサプライヤと違って、中国のサプライヤは、依然として玉石混交である。
しっかりとした選別眼を持ったバイヤーでないと務まらない。
中国サプライヤに足しげく通うのは、かつての品質管理や生産技術のエンジニアではなく、多くのサプライヤ候補から、適切に選び出す目を持つバイヤーでなくてはならなくなった。
――しかし中国から購入するといまだにリードタイムの問題があります。
耳を疑うひともいるかもしれないが、最近では、日本のサプライヤよりも中国のサプライヤの方が、輸出入通関や海上輸送期間を含めてもリードタイムは短い。
「そんな短納期対応は日本じゃできないが、中国なら大丈夫だ。」が、しばしばある。
不景気でサプライヤが口を開けて待っている、といった理由もあるが、
概して工場の規模が大きく、底力があるのだ。
――中国のリスクはありませんか。
一般的にチャイナリスクとは、不透明な執政や知的財産権の軽視、外交問題、為替、人件費の上昇があげられる。
外交問題を除くと、これらは中国に限らず、新興国がその経済成長によってはらむ一般的なリスクである。
これらの問題は、バイヤー個人はもちろん、民間企業の力で解決できる問題ではない。
対処法は自然災害のリスク回避と併せて、一国集中の回避が、有効かつ唯一のリスクヘッジである。
私が考える最大のチャイナリスクは、中国企業には交渉で勝てない日系企業文化だと思う。
我々バイヤーの仕事は、交渉そのものではない。
交渉しなくとも成立する取引が理想だろう。
しかし、リアルな調達の現場、特に中国調達の現場は、交渉に次ぐ交渉を強いられる。
その交渉で、我々日系企業は、ほぼ間違いなく譲歩を強いられる。
我々日本人の交渉力は、中国人と比較して弱いのだろうか?
それは単純に交渉力の問題ではない、既述のように日系企業の企業文化の問題だ。
それは、交渉における最悪の結果が、日本と中国の組織では異なるからである。
日本にとっての最悪の結果は、「破談」である。
想定を大幅に超える大幅譲歩であっても、「破談よりはマシ」なのである。
一方、中国にとっての最悪の結果は、「想定以上の譲歩」であって、「破談」ではない。
日本は譲歩してでも成立を目指す交渉をし、中国は譲歩するぐらいなら破談も辞さない交渉をするのだから、その先には、「日本の大幅譲歩で交渉成立」の結果しかない。
――面白いのですが、なぜそんなに強気なんでしょうか。
バイヤーとサプライヤの交渉の不成立は、サプライヤにとっては失注であり、工場が休止してしまうかもしれない。
そのような状況は、日本のサプライヤも中国のサプライヤも差はない。
差が生じるのは、不成立の責任を誰が負うと考えるかである。
中国の組織では、交渉が成立に至らなかったのは、交渉の相手方が法外な条件ばかりを提示してきたからで、自社の交渉担当者に非はないと考える。
むしろ、大幅な譲歩をすれば、責任問題になってしまう。
「何か、もらったのか?」の嫌疑を掛けられかねない。
実際はそうでないとしても、交渉担当者は、そのように考えるので、譲歩より破談を選び“強気の交渉”ができる。
それでは、日本も「譲歩より破談を選べ」と方針転換すれば良いと、そんなに単純な話ではない。
日本人は、何かアクションを起こすと無理してでも成果を残そうとする。
交渉において破談となれば、成果ゼロ。
中国企業と交渉する際は、何が何でも(大幅に譲歩しても)話をまとめる考えは、あらためなくてはならない。
もちろん、一切譲歩せずに破談を連発させれば、大きな機会損失を作る。
バイヤーのサプライヤ選定や価格改定の交渉であれば、競合環境を構築し、「1社と破談したら後がない」といった状況を回避できる。
しかし、競合環境を構築しても、構築した競合環境を生かしきれない事例が多々ある。
バイヤー自らが本命の1社に絞ってしまい、二番手より僅かに良い条件のところまでズルズルと譲歩してしまうのである。
中国サプライヤの加工単価は、物価、人件費、為替を理由に、ほぼ右肩上がりで上昇している。
それでも、競合する日本のサプライヤよりは安いからと、サプライヤに企業努力を求めず、“正当な値上げ”として容認してきた一面があった。
しかし、日本より安ければ良いのではない。
中国のサプライヤも生産の効率化努力をしてもらわなければ困る。
「日本の競合サプライヤより安いだけで妥協しない。
目標単価未達であれば、破談、転注も辞さない。」
そんな強気な姿勢で交渉に臨んでみて欲しい。
もちろん、破談、転注ともなれば、バイヤー企業の損失も小さくない。
しかし、中国サプライヤと新しい関係を築く、と言っても、やっと対等に交渉できるポジションに立つにすぎない。
それでも、押されっぱなしの交渉の流れを変えられる、そんな経験を私は、何度もしてきた。
――なるほど、最後に中国調達にいまからチャレンジするひとたちにアドバイスを。
中国サプライヤの納期問題にしても、品質問題にしても、様々な指南があるが、“最後は、人対人の信頼関係”といった類の文言で締めくくりが多い。
それでは「その信頼関係って、どうやって構築するの?」といった疑問が浮かぶのが自然だろう。
信頼構築の方法として、白酒と称されるアルコール度の高い中国の国民酒を浴びるほど飲み、本音で語り合いが必要と語る人もいれば、誠実な行動を日々ひとつひとつ積み重ね以外にないと説く人もいる。
私はそのいずれも間違っていないと思うが、ほんとうにそれしかないのだろうか。
酒が飲めない人は、中国で信頼されないのだろうか。
長い年月を掛け、交流を重ねなくてはダメなのだろうか。
そんな自問していると、「いや違う、ある!」と自分の経験から思い浮かぶ。
それは決断を先延ばしにしたり、決裁を上位者に委ねたりしない、つまり自らの“即断即決”だ。
中国の組織は、日本と比較して担当者の裁量権が大きい。
それは「上司は部下の仕事を管理するのではなく、部下そのものと、結果を管理している」からである。
蛇足になるが、顕著なのは中国の政府機関である。
同じ機関でも担当官によって言う内容が違うが、「以前の担当官は××と言った」などと指摘しようものなら、目の前の担当官は、自らの裁量権を否定されたと誤解して、まとまる話もまとまらなくなる。
閑話休題、中国サプライヤの経営者はもちろん担当者でもたいていは、その場で決める。
我々が対峙する経営者、担当者と対等な関係になりたければ、つまり信頼関係を構築したいのであれば、我々日本のバイヤーも即断即決しなくてはならない。
そうしないと、彼らは口に出さなくとも、「決裁権のある人を寄こしてくれ!」と腹の内で憤っているはずだ。
そうは言っても、我々バイヤーは組織の中にいるサラリーマンである。
それぞれが与えられた決裁権の範囲がある。
ゆえに周到な事前準備が必要なのだ。
少なくとも想定できる内容は、決裁権の委譲を受けて、サプライヤとは対峙しなくてはならない。
中国で成功している日本企業の多くが、決裁権のある経営者自らが、中国に出向く中小企業と符合する。
少なくとも、決裁権があってもそれをなかなか行使しないサラリーマン総経理を抱える企業が成功しているといった話は聞いた試しがない。
実際に中国サプライヤと打合せの中で決断に躊躇していると、
「岩城先生、あなたは経理(マネージャー)ですよね、この程度の決裁権が無い訳がないでしょ。さぁ、決めてください」
と決断を促される。
もちろん、このような決裁を積み重ねて、信頼は構築できる。
しかし、我々バイヤーは、もっと速く、強い信頼関係の構築を求められ、そして自らもそれを望んでいるはずだ。
ビジネスでは想定内ばかりではない、むしろ中国ビジネスでは想定外が多い。
決断の先延ばしが、大きなデメリットやリスクを生む。
そんな時に自らが決断し、「私の責任で(私の)会社から了解を取ります」と言いきれれば、強い信頼関係を構築できる。
なぜなら、その言葉を吐いた時点で、バイヤーはサプライヤと同じ側に立った証になるからだ。
調達とは、川に橋を架ける仕事だと思う。
バイヤー企業とサプライヤが、両岸から橋を造り出し川の中央で橋が繋がるのが理想だろうが、理想的に事が進むとは限らない。
時にはバイヤーが泳いで川を渡り、サプライヤとともにサプライヤ側から橋を建設も必要で、要は川に橋を架け、両者が利を得られるか否かなのである。
橋を架ける過程で、バイヤーがサプライヤとともに汗を流し、強い信頼関係が生れるのである。
私は、決裁権の行使は、権利ではなく、義務であると考えている。
そうでなくては、中国では“勝てない”のである。
――ありがとうございました。
初出:無料冊子「The調達2016」を短縮し掲載
岩城真(いわき・まこと)プロフィール
大学卒業後、重工業メーカーへ就職。本社管理部門に4年半在籍の後、産業機械部門の工場バイヤーとなる。中国調達は、2000年から始め、現在もプレーイングマネージャーとして中国ほか新興国はもちろん日本国内の調達の最前線で活躍する現役バイヤー。
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Yahoo ニュース 2016年9月5日 7時0分配信 坂口孝則 調達コンサル、サプライチェーン講師
http://bylines.news.yahoo.co.jp/sakaguchitakanori/20160905-00061783/
中国調達のこれから
~中国はコンビニとなり「コツ」を知るものだけが生き残る
中国は、フィリピンとの関係に端を発した国際問題が報じられた。ならびに、国内の不調和が聞こえてくる。
そういった政治問題のいっぽうで、日本と中国企業群を取引先とする実情はどうなっているのか。
アジアの巨人は産業の観点からどのような変化を遂げているのか。
中国調達の第一人者であり、中国調達情報の発信者として有名な岩城真さんに、中国調達の実際を聞いた(聞き手・坂口孝則)。
――岩城さんは、これまでビジネスで中国にずっと携わってこられました。
2000年以降中国調達に携わってきた者として、中国調達で求められるもっとも重要な点を述べるとすれば「あたりまえのことが、あたりまえにできる」に尽きる。
日本は、「お客様は神様」といった不思議な商慣習のお蔭で、あたりまえのことが、あたりまえにできなくとも、どうにかなってしまうバイヤーの楽園だ。
ゆえに一人前のバイヤーでなければ、中国では通用しないし、中国で通用するバイヤーは、日本でも、他の海外諸国でも通用する。
もっとも、中国とひとくくりにして語られるが、中国は国土が広大なだけでなく、経済や文化も多様であり、一国として考えるよりEC、ASEANといった地域と同じレベルで捉える方が間違いないかもしれない。
――中国は、製品の品質について、一般的にはまだ悪いイメージがあります。
「中国拠点を“コンビニ”だと思って使ってほしい」と中国現地法人の調達部長は話す。
彼が何を言わんとしているのか、おわかりになるだろうか。
実際に中国調達に携わっているバイヤーならば、「なるほどね」と相づちを打っていただけるはずだ。
――つまり?
“コンビニ”とは、何でもそろって便利、の意味と同時に、価格は安くない意味でもある。
かつては、中国から調達できれば激安でモノを買えた。
中国と関わりだした2000年当時、日本で一般化していたNC旋盤やマシニングセンターといった工作機械も、中国の中小零細加工業者には普及していなかったし、基本的な技術や管理も未熟だった。
そのため調達できるものは加工難易度が低く、リードタイムをたっぷり確保でき、多少の不良が発生して納品数量が減っても困らないものに限定された。
日本のバイヤー企業は、中国サプライヤに品質管理や生産技術のエンジニアを派遣する。
これが中国調達の一般的なイメージとして、すっかり定着していた。
――中国が高い、とは逆説的ですね。
今の中国は10年ちょっとの間に大きく変貌を遂げている。
かつて
「日本にあって中国にないものなんてない、探せば必ずある。
ただし、“のようなもの”だけどね」
と話していた。
しかし、今は“のようなもの”から“本物”はもちろん、今の日本では作れないものまである。
くだんの調達部長いわく、
「日本でサプライヤがみつからない時も、間違いなく中国ならみつかる。」
――日本のサプライヤよりも中国のサプライヤを探すべきでしょうか。
ご存じのように、日本の景気は回復しているものの、今の景気がこのまま続くなどとは誰も信じていない。
サプライヤの経営者は、合理化投資はしても増産投資はしない。
最近は、設備よりも従業員の問題が大きい。
鍛造、鋳物の3K職場はもちろん、製缶・溶接、機械加工、表面処理でも将来の従業員を確保できるかどうかが、日本のサプライヤに重くのしかかる。
人口構成のシュリンクに先行して、製造業従業員のシュリンクが始まっている。
日本国内でも、新しいサプライヤと取引を始めるのは意外に難しい。
日本で行き場を失った部品製造は、中国に流れている。
――でも中国企業もおなじく困難に直面していませんか?
もちろん中国も労働人口が減少に転じ、製造業の従業員確保は、難しくなっている。
しかし、日本に比較すると、まだ余力がある。
新聞やビジネス誌には、急速な円安人民元高をきっかけにした国内回帰が報じられているが、帰るところのない部品製造は帰ってこない。
中国調達市場は、くだんの調達部長が言うように“コンビニ”なので、激安ではない。
今、中国のサプライヤの多くは設備過剰に苦しんでおり、為替変動分を価格に転嫁できていない。
円建て取引の場合はもちろん、ドル建て、人民元建ての取引であっても、日本側の予算は円建てで設定されているので、何らかの影響はある。かつてのような激安見積りはない。
中国の内陸部はともかく、日本とほとんど同じレベルの生活ができる上海などの沿海部では、円安の影響もあって、生活物価は日本と同等か、それ以上である。
日系ブランドの牛丼単品は300円前後、マクドナルド、ケンタッキーといったグローバルブランドのハンバーガーセットは600円以上する。
日本と同じものを求めれば、日本並み以上の価格になる。
――奇妙な話のようにも聞こえます。
中国調達市場は、“コンビニ”になったといっても、リアルなコンビニと異なる点がひとつある。
それは、市場全体として、何でも供給できるのであって、1社で何もかもを生産できるのではない。
かつては、力のあるサプライヤ1社に、何を注文しても、再外注、再々外注によって、“のようなもの”は、供給された。
中間マージンが、しっかり乗っても激安だった。
今はそうは行かない、しかるべきサプライヤを選び、発注しなくては、品質、価格、デリバリーの満足できるものは供給されない。
これは、あたりまえなのだが、“バイヤーの楽園”日本に甘え、身につけるべきスキルを身につけていないバイヤーにはつらい。
日本のサプライヤと違って、中国のサプライヤは、依然として玉石混交である。
しっかりとした選別眼を持ったバイヤーでないと務まらない。
中国サプライヤに足しげく通うのは、かつての品質管理や生産技術のエンジニアではなく、多くのサプライヤ候補から、適切に選び出す目を持つバイヤーでなくてはならなくなった。
――しかし中国から購入するといまだにリードタイムの問題があります。
耳を疑うひともいるかもしれないが、最近では、日本のサプライヤよりも中国のサプライヤの方が、輸出入通関や海上輸送期間を含めてもリードタイムは短い。
「そんな短納期対応は日本じゃできないが、中国なら大丈夫だ。」が、しばしばある。
不景気でサプライヤが口を開けて待っている、といった理由もあるが、
概して工場の規模が大きく、底力があるのだ。
――中国のリスクはありませんか。
一般的にチャイナリスクとは、不透明な執政や知的財産権の軽視、外交問題、為替、人件費の上昇があげられる。
外交問題を除くと、これらは中国に限らず、新興国がその経済成長によってはらむ一般的なリスクである。
これらの問題は、バイヤー個人はもちろん、民間企業の力で解決できる問題ではない。
対処法は自然災害のリスク回避と併せて、一国集中の回避が、有効かつ唯一のリスクヘッジである。
私が考える最大のチャイナリスクは、中国企業には交渉で勝てない日系企業文化だと思う。
我々バイヤーの仕事は、交渉そのものではない。
交渉しなくとも成立する取引が理想だろう。
しかし、リアルな調達の現場、特に中国調達の現場は、交渉に次ぐ交渉を強いられる。
その交渉で、我々日系企業は、ほぼ間違いなく譲歩を強いられる。
我々日本人の交渉力は、中国人と比較して弱いのだろうか?
それは単純に交渉力の問題ではない、既述のように日系企業の企業文化の問題だ。
それは、交渉における最悪の結果が、日本と中国の組織では異なるからである。
日本にとっての最悪の結果は、「破談」である。
想定を大幅に超える大幅譲歩であっても、「破談よりはマシ」なのである。
一方、中国にとっての最悪の結果は、「想定以上の譲歩」であって、「破談」ではない。
日本は譲歩してでも成立を目指す交渉をし、中国は譲歩するぐらいなら破談も辞さない交渉をするのだから、その先には、「日本の大幅譲歩で交渉成立」の結果しかない。
――面白いのですが、なぜそんなに強気なんでしょうか。
バイヤーとサプライヤの交渉の不成立は、サプライヤにとっては失注であり、工場が休止してしまうかもしれない。
そのような状況は、日本のサプライヤも中国のサプライヤも差はない。
差が生じるのは、不成立の責任を誰が負うと考えるかである。
中国の組織では、交渉が成立に至らなかったのは、交渉の相手方が法外な条件ばかりを提示してきたからで、自社の交渉担当者に非はないと考える。
むしろ、大幅な譲歩をすれば、責任問題になってしまう。
「何か、もらったのか?」の嫌疑を掛けられかねない。
実際はそうでないとしても、交渉担当者は、そのように考えるので、譲歩より破談を選び“強気の交渉”ができる。
それでは、日本も「譲歩より破談を選べ」と方針転換すれば良いと、そんなに単純な話ではない。
日本人は、何かアクションを起こすと無理してでも成果を残そうとする。
交渉において破談となれば、成果ゼロ。
中国企業と交渉する際は、何が何でも(大幅に譲歩しても)話をまとめる考えは、あらためなくてはならない。
もちろん、一切譲歩せずに破談を連発させれば、大きな機会損失を作る。
バイヤーのサプライヤ選定や価格改定の交渉であれば、競合環境を構築し、「1社と破談したら後がない」といった状況を回避できる。
しかし、競合環境を構築しても、構築した競合環境を生かしきれない事例が多々ある。
バイヤー自らが本命の1社に絞ってしまい、二番手より僅かに良い条件のところまでズルズルと譲歩してしまうのである。
中国サプライヤの加工単価は、物価、人件費、為替を理由に、ほぼ右肩上がりで上昇している。
それでも、競合する日本のサプライヤよりは安いからと、サプライヤに企業努力を求めず、“正当な値上げ”として容認してきた一面があった。
しかし、日本より安ければ良いのではない。
中国のサプライヤも生産の効率化努力をしてもらわなければ困る。
「日本の競合サプライヤより安いだけで妥協しない。
目標単価未達であれば、破談、転注も辞さない。」
そんな強気な姿勢で交渉に臨んでみて欲しい。
もちろん、破談、転注ともなれば、バイヤー企業の損失も小さくない。
しかし、中国サプライヤと新しい関係を築く、と言っても、やっと対等に交渉できるポジションに立つにすぎない。
それでも、押されっぱなしの交渉の流れを変えられる、そんな経験を私は、何度もしてきた。
――なるほど、最後に中国調達にいまからチャレンジするひとたちにアドバイスを。
中国サプライヤの納期問題にしても、品質問題にしても、様々な指南があるが、“最後は、人対人の信頼関係”といった類の文言で締めくくりが多い。
それでは「その信頼関係って、どうやって構築するの?」といった疑問が浮かぶのが自然だろう。
信頼構築の方法として、白酒と称されるアルコール度の高い中国の国民酒を浴びるほど飲み、本音で語り合いが必要と語る人もいれば、誠実な行動を日々ひとつひとつ積み重ね以外にないと説く人もいる。
私はそのいずれも間違っていないと思うが、ほんとうにそれしかないのだろうか。
酒が飲めない人は、中国で信頼されないのだろうか。
長い年月を掛け、交流を重ねなくてはダメなのだろうか。
そんな自問していると、「いや違う、ある!」と自分の経験から思い浮かぶ。
それは決断を先延ばしにしたり、決裁を上位者に委ねたりしない、つまり自らの“即断即決”だ。
中国の組織は、日本と比較して担当者の裁量権が大きい。
それは「上司は部下の仕事を管理するのではなく、部下そのものと、結果を管理している」からである。
蛇足になるが、顕著なのは中国の政府機関である。
同じ機関でも担当官によって言う内容が違うが、「以前の担当官は××と言った」などと指摘しようものなら、目の前の担当官は、自らの裁量権を否定されたと誤解して、まとまる話もまとまらなくなる。
閑話休題、中国サプライヤの経営者はもちろん担当者でもたいていは、その場で決める。
我々が対峙する経営者、担当者と対等な関係になりたければ、つまり信頼関係を構築したいのであれば、我々日本のバイヤーも即断即決しなくてはならない。
そうしないと、彼らは口に出さなくとも、「決裁権のある人を寄こしてくれ!」と腹の内で憤っているはずだ。
そうは言っても、我々バイヤーは組織の中にいるサラリーマンである。
それぞれが与えられた決裁権の範囲がある。
ゆえに周到な事前準備が必要なのだ。
少なくとも想定できる内容は、決裁権の委譲を受けて、サプライヤとは対峙しなくてはならない。
中国で成功している日本企業の多くが、決裁権のある経営者自らが、中国に出向く中小企業と符合する。
少なくとも、決裁権があってもそれをなかなか行使しないサラリーマン総経理を抱える企業が成功しているといった話は聞いた試しがない。
実際に中国サプライヤと打合せの中で決断に躊躇していると、
「岩城先生、あなたは経理(マネージャー)ですよね、この程度の決裁権が無い訳がないでしょ。さぁ、決めてください」
と決断を促される。
もちろん、このような決裁を積み重ねて、信頼は構築できる。
しかし、我々バイヤーは、もっと速く、強い信頼関係の構築を求められ、そして自らもそれを望んでいるはずだ。
ビジネスでは想定内ばかりではない、むしろ中国ビジネスでは想定外が多い。
決断の先延ばしが、大きなデメリットやリスクを生む。
そんな時に自らが決断し、「私の責任で(私の)会社から了解を取ります」と言いきれれば、強い信頼関係を構築できる。
なぜなら、その言葉を吐いた時点で、バイヤーはサプライヤと同じ側に立った証になるからだ。
調達とは、川に橋を架ける仕事だと思う。
バイヤー企業とサプライヤが、両岸から橋を造り出し川の中央で橋が繋がるのが理想だろうが、理想的に事が進むとは限らない。
時にはバイヤーが泳いで川を渡り、サプライヤとともにサプライヤ側から橋を建設も必要で、要は川に橋を架け、両者が利を得られるか否かなのである。
橋を架ける過程で、バイヤーがサプライヤとともに汗を流し、強い信頼関係が生れるのである。
私は、決裁権の行使は、権利ではなく、義務であると考えている。
そうでなくては、中国では“勝てない”のである。
――ありがとうございました。
初出:無料冊子「The調達2016」を短縮し掲載
岩城真(いわき・まこと)プロフィール
大学卒業後、重工業メーカーへ就職。本社管理部門に4年半在籍の後、産業機械部門の工場バイヤーとなる。中国調達は、2000年から始め、現在もプレーイングマネージャーとして中国ほか新興国はもちろん日本国内の調達の最前線で活躍する現役バイヤー。
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ダイヤモンドオンライン 2016年9月15日 莫 邦富 [作家・ジャーナリスト]
http://diamond.jp/articles/-/101959
日本の「工匠精神」に学べ!
中国企業に高まる気運
●経済発展路線に陰りが生じ始めた中、中国企業が日本企業のもつイノベーションを学び、その技術を導入しようとしている
中国経済はいまや厳しい局面に直面している。
これまでは、労働力人口が全体の人口増加率より高かったため、豊富な労働力が経済成長を後押しする「人口ボーナス」の時期にあり、その恩恵を満喫して、安い製造コストでいろいろなものを作っては海外へ輸出して、経済発展のスピードを維持してきた。
当時の中国では企業を「做大、做強」にしようといったスローガンがよく聞かれていた。
つまり、企業を大きく強くしよう、ということを求めていたのだ。
規模とスピードが追求されていた時代だから、こう求めていたこと自体は咎められない。
しかし、人口ボーナスが減り、これまで走ってきた経済発展路線に陰りが生じ、
安かろう悪かろうのやり方では、企業と経済をこれ以上発展させることが困難になってきた。
倒産に追い込まれた企業も後を絶たない。
企業経営者も政府関係者も途方に暮れている。
★.中国経済はこれからどのような路線を進むべきか。
★.企業はどのような方法で競争相手の企業に追いつき、追い越すのか。
★.企業はどこから新たな発展を支える生命力を得られるのか。
これは中国企業や地方政府関係者が考え込んでいる最新の課題だ。
特に民営企業が集中する長江デルタ地域の地方政府も企業も日本の技術力に目を向けた。
ある分野に特化して、その分野の極みになるような製品を製造する日本企業を高く評価する。
匠の心という表現に相当する言葉もこの頃、中国で流行っている。
「工匠精神」というものだ。
日本企業がもつイノベーションを学び、その技術を導入し、日本での投資や日本企業との提携ないしM&Aの希望がいたるところから出ている。
■上海市海外聯誼会にできた
日中企業の交流の場
昨年12月、上海市海外聯誼会に中日分会という部署ができたとき、特定の2ヵ国を強調する団体の誕生は珍しいだけに、人々が多大の期待を寄せた。
日中企業の交流の場を設けてほしい、交流のチャンネルを増やしたいといった要望もその一部だ。
こうした期待とニーズを受けて、上海海外聯誼会中日分会は上海交通大学安泰経済与管理学院、上海交通大学中国企業発展研究院と組んで、9月9日、長江デルタ中日企業イノベーションフォーラムを開催した。
中日分会にとっては、こうしたイベントは初めての試みだから、最初、聴講者の募集範囲を上海に限定しようという意見もあったが、中日分会はむしろ募集範囲を長江デルタ全域に拡大しようと主張していた。
演者は日本企業と中国企業のそれぞれ2社に頼み、フォーラムのテーマも企業の悩み解消に役立ちそうなものに限定した。
結果から見ると、正式な案内を公表してからわずか2日間で聴講応募者が会場の収容人数を上回った。
しかも、応募範囲は大幅に主催側の予想を超えた。
海南、広東、香港、福建、浙江、江蘇、安徽、河南、山東、天津、北京など10以上の省・市・特区の企業経営者、経済界または政府機関の関係者が我先にと申し込んだ。
日本からも10社以上がわざわざ上海に駆けつけた。
会場を訪れた企業の業種を見ると、製造業のほか、ハイテク、IT、コンサルタント、金融、保険、航空、運輸、物流、設計などの分野と多岐に渡った。
聴講応募者があまりにも多かったので、フォーラムの会場を急きょ、大きな会場へ変更した。
その人気ぶりに、中国企業の関心がどこにあるのかが透けて見えてくる。
フォーラムの講演内容を紹介しておこう。
■フォーラムは大成功
上海以外にも広がる気配
フォーラムの演者として、日東電工(中国)投資有限公司の高柳敏彦董事長が「百年企業が3つのイノベーションの道を切り開く」と題する講演を行った。
トムソン・ロイターの「世界の革新企業・機関トップ100」に5年連続で選出される企業として、高柳董事長がひとつの技能でどこまでイノベーションを推し進められたのか、といった企業の神髄を披露した。
一方、百年企業になった阿波製紙上海有限公司の東俊二総経理が「産業機能紙分野で活躍する阿波製紙の今昔」と題する講演で、自動車用フィルターなどの製品を専門とする典型的なリトルガリバー型企業の製紙一筋の歩みを報告した。
「隠れたチャンピオンの背後にある“匠”の思考」という演題で報告した浙江省義烏市双童日用品有限公司の楼仲平董事長は、同社が1993年創業以来の22年間、プラスチック製飲用ストローの研究開発・生産・販売のみを行っていることを強調した。
そのストロー1本で市場を切り開いた報告は会場から大きな関心を集めた。
「新エネルギー分野用磁性製品に打ち込む高度化の道」と題する報告をしたのは寧波松科磁材有限公司の汪維傑総経理である。
倒産寸前の父親の会社を買収して、磁性製品の生産を皮切りに、電動車・エアコン・エレベーターなどからなる企業生態系を構築し、顧客に究極の新製品を提供している。
会場の熱烈な反響を見て、浙江省杭州市の会社と政府機構、山東省の政府機関がフォーラム終了後、主催側に地元での開催を要請し、熱いラブコールを送った。
参加者の多くも常設フォーラムにしたら、と提案している。
中国の2大通信社、つまり新華社通信と中国新聞社がニュースを配信し、会場内で取材していた上海テレビ局も特番を放送することにした。
その反響はまだしばらく続くだろうと思う。
主催側の中日分会はゼロ予算でスタートしたこのフォーラムの成功に鼓舞されて、日中経済を結ぶ新しいチャンネルとして常設フォーラムにしようという考えを固める意向だ。
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サーチナニュース 2016-09-14 20:38
http://biz.searchina.net/id/1618793?page=1
速いが粗い仕事をする中国人
オフィスワーカーから見える中国の今
中国国内で仕事をしていたり、中国と貿易の仕事をしていたりすれば、あたりまえのことだが、中国人のオフィスワーカーに何かを依頼し、書類を提出してもらう経験があると思う。
ちょっとしたやり取りを含めれば、筆者は、数百人とコミュニケーションしているかもしれない。
ほとんどの中国人オフィスワーカーは、驚くほど仕事が速い、正直なところ、「遅い!」と苛立った記憶はない。
日本で依頼すると、どんなに頑張っても2、3日は掛かると言われた3D-CAD図のトレースを一晩で終わらせたオペレーターもいた。
ともかく、書類作成にしても、技術文書や契約書の翻訳、インターネットで検索できるレベルのリサーチも速い。
ところが、中身は?というと、概して粗いのだ。
粗いとは、誤記やモレ錯誤があるのだ。
もちろん、中には、速く正確な仕事をする優秀な人もいる。
筆者が接してきた中国人オフィスワーカーは、平均的な中国人ではない。
国有企業や外資企業の従業員が中心なので、最低でも高校卒以上の学歴を有している人たちであるから、中の上以上の人たちが大半だ。
「仕事が粗いなら、速いに決まっている」といってしまうと身も蓋もない。
日本では、スピードはないが精緻な仕事をする人が一定割合いるのだから、中国にいてもおかしくないのだが、とんとお目にかかったことがない。
中国人は、気が短いのかと言うと、そうとも思えない。
確かに発展著しい沿海都市部は、皆が皆、せかせかとしているようにも見えるが、一旦内陸部に入ると、時がゆったりと流れている。
と言いながらも、内陸部の人でも、何かを決断するときは速い、たいていのことは、即断即決である。
悩みに悩みぬいたといっても、翌日には決めている。
「行列をみつけたら、まず並ぶ。
並んでから、何の行列なのかを訊ねるのが中国人」
といった笑い話があるが、確かに人の多い中国では、競争が激しい。
全席指定の飛行機でさえ、我先にと押しあいへしあいして入口に殺到する、
ほとんどDNAレベルにまで、競争心が埋め込まれているのかもしれない。
そのようなことが、スピード重視に繋がっているのだろう。
筆者は、彼らのスピード重視をポジィティブに捉えている。
なぜなら、タイムリミットギリギリに書類を提出されたら、少々の不備、誤記があっても、許容しなくてはならなくなる。
時間的な余裕がありさえすれば、間違いがあっても修正すればよいからだ。
一方、気になるのが、仕事の粗さである。
以前注意した誤記やモレを性懲りもなく繰り返すことがある。
さすがに二度三度とこれが重なるとストレスになる。
中国のシッパー(荷送人)の作成するインボイスやパッキングリストに、毎回毎回類似のミスがあるものだから、中国からの輸入業務のアシスタント(日本人)は、皆、辟易としているといった話をよく聞く。
どうして、こうも同じミスを繰り返すのかを考えてみると、思いあたるのは、
何も考えないで仕事をしている、
ということではないだろうか。
余計なことを考えずに、というと聞こえは良いが、目先の結果だけしか見ていない。
例えば、パッキングリストに記載される重量に誤りがあり、4,764Kgは誤りで、4,674Kgが正だと指摘すると、指摘された箇所だけを修正する。
そこには、「なぜ、間違えたのか?」という再発防止に繋がる学習が欠如している。
同様のことは、製造現場でも感じる。
「ここを基準にして加工しなさい」と指導すると、素直に従うが、「なぜ?」という疑問を持たない作業者が多い。
「なぜ」を教えても、あまり耳を傾けてくれない。
中国の暗記中心の学校教育を原因だと指摘する人がいるが、筆者も同感である。
中国の携帯電話番号は11桁であるが、彼らの多くは、区切りをつけずに覚えている。
あるいは、数百点にもおよぶ顧客の図面番号(筆者の会社の図面番号は、一桁目が図面のサイズを表す以外は、何の脈絡もない数字の羅列である)をスラスラと覚えている。
一定のルールで配番されている部品番号ではない。
部品名(日本語)で、部品が特定できない(作業者は日本語を解さない)以上、図面番号を丸暗記するしかないのかもしれないが、「中国暗記教育恐るべし」と変に感心している。
大それた理論を展開すると、彼らの
「粗いが速い」仕事っぷりが、まさに中国の大発展の原動力
のような気がする。
今の中国は、書類作成の速さで評価され、マネージャーになったオフィスワーカーが、
スピードだけでは廻せない仕事の壁にぶちあたっている、
そんな風にも見える。
ある段階に達したら、思慮深さが求められるのは、
個人、社会、国家にも共通する
ことのようだ。
(執筆者:岩城真 編集担当:サーチナ・メディア事業部)
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サーチナニュース 2016-09-23 07:35
http://news.searchina.net/id/1619293?page=1
中国製造業が直面する苦境、それはまさしく「身から出たさび」=中国報道
東京商工リサーチの資料によれば、2015年における日本全国の企業の倒産件数は8812件だった。
一方、中国における企業の倒産件数はわずか1307件とされているが、一部資料によれば、中国で法的に倒産の形を取らずに登記抹消された企業の数は数十万に及んでおり、この件数は年々増加している。
中国メディアの捜狐財経はこのほど、
中国の実体経済の衰退はますます鮮明になっているうえに、多くの企業が倒産に追い込まれていると説明、そしてこうした悲劇は中国製造業自身に問題と責任があるゆえに「身から出たさび」であると指摘している。
記事は中国製造業の問題点を7つ取り上げており、それは
1].基幹技術をおろそかにしてマーケティングばかりを重視すること、
2].無駄の多い管理部門、
3].企業が従業員を信頼せず従業員も転職が多く忠誠心がないこと、
4].バイヤーの腐敗、
5].知的財産権を重視しないこと、
6].民族主義にこじつけて事業を行うこと、そして
7].製造業界に共通して存在する腐敗
だ。
この腐敗について記事は、例えば自動車製造業の社長が親戚の1人に部品メーカーを経営させ、自分がその部品メーカーの株主になり大儲けするという方式であり、この自動車製造企業はたとえほかにどんなに良い部品メーカーがあってもその企業からは買い付けないと説明。
この腐敗の形式は、自動車、電信、石油、工学機械、鉄鋼、鉄道、農業機械、電力、プラスチックなど様々な製造業界で形成されていると指摘した。
記事が指摘している中国製造業の7つの問題点には1つの共通点がある。
それはどの問題も「品質の高い製品を生み出すための環境を損なう」ということだ。
企業が知的財産権を重視せず、他社のパクリに頼った経営を続けても、決して品質の高い製品は生まれない。
企業と従業員の間に信頼関係がなければ質の良い技術者は育たず、やはり品質の高い製品は生み出せない。
また製品の品質の向上に貢献するのは科学技術や創造力といった要素であり、民族主義ではない。
記事が指摘するところの中国製造業に見られる腐敗も、質の良い製品を作り出す企業の発展を妨げるものになる。
中国政府が目標とする匠の精神の育成は、記事が指摘する問題点を概観する限り、決して簡単な道のりではないといえる。
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